とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第328話 夜空の下で

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 私の言葉を聞いたジュリルは、少し驚いた表情をするも変に声を上げる事無く「そう」と静かに答えた。
 そのままデザートを一口食べるのだった。

「……ねぇ、ジュリル?」
「何かしら?」
「え~と、何ていうか物凄くリアクションして欲しい訳じゃないんだけど、もう少しくらい反応してくれてもいいんじゃない? 結構な発言だったと思うんだけど?」
「アリス貴方、そんな事を私に期待していたのですか?」
「うっ……そういう訳じゃないけど、何かさらっと流されたみたいで悲しいというか、もっとこう驚かれるかなって思って」

 するとジュリルはため息をつき、呆れた顔で私の方を見て来た。

「ワーソンナコトイウトハ、オモワナカッタ。ビツクリシター。ヤメナイデーアリスー」
「ごめんなさい。私が悪かったです。棒読みで言われるもそれを聞くのも辛いです……」
「まぁ、冗談はさておき。アリスが考えて決めたのなら、別に私が口出しする事ではないので先程の様に答えただけですわ」

 そこで私は、先程のジュリルの返事は私の事を理解した上でのものだったと理解した。
 ジュリルはそこでもう一口デザートを食べた後、話出した。

「でも、せっかく意を決して伝えてくれたのですから、理由はしっかりと教えていただこうかしら」
「えぇ、もちろん」

 そして私はジュリルに学院を辞めるに至った経緯を話し始めた。
 考えるきっかけは、もちろんジュリルにバレた時の出来事である。
 それから私は自分の立場やどうして行きたいかを改めて考えてのだ。
 元々はルークの一件で学院へと転入したが、一方で月の魔女という憧れの存在に近付けると思っていた。
 結果、半年以上学院で過ごしルークとの関係も変わり、私自身も大きく成長出来た。
 だが一方で、夢という物が分からなくなりつつあり、目標があやふやになっていた。
 このまま何の目標もなく、危険を冒してまで学院にいるのはよくないし、ジュリルに言われた様にまた誰かに正体がバレてしまい、次こそはどうにもできない状況になりかねない事に目を背けずに向き合ったのだ。
 そして私は何処かで一区切りを付けるべきなのでは考えたのである。

 現状私のわがままで学院に通っているが、居心地も悪くなくこのままずっと卒業するまで通い続けたいと考えてもいる。
 が、今のままではそれは意味がなくただ楽しいと言うだけで無意味に終わってしまうと理解したのだ。
 確かに楽しいと言うのは大切だが、今の私は周りの皆とは違いこの先どうなりたいのかという道が定まっておらず、このままでは私だけ何も決められずに将来を考えるという事に目を背け続けるのではないかと思えたのである。
 だから自分の将来の為にも、この環境に一度区切りをつけると決め、その短い間に自分の将来を考え直す期間にしようと決めたのである。
 もしかしたら、そんな事しなくても自然と時間が解決するよと言う人や、将来なんて決まってない人もいると言う人もいるかもしれない。
 確かにそうかもしれない。
 だけども私は、こんなにも様々な出会いや考えに触れられる学院生活というものを無駄にしたくないのである。

 三年間という限られた時間で多くの事を体験し、身に付けられ、夢や目標に向かって誰かと競い合いながら行える素晴らしい環境を、私は存分に活かしたいのだ。
 私も始めからそう言う考えだった訳じゃない。
 今の学院に転入し、色々と体験し話をし考え、悩み、ぶつかったりするうちに私の中でそういう考えが知らないうちに出来ていたのだ。
 改めてこれまでの自分を振り返る事が出来たから分かった事でもある。
 私は貴族令嬢であり、この先学院生活の様な自由が必ずしも約束されているとは限らない。
 だからこそ、そう思えたのかもしれない。
 後三カ月という短い期間だが、その中で私の目標を改めて決める。
 それと同時に、ルークとの決着もつけなければいけないし、もっと色々と勉強もしたいと言う欲が強くなった。
 現状暫定としてどうなりたいという事に関しては、月の魔女の様な存在を設定しつつそこから派生させて具体的にどうなりたいのかを掘り下げて行こうかと考えている状態である。

 これに関しては、お父様お母様には既に伝えており、それ以外の人に話したのはジュリルが初めてである。
 何故マリアではなくジュリルなのかというと、マリアは何となく私がそういう風に考えていると分かっているのではないかと思っているからだ。
 もちろん伝えるつもりはある。
 ジュリルに関しては、月の魔女の事や同性であったり、ルークと違い正体を知って本気で忠告してくれたと感じ、こうして目を背けていた事に向き合えたキッカケをくれた人でもあるから話したのである。
 と、私の学院に辞めるに至った経緯を伝え終えるとジュリルは小さく笑った。

「どうして笑うのさ」
「ごめんなさい、悪気はないわ。ただ、そんな事を私に話してくれた事が何故か嬉しかったのですわ」
「え?」
「二代目月の魔女になってからは、そう言った事がありませんでしたので、久しぶりにそう言った事を言ってもらって嬉しくなってしまったのです」
「あ~確かに二代目月の魔女って呼ばれる人に相談打ち明けても、何か一般人じゃ無理そうな回答が帰って来そうだものね」
「それはどういう事ですの? アリスは、私の事をどうみていますのよ」
「オービン先輩の様な完璧人間。凄い人って分かるけど、相談とか気軽に出来ない相手。何となく、勝手に自分にはそのアドバイスは出来ないと思ってしまう感じ」

 私がそう答えデザートを一口自分の口へと運ぶと、ジュリルも同じくデザートを一口食べた。

「……分からなくもないですわ。何となくそう言う視線は感じていましたわ。私自身も内心自分の事で一杯一杯の時もありまして、他人に構っている余裕などない時はそう言うオーラを出していましたもの」
「へぇ~そうだったんだ。まぁ、色々と話し過ぎてしまった気はするけど、私としては恩人でもある人だから伝えたかったというだけですので」
「えぇ、貴方なりの決意は理解しましたわ。ですが、学院を辞めるのであればその前に私とも決着を付けて欲しいですわ。来年、対抗戦で出来るか分かりませんもの」
「あれ、私来年の対抗戦出る事確定なのですか?」
「何を言っていますの? 今年、いやもう去年ですわね。私に代表選手として試合に勝っておいて、出ないなんてあり得ませんわ」
「別に出たくない訳じゃないけど、ほら今年の調子とか元の学院の状況とかもあるだろうしさ……」
「あら、敵前逃亡ですの? でしたら、私の圧勝という事で勝負は決着ですわね」

 そうジュリルに言われ私はムッとなり、反論した。

「逃げるなんて言ってないわよ。そんな事いうジュリルこそ、私が怖くてあえてそういう風に持って行きたいんじゃないの? 二代目月の魔女として情けないわよ」
「そんな事ありませんわ。そもそも、前から思っていましたけどアリス、貴方は月の魔女に関して知識が足りないと思いますの。もっと私の様に、深く知るべきだと思いますわ」
「いやいや、ジュリルこそ間違って月の魔女の事を解釈していますわ。私がどれだけの月日、月の魔女について調べていると思っているの? 舐めないでほしいわ」
「私に月の魔女に関して挑むとはいい度胸ですわ、今日ここではっきりとさせましょうではありませんの。どちらが月の魔女に関して、より多く正確に知っているのかを!」
「もちろん受けて立つわ! これだけは誰にも負けない自信があるわ」
「二代目月の魔女を舐めないでいただきたいですわね、アリス」
「名前を継いでいるからと言って、調子に乗らない方がいいよ、ジュリル」

 そしてそこからは、月の魔女に関しての互いの言い合いが始まるのだった。
 この日私たちはその瞬間だけは自分たちの立場など忘れ、ただの同性の友人として共有の趣味やたわいもない会話などを時間を忘れてし続けたのだった。
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