とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第481話 女帝と白衣の悪魔

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「エリス先輩!?」
「エリス? ……そうか、お前がエリス・クリセントか」
「あら、まさか侵入者さんに名前を知られているとは少し意外!」

 エリスはそう答えながら、片腕を勢いよく振り抜き『ガトリングガスト』をロバートに向け放つ。
 しかしロバートは二度も似た魔法攻撃は受けまいと、自身の正面に長方形の結界を展開し完全に防ぐ。

「攻撃的だな。もう少し慎ましくあるべきじゃないか?」
「後輩たちや一般人が危険な目に遭っていて、慎ましくなんてするわけないでしょ!」

 更にエリスは、両腕を振り抜き『ガトリングガスト』を放ち、そのまま連続で片腕を突き出し『ストームロード』も放つ。
 連続で放たれた攻撃は一直線にロバートに向かうが、一切動じぬことなく新たな結界を展開し連続の攻撃を防ぎきる。

「(結界を破る威力じゃない限り、いくら攻撃をしようとも無駄だ)」

 ロバートは己の魔法の自信から余裕な表情で相手を見下していた直後である。
 エリスは既に次の攻撃の準備を完了し、交互の手を勢いよく目の前で握り掴もうとする。
 その動作かつわずかな魔力の異変を感じとったロバートは本能的に危険を感じ、咄嗟に背後へ飛び回避をした。

「……何だ、今のは」
「ちょっと気持ちが入り過ぎたな。『風停』が察知されるとはね」

 そう口にしエリスは握り組んだ両手を離し、軽く息を吐いた。
 するとエリスの背後から白衣を着てゴーグルを付けた人物が現れる。

「やっと追い付きました。向かうスピード速すぎです、女帝」
「貴方が悠長に歩き過ぎなだけよ、フェン」
「走れるような身体じゃないだけです。それで、あの白髪で眼鏡を掛けている男性が侵入者かつ、学院に結界を張っている方ですか?」
「(また一人増えた。ここの学院生か? いやそれよりも、魔力感知で周辺の状況は確認して来て、誰も校舎内への侵入はいなかったはずなのにどうして急に二人も現れた?)」

 エリスとフェンの揃った姿を見て、ロバートがそう考えているとフェンがその疑問について答え始めた。

「もしや、どうして魔力感知に引っかからなかった相手がいるんだ? しかも二人も? と、お考えですかおじさま?」
「っ……」
「答えはシンプルです。まず私はいつもの様にずっと自身の研究室に籠っていました。この結界が張られた時点です。二点目、魔力感知に引っかからなかったのは私が創り出した魔道具が偶然それを阻害し、私という存在を感知させていなかった。三点目、女帝が私が創った通信用魔道具を所持しており、私に連絡してきてある条件で私が協力しました。後は私が結界を一時的に破壊出来る魔道具をさくっと創り、女帝を指定場所から内部に招いたという訳です」
「本当は別の結界に囚われていたけど、それが急に消えて一番速く学院に行ける私が飛んで来たってわけ。後は、フェンの言った通りね」
「魔道具……なるほど、そんな凄い魔道具を創れる学院生がいたとはね。想定外だよ」

 褒められた事にフェンが満足そうな表情をする。

「だから、先に排除する」

 そうロバートが続けて口にすると、フェンの周囲に結界が展開され捕らわれてしまう。
 が、フェンは焦る事無く白衣の内ポケットから三センチ程の黒い正方形の箱を取り出し、軽く魔力を流し結界へと軽く放り投げた。
 そしてその箱が結界に触れた瞬間、周囲の結界が瞬時に消えたのだった。
 ロバートはそれを目にし、少し顔を歪まさせた。

「おじさま、私の話を聞いていましたよね? 結界を破壊して女帝をお連れしたと。それとも、その目でそれが今出来るかを確認したのですか? それであるなばら、私の早とちりだった事をお詫びします」

 直後エリスが再度ロバートに狙いを定め、両手を握り組み「『風停』」と口にした。
 ロバートはまたしても自身の周囲が異様な魔法で囲まれたと察し、咄嗟に飛び上がるとエリスの両手に結界を展開し動きを封じる。

「魔法を発動させなければいいと考えましたか。ですが、フェンが持っている物を私が持っていないとお思いで?」
「くっ……」

 エリスは結界で封じられた状態のまま、器用に上着をめくると腰元に先程フェンが手にしていた黒い正方形の箱をストックされていた。
 その箱を腰元から地面へ落とすと、足で触れて魔力を流しそのまま結界を触れさせると結界が消えるのだった。

「(あの魔道具まだあるか、あれは私の魔法と相性が最悪過ぎる。あんな物を創られるとは。何なのだあの白衣の奴は。それとエリスのあの魔法だけは、結界魔法でも防ぎきれない可能性がある。確か発動時には、魔人と呼ばれる存在を創り出すと聞いていたが違うのか? 何にしろ状況が不利だ。まずはそれから変えるとするか)」

 するとロバートはエリスとフェンの周囲を再度結界で覆うと、そのまま振り返りジュリルたちの方を見る。
 そしてジュリルたち各個人に対し、結界を展開させると同時にジュリルたちを逃がさない様にしていた結界を解除するのだった。
 エリスはその光景を、まだストックのある魔道具で結界を消して目にするが、フェンは結界を消さずに覆われたまま見つめていた。

「何のつもり?」
「おや、見て分からない? なら分かりやすくしよう」

 そうロバートが口にすると、片手をゆっくりと握り閉じて行くとジュリルたちの結界が徐々に小さくなっていくのだった。
 結界に押しつぶされて行き苦痛の声を上げるジュリルたちを見て、エリスは奥歯を噛みしめた。
 そしてロバートは途中で手を握りしめるのを止め、手を開くと縮まっていたジュリルたちの結界が元に戻る。

「彼女らを結界で押し潰されたくなければ、今所持している先程の魔道具を全てこちらに投げろ」
「っ……」
「別に嫌なら構わない。彼女らが痛く苦しく押し潰されるだけだ。それで犠牲を出しつつも、私を捕らえて無事一件落着。さあ、どうするのかな?」

 エリスにそう問いかけると再びロバートはゆっくりと手を握り閉じ始めたが、エリスはすぐさま自身が持っていた結界を破壊する魔道具十二個全て地面に落とし、ロバートへ向け地面を滑らして渡すのだった。
 ロバートは握りしめるのを止め、向かって来た魔道具を結界で覆うと端へと追いやった。

「それじゃ、そちらの両手を白衣に突っ込んでいる人も持っている同じ魔道具を渡してもらおうか」
「……」
「何故黙る? 彼女らが大切ではないのか?」

 そう口にし再びロバートが手を上げ握り締めようとした時に、フェンはロバートも思いもしない事を口にしたのだった。

「別に私にとって彼女らは大切でも何でもないですよ。やりたければ、お好きにどうぞ」
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