俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨

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序章 俺は普通の高校生なので。

序章36 この瞳に映せないもの ①

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 つい何秒か前まで、一組の男と女の話し声が響いていた昇降口に打って変わった静寂が訪れていた。


 それに心地の良い静謐さはなく、重苦しさを感じるのはその中に身を浸す者の心持ち次第なのだろう。


「…………おい」


 弥堂 優輝がぶっきらぼうに呼びかけたのは、目の前に居る希咲 七海が無言でポロポロと涙を零すのを見ることに耐えかねたからだ。


 呼びかけられた希咲は言葉を返さずに、ただ一度スンと鼻を鳴らした。


(まさかそれが返事のつもりじゃないだろうな……)

 心中で苛つきながら、弥堂は億劫そうに再度泣いている女の子に声をかける。


「何故泣く?」

「……泣いてないもん」

「いや、泣いてないってお前な…………その様でよくも……」

「ないてっ……うっく……ひっ…………ない、もん……っ……」

「わかった。希咲 七海。キミは泣いていない」


 大声で喚いて泣き出す寸前の幼児のような希咲の様子に、彼女の自制はもはや予断を許さぬ状況であると判断し、弥堂は危機感から『泣いていない』という彼女の主張を認めることにした。


 口内で噛み締めた歯が軋む。


 こうなることがわかっていたから、彼女の裡に触れぬよう有耶無耶にこの場をやり過ごそうとしていたのに、ガキのように口論にムキになった挙句に見事に地雷を踏み抜いた。

(なんてザマだ……)

 思わず天井を見上げたくなる。


 しかし今はそんな些細な動作でも不要に希咲を刺激することになるかもしれない。この場は慎重な対応が求められる。

 弥堂は右手にニッパーを左手に赤と青の二種類の導線を取った処理班のような心持ちで目の前の泣いている女の子を視た。


 許されるならばこいつをこの場に置き去りにして速やかに帰宅をしたい。しかし公の場で教師に彼女を送るよう命じられて、尚且つ自分はそれを了承した。その事実がある以上それは不可能ではないが難しい。


 弥堂は脳裡で全ての関係者と目撃者を始末するコストと、この場で希咲に適切に対応する為のコストとを素早く比較計算する。

 弾き出された解は、後者の方が僅かに低コストである可能性が高い、だ。

 前者はまずい。最悪の場合この学園の関係者を皆殺しにしなければならない羽目に陥る。


 なにより――


『バカなのですか? 殺しますよ?』


 希咲を捨てていく選択肢を浮かべてから、記憶の中のメイド女に侮蔑の視線混じりにそう強く咎められているイメージを錯覚している。

 気がしただけなら気のせいだと捨て置くことも出来なくもないが、彼女からの云い付けもある。師でもある彼女に云われたのならば仕方がないと割り切る。


 それにあまり悠長にもしていられない。


 弥堂の経験からくる予測が正しければ恐らくこのあとはもっと悪い状況となる。その前に彼女を泣きやませる必要があった。

 不得意分野ではあるが慣れてはいる。こういった状況でとるべき手段のノウハウは己の裡に蓄積されているのだ。


 弥堂は目の前の少女から目を離さずに、手持ちの情報の中から最適なその方法を考え選び出す。


(――面倒だな。とりあえずキスでもしてみるか……?)


 狂った経験の中で得られるのは狂ったノウハウだけであり、コミュニケーション能力が著しく狂っている男は、その中から限りなく最悪に近い気の狂った選択肢へと脳内でマウスカーソルを当てる。


 弥堂がクリックボタンを押して地獄への片道切符を差し出そうと決めるその時――



「…………ごめん、ね……」


(――きたか)


 表情には出さぬよう意識しながら心中で舌を打つ。


 これは知っているパターンだった。


 そして弥堂が特に嫌うパターンでもあった。


 当然敗けパターンである。


 先程まで泣きながらこちらを責め立てていた女が急にしおらしい態度で謝ってくる。まるで意味がわからないがこの後どういう展開になるかだけは弥堂にもわかる。


 まずは何故謝罪に至ったのかというストーリーを聞かされる。嗚咽混じりに拙い言葉で語られるそれを丁重な姿勢で拝聴することを求められる。

 どうせ聞いたところで要領など何一つ得られないのだが、それは諦めて耐え忍ばなければならない。


 次に語られるのは何故泣いていたのかという背景だ。


 心の底からどうでもいい話を苛立ちと戦いながら聞き続ける羽目に陥る。自分の歯は、歯軋りによってどこまでの負荷をかけても大丈夫なのかという、そのギリギリのラインを見定めながら聞いていると多少気が紛れるのでおススメだ。

 だが、こちらが相手の話に全く興味を持っていないということは絶対に悟られてはならない。それを悟られればまた最初から手順を踏み直すことになる。


 こちらに出来ることといえば、感情が昂りまるで冷静でない相手が恙無く、且つ気持ちよく全てを吐き出し語り尽くすまで適切にそのサポートをすることだけだ。


 そしてわけもわからないまま只管時間だけを消費し、謝られていたのはこちらのはずなのに、何故か最終的に謝罪をさせられるという結末に辿り着くのだ。


 弥堂はさりげない動作で胸の前で小さく十字を切り、胸中で無常な『世界』の在り様を憎しむ言葉を用い神を罵倒した。


(だが――)


 こうなってしまっては仕方ない。

 自分のミスが起因となり引き寄せた事態だ。

 甘んじて現状を受け入れる他ないだろう。


 最近はなかったが、なにもこういった事態に遭遇するのは珍しい事でもない。泣いている女に構うのには慣れているのだ。決して得意という意味ではない。

 弥堂は切り替えをした。


 そして効率よく状況を終わらせるためのチャレンジをしてみる。


「希咲。俺が悪かった。キミは悪くない。だから手打ちだ。どうだ?」

 どうせ最終的に謝らされるならと最初に謝ってみる。だが――


「えっ……? うぇ……あたしが……っ……あやまってる、のにっ……なんでまた、へんなことゆうの……? ぅくっ……」

「待て。落ち着け。今のはミスだ。続けろ。好きに話せ」


 感情的になっている相手を余計に混乱させ、彼女の瞳に浮かぶ涙の水量がじわっと増したので即座に取り下げた。


 初手から見事にしくじったがこの程度のことで弥堂が取り乱すことはない。ミスを冒すことにも慣れているのだ。


 それにミスをしたことで得られた『気付き』もある。

 具体的には二つだ。


 一つは相手の真の目的はこちらの謝罪ではないことだ。

 何故なら謝っても済まなかったからだ。

 どうせ最終的にそうさせられるならば、初めに謝ることで効率よく状況を終了させられないかと試しに謝ってみたが、それは誤りのようであった。

 弥堂自身も「これはないな」と思ってはいたが、謝るだけならタダなのでとりあえずチャレンジしてみたのだ。


 数々の成功者たちが挙ってチャレンジをすることが重要だと言っている。

 宝くじに当たっただけの連中が、くじを買わなきゃ当たらないと言っているだけだと弥堂は考えているが、だが実際に奴らは成功しているのでそれはそういうものなのであろうとも認めていた。

 故の謝罪チャレンジだ。


 しかし、その謝罪で解決しないのであれば、相手の目的は別にあるということになる。


 その目的こそが二つ目の『気付き』だ。


 この場だけでなく今日だけで幾度も希咲からは謝罪を要求されている。なのにも関わらず謝罪を受け取ることが目的ではない。

 この矛盾から導き出される相手の真の目的とは。


 何のことはない。ただの感情の解消だ。


 要するに気が済むまで自分の不満を吐き出してすっきりしたいだけのことだ。それに付き合わせるために、或いは体のいいサンドバッグにするために、謝れだなんだと言っているのだ。

 全くを以て非生産的で非合理的な行いだが、弥堂にはこういった知性や理性を蔑ろにした行動をとる人種に心当たりがあったので不思議には思わない。



 そして以上の二つの情報から一つの解が導きだされる。


 先ほど、様々に色を変える希咲の表情や心模様から彼女の本質・実態が摑めないと弥堂は感じた。

 しかし、ここでその空漠たる彼女の人物像が浮き彫りになる。

 弥堂は希咲 七海という洞の奥の核心を捉え、その真実に確信を得た。


 脳裡で得た気付きと目の前の彼女の実態とを繋ぎ合わせると、強敵と対峙する時のように希咲へと向ける視線に強い警戒感を滲ませる。



(希咲 七海。こいつは――)



 間違いない。



(こいつは――メンヘラだ……!)



 浅学菲才な身だと自覚をしている弥堂であるが、メンヘラ女に関してはそれなりに知行合一な見識を持つため、強くそのように確信をした。

 これまでの人生で数々のメンヘラに散々な目に遭わされてきた経験をもつ弥堂は、決して表には出さぬよう心中で戦慄をする。

 油断なく相手を測る。


(――深度65…………いや67はあるか……?)


 弥堂 優輝はメンヘラに脅かされる闇の深い生活を送っていた経験から、相手の闇の深さを数値化し危険度を測るための『メンヘラ深度』という独自の基準を脳内で設けていた。

 ちなみにメンヘラ深度の数値が大きくなるほどに闇が深くなる。その数値に上限はない。


 現状の情報だけでは希咲のメンヘラ深度を正確に計測することは不可能だ。しかし決して侮るべきではないと弥堂は程よく緊張感を纏いながら慎重にアプローチを始める。


「何故、謝る?」

「……ぅん…………いきなり、泣いて……ごめん……」

「お前泣いてないんじゃなかったのか?」

「っ⁉ うぇっ…………ぅくっ……だって……」

「待て。わかった。落ち着け。希咲 七海。キミは泣いている」


 弥堂は速やかに発言を撤回し、脳内で『矛盾を指摘すると泣く』の項目にチェックを入れた。


「……ヘンな風に泣いて、ゴメンね、って言いたかったの……」

「そうか。だがお前はとっくに何回もピーピー泣いていただろう」

「っ⁉ うぇっ…………ぇぐっ……ちがうもん……」

「そうだ。違う。今のはそういう意味ではない。大丈夫だ」

「……? じゃあ、どうゆういみなの……?」

「大丈夫だ」


 弥堂は泣いている女の子を安心させるためにとりあえず大丈夫であることだけを強調し、脳内で『事実を指摘すると泣く』の項目にもチェックを入れた。


「よく、わかんないけど……でも、あたしもわけわかんないよね…………いきなりこんな風に泣くなんてきもいよね……?」

「そうだな」

「っ⁉ うぇっ……」

「待て。今のは間違えただけだ。キミはきもくない。大丈夫だ。かわいいぞ」

「っ⁉ うぇっ…………ひぐっ……かわいく、ないもん……」

「そうだな。キミの言うとおりだ。キミはかわいくない」

「っ⁉ うぇっ…………ぅぇええっ……」

「待て。今のは違う。そういうアレじゃない。とにかくアレだ。大丈夫だ」


 慎重に会話を重ねながら的確に地雷を踏み抜いていく。


 脳内で『自分を卑下する発言が増えるが同意すると泣く』『褒めると否定して泣く』『感極まった様に見えるがちゃんと話を聞いているか確認をする罠を会話の中に潜ませる』の項目に次々とチェックを入れる。

 弥堂の頭の内側には『レ点』が、外側には『怒りマーク』が蓄積されていき、比例してイライラゲージが伸びる。


 だが、決して感情的になってはいけない。


 メンヘラ相手にこちらも感情的になるのは地獄の入り口だ。泥仕合は奴らのフィールドだ。そこに引き込まれれば敗北は必至。

 弥堂は震える程に握りしめた拳を抑えることで己を諫め、クレバーに勝利への道筋を辿る。

 難しい局面だが初めての状況でもない。自身には目の前の困難に打ち勝つだけの経験が蓄積されていると己を鼓舞する。


 一つ問題があるとすれば勝利条件が皆目わからないことだったが、それに気付けるだけの冷静さが既に失われていることに彼は自覚がなかった。


「……ねぇ……みえてた……?」

「……………………なにが、だ?」


 辛うじてそれだけ問い返す。

 効率という名の宗教に信仰を捧げる弥堂は、主語などが著しく欠けた会話を仕掛けられるとマッハでイライラしちゃう系の男子であった。


「だから……泣いてた理由……。さっき言ってた、あんたが来た時…………その……見えてた…………って、なんか息荒くない? だいじょぶ?」

「……問題ない。日常生活に平穏を齎すための特殊な呼吸法だ。大丈夫だ」

 澱んで濁して途切れた文脈の繋がりのあまりの脆弱さにイライラゲージがギュイーンっと伸びたため、弥堂は「フッ、フッ」と浅く息を吐くことで怒りを外へ逃がそうとしていた。


「そ、そう……? えと、だからね。あんたが助けに来てくれた時、あたしがスカート…………その……してたからっ、あの時……見えてた……?」

「だから――いや………………ちょっと待て……」

 反射的に彼女の言葉足らずに関して責め立てそうになるのを努めて堪える。


 希咲へと掌を向けて断りを入れながらもう片方の手で眉間を揉み解す。苛立ちを逃がすように一際長く息を吐く。
 こちらの言葉を待つ希咲の鼻をならす音がやけに大きく聴こえた気がした。


 彼女が何を言いたいのか――本当はわかっている。


 ただ、相手にその意図はなくとも、こうした言葉足らずで意思を伝えられるのは意図を汲むことを強要されているようで無性に癪に障るのだ。

 一度それで譲渡してやると今後も同様の対応を求められる気がするので、わざとわからないフリをしてやりたくなるのだ。

 だが、そんなことをしても大概に於いて意味はないし、なかった。


 これは自覚のある悪癖だ。さっさとやめた方がいい。

 その方が効率的だし実利的だ。よくわからない自分の蟠りや憤りなどは何の役にも立たない。


 胸中で自分に言い聞かせて折り合いをつける。


 折り合いをつけて、そして投げやりな気分になった。


「要するに、俺が現場に介入した時に、お前が自分で捲り上げていたスカートから下着が露出していたかどうかを訊いているんだな?」

「……う、うん」

「で?」

「え?」

「どう答えて欲しいんだ?」

「どう、って…………なによそれ……」


 露骨に雑になったこちらの応対に希咲は戸惑いが隠せない。そんな彼女には構わずに弥堂は続ける。


「俺が見たままを答えればいいのか? それを聞いたところで納得をして、お前の問題は解消されるのか? 俺に訊くことに意味はあるのか?」

「そう、だけど……そんな言い方しなくてもよくない?」

「上っ面だけ取り繕っても意味がないだろう。お前が訊きたいのは本質的で核心的な事実なんじゃないのか? どうなんだ?」

「そうだけど! なんで怒るの⁉」

「うるさい。怒ってなどいない」

「怒ってるじゃん!」


 責めるような弥堂の口ぶりに希咲も段々とムッとなる。


「思い出すのは禁止だとか言っていなかったか? それでどうやって俺に事実確認をしようと?」

「うっ…………そう、だけど。でも…………いまだけ、いいよ……?」


 おずおずと上目づかいでそう告げてきた希咲の顏を見て、弥堂は反射的に記憶から記録を取り出そうとしたが、寸でで頭を振り取り止めた。

 何故かそうすることに強烈な危機感を感じたからだ。


 それを誤魔化すように、脳裏でメンヘラチェックシートの『何かにつけて怒っていると決めつけてくる』の項目にチェックを入れてから口を開く。


「また話が逸れる前に先に言っておく。あの時、俺から見てお前の下着は見えていなかった。奴らも俺に注目していたから同様だろう。これで満足か?」

「だからそんな言い方しなくてもいいじゃん…………でも、ありがと」

「ではもういいな」

 短く告げてから矢継ぎ早に自身のシューズロッカーの扉に手を伸ばす。話は終わりだとの露骨な意思表示だが――


「……ねぇ」


 逃がさない――と意思づもりは本人にはないだろうが、後ろ手を掴まれたような錯覚をして盛大に顔を顰める。


「……そんなイヤそうな顔しなくてもいいじゃん!」

「…………いや……なんだ? 大体想像はつくが」

「え? わかるの……?」

「言葉遊びをするつもりはない。早く言え」

「なによもぉ……」


 冷淡な弥堂の態度に不満を顕わにする希咲の目にもう涙はない。苛立ちの方が勝ってきたからだ。
 そのことには彼女本人は気が付いていなかったし、当然狙ってこうしている腹づもりも弥堂にもない。


「……あの、さ……気ぃつかって、ない……?」

「あ?」

「だから。あたしに気遣って見えてなかったって答えてくれてない?」


 こちらの顔色を窺うように切り出した希咲の問いに弥堂は言葉もなくただ白目を剥いた。


「なっ⁉ なによその変顏っ! ひとが真面目に言ってんのにふざけないでよ!」

「誰が変顔だ。ナメてんのか」


 弥堂は黒目を戻して端的に抗議をしてから続ける。


「予想どおりすぎて気が遠くなっただけだ」

「なによぉ」

「だから訊いたんだ。『どう答えて欲しい?』と」

「……いみわかんない」


 拗ねたような仕草を見せる希咲に弥堂は呆れながら説明をする。


「今しがたの会話のとおりだろうが。俺が『見えていない』と言ってもお前はそう言うだろうし、逆に答えても同じだろう? だから予想どおりだと言ったし、意味はあるのかと訊いたんだ」

「……それは……そう、かもだけど――」

「大体だ。希咲。そもそもお前は俺を信用していないだろう?」

「ゔっ――そんなこと…………ない、けど……」

 言葉とは裏腹に希咲は気まずそうに目をきょろきょろさせた。

 そんな彼女の様子を見ながら弥堂は短く息を吐き、面倒そうに続ける。


「まず、お前の本当の目的は事実を知ることではなく、安心を得ることだろう?」

「……? どういうこと……?」

「だから、お前が事実確認に拘ったのは、自分に都合の悪いことはなかったと安心をしたくて、その為の材料となる情報が欲しかったからだろう」

「……多分そう……だけど。なんか言い方がやだ。つめたいっ」

「そうだ。俺は冷たい人間だ。だからお前を慮ったりはしないし、嘘を吐く可能性もある。お前の望む情報を引き出す為には不適切な人選だ。バカめ」

「むかーっ! なによ! 絶対あんたの方がバカだもんっ!」

「うるさい黙れ。いいか? 以上のことに加えて、例えば仮に俺が嘘を吐かない優しい人間だったとする。それでもお前が俺を信用していなかったら、やはり俺から出る言葉に、お前にとっての価値は変わらずこれっぽちも、ない。わかったか? だから意味がないんだ。意味のないことに俺を付き合わせるな。めんどくせぇんだよ、このメンヘラめ」

「メッ――⁉ あ、あたしメンヘラじゃないし!」

「メンヘラはみな、そう謂うんだ……」


 畳み掛けるように理屈を述べてきたと思ったら、突然メンヘラ呼ばわりをされ、憤慨する希咲は言い返そうとする。

 しかし、会話の途中にも関わらず突如として「フッ」とか言って遠い目をしだした男をとても不審に思い言葉を止めた。

 事実とは異なるレッテルを貼られては敵わないと否定をしたいのだが、ここではない何処かへと眼を向ける男の醸し出す言い知れぬ重みに、希咲は何故か畏れ入るような気持ちになり戦慄した。
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