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022 思惑
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「ごめんごめん、たまたま知り合いとトイレで出くわしてさ」
「あら、そうだったのですか。んも~待ちくたびれましたよ~」
ぷくぅと頬を膨らませる委員長。
学校とは違う一面をここぞとばかりに見せてくる。……ずるいぞ。
「はわー、腕が疲れました~」
「俺も久しぶりのボウリングに腕がパンパンだ。いやーしかし体を動かすっていいもんだねえ」
「ですねえ!」
一階の休憩スペースで寛ぎつつ。
スコアを見せ合いながら、ゆったりするのはいいのだがさて、どこで話を切り出そうか。
「……」
「文弥君?」
「ん?」
「どうしましたか?」
「え、何が?」
「なんだか、考え事してるような、どこか心ここにあらずのような感じがしまして」
「あ、いやちょっとね」
誤魔化すようにジュースを口へ運ぶ。
分かりやすいな、我ながら。
喧騒に包まれたこの空間で、彼女に異能の話をするのはどうも……雰囲気が一致しないというか、もう少し静かな空間であれば自分も落ち着いてすらりと切り出せたかもしれない。
うーむ、駄目だ。
ただ単に理由を付けて切り出したくないだけだなこれは。
今日は楽しかった――その余韻にもう少し浸りたかったりする。
「あの、ですね。今日は私に付き合ってくれてありがとうございます」
「いえいえこちらこそ」
どうしたんだ、いきなり畏まって。
あ、何か仕掛けようとしてるのかな?
「時に文弥君」
「はいはい」
この先の展開はどうなるんだろうか。
本来は治世を含めて三人で談笑しているはずなんだが、二人きりだと彼女からの話も多少変わってくるよな。
「私達って、相性が良いと思いませんか?」
「相性?」
「そうです。私は今日、とても楽しかったです。文弥君はどうですか?」
「俺も楽しかったよ」
委員長は頬を朱に染める。
もじもじと身を揺らし、何か言い出したいけど言い出せない――そんな仕草を見せて瞬き数回。
こういう仕草は……あれだ、彼女が俺を誘惑する一つの攻撃でもある。
駄目だぞ文弥、気をしっかり持て!
「どうでしょう、お付き合いをしてみる……とか」
「お、お付き合い……?」
「ま、まあ、所謂彼氏彼女の関係? カップル? 恋仲? そ、そんな、感じの、でして!」
そういう手を使ってくるか君は。
けどそうだよなあ、二人きりになれたんだしこれは彼女にとって好機。
当然その言葉に真意は無く、特異を持っていると思われる人物の中で一番濃厚なのが俺だから――距離を縮めてしまいたいのだろう。
ラトタタとはもう連絡はついたか? いや、まだついてないから保険も兼ねてこの手を使ったんだろうな。
どうであれ……時間の問題には変わりはない。どう答えるか。
「あっ……。その、早まりすぎたでしょうか。すみません……」
「謝らなくても……」
「という事は!?」
身を乗り出す委員長。
そのぐいぐい来る迫力に押し倒されそうになる。
「……オーケーってわけじゃなくて」
中々言葉が喉からすんなりとは出ていかない。
彼女は演技をしている、それは承知の上なのだが心臓はまるで別物のようにさっきから鼓動が跳ね上がってしまっている。
「ば、場所が悪かったですか?」
「そういうのでもなくて……」
「う~……。その反応の悪さはもう、答えが分かっちゃいます……」
きゅっとスカートの裾を掴み、ゆっくりと椅子に深く凭れる。
ここいらが、切り出すには良いタイミングかもしれない。
「君が求めているのは……」
意を決して俺は、言葉を喉から引きずり出した。
「――俺じゃなくて、特異だろう?」
その時。
先ほどまで落ち着きの無かった委員長は、ぴたりと動きを止めた。
笑顔は固まり、やや目を見開いていた。
喧騒の中、テーブルを挟んだ俺達二人の空間だけがまるで切り取られたかのように、静かな、そして凍てついた空気へと変貌した。
「あれりゃ」
一言そう呟き、彼女の笑顔は消えた。
「存じておりましたか」
「どこまで知ってるか気になってるだろうけど、ラトタタも、君の正体も、異能教も全部知ってるよ」
「……どうやら、貴方を甘く見過ぎていたようですね」
肩をすくめて彼女は天井を仰いだ。
物語はこれで大きく変わる。
本来訪れるであろう展開はもはやなぞる事などできなくなった、ここからはアドリブってやつだ。
「場所、変えましょう」
「そうしよっか」
ここで話すには些か雰囲気が合わない。
俺達は外に出て、一先ずは先行する委員長についていく形となった。
治世はちゃんと見守ってくれているかな。
どこに向かっているのだろう。街外れではないが……ラトタタに連絡をしつつどこか話が出来る場所を探している?
……そうでもないか、待ち合わせをしたあの広場に戻るつもり、かな。
「あら、そうだったのですか。んも~待ちくたびれましたよ~」
ぷくぅと頬を膨らませる委員長。
学校とは違う一面をここぞとばかりに見せてくる。……ずるいぞ。
「はわー、腕が疲れました~」
「俺も久しぶりのボウリングに腕がパンパンだ。いやーしかし体を動かすっていいもんだねえ」
「ですねえ!」
一階の休憩スペースで寛ぎつつ。
スコアを見せ合いながら、ゆったりするのはいいのだがさて、どこで話を切り出そうか。
「……」
「文弥君?」
「ん?」
「どうしましたか?」
「え、何が?」
「なんだか、考え事してるような、どこか心ここにあらずのような感じがしまして」
「あ、いやちょっとね」
誤魔化すようにジュースを口へ運ぶ。
分かりやすいな、我ながら。
喧騒に包まれたこの空間で、彼女に異能の話をするのはどうも……雰囲気が一致しないというか、もう少し静かな空間であれば自分も落ち着いてすらりと切り出せたかもしれない。
うーむ、駄目だ。
ただ単に理由を付けて切り出したくないだけだなこれは。
今日は楽しかった――その余韻にもう少し浸りたかったりする。
「あの、ですね。今日は私に付き合ってくれてありがとうございます」
「いえいえこちらこそ」
どうしたんだ、いきなり畏まって。
あ、何か仕掛けようとしてるのかな?
「時に文弥君」
「はいはい」
この先の展開はどうなるんだろうか。
本来は治世を含めて三人で談笑しているはずなんだが、二人きりだと彼女からの話も多少変わってくるよな。
「私達って、相性が良いと思いませんか?」
「相性?」
「そうです。私は今日、とても楽しかったです。文弥君はどうですか?」
「俺も楽しかったよ」
委員長は頬を朱に染める。
もじもじと身を揺らし、何か言い出したいけど言い出せない――そんな仕草を見せて瞬き数回。
こういう仕草は……あれだ、彼女が俺を誘惑する一つの攻撃でもある。
駄目だぞ文弥、気をしっかり持て!
「どうでしょう、お付き合いをしてみる……とか」
「お、お付き合い……?」
「ま、まあ、所謂彼氏彼女の関係? カップル? 恋仲? そ、そんな、感じの、でして!」
そういう手を使ってくるか君は。
けどそうだよなあ、二人きりになれたんだしこれは彼女にとって好機。
当然その言葉に真意は無く、特異を持っていると思われる人物の中で一番濃厚なのが俺だから――距離を縮めてしまいたいのだろう。
ラトタタとはもう連絡はついたか? いや、まだついてないから保険も兼ねてこの手を使ったんだろうな。
どうであれ……時間の問題には変わりはない。どう答えるか。
「あっ……。その、早まりすぎたでしょうか。すみません……」
「謝らなくても……」
「という事は!?」
身を乗り出す委員長。
そのぐいぐい来る迫力に押し倒されそうになる。
「……オーケーってわけじゃなくて」
中々言葉が喉からすんなりとは出ていかない。
彼女は演技をしている、それは承知の上なのだが心臓はまるで別物のようにさっきから鼓動が跳ね上がってしまっている。
「ば、場所が悪かったですか?」
「そういうのでもなくて……」
「う~……。その反応の悪さはもう、答えが分かっちゃいます……」
きゅっとスカートの裾を掴み、ゆっくりと椅子に深く凭れる。
ここいらが、切り出すには良いタイミングかもしれない。
「君が求めているのは……」
意を決して俺は、言葉を喉から引きずり出した。
「――俺じゃなくて、特異だろう?」
その時。
先ほどまで落ち着きの無かった委員長は、ぴたりと動きを止めた。
笑顔は固まり、やや目を見開いていた。
喧騒の中、テーブルを挟んだ俺達二人の空間だけがまるで切り取られたかのように、静かな、そして凍てついた空気へと変貌した。
「あれりゃ」
一言そう呟き、彼女の笑顔は消えた。
「存じておりましたか」
「どこまで知ってるか気になってるだろうけど、ラトタタも、君の正体も、異能教も全部知ってるよ」
「……どうやら、貴方を甘く見過ぎていたようですね」
肩をすくめて彼女は天井を仰いだ。
物語はこれで大きく変わる。
本来訪れるであろう展開はもはやなぞる事などできなくなった、ここからはアドリブってやつだ。
「場所、変えましょう」
「そうしよっか」
ここで話すには些か雰囲気が合わない。
俺達は外に出て、一先ずは先行する委員長についていく形となった。
治世はちゃんと見守ってくれているかな。
どこに向かっているのだろう。街外れではないが……ラトタタに連絡をしつつどこか話が出来る場所を探している?
……そうでもないか、待ち合わせをしたあの広場に戻るつもり、かな。
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