とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第475話 協力する目的

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 ――ロバート・ベンツ。

 彼の見た目は、白髪で眼鏡を掛けている四十代男性と特に特徴のある容姿ではなく、何処にでもいそうな中年男性である。
 だが、そんな彼こそ二十四年前に起きた王国転覆事件の首謀者であり、犯罪組織『モラトリアム』を仕切るリーダーであった。
 その実力は王国軍隊長と同等、それ以上の力を持っており王国転覆事件時も最後まで王国側が倒しきれなかった唯一の相手である。
 そして王国転覆事件時に、バベッチ・ロウを手にかけた張本人でもあった。

「どうして、どうしてロバートがいるの」

 ティアはロバートの姿を見て驚く。
 何故なら、ロバート・ベンツは以前オービン誘拐事件時の主犯とされ、その際王国軍との戦闘時にて拘束しており現在は王城の地下にて厳重拘束中のはずであったからだ。
 しかし目の前には見間違う事なく、ロバートが立っていた。

「ティア、話ではロバートは拘束中なのではなかったのか?」
「そのはずよ。脱獄などされていないわ……いや、もしかしてこっちが、オリジナル?」

 二人はロバートの放つ強い魔力を受け、身体が少し強張っていた。

「リーリアは彼と直接会うのは、王国転覆事件以来かな? ティアは会っているんだよね?」
「バベッチ……よくロバートと共にいられるわね」
「え? あ~そうだね。俺を殺した相手とこうして一緒にいるなんておかしいって事ね。でもティア、もうそれは二十年以上も前の事だし、俺はそんな事引きずらないよ。目的に協力してくれるから共にいるだけさ」
「目的、ね」

 するとロバートがそこで片腕をティアとリーリアに向ける。
 二人は攻撃を仕掛けてくると思いかまえた。
 だが、ロバートが仕掛けてきたのは二人の周辺を囲う新たな結界であった。
 結界内に閉じ込められた二人は、咄嗟に結界が接している地面を攻撃し結界の破壊を試みようとする。
 しかし、そう行動しようとした直後二人の懐に魔力の塊が突然現れる。

「しまっ――」

 そのリーリアが呟いた瞬間、魔力の塊が爆発し二人は結界の面へと吹き飛ばされる。
 結界に打ち付けられると同時に結界も崩れ消えるのだった。
 二人は咽ながらもすぐに立ち上がる。

「二人が今対峙しているロバートは、あの頃と全く同じロバートだからね。衰えとか、そんなのに期待しない方がいいよ」
「ティア、あのバベッチの口ぶりからしてこのロバートも偽者だな」
「そうね。バベッチが生み出した存在ね。でも、状況は最悪よ」

 バベッチは二人から戦闘の意志が消えてないのが分かると、呆れた様に大きくため息をついた。

「まだやるの? 俺は二人の事は殺したくないんだけど。この状況でどうするべきか、二人なら分かるだろ?」
「この状況下でどうするべきかなんて、あんたに言われなくても分かるわよ」

 ティアが少し強気にバベッチに言い返すと、バベッチはムッとした表情をする。
 そこへリーリアが続けて問いかけた。

「バベッチ、貴方がロバートや『モラトリアム』と共に行動していた目的は何?」
「何だよ急に」
「いいから、教えなさい」
「……決まってるだろ、この国を変える為だよ。頑張っても認められない世界ではなく、誰しもが平等に機会が与えられる世界に、認められる世界にするのさ。その為に、この王都から変える。俺が国王となり国の中心から変えていくんだよ」
「その手段が以前の王都襲撃や、ユンベールの乗っ取り、更には誘拐事件なの?」
「俺は世界を良くしようとしているだけで、それを訴えようとした結果が、そうなってしまっただけだ。力なき者の訴えなど、今の世界で聞き入れられないとお前たちも知っているだろ? だから俺は、力ある者たちと協力しているんだ」
「その相手が犯罪組織というのは、矛盾しているんじゃないの」

 リーリアの言葉にバベッチの動きが止まると、ゆっくりと俯きだす。
 そしてバベッチは俯きながら片手で軽く頭をかき始めた。

「なんだよ……昔はあんなに賛同してくれたじゃないか……一緒にどうすればこの世が良くなるのか、皆で話し合ったじゃないか」
「……そうね。確かにあの頃、そんな話をしたわね」
「じゃあなんで! なんで、今俺の考えを否定するんだ!」

 突然大声で激怒し始めたバベッチに、リーリアたちの後ろで固まっていたジュリルたちが身体をびくつかせた。

「俺は皆の為に、夢の為に、将来の為に、俺自身の為に、やってきたんだぞ。それをリーリアが、お前が、お前らが、国が、世界が、俺を否定するのか? 学院を守りたい、貴方を守りたい、王都をよくしたい、見返したい、壊したい、殺したい、救いたい、変えたい、手にしたい、手放したくない――」

 バベッチはそのまま頭を抱える様にして、身体を軽く揺らしながら独り言を口にし続けた。
 その様子を見て、ティアは見ていられないという表情で目を逸らした。
 リーリアは何かを受け入れるように、ゆっくりを瞳を閉じ息を吐いた。

「ティア、私はようやくリリエル先生が言っていた事を、受け止められる決意が出来たわ」
「……元々私たちの考えが甘かっただけ。受け入れられられず、何だかんだ言いつつも目を背けて来ただけよ」

 そう言葉を交わした後、二人は再びバベッチへと視線を向けた。
 ロバートはバベッチがおかしくなり始めた時点から、全く動く気配がなくその場で立ちつくしていた。
 その様子を見てから、リーリアがゆっくりと後ろに下がりジュリルたちに声を掛けた。

「立てる? そして直ぐに動ける?」
「あ、はい。私は大丈夫ですわ。ですが、一般参加者たちは」

 ジュリルはモランたちの肩を軽く借りながら完全に怯えている参加者たちの方を見つめる。

「心配ないわ。こっちには女王様がいるのだから、あの人たちもすぐに動けるわ。ティア準備は?」
「誰に言っているの? というより、私任せにしないでくれるかな」

 リーリアはジュリルたちの方に再び背を向け、ティアの横に並んだ。

「昔からこういう時はティアだったでしょ?」
「違うわよ。マイナよ、マイナ」
「どっちも変わらないわよ!」
「本当に昔から、そういう所適用よね!」

 二人はそう口にしながら、同時に氷魔法を発動し目の前に分厚い氷の壁を創り上げバベッチたちと自分たちを隔てた。
 更に氷の壁の強度を上げるために、何重にも壁を重ね、地面の壁も創り上げその壁を仕上げに『メタル』にて強度を上げた。
 そこまでし終えると、ようやく二人は身体の強張りが和らぎジュリルたちの方へと身体を向けるとティアが声を掛けるのだった。

「皆さん、私はティア・クリバンスです。まずはゆっくり大きく深呼吸して下さい。そのまま続けて、ゆっくりと座っている方は立ち上がって下さい」

 ティアの指示の下、皆が徐々に立ち上がり始める。
 その間もティアやリーリアは皆の周囲を回り優しく話し掛け続け、全員が一旦落ち着きを取り戻した所でティアとリーリアは全員を誘導し始め、その場を立ち去り始めた。
 移動し続けている間も、壁で隔てた向こう側から特に壁を攻撃してくる音などが聞こえる事はなかったのだった。
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