とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第535話 二試合目

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 対戦場内には異様な雰囲気に包まれていた。
 試合は未だ始まらず、互いに椅子に座り無言のまま時間だけが過ぎて行く。
 担当試験官は待っているのが耐えられず、一度対戦場から出て行き他の教員に事情を説明しに行く。
 アリスはゆっくりと呼吸しながら体力回復を待ち続けており、ヴァンは瞳を閉じながら刻一刻と約束の時間が来るのを待っていた。

 私の二試合目の相手はヴァンか。
 ヴァンとはあの日怒鳴られて以来よね、クラスの中じゃ事件後に一番感情的に接して来ている。
 一番会いたくないと思われていた相手が実力試験の相手と聞いた時、アリスは少し驚いていたのだった。
 自分ならばもう二度と会いたくもない、顔すら見たくない相手と試合などしたくないはずなのに、何故ヴァンが相手に選ばれたのか不思議で仕方なかったのだ。
 それについて考えていても答えなど出る訳でも、納得出来たからといって何かが変わる訳ではない。
 アリスはすぐに意識を試合へと切り替え、ヴァンの特徴や戦法などを予測し始めていた。
 そしてあっという間に約束の十分間が終わると、アリスからヴァンに準備完了と声を掛ける。
 ヴァンもアリスの言葉に反応し瞳を開け、椅子から立ち上がり対戦場の定位置に立つ。
 両者定位置に付いた所で担当試験官が今回の対戦方式を確認する。

「私はヴァンの決めた方式で試合をするわ」
「それは僕のことを下に見ての発言かい、クリス?」
「いいえ。下にも侮ってもいないわ。貴方の決めた方式で全力でぶつかりたいだけよ」

 その言葉を聞きヴァンは小さく「気に食わない」と呟く。
 暫く黙った後に試合方式をヴァンは口にする。

「僕の魔力は攻撃向きじゃないからね。ゴーレム勝負だ、クリス」

 担当試験官はアリスに対し試験方式確定の確認をすると、アリスは反対などせず頷く。
 ゴーレム勝負方式では、互いにゴーレムを生成し対人ではなくゴーレム同士をぶつけ合う。
 勝敗はどちらかがゴーレム核を破壊し、相手のゴーレムを戦闘不能にさせる。
 または術者の魔力切れによる戦闘不能。
 そして制限時間内に決着がつかない場合は、時間後にダメージ量が多いゴーレムの負けとなるのがゴーレム方式での試合である。
 対人の時のように場外で負けはない。
 やっぱりゴーレム勝負と来たわね、ヴァン。

 ヴァンは元々魔力技量能力が高く、私が転入するまではクラスでも一番で魔力腕比べの時にも代表となるほど。
 そんなヴァンが対人方式を選ぶ可能性は低い。
 ここでの結果は試験に影響もすると考えると、少しでも自分が勝てる方を選ぶはず。
 アリスはここまでは推測通りと思いながらゴーレム生成を始める。
 後はどう勝つかね。ヴァンとはこれまで直接対戦はなしし、ゴーレム勝負自体初。
 技量が得意だから、武器装備を創り出し装備させ攻撃をするのは予想出来る。
 私も技量は得意な方だし、私は制御も同等に得意だから分裂させたり数でのかく乱攻撃や魔法攻撃も出来る。
 手数でいえば私の方が上だと思うが、ヴァンは生成した武器などに魔法を込められる。
 それだけで戦略には大きく幅が出来るはず。
 ゴーレム勝負は魔力分類を全て使用した勝負ともいわれる。
 技量や創造でゴーレムを生成し、質量や制御でゴーレムに魔力を溜め動かす、そして力で相手を打ち治療で癒す。
 全ての魔力分類を使え、各人の得意な魔力で戦え無数の戦い方があるのだ。

「クリス。僕は君を倒す、僕らを騙し偽っていた君を許しはしない。あの輪を乱し、裏切った報いを受けさせる!」

 そう発するとヴァンのゴーレムが完成する。
 両腕に剣の武装と、片足に円盤カッターを武装し、頭部と胸部に防具とし厚みを持たせていた。
 一方でアリスもゴーレムを完成させる。
 片腕に剣を武装させているが、他には脚部頭部腕にのみ防具を装備させるだけの至ってシンプルな形状であった。
 報いか……ヴァンにとってあの場所は大切な場所、ただでさせ過去の出来事から転入生を嫌う性格。
 そこに私だもんな、そんな風に思われもするわよね。
 私が彼の大切な場所を踏みにじったことに変わりはない。
 だからしっかりと受け止めているし、反省もしている。
 謝って許されることじゃないし、だからといって彼に花を持たせるような事をすればいいという訳でもない。
 どんなことをしてもたぶん、彼の気持ちを落ち着かせる事は出来ないと思う。

 でも何もしないというのは違う。
 彼は誰よりも最初に私に一番の気持ちをぶつけて来ている、それは今も変わらない。
 それに対して最初私はただ申し訳ないという気持ちと、言い訳をし本当の事も言えず、ただ自分の事を信じて欲しいと訴えることしか出来なかった。
 ああいう場面に対し何が正解はない。しいて言えば、あんな事を起こさない様にするのが正解だと私は思う。
 今私が出来る事は、彼のぶつけて来ている気持ちに全力でぶつかる事しかない。
 ニックの時の様に中途半端にではなく、出せる範囲の力をヴァンにぶつける。

「ヴァン、君が大切にしていた場所を私が踏みにじってしまった事を改めて謝罪する。許してくれとは言わないわ。この勝負も全力で戦う、そして私が勝たせてもらう!」

 そして互いのゴーレムが出そろった所で、担当試験官が掲げた腕を一気に振り下ろし試合開始の宣言をする。
 直後互いにゴーレムを前進させ、一直線に相手へ向かわせ、そのまま両者武装した剣を打ちつけた。
 大きな衝撃音が対戦場内に響き渡る。
 アリスのゴーレムはヴァンの一本の剣を防いでいるだけであり、まだ攻撃手段があるヴァンはすかさずもう一方の剣で攻撃を仕掛ける。
 頭部目掛けて振り抜かれた剣を、アリスはぶつけていた剣を強く弾きそのまま姿勢を沈ませ回避する。
 だが、ヴァンには三つめの武装があり右足の円盤カッターの蹴りがアリスのゴーレムを襲う。

「っ!」

 さすがに回避直後の真っ正面からの攻撃までに、回避行動はとれず直撃する。
 その際に咄嗟に出した片腕が斬り飛ばされてしまい、アリスのゴーレムはダメージを負ってしまう。
 ヴァンはそのまま追撃を仕掛けてくると思ったが、何故か後退しアリスのゴーレムと距離をとるのだった。
 どうしてこのタイミングで下がるの? 攻撃を止める意味なんてないはずなのに。
 と、アリスは疑問に思いつつもヴァンが引いてくれた隙に、すぐさま破損した箇所を魔力創造と技量で修復する。
 その一瞬、ほんのわずかな時間だけ油断した時に、ヴァンが攻撃を仕掛けたのだ。
 ヴァンのゴーレムは両腕を合わせると、武装を変化させドリル状にし『ストーム』で高速回転させながら『バースト』で一気にその武装を放つ。
 放たれたドリルは、動きの止まっていたアリスのゴーレムの胸を貫通するのだった。
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