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第二章
Karte.017 勧誘
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「失礼」
するとそこへ、まるでルォウが去ったのを確認してからのように入れ違いに男性が声を掛けてきた。
また次元病の話でも聞きにきた一人かな。
「なんだ? あんたも次元病の話を聞きに?」
「それもあるが、ああ、名刺をどうぞ」
隣にいた小柄な少女が名刺を差し出してくる。
耳が尖がっている……エルフ族か。
青い瞳に白い肌――エルフ族はどうしてこうも綺麗なのだろう。
仕事用なのか黒スーツを纏っているのはこれまた珍しい。
「えと、ジアフ・バルト……。えっ、あの?」
名刺と彼の顔を交互に見た。
おいおい、見間違いじゃないだろうな。
「ううむ見間違いではないのだよ、ルヴィン君。私が南区ギルド支部長・白金特級治療士のぅ、そう、君ぃ」
「はい、この方こそがジアフ・バルト様でございます」
なんだこのやり取り。
「……初めて見た、実在するんだな」
白金特級治療士の名前はいくつか知っている、だが一度も見た事がない人物こそが彼――ジアフ・バルトだ。
しかし治療士にしては……これから紳士達の集まりでもあるかのような服装で治療士らしさがあまり感じられない。
紳士服とシルクハット、白手袋に杖といったまるで貴族のような外見。
王都からわざわざ治療都市にやってきた変わり者の貴族……というのは噂で聞いたが。
「私は然程街には出ないからねぇ、今日も、ええっと……セイル」
「十八日ぶりでございます」
「そう、十八日ぶりに街へ来た、本来は街の外にある館で過ごしていてね。これからはもう少し街に顔を出すとしないと皆や新人の顔を忘れてしまうよ。それかどうだろう、君達が我が館に来るというのも。ははっ、機会があれば招待したいものだね」
「そりゃどうも……」
「いやぁいい場所に館を建てたものでね、夜には夜景を楽しめるのだよ。街の光と、後ろを向けばそう、あれだ、セイル」
「――夜光に照らされたクルエヴ山が展望できます」
「そう、クルエヴ山が展望できるのだよ。素晴らしい光景だ、ワインも実に美味しくなる。最近は極上のワインを仕入れてね、これがまたいい」
「ヨロヒア大陸から仕入れたワインでございます、一本七万ゼルします」
高いなおい。
俺らが一ヶ月で稼ぐ依頼報酬の半分はするのかよ。
白金特級となればそんなワインも躊躇せず購入できるほど稼げるようだな、俺もそうなりたいもんだ。
「そう、ヨロヒア大陸! あそこのワインは最高だ!」
……このままだと一方的に余計な話をされるだけで時間が経過しそうだ。
話したら止まらないタイプなのか、激流の如く流れる話はどこかでせき止めねば。
「ジアフ様、ルヴィン様が何か仰りたいご様子です」
ああ、助かった。
空気の読める方のようだ。セイルとかいったか、さぞかしできる秘書に違いない。
「ううむすまないつい喋りすぎた、いや失礼。先ほどはルォウ君とお話をされていたようだったので邪魔をすまいと優雅にコーヒーのほろ苦さと香りを楽しんでいたのだがね」
「ジアフ様、少しルヴィン様に話すタイミングというものを考えてください」
「おっと、ついつい喋り続けてしまう。どうぞルヴィン君」
セイルのおかげでようやく俺から話せそうだ。
「……白金特級のあんたから話しかけてもらって光栄でもあるんだが、用件は何かなって思って」
「実はだね、私の治療士協会に興味はないかなと思ってね。協会では研究会を何度か開いていてね、勉強になるよ。それに特定地区の依頼であれば優先的にまわす事も可能だ、魅力的だとは思わないかね?」
いきなり派閥への勧誘か。
今まではただの路傍の石としか見てなかっただろうが、これも次元病の処置のおかげかな。
「もし興味があれば研究会も覗きにくるといい」
「はあ……」
「むぅ? 他の治療士会からもお誘いがあったのかな? 食いつきがやや悪い、セイル、私の説明はどうだった? 魅力的に聞こえたか?」
「ジアフ様、そもそもルヴィン様は今まで無所属、治療士協会自体に興味があるか否かが問題かと思われます。あとジアフ様の口調はどこか傲慢そうにも聞こえるので割りとムカつきます」
「まさか秘書にここまで言われるとは想定外だが、ううむ、私の口調は直しようもないし反省しても改善はできそうにもない。どうするべきか」
「とりあえず口を閉じるのがよろしいかと」
「それでは喋れないではないか!」
「素晴らしい事だと思いますが?」
随分と辛辣な秘書だ。
白金特級治療士とその秘書とのやり取りには到底見られない。
「あの……お気持ちはありがたいのですが」
「彼女の言うとおり、治療士協会への入会自体に興味が無いと?」
「そんなとこです、すみません」
別区の派閥に入ったとなれば北区のギルドに行き来しづらくなるし。
さほど遠くないとはいえ何かと南区まで顔を出しに行くのも面倒だ。
「そうか、それは残念だ。しかし気が変わったら是非とも声を掛けてくれたまえ。私は南区のギルド支部にいる、いつでも歓迎するよ。では失礼っ」
はっはっはっと大口を開けて笑いながら去っていった。
常々騒がしい人だ。
彼が去ると同時に何人かの治療士も後を追っていた、彼の部下かな。
数は十数、日頃から彼と行動を共にしているように見える。
「……派閥勧誘ねぇ」
今後も他の白金特級から話が来るのだろうか。
だとしたら……ため息が出るね。
するとそこへ、まるでルォウが去ったのを確認してからのように入れ違いに男性が声を掛けてきた。
また次元病の話でも聞きにきた一人かな。
「なんだ? あんたも次元病の話を聞きに?」
「それもあるが、ああ、名刺をどうぞ」
隣にいた小柄な少女が名刺を差し出してくる。
耳が尖がっている……エルフ族か。
青い瞳に白い肌――エルフ族はどうしてこうも綺麗なのだろう。
仕事用なのか黒スーツを纏っているのはこれまた珍しい。
「えと、ジアフ・バルト……。えっ、あの?」
名刺と彼の顔を交互に見た。
おいおい、見間違いじゃないだろうな。
「ううむ見間違いではないのだよ、ルヴィン君。私が南区ギルド支部長・白金特級治療士のぅ、そう、君ぃ」
「はい、この方こそがジアフ・バルト様でございます」
なんだこのやり取り。
「……初めて見た、実在するんだな」
白金特級治療士の名前はいくつか知っている、だが一度も見た事がない人物こそが彼――ジアフ・バルトだ。
しかし治療士にしては……これから紳士達の集まりでもあるかのような服装で治療士らしさがあまり感じられない。
紳士服とシルクハット、白手袋に杖といったまるで貴族のような外見。
王都からわざわざ治療都市にやってきた変わり者の貴族……というのは噂で聞いたが。
「私は然程街には出ないからねぇ、今日も、ええっと……セイル」
「十八日ぶりでございます」
「そう、十八日ぶりに街へ来た、本来は街の外にある館で過ごしていてね。これからはもう少し街に顔を出すとしないと皆や新人の顔を忘れてしまうよ。それかどうだろう、君達が我が館に来るというのも。ははっ、機会があれば招待したいものだね」
「そりゃどうも……」
「いやぁいい場所に館を建てたものでね、夜には夜景を楽しめるのだよ。街の光と、後ろを向けばそう、あれだ、セイル」
「――夜光に照らされたクルエヴ山が展望できます」
「そう、クルエヴ山が展望できるのだよ。素晴らしい光景だ、ワインも実に美味しくなる。最近は極上のワインを仕入れてね、これがまたいい」
「ヨロヒア大陸から仕入れたワインでございます、一本七万ゼルします」
高いなおい。
俺らが一ヶ月で稼ぐ依頼報酬の半分はするのかよ。
白金特級となればそんなワインも躊躇せず購入できるほど稼げるようだな、俺もそうなりたいもんだ。
「そう、ヨロヒア大陸! あそこのワインは最高だ!」
……このままだと一方的に余計な話をされるだけで時間が経過しそうだ。
話したら止まらないタイプなのか、激流の如く流れる話はどこかでせき止めねば。
「ジアフ様、ルヴィン様が何か仰りたいご様子です」
ああ、助かった。
空気の読める方のようだ。セイルとかいったか、さぞかしできる秘書に違いない。
「ううむすまないつい喋りすぎた、いや失礼。先ほどはルォウ君とお話をされていたようだったので邪魔をすまいと優雅にコーヒーのほろ苦さと香りを楽しんでいたのだがね」
「ジアフ様、少しルヴィン様に話すタイミングというものを考えてください」
「おっと、ついつい喋り続けてしまう。どうぞルヴィン君」
セイルのおかげでようやく俺から話せそうだ。
「……白金特級のあんたから話しかけてもらって光栄でもあるんだが、用件は何かなって思って」
「実はだね、私の治療士協会に興味はないかなと思ってね。協会では研究会を何度か開いていてね、勉強になるよ。それに特定地区の依頼であれば優先的にまわす事も可能だ、魅力的だとは思わないかね?」
いきなり派閥への勧誘か。
今まではただの路傍の石としか見てなかっただろうが、これも次元病の処置のおかげかな。
「もし興味があれば研究会も覗きにくるといい」
「はあ……」
「むぅ? 他の治療士会からもお誘いがあったのかな? 食いつきがやや悪い、セイル、私の説明はどうだった? 魅力的に聞こえたか?」
「ジアフ様、そもそもルヴィン様は今まで無所属、治療士協会自体に興味があるか否かが問題かと思われます。あとジアフ様の口調はどこか傲慢そうにも聞こえるので割りとムカつきます」
「まさか秘書にここまで言われるとは想定外だが、ううむ、私の口調は直しようもないし反省しても改善はできそうにもない。どうするべきか」
「とりあえず口を閉じるのがよろしいかと」
「それでは喋れないではないか!」
「素晴らしい事だと思いますが?」
随分と辛辣な秘書だ。
白金特級治療士とその秘書とのやり取りには到底見られない。
「あの……お気持ちはありがたいのですが」
「彼女の言うとおり、治療士協会への入会自体に興味が無いと?」
「そんなとこです、すみません」
別区の派閥に入ったとなれば北区のギルドに行き来しづらくなるし。
さほど遠くないとはいえ何かと南区まで顔を出しに行くのも面倒だ。
「そうか、それは残念だ。しかし気が変わったら是非とも声を掛けてくれたまえ。私は南区のギルド支部にいる、いつでも歓迎するよ。では失礼っ」
はっはっはっと大口を開けて笑いながら去っていった。
常々騒がしい人だ。
彼が去ると同時に何人かの治療士も後を追っていた、彼の部下かな。
数は十数、日頃から彼と行動を共にしているように見える。
「……派閥勧誘ねぇ」
今後も他の白金特級から話が来るのだろうか。
だとしたら……ため息が出るね。
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