とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
412 / 564

第411話 地元のことは地元の人に訊け

しおりを挟む
「え、リーベストって、あのシリウス魔法学院のリーベスト・ドラルド!?」
「おう、よく知ってるなお前。えーと、名前が分からなくて申し訳ないが、その通り。俺があのシリウス魔法学院で有名なリーベストだ」

 トウマの驚きに対して、リーベストは胸を張って答える。
 それ以外の皆もまさかの人物に驚いてしまい、声が出ずにいた。
 そこへ先程遠くから声を掛けて来た、同じ学院でリーベストのペアでもある二コルがやって来る。

「リーベストお前な、あんな所で変に飛び上がるな。驚くだろうが」
「悪い、悪い。でもそれよりよ、見ろよ二コル。ルークだぞ、オービンの弟がここにいるんだぞ! 凄いぞ! テンション上がるんだが!」

 二コルはそこで初めて、私たちの存在に気付き声を掛けてくれる。

「ルークにクリスは、久しぶりだな。対抗戦以来だな。他の皆は初めましてかな。俺は二コル・ノーザンって、悠長に挨拶してる場合じゃなかった」

 すると突然二コルは背後を振り返ると、先程の人だかりがこっちに向かって来るのが目に入る。

「リーベストにルークたちも巻き込んですまないが、とりあえず今はこの場から離れるから付いて来てく――」

 そう二コルが言いかけた次の瞬間、リーベストが私の腕を急に掴みヴァデック塔の上る入口へと向かって走り出したのだ。

「!?」
「とりあえず細かい話や積もる話は、登ってからにしようか! それじゃ行こうか! クリス! 先に行くぞ、二コル。それにルークたちも!」
「え、あっちょ、ちょっと!」

 私はそのままリーベストに引っ張れるままに、ヴァデック塔を上る入口へと向かう。
 ヴァデック塔は基本的に上るにはチケットを購入しないと、内部には入れない様になっているのだが、未だ私たちはチケット購入はしてない為、このままでは入れないのだ。

「あ、あの! まだ俺たちチケット買ってないんですけど!」
「あーそれなら大丈夫。俺チケット沢山持ってるから」
「え、どういう事ですか!?」
「話せば長いんだけど、先週街でくじ引きがやっててさ、それが無性にやりたくなって街で色々と買い物してたわけさ。で、買い物してくじ引き券を沢山集めて二コルと一緒にくじ引き会場回ったんだよ。そしたら行く所、行く所でヴァデック塔の入場チケットがあったんだよ。まあ嬉しんよ、嬉しんだけど同じのばかりで消費するのも大変でさ、有効期限もあったしここ数日毎日ヴァデック塔に来てるって訳」

 本当に話が長かった。でもチケットを沢山持ってる理由は分かった。
 そしてあっという間に入口に到着すると、リーベストは持っていたチケットを全て取り出して係りの者に渡す。
 係りの者も急に沢山のチケットを出されて焦りつつも、全て受け取る。

「えーと、俺とこいつで2枚で。後は、あっちから来る二コルにルーク、後3人いたで合ってるか?」
「俺、ルーク、トウマにシン、モーガンだから……合ってはいます」
「よし! じゃ7枚はあるよな。いやーここで一気に消費出来るのは嬉しいね。無駄にしなくて済むし。さすがに、もう二コルと二人だけで来るのに飽きてた所だったんだよね」

 そうなりますよね、ここ数日毎日来ていれば。
 そこへ遅れてルークたちが追い付いて来る。

「リーベストさん! 急にうちのクリスを引っ張って行かないでくださいよ!」
「はぁー、はぁー、まさか急に走る事になるとは想定外過ぎる」
「思い付きで動くな、リーベスト。こっちが巻き込んでいるんだぞ」

 するとそのタイミングで、係りの者がチケットの枚数確認を終え半券を渡すと、リーベストが先に入って行き私も再び連れられて行く。

「早く行くぞ、お前ら! 遅れるなよ!」

 そんなリーベストの言葉に、開いた口が塞がらない状態になってしまう。
 二コルは小さくため息をついた後、ルークたちに謝罪し「とりあえず付いて来てくれるか?」と問いかけ、ルークたちはここでクリスを置いて行く訳にはいかないので頷き二コルと共にリーベストの後を追うのだった。
 その後ろからやって来た人だかりは、その入口を通れるチケットを持っていなかった為、結果的に逃げ切る事に成功するのだった。
 私たちはというと、ガイドレールに沿って魔力を流して上下に垂直方向に動くかご事、魔力式昇降機に乗り込みゆっくりと上へと向かっていた。
 魔力式昇降機は、落ちない様に箱状になっており外も見えるようにということで一部目線の高さがガラス張りになっている。

「うおお!? すげぇ! 自動で動いてるぞ!」
「君は魔力式昇降機に乗るのは初めてだね」
「あ、はい!」
「これはね、自動ではないんだよ。地上と上階、それに各中間層で魔力の流れを管理する者や、魔力調整に優れた者などが安全に動かしているんだ」

 トウマに対してモランが丁寧に魔力式昇降機について説明をし始めた。
 そもそも魔力式昇降機自体珍しいもので、王都には未だない。
 理由としてはその専門家が多くない事や未だ新開発されてた物であるという面がある為であった。
 現状、ベンベルにもこの一機しかなく安全に運用出来ているから使われているが、基本的には一部の者しか乗れないのである。
 ちなみにこの中でリーベストは、くじ引きで当てたチケット全てがこの魔力式昇降機に無料で乗れるチケットである事を明かした。
 更には、魔力式昇降機側で上ったヴァデック塔は、一般でチケットを購入して上って来る人が来れない場所でゆっくりと過ごせ、ベンベルの街を一望出来ると教えてくれる。
 その話を聞き、シンがそんな凄い物を勝手に使って良かったのかと訊ねると、持て余してた所だったとリーベストが答え、二コルが変な騒動に巻き込んでしまったお詫びと答えた。

「それで、どうしてリーベストさんと二コルさんは、あんな風に人に囲まれてたんだ?」

 トウマが改めてその話題を切り出すと、リーベストが話し出そうとした所を二コルが間に割り込む様に説明し始めてくれた。
 元々ここへは、数日間通い続けておりその理由は、リーベストがくじ引きでチケットを当てただと話す。
 そして新年初めに、学院として街との交流の一環で催し物を行った事や、元々学院の人気は高い事から街の人から話し掛けられたりと、街を歩くとあんな風になっていると明かしてくれる。
 更にはリーベストはシリウス魔法学院内でトップであり顔的な存在である為、余計に人気があり人だかりが出来てしまうのだった。
 一応変装をして出ていたが、リーベストが面倒だと言って今日はして来なかった為、あんな風になっていたのだと二コルは説明してくれた。

「だって変装とか面倒だし、俺はただ自由に街を歩きたいだけだし、来たらとりあえず対応すれば何とかなると思ってたんだよ。それか、二コルが何とかしてくれるとかな」
「そういう所だ。人任せだし、後先考えてない。立場を理解しろ、リーベスト」

 反省しているのか分からないが、リーベストは「は~い」と返事をしつつガラス張りの所から外の景色を眺めていた。
 その後上層階へと到着するまでの間に、自己紹介を改めて行った。

「おおー! たけぇ~」
「ここは何回来てもいいな。二コルもそう思うだろ? ペリック門も見えるし、デューラン川も見える。それにリンダリック大通りもバッチリだ! 学院は遠くて見えないのが残念だが」

 トウマはリーベストと共に街の景色を堪能し、シンとモーガンもその後を付いて行き上層階からの景色を堪能する。

「改めて悪かったね、急に巻き込んでしまって」

 そう二コルが改めて謝罪して来たので、私は「いえいえ、こんな所まで無料で来させてもらったので」と返事をする。

「リーベストさんは、変わってませんね」
「ああ。学院生活が少なくなって来て、より自由奔放になりつつあって困ってるよ。そう言えば、ドウラに訊いたけどローデングスで会ったんだってね」
「はい。ラーウェンとドウラにはそこで偶然会い、案内を少ししてくれました」
「そうか。修学旅行でベンベルか。俺たちからすると俺たちが王都に行くような感じかな」

 二コルはそう口にした直後、何か思いついたのか私たちの方へと視線を向けて来た。

「ここで会ったのも何かの縁だし、ガイドでもしてあげようか? 穴場スポットとか教えてあげられるぞ。俺たちもこの後、街をふらつくだけの予定だったし」
「いいなそれ! ナイスアイデアじゃん二コル! せっかくの修学旅行なんだから、面白い所とか教えてあげるぞ! 地元のことは地元の人間に訊くのが一番って言うしな。どうだ、最高のガイドじゃないか?」

 急にリーベストも現れて、ガイド役を引き受けると提案される。
 私はどうするべきか分からずルークの方を見ると、ルークも私の方を見た後にトウマに声を掛けて判断を求めた。

「え! ガイドやってくれるんですか! それは嬉しいですけど、俺たちに付き合わせてしまって申し訳ないんですけど……」
「そんな事気にするな! 同じ学院生同士じゃないか。学年は違うが、せっかくベンベルに来てくれてるんだ、満喫してもらえるのが一番だ。別に二コルの言う通り、俺たちは急ぎの用事はないしな」
「リーベストさん、二コルさん」

 そしてトウマが私たちにもガイド役を頼んでいいかを確認してから、やっていただけるならお願いしてもいいという事になり、トウマが改めてガイドをお願いするのだった。
 こうして、私たちの班に強力なガイド役が加入するのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

処理中です...