とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第541話 色付く氷のバラ

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「色が付き出した!?」
「どうなっているんだ?」

 ダイモンとイルダが驚いている中、エメルはその現象を言い当てる。

「魔法の色を残したのか」
「そうです、エメル寮長」
「魔法の色?」

 首を傾げるダイモンにエメルが説明し始める。
 魔法には色という概念が存在しており、魔法を発動すると魔力はその色になるとされている。
 魔力は目には見えないが、魔法の原動力は魔力という観点から昔の研究者が魔法には色が存在していると発見したのである。
 あくまで色が存在しているというだけであり、魔力操作の上達具合で疑似的に対象の色も出せる様に現代ではなっており、魔法の分類分けなど芸術方面に使用されている。
 それが使える様になるかといって、必ずしも役立つわけでもなく誰でも魔力操作が上達すれば出来てしまうものなので珍しいものでもなく、学院などでもあくまで上級的な教養としてか教える対象にしかなっていないのであった。
 その為学院でも魔法の色に関して知識としてある者はごくわずかで、ダイモンらが知らないのも当然であるのだ。

「にしてもまさかお前が魔法の色が使えるほどの奴だったとはな、驚きだよ。色が付くだけでここまで作品が変わるとはね」

 先程までの氷だけの無色で表現されていたバラたちが色づくだけで、全く違う作品になり評価者たちは目を奪われていた。
 それは評価者だけではなく、担当試験官も更にはゲイネスもその綺麗さに目を奪われていた。

「(氷の作品をを削り出し作るのじゃなく、外側を残しその中に作品を創る。更には色まで付けて美しさを表現するとはね)」

 ゲイネスは自分では思いつかなかったアリスの手法に、ただただ驚き関心するのだった。
 魔法の色というもの自体は知識としては知っていたが、実際にやろうとまでは思いもしてはいなかった。
 何故ならそれほどの魔力操作が出来ないからである。
 使用するだけでも高い技術力が要求されるものを、アリスは繊細な彫刻内にそれを使用している高等技術を皆に見せつけたのだ、
 それは分かる者にしか分からないレベルの高さであり、知らない人からすればただ綺麗な作品だということが現実であった。
 暫くすると、色づいていたアリスの作品の色が淡く消えていき、元の氷のバラの作品へと戻る。

「消えたぞ。あれはずっとじゃないのか?」
「一時的にあの場に魔力を残し、徐々に消費する形で魔力の色を発生させたんだろ」
「はい、その通りです。かなりイチかバチかでしたけれど、発光する形にしたので色になるまで時間が掛かったという訳です」

 その言葉にイルダは軽く頷きながら、近くで作品を見つめ出す。
 ダイモンやエメルもゲイネスの時同様に近付き作品を見つめる。
 それから数分間、評価者である三人は両者の作品を隅々まで見終え判定をどちらにするか決める。

「それでは評価者の判断がついた所で、どちらに票を入れるか一斉に発表してもらいます」

 既に評価者には、赤や青の札が渡されておりどちらかを上げる様に指示される。
 青はゲイネス、赤がアリスで決められる。
 そして担当試験官の次の一声で、評価者は一斉に札を上げた。

「青一票、赤二票。よってこの勝負、勝者アリス・フォークロス」

 アリスはその結果に小さくガッツポーズをとる。
 一方でゲイネスは上を見上げ小さく息をはく。
 それからアリスの方に視線を向け、全てを出し切り満足した表情で「負けたわ」と告げる。

「ゲイネスの作品も凄いよ。この作品の発想は偶然だし、今の作品だけなら技術的に負けているわ」
「技術だけじゃない。発想も、作品の見せ方までがこの勝負さ」

 ゲイネスはそのままアリスに近付いて握手を求め片手を伸ばした。

「俺はお前と会えて良かったと思ってる。一方的だが感謝もしてる。最後にこんな勝負も出来て良かったよ」
「ゲイネスが相手じゃなかったらこんな作品出来なかったと思うし、こんな私と真剣勝負してくれてありがとう。それにこんな私に説教臭いこととか言われて嫌だったよね、ごめんね」
「謝るなよ。あれがあったから今俺はここにいるんだ。一方的に感謝してるって言ったろ」

 その言葉を聞き、アリスはゲイネスが伸ばした手を取り握手をする。

「またどこかで会えた時は、今日のそのやり方について詳しく教えてくれよアリス」
「それまでに、教えられるように腕を磨いておくわ」

 握手し終えるとゲイネスは「それじゃ、またいつかの日に」と告げ、立ち去って行くのだった。
 既に周囲には評価者であったダイモンたちもおらず、一足先に対戦場から出て副寮長らと合流し離れて行く姿が目に入る。
 アリスはそんな彼ら対し感謝の言葉を口にしてから頭を下げる。

「律儀だな、お前は」
「っ!? タ、タツミ先生居たんですか!? 気配消さないで下さいよ!」
「最後のやり取りを邪魔しちゃ悪いと思って、厚意でやってたんだがな」
「終わったら声掛けてくれればいいじゃないですか! 何でじっと見てるんですか! あーもう、恥ずかしい過ぎる……」

 アリスは両手で赤くなった顔を隠ししゃがみ込むのだった。
 そんな変に和んでいる対戦場の一方で、激闘が行われている対戦場にて遂に決着がつく。

「はぁー、はぁー、はぁー、くそ……まさか魔力切れで負けるとはな」

 そう口にしたニックは、その場で仰向けに倒れる。
 そして勝者であるルークの名が担当試験官から告げられ、周囲から大きな歓声が響くのだった。
 ルークも息切れをしながら一足先にその場から立ち去って行く。

「ここで、これまでサボっていたつけが出たな。くっそー……悔しいな、全くよ」

 ニックはそのまま片腕で顔を覆うのだった。
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