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第二章
karte.014 弟子入り?
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「――モブさんはこれからかい?」
「おうよ、準備ができたら行ってくるぜ」
「気をつけてな、モブさん毎回碌な目に合わないし」
モブさんと話をしてる間にルォウ達が俺の視界から消えていた。
「……あいつら、どこ行った?」
「あの子らか? 奥の治療士課に行ったのは見えたが」
「治療士課に? そっか、ありがとう。ちょっと行ってくるよ」
嫌な予感しかしない。
治療士課に行ってみるや、ルォウとレイコを発見。
二人とも笑顔で、レイコはなにやら用紙を持っていた。
「何してんの?」
「治療士、仮登録完了」
仮登録を済ませると貰える認識票もつけてやがる。
……本当に仮登録は済ませたようだ。
「ほう?」
「試験は後日、簡単な筆記で、合格したら本登録」
「知ってる」
もう少し考えてから行動に移ってほしかった。
にしても短時間で手続きを終えるとは……。これは誰かが手伝ってやらなきゃ出来んが――と俺はルォウを見た。
悪びれる様子もなくルォウは俺の視線に気づくや六つの腕全てが親指を立てていた、頭をはたきたい。
「それで、治療士になってどうすんだ?」
「師匠」
「師匠言うな」
お前のような弟子を取った覚えはない。
「……」
じっと上目遣いで見てきやがる、そんな目をしても駄目だ。
「弟子入りするなら俺よりルォウだろ」
「あたしの場合、見ても参考にならんさね」
むっ……確かにそうだな。
以前に勉強の一環でルォウが依頼をこなしてるとこを見学させてもらったが、六つの腕を使っての一人三役手術は見ていて参考にはならなかった。
腕をあと六つ足したらさぞかし勉強になるのだろうが。
「というわけで」
「どういうわけで?」
「不束者ですが」
彼女が手を差し出してくる。
握手に応じないの? とルォウがじっと俺を見てくるが、握手に応じてしまったら何か負けた気がしてならない。
「……」
沈黙。
周りの職員達も俺達に注目していやがる。
果たして彼はあの手を取るのか――といった期待の目を向けて師弟関係成立の瞬間にでも経ち会いたいようだ。
こんなの見ても何の得にならんだろうに。
レイコは握手に応じないと判断するや、強引に俺の手を引っ張って握手させた。
そして何故か拍手喝采。
一番大きな拍手はルォウだった。
「ん、んー……喜ばしいね!」
「今の一連の流れの何処に喜ばしい要素があったのか聞きたいんだが」
握手させられただけなんだけど。
あんたらと俺との温度差が非常にありすぎて反応にも困る。
「師匠」
「だから師匠言うな」
これはもう取り消しできない雰囲気だ。
いつの間にか周りの治療士達も集まって拍手を送ってやがる。
「これは私から」
「ん? なんだこれ」
「治療士登録手続き料の領収書」
「結局俺持ちか」
周囲から聞こえてくるは「師匠だしな」や「師匠なら当然の事」と、もはや俺は既にレイコの師匠にされてしまっていた。
否定しようにも多勢に無勢、ここで俺が何を言おうと皆の思考は揺るぎはしないであろう。
「モブスが依頼の現場に向かったらしいさね、見学してみる?」
「是非とも」
二人は元気に外へ駆けていった。
「……ったく」
仕方がない、少し自由にさせておくか。
予定は午後しか入っていないのだ、別に縛り付ける必要はない。
「モブさんを追って」
「かしこまりました、レイコ様」
馬車移動はいいのだが、ルォウの魔工具が場所を取ってやや窮屈だ。
「あたし専用の馬車じゃないとやっぱり狭いわねぇ」
「ルォウ専用車両、広そう」
「ふふっ、すっごく広いさね。役人の用意したこんなのとは違ってね。お偉いさんもケチってないでもっと豪華な馬車を用意してくれればいいのにねえ」
「だよね」
用意してくれたのにそんな言い草はないのではなかろうか。
「狭いならその腕取れば?」
「これはあたしの体の一部、無闇に取り外さないさね」
「寝る時は?」
「流石にその時は外すさね」
そりゃ外さんと寝心地は悪いしな。
「背中の腕はどうやってくっついてるの?」
「ん、んー……これはねぇ、あたしの魔力を注入する事で体内に埋め込んである接続器具と連結するのさ」
「痛そう」
「接続器具の埋め込みした最初の頃は痛かったけど今は大丈夫さね、レイコちゃんも今度つけてみたら? 勿論あたしのようなのじゃなくもっと簡単なものをさ」
「……むぅ」
六つの腕をわしゃわしゃと動かして誘惑してやがる。
「興味ある」
「やめとけやめとけ、つけたとしてもあんな動きできるまで練習が必要だし手術後も体に合わないと暫く痛いらしいぞ」
「痛いのは嫌、やめとく」
諦めが早いなあ。
それなのに治療士への道は何が何でも諦めない意気込みを感じるから未だにこいつの性格が読めない。
「ん、んー。同じ魔工具使いが増えて欲しかったわあ」
「ごめん」
「いいのよぅ、でも気が向いたら相談してね。いい魔工具士紹介するわ」
二人ともわいわいしているうちに今日の予定を確認しておこう。
ギルド本部は午後からだし、今からモブさんの処置を見に行くとして、ううむどれくらい時間が掛かるか。
そんなにまったりしている時間が思ったよりも無い気がしてきたぞ。
「レイコ、今日の予定は憶えてるよな?」
「心配ない」
「あらぁ、また本部に呼び出しでも?」
「暫くは検査やカウンセリングが続く。とても面倒」
それほど大事にされてるって事さ。
「ギルド本部も心配性ねぇ。好きにさせてもいいんじゃないかしら」
「十分好きにさせてる気はするんだが」
注意事項が書かれた書類に目は通したが割りと自由行動は許されているほうだった。
ただ遠方へ出向くのは控えてもらいたいようだ。
「あたしが直談判してもっと自由にさせてやるさね!」
「やめてくれ、絶対にややこしくなる」
ルォウが絡むといつも面倒になってしまう。
「おうよ、準備ができたら行ってくるぜ」
「気をつけてな、モブさん毎回碌な目に合わないし」
モブさんと話をしてる間にルォウ達が俺の視界から消えていた。
「……あいつら、どこ行った?」
「あの子らか? 奥の治療士課に行ったのは見えたが」
「治療士課に? そっか、ありがとう。ちょっと行ってくるよ」
嫌な予感しかしない。
治療士課に行ってみるや、ルォウとレイコを発見。
二人とも笑顔で、レイコはなにやら用紙を持っていた。
「何してんの?」
「治療士、仮登録完了」
仮登録を済ませると貰える認識票もつけてやがる。
……本当に仮登録は済ませたようだ。
「ほう?」
「試験は後日、簡単な筆記で、合格したら本登録」
「知ってる」
もう少し考えてから行動に移ってほしかった。
にしても短時間で手続きを終えるとは……。これは誰かが手伝ってやらなきゃ出来んが――と俺はルォウを見た。
悪びれる様子もなくルォウは俺の視線に気づくや六つの腕全てが親指を立てていた、頭をはたきたい。
「それで、治療士になってどうすんだ?」
「師匠」
「師匠言うな」
お前のような弟子を取った覚えはない。
「……」
じっと上目遣いで見てきやがる、そんな目をしても駄目だ。
「弟子入りするなら俺よりルォウだろ」
「あたしの場合、見ても参考にならんさね」
むっ……確かにそうだな。
以前に勉強の一環でルォウが依頼をこなしてるとこを見学させてもらったが、六つの腕を使っての一人三役手術は見ていて参考にはならなかった。
腕をあと六つ足したらさぞかし勉強になるのだろうが。
「というわけで」
「どういうわけで?」
「不束者ですが」
彼女が手を差し出してくる。
握手に応じないの? とルォウがじっと俺を見てくるが、握手に応じてしまったら何か負けた気がしてならない。
「……」
沈黙。
周りの職員達も俺達に注目していやがる。
果たして彼はあの手を取るのか――といった期待の目を向けて師弟関係成立の瞬間にでも経ち会いたいようだ。
こんなの見ても何の得にならんだろうに。
レイコは握手に応じないと判断するや、強引に俺の手を引っ張って握手させた。
そして何故か拍手喝采。
一番大きな拍手はルォウだった。
「ん、んー……喜ばしいね!」
「今の一連の流れの何処に喜ばしい要素があったのか聞きたいんだが」
握手させられただけなんだけど。
あんたらと俺との温度差が非常にありすぎて反応にも困る。
「師匠」
「だから師匠言うな」
これはもう取り消しできない雰囲気だ。
いつの間にか周りの治療士達も集まって拍手を送ってやがる。
「これは私から」
「ん? なんだこれ」
「治療士登録手続き料の領収書」
「結局俺持ちか」
周囲から聞こえてくるは「師匠だしな」や「師匠なら当然の事」と、もはや俺は既にレイコの師匠にされてしまっていた。
否定しようにも多勢に無勢、ここで俺が何を言おうと皆の思考は揺るぎはしないであろう。
「モブスが依頼の現場に向かったらしいさね、見学してみる?」
「是非とも」
二人は元気に外へ駆けていった。
「……ったく」
仕方がない、少し自由にさせておくか。
予定は午後しか入っていないのだ、別に縛り付ける必要はない。
「モブさんを追って」
「かしこまりました、レイコ様」
馬車移動はいいのだが、ルォウの魔工具が場所を取ってやや窮屈だ。
「あたし専用の馬車じゃないとやっぱり狭いわねぇ」
「ルォウ専用車両、広そう」
「ふふっ、すっごく広いさね。役人の用意したこんなのとは違ってね。お偉いさんもケチってないでもっと豪華な馬車を用意してくれればいいのにねえ」
「だよね」
用意してくれたのにそんな言い草はないのではなかろうか。
「狭いならその腕取れば?」
「これはあたしの体の一部、無闇に取り外さないさね」
「寝る時は?」
「流石にその時は外すさね」
そりゃ外さんと寝心地は悪いしな。
「背中の腕はどうやってくっついてるの?」
「ん、んー……これはねぇ、あたしの魔力を注入する事で体内に埋め込んである接続器具と連結するのさ」
「痛そう」
「接続器具の埋め込みした最初の頃は痛かったけど今は大丈夫さね、レイコちゃんも今度つけてみたら? 勿論あたしのようなのじゃなくもっと簡単なものをさ」
「……むぅ」
六つの腕をわしゃわしゃと動かして誘惑してやがる。
「興味ある」
「やめとけやめとけ、つけたとしてもあんな動きできるまで練習が必要だし手術後も体に合わないと暫く痛いらしいぞ」
「痛いのは嫌、やめとく」
諦めが早いなあ。
それなのに治療士への道は何が何でも諦めない意気込みを感じるから未だにこいつの性格が読めない。
「ん、んー。同じ魔工具使いが増えて欲しかったわあ」
「ごめん」
「いいのよぅ、でも気が向いたら相談してね。いい魔工具士紹介するわ」
二人ともわいわいしているうちに今日の予定を確認しておこう。
ギルド本部は午後からだし、今からモブさんの処置を見に行くとして、ううむどれくらい時間が掛かるか。
そんなにまったりしている時間が思ったよりも無い気がしてきたぞ。
「レイコ、今日の予定は憶えてるよな?」
「心配ない」
「あらぁ、また本部に呼び出しでも?」
「暫くは検査やカウンセリングが続く。とても面倒」
それほど大事にされてるって事さ。
「ギルド本部も心配性ねぇ。好きにさせてもいいんじゃないかしら」
「十分好きにさせてる気はするんだが」
注意事項が書かれた書類に目は通したが割りと自由行動は許されているほうだった。
ただ遠方へ出向くのは控えてもらいたいようだ。
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