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第三章
Karte.024 指輪
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基本魔法の書かれた本を案内役から受け取り、次はいざ実践だ。
本来なら少しずつ魔法について学んで力をつけるべきだが、彼女の場合は力をつける必要が無い分、そこらはすっ飛ばせる。
わざわざ一から説明するよりもはや一度魔法を発動させてみたほうがいいかもしれない。
後ろからついてくる奴らも彼女の魔法発動を見たいようで、期待の眼差しが寄せられている。
何人かはギルドかチームの勧誘をあわよくばってところであろう。
「魔法の発動をしやすくするためにも媒体を持っているといい。魔法具ってやつだな、杖を使う奴もいれば指輪や手袋に魔方陣を書いたものや装飾品に魔方陣を刻んでいる奴もいる」
ほう、と彼女が周りの人達を見回すや、それぞれこれが媒体ですと言わんばかりに彼女へ見せてきた。
杖、手袋、ブレスレット、中には刺青を手のひらに直接書いている者もいて多種多様。
「ルヴィンは?」
「俺は腕輪だ、こいつにも魔力を通しているから容易くは壊れないぞ」
上級魔法なら媒体もまたそれに合わせる必要があるが……俺は結界魔法以外ほとんど使わないんでな、上等な媒体は必要ない。
「お前はどんな媒体にする?」
セルヴェハルは杖を使ってたが、杖といっても紳士用の杖だった。
おそらく特注品だろうな、俺もそろそろ魔法媒体に少しは金をかけてみるか? ……いいや、結界魔法か強化魔法くらいで上級魔法なんて使わないのに媒体に金をかける意味が無い。
やめておこう、それにこれは師匠が残してくれた媒体だ、限界がくるまで使っていきたい。
「どうもどうも、私は媒体屋のメルエルトでございます~。ささ、どうぞ自由に見てくださいまし」
わざわざ魔法媒体屋がきてやがった。
彼女は大荷物ながらこれみよがしに商品を広げてさあ買えと言わんばかりに見せつけてくる。
「どれがいいの?」
「どれでも。これに関しては好みの問題だ」
「私はルヴィンが選んだものでいい」
「……うーん」
なんか周りの視線が変わった気がする。
彼女があれほどの魔力を持つならばこいつはそれを考慮してどのような媒体を選ぶのか、といった目だ。
試されている気がして居心地が悪い。
「最近はこういった杖ものも良いのですが処置の邪魔になったり荷物になる事もあるのでブレスレットや指輪も流行りですよ」
「指輪、手術の時、手袋するけど、大丈夫なの?」
「問題ございません。体に触れている状態であれば魔法発動に影響は及ぼしませんよ。ちなみに指輪はチームパートナーとして、恋人としてといった意味でも人気です」
最後の説明いるか?
「……邪魔にならない指輪でもいいか」
「ほう、指輪とな」
「深い意味はないからな」
すかさず商人が俺達の前で鞄を開ける。
「ではではこちらからお選びください~」
指輪がぎっしりと詰められており、その中でもまた小箱に入れられている指輪は高級品であろう。
「ほら、好きなもの選べ」
どうせギルド本部の金で買えるんだ。
「……選んで」
「また俺が選ぶのかよ」
これといった好みがないのなら、そうだな……懐も暖かいし一番高いやつでいいか。
高級品で、彼女に似合うもの――といっても指輪は装飾より刻んでいる魔方陣が大事だ。
本来はこの属性ごとに振り分けられている指輪も自分の得意属性と合わせる必要があるのだが彼女の場合は全てが適合する。
あの魔力だ、どれを選んでもたいして変わらないだろう。
どの属性も平均的に含んだ指輪、まあそうなると悩んだところで結局高級品となる。
「じゃあこいつで」
周りが一々ざわつく。
指輪をあげるといってもこれはただの装備、それ以上深い意味はないからな。
「ご購入ありがとうございます。サイズは……これくらいでしょうかね~、サンプルを先ずはおつけしますね~」
「ぴったり」
「そのようですね、ではこちらをどうぞ~」
するとレイコは手を差し出した。
指輪を通してという事か、周りもなんか見届けようと静まり返るしなんなんだこの状況は。
俺がやらなきゃ話が進まない気がする。
溜息一つ、それから俺は指輪を彼女の手に乗せた。
「はめて」
「はいはい……」
普通は左手人差し指にはめるのだが――
「違う」
拒否された。
周りからは溜息が飛び交い、どうしてか落胆させてしまったらしいが、意味が分からん。
「薬指」
「あのな」
「薬指」
「この指輪は」
「薬指」
「魔法を使うために」
「薬指」
「わかったわかった……」
どうしても薬指がいいんだな。
仕方がない、彼女の言うとおりにしてやろう。
改めて差し出してくるその手、その細い指に俺はそっと指輪を通していった。
「ほら、これでいいか」
「満足」
どうして湧き上がる観衆と拍手。
どこに盛り上がる要素があったというのだろうか。
「おめでとうございます!」
「何が?」
ただ指輪を通しただけなんだが。
「不束者ですが」
「何が?」
盛り上がりの中で、俺だけが置いてけぼりにされている。
本来なら少しずつ魔法について学んで力をつけるべきだが、彼女の場合は力をつける必要が無い分、そこらはすっ飛ばせる。
わざわざ一から説明するよりもはや一度魔法を発動させてみたほうがいいかもしれない。
後ろからついてくる奴らも彼女の魔法発動を見たいようで、期待の眼差しが寄せられている。
何人かはギルドかチームの勧誘をあわよくばってところであろう。
「魔法の発動をしやすくするためにも媒体を持っているといい。魔法具ってやつだな、杖を使う奴もいれば指輪や手袋に魔方陣を書いたものや装飾品に魔方陣を刻んでいる奴もいる」
ほう、と彼女が周りの人達を見回すや、それぞれこれが媒体ですと言わんばかりに彼女へ見せてきた。
杖、手袋、ブレスレット、中には刺青を手のひらに直接書いている者もいて多種多様。
「ルヴィンは?」
「俺は腕輪だ、こいつにも魔力を通しているから容易くは壊れないぞ」
上級魔法なら媒体もまたそれに合わせる必要があるが……俺は結界魔法以外ほとんど使わないんでな、上等な媒体は必要ない。
「お前はどんな媒体にする?」
セルヴェハルは杖を使ってたが、杖といっても紳士用の杖だった。
おそらく特注品だろうな、俺もそろそろ魔法媒体に少しは金をかけてみるか? ……いいや、結界魔法か強化魔法くらいで上級魔法なんて使わないのに媒体に金をかける意味が無い。
やめておこう、それにこれは師匠が残してくれた媒体だ、限界がくるまで使っていきたい。
「どうもどうも、私は媒体屋のメルエルトでございます~。ささ、どうぞ自由に見てくださいまし」
わざわざ魔法媒体屋がきてやがった。
彼女は大荷物ながらこれみよがしに商品を広げてさあ買えと言わんばかりに見せつけてくる。
「どれがいいの?」
「どれでも。これに関しては好みの問題だ」
「私はルヴィンが選んだものでいい」
「……うーん」
なんか周りの視線が変わった気がする。
彼女があれほどの魔力を持つならばこいつはそれを考慮してどのような媒体を選ぶのか、といった目だ。
試されている気がして居心地が悪い。
「最近はこういった杖ものも良いのですが処置の邪魔になったり荷物になる事もあるのでブレスレットや指輪も流行りですよ」
「指輪、手術の時、手袋するけど、大丈夫なの?」
「問題ございません。体に触れている状態であれば魔法発動に影響は及ぼしませんよ。ちなみに指輪はチームパートナーとして、恋人としてといった意味でも人気です」
最後の説明いるか?
「……邪魔にならない指輪でもいいか」
「ほう、指輪とな」
「深い意味はないからな」
すかさず商人が俺達の前で鞄を開ける。
「ではではこちらからお選びください~」
指輪がぎっしりと詰められており、その中でもまた小箱に入れられている指輪は高級品であろう。
「ほら、好きなもの選べ」
どうせギルド本部の金で買えるんだ。
「……選んで」
「また俺が選ぶのかよ」
これといった好みがないのなら、そうだな……懐も暖かいし一番高いやつでいいか。
高級品で、彼女に似合うもの――といっても指輪は装飾より刻んでいる魔方陣が大事だ。
本来はこの属性ごとに振り分けられている指輪も自分の得意属性と合わせる必要があるのだが彼女の場合は全てが適合する。
あの魔力だ、どれを選んでもたいして変わらないだろう。
どの属性も平均的に含んだ指輪、まあそうなると悩んだところで結局高級品となる。
「じゃあこいつで」
周りが一々ざわつく。
指輪をあげるといってもこれはただの装備、それ以上深い意味はないからな。
「ご購入ありがとうございます。サイズは……これくらいでしょうかね~、サンプルを先ずはおつけしますね~」
「ぴったり」
「そのようですね、ではこちらをどうぞ~」
するとレイコは手を差し出した。
指輪を通してという事か、周りもなんか見届けようと静まり返るしなんなんだこの状況は。
俺がやらなきゃ話が進まない気がする。
溜息一つ、それから俺は指輪を彼女の手に乗せた。
「はめて」
「はいはい……」
普通は左手人差し指にはめるのだが――
「違う」
拒否された。
周りからは溜息が飛び交い、どうしてか落胆させてしまったらしいが、意味が分からん。
「薬指」
「あのな」
「薬指」
「この指輪は」
「薬指」
「魔法を使うために」
「薬指」
「わかったわかった……」
どうしても薬指がいいんだな。
仕方がない、彼女の言うとおりにしてやろう。
改めて差し出してくるその手、その細い指に俺はそっと指輪を通していった。
「ほら、これでいいか」
「満足」
どうして湧き上がる観衆と拍手。
どこに盛り上がる要素があったというのだろうか。
「おめでとうございます!」
「何が?」
ただ指輪を通しただけなんだが。
「不束者ですが」
「何が?」
盛り上がりの中で、俺だけが置いてけぼりにされている。
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