とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第550話 動かされる気持ち

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「フレイ学院長?」

 思わぬ人物の横入りにマイナだけでなく他の人らも驚く。

「今あちらに映っている女子生徒は、うちの学院の生徒アリス・フォークロスです。対抗戦でも代表を務める程の実力者ですわ」
「一体何を言ってるんです、フレイ学院長」
「申し訳ありませんマイナ学院長。オービンさんからの取り――いえ、強い申し出がありまして少し協力させていただいたのです」
「協力、ですか?」

 マイナは何か言いかけた所はあえて追求せず流した。

「はい。ルークさんがぜひ試合をしたいという相手がアリスさんと聞きまして、うちのアリスさん側にも確認した所機会が与えられるのであればぜひにという返答でしたので、短期間ではありますが交換学生措置を取らせていただきました」

 ――交換学生措置、他学院同士で同意の上で行う学生交換である。
 事前に交換期間を決め、学生交流や知識向上などの目的で行われるものである。
 必ず交換対象となる当人同士の意見と同意が必要となり、一方でも反対となれば成立はしない。

「交換学生措置。いつの間に」

 するとデイビッドは何か思いある節があるのか、急に顔から血の気が引く
 その様子を横目で見たマイナは口の上手いオービンがデイビッドに交換学生措置の学院長印が押印された申請書を渡したのだと理解する。

「(オービンの奴、何を考えでこんなことを)」
「マイナ学院長に隠していたことは謝罪します。この先必ずしも互いに戦いたいと思う相手と対抗戦であたる機会がある訳でもないですし、このような場が偶然にもあったので頼ませていただきました」
「それだけかオービン?」
「そう言われるとですね……まあ、副寮長としての権限も使えるうちにというのと、私的ですが弟の頼み事を兄として叶えてあげたくて」

 オービンらしからぬ答えにマイナはため息をつき、他の学院長らはクスッと笑っていた。

「この件に関しては私側にも責任はあります。ですが、彼女の実力は保証します。ルークさんといい試合をすると思いますよ。彼の目にも適うかと」

 フレイの微笑みにマイナは「分かりました」と返答する。
 すると映像側もそろそろ試合が始まる雰囲気になり、マイナはオービンに後方で待機する様に目で訴え試合を見守り始める。
 オービンはミカロスたちの方へと戻り、横に並ぶと一番にミカロスが小声で訊ねた。

「訊きたいことはたくさんあるが、これはどういうことだオービン」
「そうよ。どうして皆にアリスとの試合を見せているの?」

 エリスも便乗しオービンに問いかけるとオービンは二人の前に手を出し問いかけをやめさせる。
 そして映像の方を指さす。

「今はルークとアリスの試合を見届けようじゃないか」

 ミカロスはこのまま追求しても絶対に答えないだろうと分かり、一度息をはき映像の方へと視線を向けた。

「試合が終わったら答えてもらうからな」
「ああ、もちろんさミカ」

 エリスも不満そうな表情をしたまま映像の方に目を向けるのだった。
 そうしてルークとアリスの試合が始まった。
 最初から想像もしてない激しいぶつかり合いに、皆驚きつつも一気にその試合に心を奪われる。
 男女同士の戦いと忘れるほどの戦いに息をのみ黙ったまま試合を見つめ続けた。
 そして決着まで見届けると、バーグベル魔法学院長のジニッシュの無意識に拍手する音だけが部屋に響いた。

「(何て戦いだ。こんな試合を見せられると滾っちまうぞ! く~俺もルークとやり合いたいたし、あのアリスとも戦いたくなったぞ!)」
「(男女同士の戦いというのを忘れかけていた。あのアリスという女子学生の力があそこまでとは思ってもなかった)」
「(アリス・フォークロス。同じ学院であまり関わりはないけれど、第二王子のルークに勝つなんて凄いわね)」

 リーベストを筆頭にゼオンやマーガレットが試合をしたアリスに対しての印象が変わる。
 映像中継が終わると学院長らが盛り上がり始める中、リーベストらも同様に先程の試合で盛り上がる。
 それからも実力試験は続き、全てを観終えた後学院長らは総評を行う為別室へと移動を始めリーベストらも同行するのだった。
 総評を行っている間、マイナはオービンを呼び出しミカロスとエリスも同室へと呼ばれる。

「さて、何を企んでいるか全部話してもらおうかオービン」
「企んでいるもなにもさっき伝えたのが全てですよ」
「嘘つけ、まだ何か隠しているだろオービン? ただでさせアリスの一件で学院で揉めたのを、それを他学院と協力して交換学生措置にしたんだ何か企んでいない訳がない」
「そもそも交換学生措置にうちから誰を出したの?」

 エリスの問いかけにマイナも同感していると、オービンはポケットから用紙を取り出した。

「最近見かけてない奴がいるだろ。そいつに俺が頭を下げて頼んだ」

 用紙を手にしたマイナに覗き込む様にミカロスとエリスが書かれた名前を見て驚く。

「嘘でしょ」
「マジかよ。たしかに姿を見てないと思ったら」
「ヒビキ・スノークを交換学生にしたのね」

 まさかの人物にマイナらが驚いていると、そこに慌ててデイビッドがやってくる。

「大変ですマイナ学院長!」
「どうしたの?」
「が、学院内で先程の映像が」

 何のことをさしているのかすぐにピンと来ないマイナだったが、デイビッドが続けてアリスとルークの試合と口にし事態を把握する。
 すぐにオービンの方に視線を向ける。

「オービンまさか、あの試合を学院内の他の会場にも中継したの!?」
「はい。皆さんに見て欲しいと言いましたよね、俺」

 マイナは頭を抱え、ミカロスはあ然としている中、デイビッドが現在の学院内の様子を伝え始める。
 ――遡ること一時間半前。
 実力試験をしている各会場の宙に、突然映像が映し出される。
 教員らも知らない事態に皆は一斉に映し出された映像に目を向けた。
 もちろん、女子側の試験会場にも同様の映像が映し出され皆目を向ける。

「何あれ? 何かの中継?」
「そんなのあったけ?」

 ざわつく試験会場でモランもそれを目にする。
 近くには同じクラスのシルマにミュルテも一緒にいた。

「何か始まるのか?」
「先生らの雰囲気を見るに、想定してないことが起きているみたいだよシルマちゃん。モランちゃんは何か知ってる?」

 ミュルテの問いかけにモランは首を横に振る。

「お、映像が綺麗になって行くぞ。何だ? 何処かの試合映像か?」
「っ! ちょっとあれってさ」
「クリス?」

 映し出されたのがアリスとルークの試合であると徐々に皆が理解し始める。
 既にクリスという男子生徒がアリスという女子であったという事は学院中に広まっていた。
 が、どうしてそんな映像が流れているのか。そもそも、どうしてアリスがルークと試合をしているのかと疑問に思う生徒もいた。
 モランは黙ったままじっと映像を見ていたが、隣のシルマは少し睨んでいた。
 その場の誰もがこんな試合ルークが勝つ、そもそも男装して忍び込んでいた女子がルークに挑むだけ無駄という考えが多数であった。
 だが中にはアリスがクレイス魔法学院の代表者として対抗戦に出ていた人ではないかと思い始める人もいて、どうしてと考えだす生徒もいるのだった。
 そんな中試合が始まり、想像以上の激しい試合に驚きつつも次第に観ていなかった人も皆が黙って観ている試合に注目し始める。
 各会場で似た現象が起こり、ルークに対し健闘するアリスに感情移入する生徒も出たり、盛り上がる会場もあるのだった。
 そしてまさかの決着に映像を観ていた全員が驚く中で、映像が終わる。
 ルークとアリスの試合を見届けたモランは小さく「凄かった」と呟くと、隣でシルマが口を開く。

「たしかに凄かった。あいつがルーク様に勝つなんてな。当然だが、これまでもあいつは試験で女子というのを隠し男子らとぶつかっていたんだな」
「そうだね。クリスは男子の中で男子として彼らと過ごし、ぶつかって成長したんだろうね。不純な気持ちだけじゃあそこまで強くはなれないだろうね」

 これまでのクリスとしての活躍をシルマとミュルテは振り返る。

「そうよ。彼女は彼らの中で成長し、強くなった。私にも勝てるほどにね」
「ジュリル様!?」

 背後から突然声を掛けて来たジュリルにモランらは驚く。
 ジュリルの後ろにはウィルとマートルも立っていた。

「(にしても、ルーク様に勝つとはね。やるわね、アリス)」

 そう思いながらジュリルは小さく微笑む。
 またモランもアリスに対し思うことがあるのだった。

「(凄いなクリス、いやアリスか。最初に会ったあの日から貴方は凄いと思っていたけど、ここまでしてしまうなんてね。私も負けてられないな)」

 するとモランは立ち上がり、ジュリルの方を振り返る。

「さぁジュリル、私たちも負けない試合をしましょう」

 その後、アリスとルークの試合を見て少なからず心を動かされた生徒、アリスに対する気持ちの変化があった生徒が各試験会場で行動として見られるのであった。
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