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第三章
Karte.023 得意属性
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一つ喜ばしい知らせがある。
今日付けで俺は銀上級への昇級が決まり、しかも次元病に関しての論文を提出すればさらなる昇級も約束されるという。
となると、金級までの昇格は決まったも同然である。
書類に目を通している途中からにやけが止まらなかった。
ふふ、次元病の処置というのはこうも大きな影響を与えてくれるとは。
あれから一週間、ギルド本部からこれといった昇級の話が出てこなかったから少し心配していたがようやく昇級できて一安心だ。
後は論文をきちんと書いて提出しておかなくちゃな。
そうそう、それとレイコも前回に俺と処置した病魔の手術が評価の対象になったのだとか。
しかも何かと理由をつけて、ギルド側はレイコの治療士免許を発行する動きを見せている。
本来ならばあれはあの手術は評価対象にはならないと思うのだが、どこかギルド本部はレイコに甘いところがあるように思える。
「手紙がいっぱいだ」
「おう、いっぱいだよ。俺の目を疲れさせようとしてるんじゃねえかってくらいにな」
窓から顔を覗かせるレイコ。
今日はエルスと庭で弓の練習をするとか言ってたか、にしては奥では木陰で昼寝してるエルスがいるし練習はどうしたのかね。
「他は全部派閥の勧誘だ」
「人気者ね」
「大体が目的は俺じゃなく俺の論文だがな」
論文内容は共有、そんでもって所属する派閥も載せてもらいたい――って魂胆が見え見えだ。
一度も顔を合わせた事すらない治療士の派閥からも手紙が来ているし、俺がジアフと食事をしたというのが他の派閥に危機感を与えてしまったかもしれない。
「あとまた一通手紙きてた、はいどうぞ」
「また勧誘かねぇ……」
手紙を手にとって中身を見てみるとする。
一通のみで文章も短め、だが書かれている内容はというと――
「中央区で各区治療士交流会、か」
「面白そう」
「治療士の情報交換の場としてよく利用されてるんだ。先月やったばかりなのに、またやるのか」
いつもは三ヶ月に一度くらいでギルドの掲示板に告知するものなのに招待状がわざわざ俺に届くのもおかしい。
遠まわしに参加しろって事かもしれない。
さてどうしたものか。レイコに交流会というものを体験させるにはいい機会ではあるが。
「しかも今夜か、急だな……もう少し早く招待状送ればいいのによ」
「本当は二日前に受け取ったけど渡すの忘れていた、申し訳ない」
「なんか手紙開いた形跡があると思ったら……」
受け取って読んだままその辺に放置してたなこいつ。
「皆も行くか聞いてみるか」
「エルスは新しく買った器具とか薬とか整理したいから行けないって」
「それならまあ、仕方がないが」
なら昼寝をやめて今すぐ整理に入ればいいんじゃないのかあいつ。
行きたくないからって何かと断る理由を作ってるんじゃないだろうか。
「となればライザックさんも残るだろうな。エルス一人をここに残すわけにもいかないし」
「じゃあ私達二人だけと?」
「そうなるな、どうせルォウも来てるから話し相手には困らないぞ」
「それはいいね」
こいつの面倒見はルォウに任せておこう。
俺は病魔の変異について聞いて回りたいってのもあるし。
「交流会はどんな人が来るの?」
「その時によって違うが白金特級は誰かしら一人は参加してるぜ。話を聞くだけでもためになるもんだ」
「楽しみ、聞いて色々学びたい」
「それじゃあ行こうか」
「是非是非」
お前のその意欲を後ろで昼寝してる奴らに分けてやりたいよ。
「交流会までは時間あるよね?」
「ああ、夜から始まるからたっぷりとな」
「ならその間、街を散歩する」
目が輝いている。
そういえばこいつ、この街に来てからは馬車移動ばかりだったが、自分の足で歩いて回りたいのかもしれない。
馬車では行けない場所もまだいくつもあるし、馬車移動中にきっと気になる場所も見てきただろう。
踵を返すレイコだが、俺はすぐに呼び止めた。
「散歩ってお前一人で行くんじゃないだろうな」
「駄目?」
「駄目だ、ギルド本部からもお前が単独で行動するのは禁止と言われてるんだ」
「じゃあ付き合って」
そうなるよな。
仕方がない、俺は小さな溜息をついて部屋を出るとした。
気持ちいいほどに外は晴天、雲を探すのが逆に難しく、風も肌を撫でるように心地良かった。
これなら誰もが散歩したくもなるな、最近はずっと論文を書いていたためにここ数日は日の光をまともに浴びる回数は少なかった。
レイコは鼻歌を奏でながら俺の前を歩き、どこへと向かうのやら。
せめて鼻歌を奏でている時くらいは表情は柔らかくすればいいものの、顔を覗いてみればいつもの無表情ときた。
まだこの世界に来て緊張感が解けないのか、それとも元からそういう表情しかできないのか、この一週間こいつと過ごしてみて分かったのは後者であるという事。
記憶は少しずつ取り戻してはいるらしい。
――日本。
私の住んでた、国――
この世界に、日本という国はない。
……やはり、別の世界はある……らしい。
だからといって彼女は帰りたいだとかそういった素振りも見せてこない。
むしろこっちの世界が楽しいと満喫しているかのようだ。
「魔法修練所、だっけ」
「ああ、そうだ。ちょっと寄ってみるか?」
修練所では何人かが書物を読んでいる者もいれば、奥の広場で実際に魔法を試している者もいる。
炎魔法を練習している治療士は今後植物系の病魔の処置でもする予定があるのだろうか、何度も何度も入念に魔法を繰り出し用意された的へ的確に炎の玉を当てていた。
俺もよくここで練習したもんだ、今は依頼をこなすのに必死で最近は中々足を運べてない。
「魔法の使い方は?」
「エルスからは教わってないのか?」
「自分は一部しか知らない上に教えるのも下手だって」
確かに。
あいつは補助系に特化して学んでいたから偏りがある。
「じゃあ先ずお前の得意属性を調べてみるか」
「どうやるの?」
「ついてこい」
案内役もいるのだが説明が長くなるからやめておこう。
説明したそうに案内役がちらちらこっちを見ているのは見なかった事にするとして、と。
ギルド本部によればレイコの魔力量は常人より大きいというが、どれほどのものかはまだ確認はしていない。
彼女の魔力面について、いい機会だし少し調べてみよう。
「これらがそれぞれの属性が宿った石だ、色で分かりやすくもしてある」
六つの石をテーブルに並べる。
彼女は一つ一つじっくりと見て、好奇心をあらわにしていた。
「赤が火、青が水、緑が風、茶色が土、白が光、黒が闇属性だ。他にも属性はあるが基本はこれらだ」
「ほほう、どの属性が一番いいの?」
「どれが一番かはあまり重要じゃない。俺達治療士が先ず一番に必要なのが結界魔法だが、そもそも結界魔法は属性は関係ないからな」
「なら最初は結界魔法を?」
「ああ、魔力を注ぐだけで簡単に発動するようになっているが覚えておいたほうがいいだろう」
「了解した」
「それと魔物との戦闘では魔法で対処する必要がある。魔物に有効な属性、そして自分が魔法を使う上で苦手な属性や向いていない属性も調べとかなくちゃな。特級クラスになると属性なんて関係なく強力な魔法で吹き飛ばす奴も多いが」
ジアフの魔法戦を見ただろうが、彼の能力が高すぎてあれは参考にならない。
「では早速調べてみよう」
「真ん中に手を置け。六つの石に手の感覚が広がるように想像してみろ」
最初の最初は石に反応させるのも一苦労なんだが、果たしてどのような結果となるか見てのお楽しみといこう。
しかし困ったな。
彼女の魔法検査に興味を持った治療士達が少しずつ寄ってきている。
ここに入るのを見て追ってきた奴らもいるようで、明らかに来た時よりも人が増えてやがる。
どこに行ってもこうなるからそろそろ慣れてはきたがね。
「あ」
その一声。
同時に、彼女が手を置や六つの石全てが今まで見た事もないほどの光を放った。
赤石に至っては炎が溢れ出てテーブルを焦がしてしまっている。
沸き上がる観衆、だがレイコはこの状態がいかに尋常ではないのかが理解していないようで頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
「普通に熱いっ」
手を離すものの魔力がまだ残っているのか、光は暫し宿ったままだった。
今までこんな結果を出した奴などいただろうか、少なくとも俺の記憶にはない。
「それで、どうなの?」
「……基本属性全てが、特化してる」
「全部使えるの?」
「そういう事だ」
まいったね。
ああ、まいったよこれは。
彼女の持つ魔力も、彼女の使える属性もそこらの治療士より上だ。
魔法を覚えればすぐにでも実戦で結果を出せる、教える事は魔法の出し方くらいだな。
「ルヴィンはどれが使えるの?」
「俺の事は……いい。広場に行こう」
今日付けで俺は銀上級への昇級が決まり、しかも次元病に関しての論文を提出すればさらなる昇級も約束されるという。
となると、金級までの昇格は決まったも同然である。
書類に目を通している途中からにやけが止まらなかった。
ふふ、次元病の処置というのはこうも大きな影響を与えてくれるとは。
あれから一週間、ギルド本部からこれといった昇級の話が出てこなかったから少し心配していたがようやく昇級できて一安心だ。
後は論文をきちんと書いて提出しておかなくちゃな。
そうそう、それとレイコも前回に俺と処置した病魔の手術が評価の対象になったのだとか。
しかも何かと理由をつけて、ギルド側はレイコの治療士免許を発行する動きを見せている。
本来ならばあれはあの手術は評価対象にはならないと思うのだが、どこかギルド本部はレイコに甘いところがあるように思える。
「手紙がいっぱいだ」
「おう、いっぱいだよ。俺の目を疲れさせようとしてるんじゃねえかってくらいにな」
窓から顔を覗かせるレイコ。
今日はエルスと庭で弓の練習をするとか言ってたか、にしては奥では木陰で昼寝してるエルスがいるし練習はどうしたのかね。
「他は全部派閥の勧誘だ」
「人気者ね」
「大体が目的は俺じゃなく俺の論文だがな」
論文内容は共有、そんでもって所属する派閥も載せてもらいたい――って魂胆が見え見えだ。
一度も顔を合わせた事すらない治療士の派閥からも手紙が来ているし、俺がジアフと食事をしたというのが他の派閥に危機感を与えてしまったかもしれない。
「あとまた一通手紙きてた、はいどうぞ」
「また勧誘かねぇ……」
手紙を手にとって中身を見てみるとする。
一通のみで文章も短め、だが書かれている内容はというと――
「中央区で各区治療士交流会、か」
「面白そう」
「治療士の情報交換の場としてよく利用されてるんだ。先月やったばかりなのに、またやるのか」
いつもは三ヶ月に一度くらいでギルドの掲示板に告知するものなのに招待状がわざわざ俺に届くのもおかしい。
遠まわしに参加しろって事かもしれない。
さてどうしたものか。レイコに交流会というものを体験させるにはいい機会ではあるが。
「しかも今夜か、急だな……もう少し早く招待状送ればいいのによ」
「本当は二日前に受け取ったけど渡すの忘れていた、申し訳ない」
「なんか手紙開いた形跡があると思ったら……」
受け取って読んだままその辺に放置してたなこいつ。
「皆も行くか聞いてみるか」
「エルスは新しく買った器具とか薬とか整理したいから行けないって」
「それならまあ、仕方がないが」
なら昼寝をやめて今すぐ整理に入ればいいんじゃないのかあいつ。
行きたくないからって何かと断る理由を作ってるんじゃないだろうか。
「となればライザックさんも残るだろうな。エルス一人をここに残すわけにもいかないし」
「じゃあ私達二人だけと?」
「そうなるな、どうせルォウも来てるから話し相手には困らないぞ」
「それはいいね」
こいつの面倒見はルォウに任せておこう。
俺は病魔の変異について聞いて回りたいってのもあるし。
「交流会はどんな人が来るの?」
「その時によって違うが白金特級は誰かしら一人は参加してるぜ。話を聞くだけでもためになるもんだ」
「楽しみ、聞いて色々学びたい」
「それじゃあ行こうか」
「是非是非」
お前のその意欲を後ろで昼寝してる奴らに分けてやりたいよ。
「交流会までは時間あるよね?」
「ああ、夜から始まるからたっぷりとな」
「ならその間、街を散歩する」
目が輝いている。
そういえばこいつ、この街に来てからは馬車移動ばかりだったが、自分の足で歩いて回りたいのかもしれない。
馬車では行けない場所もまだいくつもあるし、馬車移動中にきっと気になる場所も見てきただろう。
踵を返すレイコだが、俺はすぐに呼び止めた。
「散歩ってお前一人で行くんじゃないだろうな」
「駄目?」
「駄目だ、ギルド本部からもお前が単独で行動するのは禁止と言われてるんだ」
「じゃあ付き合って」
そうなるよな。
仕方がない、俺は小さな溜息をついて部屋を出るとした。
気持ちいいほどに外は晴天、雲を探すのが逆に難しく、風も肌を撫でるように心地良かった。
これなら誰もが散歩したくもなるな、最近はずっと論文を書いていたためにここ数日は日の光をまともに浴びる回数は少なかった。
レイコは鼻歌を奏でながら俺の前を歩き、どこへと向かうのやら。
せめて鼻歌を奏でている時くらいは表情は柔らかくすればいいものの、顔を覗いてみればいつもの無表情ときた。
まだこの世界に来て緊張感が解けないのか、それとも元からそういう表情しかできないのか、この一週間こいつと過ごしてみて分かったのは後者であるという事。
記憶は少しずつ取り戻してはいるらしい。
――日本。
私の住んでた、国――
この世界に、日本という国はない。
……やはり、別の世界はある……らしい。
だからといって彼女は帰りたいだとかそういった素振りも見せてこない。
むしろこっちの世界が楽しいと満喫しているかのようだ。
「魔法修練所、だっけ」
「ああ、そうだ。ちょっと寄ってみるか?」
修練所では何人かが書物を読んでいる者もいれば、奥の広場で実際に魔法を試している者もいる。
炎魔法を練習している治療士は今後植物系の病魔の処置でもする予定があるのだろうか、何度も何度も入念に魔法を繰り出し用意された的へ的確に炎の玉を当てていた。
俺もよくここで練習したもんだ、今は依頼をこなすのに必死で最近は中々足を運べてない。
「魔法の使い方は?」
「エルスからは教わってないのか?」
「自分は一部しか知らない上に教えるのも下手だって」
確かに。
あいつは補助系に特化して学んでいたから偏りがある。
「じゃあ先ずお前の得意属性を調べてみるか」
「どうやるの?」
「ついてこい」
案内役もいるのだが説明が長くなるからやめておこう。
説明したそうに案内役がちらちらこっちを見ているのは見なかった事にするとして、と。
ギルド本部によればレイコの魔力量は常人より大きいというが、どれほどのものかはまだ確認はしていない。
彼女の魔力面について、いい機会だし少し調べてみよう。
「これらがそれぞれの属性が宿った石だ、色で分かりやすくもしてある」
六つの石をテーブルに並べる。
彼女は一つ一つじっくりと見て、好奇心をあらわにしていた。
「赤が火、青が水、緑が風、茶色が土、白が光、黒が闇属性だ。他にも属性はあるが基本はこれらだ」
「ほほう、どの属性が一番いいの?」
「どれが一番かはあまり重要じゃない。俺達治療士が先ず一番に必要なのが結界魔法だが、そもそも結界魔法は属性は関係ないからな」
「なら最初は結界魔法を?」
「ああ、魔力を注ぐだけで簡単に発動するようになっているが覚えておいたほうがいいだろう」
「了解した」
「それと魔物との戦闘では魔法で対処する必要がある。魔物に有効な属性、そして自分が魔法を使う上で苦手な属性や向いていない属性も調べとかなくちゃな。特級クラスになると属性なんて関係なく強力な魔法で吹き飛ばす奴も多いが」
ジアフの魔法戦を見ただろうが、彼の能力が高すぎてあれは参考にならない。
「では早速調べてみよう」
「真ん中に手を置け。六つの石に手の感覚が広がるように想像してみろ」
最初の最初は石に反応させるのも一苦労なんだが、果たしてどのような結果となるか見てのお楽しみといこう。
しかし困ったな。
彼女の魔法検査に興味を持った治療士達が少しずつ寄ってきている。
ここに入るのを見て追ってきた奴らもいるようで、明らかに来た時よりも人が増えてやがる。
どこに行ってもこうなるからそろそろ慣れてはきたがね。
「あ」
その一声。
同時に、彼女が手を置や六つの石全てが今まで見た事もないほどの光を放った。
赤石に至っては炎が溢れ出てテーブルを焦がしてしまっている。
沸き上がる観衆、だがレイコはこの状態がいかに尋常ではないのかが理解していないようで頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
「普通に熱いっ」
手を離すものの魔力がまだ残っているのか、光は暫し宿ったままだった。
今までこんな結果を出した奴などいただろうか、少なくとも俺の記憶にはない。
「それで、どうなの?」
「……基本属性全てが、特化してる」
「全部使えるの?」
「そういう事だ」
まいったね。
ああ、まいったよこれは。
彼女の持つ魔力も、彼女の使える属性もそこらの治療士より上だ。
魔法を覚えればすぐにでも実戦で結果を出せる、教える事は魔法の出し方くらいだな。
「ルヴィンはどれが使えるの?」
「俺の事は……いい。広場に行こう」
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