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番外編
番外編4「アイドル衣装の正しい?使い方」1話
※このお話は【番外編3「水科家の人々」】のすぐ後の出来事です。
※大半がR18シーンだと思われます。ご注意ください。
「美味しかったなぁ。ほんと静恵さん、お料理上手だね」
「うん。あの人プロだから」
キッチンで二人分の食器を洗いながら、依里佳が満足げに言う。彼女が洗ったものを篤樹が受け取り、布巾で拭いた後、食器棚へとしまう。
水科家から帰る時に持たされた段ボール箱の一つにはスチロール製のクーラーボックスが入っていた。その中には、ロールキャベツ、カニクリームコロッケ、金目鯛の煮つけ、ローストビーフ、各種惣菜、ちらし寿司などが入っていた。篤樹と依里佳はその中から煮つけとちらし寿司、惣菜の中からは茄子の揚げ浸しと筑前煮を選び、夕食にした。
水科家の家政婦である静恵は、元々割烹で働いていた経験を持っており、その腕を見込んで水科家へ引き抜かれたのだから、彼女が作ったものは当然プロの味だ。
どれもこれもが店でいただくような美味しさで、二人の舌を満足させた。
「私、静恵さんにお料理習おうかなぁ」
一通り洗い終えた依里佳が、ダスターでシンク周りの水気を拭う。
「依里佳の料理も美味しいよ」
「あはは……静恵さんに比べたら見劣りしちゃうし、味も劣っちゃうなぁ」
さすがにプロには敵わないと、依里佳は苦笑する。
ここのところ薄っすらと思っていたことだが、いくら自分はB級グルメが好きだとは言っても、これから篤樹とつきあっていき、もし結婚することになったとしたら――誰に出しても恥ずかしくないような料理のレパートリーを増やしておいた方がいいのだろうな、と。今日、水科家へ赴き、改めてそう思った。
その時、後ろから彼女のウェストに篤樹の腕が回った。同時に、耳元に吐息混じりの声が吹き込まれる。
「……俺は依里佳が作るオムライスとか大好きだけどな。キャベツ入ってるやつ。ソースも三種類作ってくれたし、すごく美味しかった」
少し前に蓮見家でオムライスを振る舞った時、上にかけるソースを、デミグラス、ホワイト、トマトと、三種類用意した。それを篤樹はひどく喜んで食していた。
「あ、ありがと……」
「今日、泊まってく?」
頬や耳にくちびるを押し当てながら、篤樹が尋ねる。
「ん……で、も……」
「陽子さんなら俺がメッセージしておいたよ? 大丈夫だって」
「え、早っ」
いつの間に陽子と連絡を取ったのか……篤樹の根回しのよさに驚く依里佳。
「……もう一ヶ月近く依里佳に触ってない」
篤樹が腕に力を入れ、ぼそりと吐き出す。少しばかり拗ねているようだ。
触っていない、というのは、暗にセックスをしていないということを指している。依里佳にもそれはちゃんと伝わっていた。
彼らが正式につきあい始めてから、かれこれ一ヶ月近くが過ぎようとしている。その間に二人が身体を重ねたのは実は一度だけ――そう、依里佳が初めてこの部屋に来た日だけだ。
平日はお盆前ということもあり残業することが多く、とても二人睦み合う時間や体力などなかった。週末は週末で、依里佳が親戚の告別式のために地方に行ってしまったり、月事の最中で体調がいまいちだったり、また篤樹の都合が悪かったりなど、タイミングが合わずデートすらままならなかったのだ。
「そ……だね」
「そろそろ禁断症状起きそう……だから、抱かせて?」
「ん……」
甘ったるく囁かれたおねだりの言葉に、依里佳は頬を染めながらこくん、とうなずいた。
「じゃあ俺、お風呂洗うついでに先に入って来るから」
名残惜しさを感じさせることなくあっさりと依里佳を解き放ち、篤樹は浴室に向かった。
「早……」
依里佳は彼のフットワークの軽さに感心しながら、リビングのソファへ腰を下ろした。バッグからスマートフォンを取り出すと、何件かメッセージが届いていた。
【依里佳ちゃん、今日はお疲れ様。エリカ様、ほんと可愛かったよ~。今日篤樹くんとこ泊まるんでしょ?いちゃいちゃするのもいいけど、ちゃんと寝るんだよ?篤樹くんにもちゃんと言っておいたからね。あと、俊輔がまた泣きそうになってたけど、気にしないでいいからね】
これは陽子からだ。最後の一文に、乾いた笑いが漏れた。
【依里佳お姉様!今日はありがとうございました!さっきPCで写真を見てたんですが、ほんとにどれもこれもステキで♪どれをアルバムに入れようか迷っちゃいます。あたしが腕によりをかけてアルバムを作りますので、楽しみにしていてくださいね!もちろん、業者任せじゃなく、あたしが手ずから製作しますからね♪】
これはもちろん、咲から。どんなアルバムが出来るのか……とても楽しみ……そして少しだけ不安だ。
【やっほ~!水科家はどうだった?やっぱ大きかった?】
【ちゃんと気に入られた?依里佳なら大丈夫だと思うけど】
ミッシェルと美沙がグループメッセージを送ってきていた。水科家へ招かれていることを少しだけ話しておいたのだ。
依里佳はニコニコしながらリプライを返していく。それに対してまた返事が来て――何度目かの送信が終わった頃、
「依里佳、お風呂空いたよ」
篤樹が髪を拭きながらキッチンへ入り、冷蔵庫を開けた。
「あ、はい」
スマートフォンをしまった依里佳は、浴室へ向かおうとリビングのドアノブに手をかけた瞬間、ふと思い出し、
「あ、篤樹、この間買っておいた私の着替え、どこにあるの?」
と、キッチンに向かって声をかけた。
前回や今回のように、用意もなく泊まることが今後もあるかと思い、先日二人で出かけた時に、篤樹の部屋に置いておく部屋着や下着を買っておいたのだ。
それらの場所を尋ねたのだが、篤樹はペットボトルの水を飲みながら依里佳の視界に入って来て、
「タオルと一緒に置いておくから入ってていいよ」
ニッコリと笑った。
「うん、分かった」
篤樹の言葉を何一つ疑うことなく、依里佳は脱衣室へと入って行った――彼の思惑など、微塵も気づかずに。
※大半がR18シーンだと思われます。ご注意ください。
「美味しかったなぁ。ほんと静恵さん、お料理上手だね」
「うん。あの人プロだから」
キッチンで二人分の食器を洗いながら、依里佳が満足げに言う。彼女が洗ったものを篤樹が受け取り、布巾で拭いた後、食器棚へとしまう。
水科家から帰る時に持たされた段ボール箱の一つにはスチロール製のクーラーボックスが入っていた。その中には、ロールキャベツ、カニクリームコロッケ、金目鯛の煮つけ、ローストビーフ、各種惣菜、ちらし寿司などが入っていた。篤樹と依里佳はその中から煮つけとちらし寿司、惣菜の中からは茄子の揚げ浸しと筑前煮を選び、夕食にした。
水科家の家政婦である静恵は、元々割烹で働いていた経験を持っており、その腕を見込んで水科家へ引き抜かれたのだから、彼女が作ったものは当然プロの味だ。
どれもこれもが店でいただくような美味しさで、二人の舌を満足させた。
「私、静恵さんにお料理習おうかなぁ」
一通り洗い終えた依里佳が、ダスターでシンク周りの水気を拭う。
「依里佳の料理も美味しいよ」
「あはは……静恵さんに比べたら見劣りしちゃうし、味も劣っちゃうなぁ」
さすがにプロには敵わないと、依里佳は苦笑する。
ここのところ薄っすらと思っていたことだが、いくら自分はB級グルメが好きだとは言っても、これから篤樹とつきあっていき、もし結婚することになったとしたら――誰に出しても恥ずかしくないような料理のレパートリーを増やしておいた方がいいのだろうな、と。今日、水科家へ赴き、改めてそう思った。
その時、後ろから彼女のウェストに篤樹の腕が回った。同時に、耳元に吐息混じりの声が吹き込まれる。
「……俺は依里佳が作るオムライスとか大好きだけどな。キャベツ入ってるやつ。ソースも三種類作ってくれたし、すごく美味しかった」
少し前に蓮見家でオムライスを振る舞った時、上にかけるソースを、デミグラス、ホワイト、トマトと、三種類用意した。それを篤樹はひどく喜んで食していた。
「あ、ありがと……」
「今日、泊まってく?」
頬や耳にくちびるを押し当てながら、篤樹が尋ねる。
「ん……で、も……」
「陽子さんなら俺がメッセージしておいたよ? 大丈夫だって」
「え、早っ」
いつの間に陽子と連絡を取ったのか……篤樹の根回しのよさに驚く依里佳。
「……もう一ヶ月近く依里佳に触ってない」
篤樹が腕に力を入れ、ぼそりと吐き出す。少しばかり拗ねているようだ。
触っていない、というのは、暗にセックスをしていないということを指している。依里佳にもそれはちゃんと伝わっていた。
彼らが正式につきあい始めてから、かれこれ一ヶ月近くが過ぎようとしている。その間に二人が身体を重ねたのは実は一度だけ――そう、依里佳が初めてこの部屋に来た日だけだ。
平日はお盆前ということもあり残業することが多く、とても二人睦み合う時間や体力などなかった。週末は週末で、依里佳が親戚の告別式のために地方に行ってしまったり、月事の最中で体調がいまいちだったり、また篤樹の都合が悪かったりなど、タイミングが合わずデートすらままならなかったのだ。
「そ……だね」
「そろそろ禁断症状起きそう……だから、抱かせて?」
「ん……」
甘ったるく囁かれたおねだりの言葉に、依里佳は頬を染めながらこくん、とうなずいた。
「じゃあ俺、お風呂洗うついでに先に入って来るから」
名残惜しさを感じさせることなくあっさりと依里佳を解き放ち、篤樹は浴室に向かった。
「早……」
依里佳は彼のフットワークの軽さに感心しながら、リビングのソファへ腰を下ろした。バッグからスマートフォンを取り出すと、何件かメッセージが届いていた。
【依里佳ちゃん、今日はお疲れ様。エリカ様、ほんと可愛かったよ~。今日篤樹くんとこ泊まるんでしょ?いちゃいちゃするのもいいけど、ちゃんと寝るんだよ?篤樹くんにもちゃんと言っておいたからね。あと、俊輔がまた泣きそうになってたけど、気にしないでいいからね】
これは陽子からだ。最後の一文に、乾いた笑いが漏れた。
【依里佳お姉様!今日はありがとうございました!さっきPCで写真を見てたんですが、ほんとにどれもこれもステキで♪どれをアルバムに入れようか迷っちゃいます。あたしが腕によりをかけてアルバムを作りますので、楽しみにしていてくださいね!もちろん、業者任せじゃなく、あたしが手ずから製作しますからね♪】
これはもちろん、咲から。どんなアルバムが出来るのか……とても楽しみ……そして少しだけ不安だ。
【やっほ~!水科家はどうだった?やっぱ大きかった?】
【ちゃんと気に入られた?依里佳なら大丈夫だと思うけど】
ミッシェルと美沙がグループメッセージを送ってきていた。水科家へ招かれていることを少しだけ話しておいたのだ。
依里佳はニコニコしながらリプライを返していく。それに対してまた返事が来て――何度目かの送信が終わった頃、
「依里佳、お風呂空いたよ」
篤樹が髪を拭きながらキッチンへ入り、冷蔵庫を開けた。
「あ、はい」
スマートフォンをしまった依里佳は、浴室へ向かおうとリビングのドアノブに手をかけた瞬間、ふと思い出し、
「あ、篤樹、この間買っておいた私の着替え、どこにあるの?」
と、キッチンに向かって声をかけた。
前回や今回のように、用意もなく泊まることが今後もあるかと思い、先日二人で出かけた時に、篤樹の部屋に置いておく部屋着や下着を買っておいたのだ。
それらの場所を尋ねたのだが、篤樹はペットボトルの水を飲みながら依里佳の視界に入って来て、
「タオルと一緒に置いておくから入ってていいよ」
ニッコリと笑った。
「うん、分かった」
篤樹の言葉を何一つ疑うことなく、依里佳は脱衣室へと入って行った――彼の思惑など、微塵も気づかずに。
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