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昼下がりのパン屋は、いつもより少し騒がしかった。
焼き上がりを知らせるタイマーの電子音が規則正しく鳴り、甘い生地と砂糖の匂いが、店内の空気を重たくしている。
人の話し声が交錯し、トレイが重なる乾いた音が響く。
ユイは作業台の前に立ち、生地を成形していた。
手は覚えている動きを正確になぞっているのに、視線だけが落ち着きなくあちこちを彷徨っている。
(……えっと、なんだっけ……)
指先は丸め、閉じ、整える。
いつも通りの工程。
なのに、頭の奥がひどくざわついていた。
思い出そうとしていないのに、浮かんでくるのは唇に触れた感触。
離れる直前の、熱を含んだ息。
それと、くすぐられて笑って、そのまま誤魔化されてしまった夜。
(……いっぱいの、きす……)
思い出した瞬間、身体の内側から熱が広がる。
耳の裏までじんわりと赤くなるのが、自分でも分かった。
「ユイくん?」
声をかけられて、びくりと肩が跳ねる。
「……あ、なに?」
振り返ると、支援員がトレイを持って立っていた。
「次の生地、こっちお願いできる?」
「……うん!」
返事はできる。
ちゃんと立って、歩いて、作業もできる。
それなのに、胸の奥だけが落ち着かない。
理由ははっきりしているようで、自分の言葉にはまだできない。
(……かえったら……)
考えるより先に、気持ちが動く。
(ひとりで……えっち、しよ)
決意というより、衝動だった。
思いついてしまったことを、そのまま肯定するみたいに、ユイは小さく頷いた。
鷹臣は今日は仕事で遅いと言っていた。
(だいじょうぶ、だいじょうぶ…)
――
夕方、家に着いて玄関で靴を脱ぐと、ユイは違和感に気づく。
靴が、一足多い。
「……あれ?」
リビングの奥から、キーボードを叩く音が聞こえた。
規則的で、落ち着いたリズム。
「ユイ? おかえり」
鷹臣の声だった。
「……え」
今日は遅くなるはずだった。
予定が変わったなんて、聞いていない。
一瞬、思考が止まる。
でも、身体の内側の熱は、引くどころか強くなる。
(どうしよう……)
理屈より先に、足が動いた。
ユイはぱたぱたと足音を立てて廊下を抜け、寝室に向かう。
「……ただいま!
あ、あけないでね!」
振り返ってそう言いながらドアを閉めたつもりだったが、最後まできちんと閉まりきらない。
寝室のドアの隙間からは、廊下の明かりが細く伸びていた。
(はやく……)
焦りが、余計に呼吸を乱す。
音を立てないように気をつけているつもりなのに、心臓の音がうるさい。
ユイは鷹臣のベッドに潜り込むと、大きく息を吸った。
もつれる指でズボンのファスナーを下ろし、自身の昂ぶりに指を這わせる。
「っ…ん、」
両手で包み込むように扱くと、水音が控えめに響いた。
先走りはすぐに濡れた後ろと交わり、音が大きくなる。
「は、ぅ……、あっ、あ、あ、」
くちゅ、くちゅ、と前を弄りながら後ろに指を充てがうと、思ったより滑らかに入ってしまった。
「ひ、ゃっ…あ、…ん、ぅー…」
思わず大きな声が出てしまい、ユイの目に涙が溜まった。
一方、リビングでは、鷹臣がパソコンの画面を見つめたまま、キーボードを叩く手を止めていた。
(……今の、)
ユイの足音。
いつもより慌ただしい動き。
それに、閉めたはずのドアの向こうからの微妙な音。
聞き耳を立てるつもりはなかった。
覗くつもりもなかった。
ただ、違和感だけが残る。
(具合悪い?)
しばらく、そのまま様子を見る。
時計の針がしばらく進んでも、寝室から戻ってくる気配はない。
代わりに、家の中の空気が、少しずつ変わっていくのを感じる。
甘さと切迫したような、熱。
鷹臣はゆっくりと椅子から立ち上がった。
(……ヒートだったら…放っておけない)
足音は立てないで慎重に歩き、寝室の前で、足を止めた。
ドアは、やはり少しだけ開いていた。
その隙間から、かすかに聞こえる水音。
それに混じる、抑えきれなかった小さな吐息がくぐもっている。
鷹臣は、すぐには声をかけなかった。
(……ユイ)
名前を呼べば、きっと止まる。
でも、その前に、今の状態を理解する必要があった。
ほんのわずかな時間。
(あー…これは…)
そして、意を決めて声をかける。
「……ユイ」
名前を呼ばれた瞬間、向こうの気配がはっきりと固まった。
「……わっ、た、たかおみさん……?」
ドアの隙間から覗いたユイの顔は、赤く、焦っていて、どう見ても取り繕える状態ではなかった。
沈黙が落ちる。
「……ぁ、ゆい、……」
ユイの声が震える。
鷹臣は一度、深く息を吸った。
「…入っていい?」
怒っているわけがない、それは本当だった。
ただ、どう向き合うかを、選ばなければならない。
一歩、距離を詰める。
「……今のユイ、かなり、つらくない?」
責める声じゃない。
状況を確認する声だった。
言いながらドアを開けると、そこにいたユイは、意味を全部は理解していない顔をする。
鷹臣のベッドの上で、無防備な姿で何をしていたかを物語っている。
そして、本能的に逃げ場がないことだけは分かってい。
「……ひとりで、えっちした……」
小さな告白。
鷹臣の胸の奥が、軋む。
守りたい。
触れたら、もう止まれない。
その二つが、同時に存在している。
「……ねえ」
鷹臣が言葉を探している間に、ユイが不安そうに顔を上げた。
「……いっしょに、えっち……だめ……?」
それはお願いでも、誘惑でもなかった。
ただ、今ここにある感情を正直に見せただけだった。
鷹臣は、ユイの頭にそっと手を置いた。
「……いっぱい我慢したもんね、」
低く、静かな声。
ユイは潤んだ瞳のまま微笑んだ。
――
そのままユイは鷹臣に押し倒され、仰向けになった。
鷹臣がゴムの包みを開けようとしたとき、ユイがそれに手を伸ばす。
「…だめ、いらない」
鷹臣は短く息を吐き、困ったように笑った。
再びベッド脇から、今度はゴムの箱を手に取るとそれもユイに奪われてしまう。
「それも、だめ」
「…ユイ?」
ユイは両手にゴムの箱と包を持ったまま、首を横に振った。
どうしようもないことを、どうにかしたい時のユイがそこにはいた。
「うー…」
鷹臣はゆっくり呼吸を整える。
「確認するけど。
それ、どういう意味か、わかる?」
難しい質問をしたつもりもないし、きっと同じことを考えてるのは分かっていた。
しかし、しっかりと確認をしなければ、自分も過去のαと同じになってしまう気がした。
「そんなこと、ゆい、しってる…。
たかおみさんのじゃなきゃ、だめだもん」
「…わかったよ、」
鷹臣はユイの手から、ゴムの箱と包みを奪いベッド脇に戻した。
深く口付けをして、首筋に噛み付く。
αとしての本能が少しだけ匂いとなって立ち上った。
――
「は、ゃっ…、も、だめぇ、」
ユイは四つん這いになり、高く尻を持ち上げながら身体をよじらせた。
「だめ、たくさん気持ちよくなろう?」
鷹臣はユイの項に噛み付いたまま離れない。
かれこれ一時間近く、ユイの前と後ろを交互に愛撫した。
水音が響き、ベッドシーツにはユイの先走りがしみになっている。
くちゅ、ちゃぷ、
「あ、あ、ほしいのに…たかおみさんの、ほしい、」
ユイは涙を浮かべシーツを何度も握り直した。
カラーは外されて、床に落ちたまま。
尻の割れ目に沿うように、鷹臣は自身の昂ぶりをぬるぬると押し付けた。
すぐ挿れてもよかったが、ほんの少しだけ焦らしてユイの求める姿を見たいと思ってしまった。
「もうちょっと、ここ、触っていい?」
項から離れると、今度は耳元で囁いた。
指が三本、四本と後ろを出入りしたその時――
「んぁっ…!」
中のしこりを鷹臣の長い指が掠めると、ユイは身体を仰け反らせ、反射的に大きな声を出した。
「気持ちいい?」
今までの優しさがないわけではないが、いつもと違う鷹臣の態度に、ユイの頭の中では本能がぐるぐると渦巻いた。
(ほしい、ほしい、たかおみさんの…)
何度かしこりを弄られ、ユイの昂ぶりからは精液の他に温かい液体がゆっくりと放出された。
「あ、あ、たかおみさん、ゆい…おしっこ…おしっこでてる…」
ユイはベッドを濡らした液体を見て、半ば放心状態で呟いた。
(やりすぎた、)
「大丈夫、これ、潮だから」
言いつつも鷹臣自身、余裕がなくなってきた。
「しお?…なに?…へん、」
「ごめん、挿れるね」
説明する余裕もないまま、鷹臣はユイの後ろに自身の昂ぶりを沈めた。
ギシ、ギシとベッドの軋む音と身体が密着する音が部屋に落ちる。
「っ…ユイ、ユイ…」
ユイは四つん這いになったまま、必死に鷹臣の律動を受け入れる。
「ん、ん、たかおみさ…、あっ、ぁ…」
鷹臣は再びユイの項に唇を這わせ、甘噛みしたり鼻先をすり寄せたりして全身を愛撫した。
ユイが何度も果てて、もう力が抜けきった頃。
「ユイ、全部出すね…」
「ん、んっ…たかおみさん、だして、ぜんぶ…ゆいのなか…」
鷹臣は動きを大きく早め、ユイの中にたっぷりと愛情を注いだ。
――
二人は呼吸を整え、寝室に敷いた布団の中で身体を寄せ合った。
「…シーツ、びしゃびしゃだね?ゆいから、しおでたの?」
ユイはまだ顔を赤らめたまま、鷹臣の胸に額をすり寄せた。
「あー、うん…多分、ユイの思ってるしおとはちょっと違うかな…字が違って、」
(俺は何を今説明しようとして…)
言いかけて咳払いをひとつした。
「シーツの洗濯も、しおの話も、また明日」
そう言って、返事が返ってこないことに気付く。
甘く残る匂いに包まれながら、鷹臣はゆっくりと息を吐いた。
焼き上がりを知らせるタイマーの電子音が規則正しく鳴り、甘い生地と砂糖の匂いが、店内の空気を重たくしている。
人の話し声が交錯し、トレイが重なる乾いた音が響く。
ユイは作業台の前に立ち、生地を成形していた。
手は覚えている動きを正確になぞっているのに、視線だけが落ち着きなくあちこちを彷徨っている。
(……えっと、なんだっけ……)
指先は丸め、閉じ、整える。
いつも通りの工程。
なのに、頭の奥がひどくざわついていた。
思い出そうとしていないのに、浮かんでくるのは唇に触れた感触。
離れる直前の、熱を含んだ息。
それと、くすぐられて笑って、そのまま誤魔化されてしまった夜。
(……いっぱいの、きす……)
思い出した瞬間、身体の内側から熱が広がる。
耳の裏までじんわりと赤くなるのが、自分でも分かった。
「ユイくん?」
声をかけられて、びくりと肩が跳ねる。
「……あ、なに?」
振り返ると、支援員がトレイを持って立っていた。
「次の生地、こっちお願いできる?」
「……うん!」
返事はできる。
ちゃんと立って、歩いて、作業もできる。
それなのに、胸の奥だけが落ち着かない。
理由ははっきりしているようで、自分の言葉にはまだできない。
(……かえったら……)
考えるより先に、気持ちが動く。
(ひとりで……えっち、しよ)
決意というより、衝動だった。
思いついてしまったことを、そのまま肯定するみたいに、ユイは小さく頷いた。
鷹臣は今日は仕事で遅いと言っていた。
(だいじょうぶ、だいじょうぶ…)
――
夕方、家に着いて玄関で靴を脱ぐと、ユイは違和感に気づく。
靴が、一足多い。
「……あれ?」
リビングの奥から、キーボードを叩く音が聞こえた。
規則的で、落ち着いたリズム。
「ユイ? おかえり」
鷹臣の声だった。
「……え」
今日は遅くなるはずだった。
予定が変わったなんて、聞いていない。
一瞬、思考が止まる。
でも、身体の内側の熱は、引くどころか強くなる。
(どうしよう……)
理屈より先に、足が動いた。
ユイはぱたぱたと足音を立てて廊下を抜け、寝室に向かう。
「……ただいま!
あ、あけないでね!」
振り返ってそう言いながらドアを閉めたつもりだったが、最後まできちんと閉まりきらない。
寝室のドアの隙間からは、廊下の明かりが細く伸びていた。
(はやく……)
焦りが、余計に呼吸を乱す。
音を立てないように気をつけているつもりなのに、心臓の音がうるさい。
ユイは鷹臣のベッドに潜り込むと、大きく息を吸った。
もつれる指でズボンのファスナーを下ろし、自身の昂ぶりに指を這わせる。
「っ…ん、」
両手で包み込むように扱くと、水音が控えめに響いた。
先走りはすぐに濡れた後ろと交わり、音が大きくなる。
「は、ぅ……、あっ、あ、あ、」
くちゅ、くちゅ、と前を弄りながら後ろに指を充てがうと、思ったより滑らかに入ってしまった。
「ひ、ゃっ…あ、…ん、ぅー…」
思わず大きな声が出てしまい、ユイの目に涙が溜まった。
一方、リビングでは、鷹臣がパソコンの画面を見つめたまま、キーボードを叩く手を止めていた。
(……今の、)
ユイの足音。
いつもより慌ただしい動き。
それに、閉めたはずのドアの向こうからの微妙な音。
聞き耳を立てるつもりはなかった。
覗くつもりもなかった。
ただ、違和感だけが残る。
(具合悪い?)
しばらく、そのまま様子を見る。
時計の針がしばらく進んでも、寝室から戻ってくる気配はない。
代わりに、家の中の空気が、少しずつ変わっていくのを感じる。
甘さと切迫したような、熱。
鷹臣はゆっくりと椅子から立ち上がった。
(……ヒートだったら…放っておけない)
足音は立てないで慎重に歩き、寝室の前で、足を止めた。
ドアは、やはり少しだけ開いていた。
その隙間から、かすかに聞こえる水音。
それに混じる、抑えきれなかった小さな吐息がくぐもっている。
鷹臣は、すぐには声をかけなかった。
(……ユイ)
名前を呼べば、きっと止まる。
でも、その前に、今の状態を理解する必要があった。
ほんのわずかな時間。
(あー…これは…)
そして、意を決めて声をかける。
「……ユイ」
名前を呼ばれた瞬間、向こうの気配がはっきりと固まった。
「……わっ、た、たかおみさん……?」
ドアの隙間から覗いたユイの顔は、赤く、焦っていて、どう見ても取り繕える状態ではなかった。
沈黙が落ちる。
「……ぁ、ゆい、……」
ユイの声が震える。
鷹臣は一度、深く息を吸った。
「…入っていい?」
怒っているわけがない、それは本当だった。
ただ、どう向き合うかを、選ばなければならない。
一歩、距離を詰める。
「……今のユイ、かなり、つらくない?」
責める声じゃない。
状況を確認する声だった。
言いながらドアを開けると、そこにいたユイは、意味を全部は理解していない顔をする。
鷹臣のベッドの上で、無防備な姿で何をしていたかを物語っている。
そして、本能的に逃げ場がないことだけは分かってい。
「……ひとりで、えっちした……」
小さな告白。
鷹臣の胸の奥が、軋む。
守りたい。
触れたら、もう止まれない。
その二つが、同時に存在している。
「……ねえ」
鷹臣が言葉を探している間に、ユイが不安そうに顔を上げた。
「……いっしょに、えっち……だめ……?」
それはお願いでも、誘惑でもなかった。
ただ、今ここにある感情を正直に見せただけだった。
鷹臣は、ユイの頭にそっと手を置いた。
「……いっぱい我慢したもんね、」
低く、静かな声。
ユイは潤んだ瞳のまま微笑んだ。
――
そのままユイは鷹臣に押し倒され、仰向けになった。
鷹臣がゴムの包みを開けようとしたとき、ユイがそれに手を伸ばす。
「…だめ、いらない」
鷹臣は短く息を吐き、困ったように笑った。
再びベッド脇から、今度はゴムの箱を手に取るとそれもユイに奪われてしまう。
「それも、だめ」
「…ユイ?」
ユイは両手にゴムの箱と包を持ったまま、首を横に振った。
どうしようもないことを、どうにかしたい時のユイがそこにはいた。
「うー…」
鷹臣はゆっくり呼吸を整える。
「確認するけど。
それ、どういう意味か、わかる?」
難しい質問をしたつもりもないし、きっと同じことを考えてるのは分かっていた。
しかし、しっかりと確認をしなければ、自分も過去のαと同じになってしまう気がした。
「そんなこと、ゆい、しってる…。
たかおみさんのじゃなきゃ、だめだもん」
「…わかったよ、」
鷹臣はユイの手から、ゴムの箱と包みを奪いベッド脇に戻した。
深く口付けをして、首筋に噛み付く。
αとしての本能が少しだけ匂いとなって立ち上った。
――
「は、ゃっ…、も、だめぇ、」
ユイは四つん這いになり、高く尻を持ち上げながら身体をよじらせた。
「だめ、たくさん気持ちよくなろう?」
鷹臣はユイの項に噛み付いたまま離れない。
かれこれ一時間近く、ユイの前と後ろを交互に愛撫した。
水音が響き、ベッドシーツにはユイの先走りがしみになっている。
くちゅ、ちゃぷ、
「あ、あ、ほしいのに…たかおみさんの、ほしい、」
ユイは涙を浮かべシーツを何度も握り直した。
カラーは外されて、床に落ちたまま。
尻の割れ目に沿うように、鷹臣は自身の昂ぶりをぬるぬると押し付けた。
すぐ挿れてもよかったが、ほんの少しだけ焦らしてユイの求める姿を見たいと思ってしまった。
「もうちょっと、ここ、触っていい?」
項から離れると、今度は耳元で囁いた。
指が三本、四本と後ろを出入りしたその時――
「んぁっ…!」
中のしこりを鷹臣の長い指が掠めると、ユイは身体を仰け反らせ、反射的に大きな声を出した。
「気持ちいい?」
今までの優しさがないわけではないが、いつもと違う鷹臣の態度に、ユイの頭の中では本能がぐるぐると渦巻いた。
(ほしい、ほしい、たかおみさんの…)
何度かしこりを弄られ、ユイの昂ぶりからは精液の他に温かい液体がゆっくりと放出された。
「あ、あ、たかおみさん、ゆい…おしっこ…おしっこでてる…」
ユイはベッドを濡らした液体を見て、半ば放心状態で呟いた。
(やりすぎた、)
「大丈夫、これ、潮だから」
言いつつも鷹臣自身、余裕がなくなってきた。
「しお?…なに?…へん、」
「ごめん、挿れるね」
説明する余裕もないまま、鷹臣はユイの後ろに自身の昂ぶりを沈めた。
ギシ、ギシとベッドの軋む音と身体が密着する音が部屋に落ちる。
「っ…ユイ、ユイ…」
ユイは四つん這いになったまま、必死に鷹臣の律動を受け入れる。
「ん、ん、たかおみさ…、あっ、ぁ…」
鷹臣は再びユイの項に唇を這わせ、甘噛みしたり鼻先をすり寄せたりして全身を愛撫した。
ユイが何度も果てて、もう力が抜けきった頃。
「ユイ、全部出すね…」
「ん、んっ…たかおみさん、だして、ぜんぶ…ゆいのなか…」
鷹臣は動きを大きく早め、ユイの中にたっぷりと愛情を注いだ。
――
二人は呼吸を整え、寝室に敷いた布団の中で身体を寄せ合った。
「…シーツ、びしゃびしゃだね?ゆいから、しおでたの?」
ユイはまだ顔を赤らめたまま、鷹臣の胸に額をすり寄せた。
「あー、うん…多分、ユイの思ってるしおとはちょっと違うかな…字が違って、」
(俺は何を今説明しようとして…)
言いかけて咳払いをひとつした。
「シーツの洗濯も、しおの話も、また明日」
そう言って、返事が返ってこないことに気付く。
甘く残る匂いに包まれながら、鷹臣はゆっくりと息を吐いた。
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