とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
245 / 564

第244話 とんでも理屈

しおりを挟む
「エリス先輩!?」
「元気だった?」
「えっ、ま、まぁ……」
「とりあえず、ここで話すのもなんだし、部屋に入れてよ」
「は、はい」

 私はとりあえずエリスを部屋へと入れた。
 エリスは部屋へと入ると、周囲をぐるりと見回した。

「ふ~ん、思っていたより綺麗だね」
「どうな部屋を想像してたんですか?」
「もっと汚い部屋かな。だって男子って大雑把でしょ?」

 私は男子じゃないですけどね。
 そう心の中で思っていると、エリスが近付いて来て耳元で囁いた。

「ごめん、ごめん。クリスは男子じゃなかったね」
「……で、何の用ですか?」

 私は少しそっぽを向いてエリスに訪ねて来た用件を訊くが、はぐらかされてしまう。

「そんなに怒らなくてもいいのに」
「怒っていませんよ」
「本当かな?」
「本当です! と言うか、どうして男子寮に来てるんですか? 見つかったら大変じゃないですか!」

 そこで私は思い出したかの様にエリスに言うと、エリスも「確かに、それもそうね」と今知ったかの様に言って来た。
 基本的に寮は男子だけなので、女子が来ることはあり得ない。
 禁止されている訳ではないが、今まで来た事などない為見つかったらちょっとした事件になりかねない。
 しかも来ているのが、学院女子生徒の中で『女帝』と呼ばれる存在であるエリス先輩だと知れたら、大事件だ。
 私は咄嗟に廊下を見て誰も居ない事を確認し、扉を閉めた。
 するとエリスは私の机の上を物色してから、近くのベッドに腰を掛けた。

「何をそんなに焦っているのよ」
「それりゃ焦りますよ。こんな所誰かに見られたら、大騒ぎですかね! てか、どうやって来たんですか?」
「どうやってて、正面から入って来ただけよ」

 え~嘘でしょ……絶対に誰かに見られてるでしょ。
 私はその発言を疑ったが、そんな事よりも今は何をしに来たのか訊くのが先だと思い、もう一度エリスに目的を訊いた。

「貴方と話をしに来たのよ」
「俺と、ですか?」
「あ~正確に言うと、貴方だけどクリスじゃなくてアリスとよ」
「え?」

 私はよく分からず首を傾げた。
 するとエリスは立ち上がって、何故か反対側に向かって歩きながら話し続けた。

「私って友達少ないじゃない」
「え、そうなんですか? 知らないですけど……」
「そうなのよ。3年生になると、皆やる事があったりで忙しかったりで、かまってくれる人がいなくてね」
「……」
「オービンもミカも、何か忙しくて相手してくれなくてさ~」

 私はエリスのその話しで、何となく察してしまった。
 あ~この人、ただ本当にかまってくれる人を探しに来たんだ……
 そう思い私は、エリスの事をジト目で見つめているとエリスは私の視線に気付き、足を止めて私の方を向いた。

「察しのいいクリスなら、私が何をしに貴方の所に来たか、もう分かるわよね?」
「はぁ~……エリス先輩、今がどう言う時期か知ってます?」
「えぇもちろんよ。第二期期末試験まで2週間前、皆は試験に向けて勉強をしている時期よね?」
「でしたら、俺の所に来ても答えは同じですよ」

 私は口に出さずに、エリスからのお誘いを断ったが、エリスは諦める事なく私の方に近付いて来て人差し指で鎖骨辺りをつついて来た。

「だから、クリスじゃなくてアリスにと言ったのよ」
「はい?」
「だって、アリスはこの学院の生徒じゃないじゃない。なら、私に付き合ってくれてもいいじゃない?」

 な、何そのとんでも解釈!? いやいや、確かに私は今アリスじゃなくてクリスと名乗っているけど、本体はアリスなんだからその理屈はおかしいでしょ!

「それじゃ、決まりね」
「えっ!? いや、俺はまだ返事はしないんですけど?」
「え? 付き合ってくれないの?」
「無理ですよ。俺だって勉強したいし、それにそんな遊ぶような気分じゃないと言いますか……ともかく、無理ですよ」

 エリスは私の返事を改めて聞いて、小さくため息をした。

「本気で試験対策しているなら私も誘わないわよ。でも、今の貴方は勉強のし過ぎで疲れてる表情よ。そんなんでやっても、どうせ身に入らないわよ」
「えっ?」

 私は両手で自分の顔を触って、近くにあった鏡で自分の顔を見た。

「だから、ちょっとは息抜きしなさい」

 ……確かに、ここ最近空いてる時間はだいたい勉強をやってた気もする。
 何もしないとルークの事やリリエルさんに言われた事を考えて、答えが出ずに嫌な気持ちになるから勉強して気を紛らわせていたんだ。
 鏡を見て、自分の目の下にうっすらとくまが出来ていたり、少し頬が痩せている様にも見えた。
 私てこんなだったけ?

「と言う訳で、今日から明日にかけて勉強禁止ね」
「禁止!?」

 エリスからの言葉に私は直ぐに振り返った。

「そして、明日は私に付き合う事。いい? あ~ちなみに明日はクリスじゃなくて、アリスでね」
「それはどう言う意味ですか、エリス先輩?」

 だがエリスは私の問いかけには答えずに、話を進める。

「後、明日は外出するから外出権を買っておいてね。それじゃ、明日10時に噴水の時計台下集合ね」
「ちょ、エリス先輩!?」
「それじゃ、明日ねクリス」

 エリスはそう言って部屋から出て行く際に、軽く投げキッスとして部屋から去って行った。
 えっ……何か一方的に明日会う約束になった?
 私は嵐の様な出来事に暫く、その場から動く事が出来なかったが、直ぐに扉を開きエリスを追って話をしようとした。
 だが、扉を開けて廊下を左右交互に見た時には既にエリスの姿はなかった。
 嘘……もういない? 少し動けなかったけど、その間に走っても姿を見失う様な場所じゃないんだけど。
 いや、まだ追えば追いつけるはず。
 そう考えた私は、そのままエリスが行っただろう方へと走って追いかけた。
 その姿をエリスは、廊下の天井に両足を付けた状態で見ていた。

「(さすがに天井までは見ないよね。それに風魔法で姿を隠すように操作しているから、見える訳ないか)」

 エリスはそう思いながら、私が走っていた方とは逆の方へと天井を歩き始めた。

「(明日は楽しみね~何を着て行こうかしら)」

 明日の事を考えながら歩ていると、通路の途中で階段がある箇所を通りかかる。
 するとその階段で上から、オービンとミカロスが話しながら降りて来た。
 そして、オービンがエリスの存在に気付き少し驚いた声を出す。

「えっ、何してんだエリス?」
「あっ……オービン」

 オービンの声に反応し、ミカロスもエリスの方を見て目を疑った。

「何でここにお前がいるんだ、エリス……」

 エリスはその時点で天井から降りると、黙って近くの窓へと向かって行き、オービンたちの方を向いた。

「失礼しました~……」

 そう言って勢いよく窓を開けて、そこから逃げて行った。

「お、おい! エリス!?」
「……あははは。何してんだあいつ?」
「笑い事じゃないぞ、オービン。はぁ~エリスの事だから誰にもバレてないと思うが、何でこんな所まで来てんだよ」
「あれじゃないか? 最近かまって貰えなくて、つまらないからあんな事したんじゃないのか? 彼氏なら彼女を寂しくさせるなよ」
「うっ……し、仕方ないだろ。こんなのが来たら、相手したくても出来ないだろ」

 ミカロスはそう言うって、持っていた資料を揺らした。

「まぁ~確かにな。急だったしな……あっ、いい事思い付いたぞミカ」
「……お前がそう言う表情をする時は、大抵あまり良くない事だった気がするが?」
「そんな事ないって。とりあえず、話だけでも聞いてくれよ、ミカ」

 そう言われてミカロスは小さくため息をついて、オービンが思い付いた話を渋々聞くのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...