とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第542話 怒っていますか

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 ――同学院内、第二グラウンド。
 ――女子側の最終期末実力試験会場にて。

「ねぇ聞いた? 男子側の試験、例の子が参加しているらしいよ」
「え、嘘。それ何処情報?」

 休憩している女子らがそんな噂話をし始める。
 その近くをモランが通りかかり、彼女らの噂話が聞こえ足が止まる。

「例の子って男装していた子だよね」
「そうそう。何でも男子側の実力試験を受けてるんだって」
「何で試験受けてるの? どういう状況?」
「よく分からないけど、さっきチラッと校舎に戻った子が男子たちがそんな話をしているのを聞いたんだってさ」
「(もしかしてクリス話?)」

 モランはその噂話が気になり、詳しく訊こうとその子らに声を掛けようとした時、後ろからシルマに声を掛けられる。

「いたいた。モラン」
「シルマちゃん? どうしたの?」
「いやな、試合場所が変更になったらしくてさ。モランの姿が見えたから、ついでに伝えようと思ってさ。もしかして知ってた?」

 その問いかけにモランは首を軽く横に振り「ありがとう」と伝える。
 直後、近くで噂話している女子らの会話がシルマの耳に入り、表情が曇る。
 シルマはすぐに背を向けた。

「あいつを連想するような事は聞きたくもないんだ」
「シルマちゃん……」
「ごめんモラン。私用事あったんだ、それじゃ」

 逃げる様にその場からシルマは立ち去って行く。
 モランは追いかけても掛ける言葉がなかった為、その場でただシルマの後ろ姿を見続けるのだった。

「モラン」

 再び後ろから名前を呼ばれモランは驚きながら振り返ると、そこにはジュリルが立っていた。

「ジュリル」
「今、ちょっといいかしら?」

 モランは何の用かを訊ねることなく、頷いてジュリルの後に付いて行く。
 試験会場から少し離れ人目のない所でジュリルは足を止めた。

「ここなら話は聞かれないわね。ですが一応念の為、結界も作っておきましょう」

 そういい軽く手を振ると周囲に魔力の膜が張られたのをモランは肌で感じるのだった。

「ジュリル、ここまでするってことはやっぱりクリスのことだよね?」

 モランはジュリルが切り出すより先に呼び出した要件を訊ねると、ジュリルは軽く頷く。

「改めてだけれどモラン。貴方はどこまでクリスのことを知っていたのかしら?」
「どこまでって、その口ぶりだとやっぱりジュリルは色々と知っていたのね」
「ええ。でも私も初めからではないわ。全て知ったのは、つい二か月ほど前よ。貴方も以前私がクリスのことで訊ねた時、何も知らないと言っていたけれどその時の貴方の雰囲気からは、クリスの件で何か察していたようにみえたのだけど?」

 その問いかけにモランはすぐに返事をせず黙り込んでしまう。
 そして同時にモランは、冬休み初日のクリスとのやり取りのことを思い出す。
 その時言われた言葉からモランは、クリスには何かしらの事情があってこの学院におり、いずれこの学院を去らなければいけない可能性もあるのだと理解していたのだった。
 だがまさかその理由が名前だけではなく、性別すら異なる人物であるということに衝撃を受けていた。
 自分の抱いていた想いは? あの気持ちは何だったのか? と考えもしており未だに答えなど出ておらず試験に集中する為に考えない様にしていた。
 しかしながら、全くそう出来ていた訳ではなくこれまでの自分の好意に対する答え方や態度などを振り返り、あのような返事をしたり行動などで腑に落ちるところがいくつか思い当たるのだった。

「……クリスが何かを隠しているんだろうなとは、知っていたわ。でも言及はしてないわ」
「そう……怒っていますか、クリスや知って黙っていた私に?」
「いいえ、ジュリルの性格からすんなりと黙って受け入れたとは思えないから、色々あった上で黙っていたんだと思うしクリスも自分の立場を分かった上で私に接してくれていたんだと思えるから怒ってはいないわ。ただ、自分の中で整理が出来てないし、追い付いてないわ。何となく何かがあると知っていたからか、変に拒絶ではなくすんなりと受け止めている自分に混乱しているんだと思う」

 モランはここまで極力考えない様にしていたクリスのことを話した影響で、抑えていた気持ちがごちゃごちゃになり始める。
 少し俯きながら片手を頭を支える姿を見たジュリルはある決心をする。

「モラン、今から私の独断ですけれど私が知っているクリスの情報を全てを話すわ」


 ――同学院内、地下にて。
 これまでの試合を見続けていた他学院の学院長らは、先程のルークとニックの試合の話で盛り上がっていた。
 また後方で試合を見ていたミカロスらも同様にその話題で話が弾んでいた。

「ルークの奴、対抗戦からより強くなったか? この後実際に確かめてみたいもんだな。くーあんな試合みせられると滾ってくるな~」
「暴走はするなよリーベスト」
「分かってるよ二コル。俺も馬鹿じゃねえ、坊ちゃん連れ出してやり合おうなんてもう言ったりしねえよ。坊ちゃんも少しは滾ったんじゃねえか?」
「坊ちゃん言うな、おしゃべり騎士が! だが、たしかに思う所はあった。特に詠唱魔法の彼が僕としては気になったかな。なかなか詠唱魔法は見れるものじゃないからね」
「詠唱魔法の彼も強かったけれど、それに勝ったルークの実力は既にあの学年一かもしれないわね」

 リオナの言葉にゼオンが頷いて同意する。

「ミカロス、まだルークの試合はあるのか? それともあれで終わりか?」
「いや、まだ試合はある」
「そりゃよかった! あーでも、ここの映像に映るかはわかんねえのか。さすがにそこまで分からないよな」

 リーベストからの問いかけにミカロスは「そうだな」と答える。

「できれば映らねえかな、あいつの次の対戦相手には悪いがルークの戦いぷりをもう少し観たいんだよな。そこんところ、どうにかできたりしないのかミカロス?」
「そんな権限、ミカにある訳ないでしょ。わがまま言わない、リーベスト」
「ダメ元で聞いただけだよエリス。でも観たくないかルークの対戦? 俺は観たい、観たいぞ。あ~どうかルークの試合を映してください。お願いします」

 手を合わせながら祈り出すリーベストをミカロスは横目で見つめた後、視線を映像の方へと向ける。
 その表情は、澄ましていながらも何かを隠しているように隣にいたエリスには映るのだった。


 ――男子側の最終期末実力試験会場、アリスの対戦場にて。

「はぁ~もう最悪だった……」

 アリスは先程までいたタツミとのやり取りを思い出しため息をつくも、今は椅子に座りながら身体を休ませていた。
 次が実力試験最終戦となるが、担当試験官から開始までは再び時間が空くと伝えられていたのであった。
 次でこの試験も終わりか。相手も気になるけど、この試験が終わったらまたあの部屋に戻って退学までいるのか。それじゃ、こうして自由に外に出られるも最後か。
 囚人の様な気分になりつつも、リラックスした状態で空を見つめる。
 ゆっくりと流れて行く雲をただただ見つめながら、ふと自分のやりたいこと、将来や夢について考え始める。
 改めて退学したら何を夢にしていくかな。何だかんだ月の魔女とも会えてしまっているし、知りたいことは最悪聞いてしまえば解決できてしまうんだよな。
 前にも将来について考えた時は、もっと知識を得たり研究や調査したり、籠る感じじゃなくて色んな人から話も聞いたりできることがしたいとしたな。
 あくまでそれを中心として考えたけれど、全てを叶えられる職種とかは見つけられてないのよね。う~ん、どうしたものかな。
 アリスが頭を悩ましているとふと誰かの言葉が浮かび上がる。

「立ち止まったり迷った時は世界を見なさい」

 それが誰の言葉かは思い出せないし、何故かそれだけじゃく言葉には続きがあったようにもアリスは感じるのだが思い出せはしなかった。

「世界を見ろ、か……誰かに言われたような言葉な気もするんだけれどもな」

 すると、そんなアリスの元にトウマが真剣な表情で近付いて行くのだった。
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