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番外編
番外編5「見られてますよ!」(「甘恋」クロスオーバー)
※これは「ホン恋」と「甘い恋をいただきます。」のクロスオーバー?SSです。
※どちらも読まれた方でないと楽しめないかと思います。
※「甘恋」28話での出来事を「ホン恋」キャラ視点でお送りしています。
***
「お兄ちゃん、最近ますます翔のこと溺愛してるよね、陽子ちゃん」
「ほらあの子、ここのところ篤樹くんにべったりだから。俊輔ったら悔しがっちゃって。最近なんて『まだ小学校に上がってないけど、イグアナ買ってやろうかな……』なーんて言っちゃってるのよ? 子供のご機嫌取るために約束破るなんてダメよ、って釘を刺しておいたけど」
たまたま仕事が暇になった俊輔が、半日休暇を取って翔を幼稚園の放課後から遊びへと連れて行ったとある平日のことだ。依里佳も少し早く退社し、義理の姉である陽子ともに買い物に出た後、自宅からさほど離れていないイタリア料理店で早めの夕食を取っていた。
「お兄ちゃんに内緒で女の子用のベビー服買うのも一苦労だね。今日買ったやつも、帰ったらこっそりクローゼットのダンボールに隠しておくんでしょ?」
「でも、それで俊輔の驚いて喜んだ顔を見られるなら安いものよ」
「そっか」
陽子のお腹にいる赤ん坊の性別はすでに女の子だと判明している。しかしそれを知るのはこの二人だけで、俊輔と翔にはまだ内緒にしているのだ。だから生まれて来る子のためのものは、主に彼女たちが用意していた。
「――ねぇねぇ依里佳ちゃん、あれ、花菜実先生じゃない?」
突然、陽子が店の入口を指差した。指し示された方向に依里佳は目をやる。
「あ、ほんとだ。……っていうか、一緒にいるの幸希さんだよ、陽子ちゃん」
店の入口にあるテイクアウトコーナーに、翔の担任である織田花菜実が立っており、その隣には長身の男性が寄り添っていた。依里佳の恋人・篤樹の兄である水科幸希だ。
「やっぱりあの二人、つきあってるのよ。この間、俊輔も駅前であの二人と副園長先生が一緒にいるの見た、って言ってたもの。しかも幸希くんが花菜実先生を引っ張って行ったんだって」
「幸希さんからの翔の誕生日プレゼントも、選んでくれたの花菜実先生だったしね」
陽子と依里佳はお互い顔を見合わせ、うんうんとうなずき合う。
「それにしても身長差カップルねぇ。三十センチは離れてるわね、あれ。花菜実先生がますます幼く見えるわ」
「私……幸希さんとは何回か会ってるけど、あんな風に笑ってる……っていうかデレデレした顔、見たことない」
「人目もはばからずいちゃいちゃしちゃって、もう、こっちが恥ずかしくなっちゃうじゃない。でもじっくり見てやるわ」
陽子が目を細めて二人を凝視する。
「陽子ちゃんってば……。だけどあれ、いちゃいちゃしてる、というよりは一方的にべったりされてるよね、花菜実先生が」
「あら、ほっぺにチュウしてるわ。やるぅ」
「あーあ……花菜実先生怒ってる。『園の保護者に見られるからやめて』みたいなこと言ってるっぽいよ」
くちびるの動きからそう読んだのだろう、依里佳がニヤニヤしながら解説している。
「あらら残念! もう見られてるわよ。……まぁ、私たちは噂流したりしないから安心してね、花菜実先生!」
「そんな小さな声じゃ聞こえないから、陽子ちゃん。……っていうか幸希さん、完全に花菜実先生にベタ惚れ、って感じだねぇ……なるほど~」
そういうことだったのか、と、依里佳は合点がいったように再びうなずいた。
「分かるわ。彼、きっと大人っぽい美人には微塵も魅力を感じないタイプね。花菜実先生みたいな笑顔の可愛らしい真面目な子が好きなのよ」
「それにしてもあの幸希さんの姿は貴重すぎる……! 後で絶対、篤樹に報告しよう♪」
美女二人は小声できゃっきゃ言いながら数メートル先で繰り広げられている光景を心底楽しんでいた。当然ながら、話のネタにされている当人たちはそんなことには気づいてもいない。
この数週間後、このカップルの関係にヒビが入りかねない事件が起こり、依里佳たちも巻き込まれることになるのだが、幸希の活躍で大した被害もなく解決した。
むしろ、その後たびたび兄弟間で繰り広げられた、
『兄と弟、どちらが先に結婚式を挙げるか』
『式場は兄弟で別な場所にするべきか』
『招待客、特に親族関係はどこまで呼ぶか』
など、双方の結婚に関する喧々諤々の応酬の方が、依里佳と花菜実を悩ませることになろうとは、この時の彼女たちは想像もしていなかった。
※どちらも読まれた方でないと楽しめないかと思います。
※「甘恋」28話での出来事を「ホン恋」キャラ視点でお送りしています。
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「お兄ちゃん、最近ますます翔のこと溺愛してるよね、陽子ちゃん」
「ほらあの子、ここのところ篤樹くんにべったりだから。俊輔ったら悔しがっちゃって。最近なんて『まだ小学校に上がってないけど、イグアナ買ってやろうかな……』なーんて言っちゃってるのよ? 子供のご機嫌取るために約束破るなんてダメよ、って釘を刺しておいたけど」
たまたま仕事が暇になった俊輔が、半日休暇を取って翔を幼稚園の放課後から遊びへと連れて行ったとある平日のことだ。依里佳も少し早く退社し、義理の姉である陽子ともに買い物に出た後、自宅からさほど離れていないイタリア料理店で早めの夕食を取っていた。
「お兄ちゃんに内緒で女の子用のベビー服買うのも一苦労だね。今日買ったやつも、帰ったらこっそりクローゼットのダンボールに隠しておくんでしょ?」
「でも、それで俊輔の驚いて喜んだ顔を見られるなら安いものよ」
「そっか」
陽子のお腹にいる赤ん坊の性別はすでに女の子だと判明している。しかしそれを知るのはこの二人だけで、俊輔と翔にはまだ内緒にしているのだ。だから生まれて来る子のためのものは、主に彼女たちが用意していた。
「――ねぇねぇ依里佳ちゃん、あれ、花菜実先生じゃない?」
突然、陽子が店の入口を指差した。指し示された方向に依里佳は目をやる。
「あ、ほんとだ。……っていうか、一緒にいるの幸希さんだよ、陽子ちゃん」
店の入口にあるテイクアウトコーナーに、翔の担任である織田花菜実が立っており、その隣には長身の男性が寄り添っていた。依里佳の恋人・篤樹の兄である水科幸希だ。
「やっぱりあの二人、つきあってるのよ。この間、俊輔も駅前であの二人と副園長先生が一緒にいるの見た、って言ってたもの。しかも幸希くんが花菜実先生を引っ張って行ったんだって」
「幸希さんからの翔の誕生日プレゼントも、選んでくれたの花菜実先生だったしね」
陽子と依里佳はお互い顔を見合わせ、うんうんとうなずき合う。
「それにしても身長差カップルねぇ。三十センチは離れてるわね、あれ。花菜実先生がますます幼く見えるわ」
「私……幸希さんとは何回か会ってるけど、あんな風に笑ってる……っていうかデレデレした顔、見たことない」
「人目もはばからずいちゃいちゃしちゃって、もう、こっちが恥ずかしくなっちゃうじゃない。でもじっくり見てやるわ」
陽子が目を細めて二人を凝視する。
「陽子ちゃんってば……。だけどあれ、いちゃいちゃしてる、というよりは一方的にべったりされてるよね、花菜実先生が」
「あら、ほっぺにチュウしてるわ。やるぅ」
「あーあ……花菜実先生怒ってる。『園の保護者に見られるからやめて』みたいなこと言ってるっぽいよ」
くちびるの動きからそう読んだのだろう、依里佳がニヤニヤしながら解説している。
「あらら残念! もう見られてるわよ。……まぁ、私たちは噂流したりしないから安心してね、花菜実先生!」
「そんな小さな声じゃ聞こえないから、陽子ちゃん。……っていうか幸希さん、完全に花菜実先生にベタ惚れ、って感じだねぇ……なるほど~」
そういうことだったのか、と、依里佳は合点がいったように再びうなずいた。
「分かるわ。彼、きっと大人っぽい美人には微塵も魅力を感じないタイプね。花菜実先生みたいな笑顔の可愛らしい真面目な子が好きなのよ」
「それにしてもあの幸希さんの姿は貴重すぎる……! 後で絶対、篤樹に報告しよう♪」
美女二人は小声できゃっきゃ言いながら数メートル先で繰り広げられている光景を心底楽しんでいた。当然ながら、話のネタにされている当人たちはそんなことには気づいてもいない。
この数週間後、このカップルの関係にヒビが入りかねない事件が起こり、依里佳たちも巻き込まれることになるのだが、幸希の活躍で大した被害もなく解決した。
むしろ、その後たびたび兄弟間で繰り広げられた、
『兄と弟、どちらが先に結婚式を挙げるか』
『式場は兄弟で別な場所にするべきか』
『招待客、特に親族関係はどこまで呼ぶか』
など、双方の結婚に関する喧々諤々の応酬の方が、依里佳と花菜実を悩ませることになろうとは、この時の彼女たちは想像もしていなかった。
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あけましておめでとうございます。
書籍化決定ですか!webで読めなくなるのは寂しいけど、更に糖度高い二人に再会できると思うとワクワクします(^∧^)今でも十分糖度高いと思うけど、ナニをするのかなぁ~o(^o^)o
まだ完結されてないけど、「甘恋」と併せてガーッと一気読みしたいですね(^。^;)
寒い日が続きますが、お身体に気をつけて執筆頑張ってください。更新、書籍化決定楽しみにしてます!
♪つきこさま
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
書籍化の件でコメントありがとうございます!
ウェブで読めなくなってしまいそうで、申し訳なく思います。
現在、水面下であれやこれやさせていただいておりますので、ちゃんと決まればお知らせ出来るかと思います。
もし書籍でのおめもじが叶えば、ウェブ版よりも糖度が上がりますことお約束しますので(*´艸`*)
その際にはお手に取っていただけると嬉しく思います。
また現在、書籍化関連を優先しているため「甘恋」の更新が滞っていますこと、お詫びいたします。落ち着けば必ず更新いたしますし、完結させますので、その時にはまたよろしくお願いいたします。
私の健康面にまでお気遣いいただき、ありがとうございます!
更新、書籍化、ともに頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いいたします!
番外編バレンタインで12年たっているのに、なぜ二人に子供がいないのーーーー。劇甘パパ・ママの様子が読みたいです
♪sayuさま
コメントありがとうございます。
バレンタイン編の依里佳と篤樹ですが、子供はいるんですよ、実は。
でもこの話はあくまでも翔と千晴がメインということで、二人の子供のことはあえて描写しませんでした。
作中でちょっと触れていますが、翔と千晴にはさらに格(いたる)という弟がいます。依里佳と篤樹の初めての子供は、この格と同じ年……という設定が私の中ではあったりします。その辺りも、機会があれば書きたいなぁなんて思っていますが、いつになるか分かりませんので、気長にお待ちいただければ幸いです。
ちなみにこの作中では、依里佳たちの子は水科家の実家に遊びに行っていると思ってください。
そんな感じです。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました(^^)
一気読みしました!面白かったです!
そうそう、番外編最後のあれ(コスプレのヤツ)…やっぱり予想した通りになりましたねぇ((ニヤニヤ
まぁ、あれですよ。愛されてますね!
狗賓様
コメントありがとうございます。
一気読みしていただけたのですか!貴重なお時間を割いてお読みくださり、嬉しいです。しかもコメントまで……。
番外編の最後……ふふふ、やっぱり、ですよねー。
愛されてますよ、それはもう!
続き書きたいと思っていますので、その時にはまたお立ち寄りくださると幸いです。
ありがとうございました♪