魔女っ娘珍道中~薔薇の魔女は好き勝手に生きていきます~

にわかオタクと犬好き

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魔女っ娘、魔法を教えることにする

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  領主に連れられて私は屋敷の訓練場までやってきた。屋敷と渡り廊下で繋がれた場所で壊れにくい様に結界も張ってある。
  足下は土で壁に訓練用の剣や槍が掛けられている。
  兵士と思われる男たちが訓練している隅で、木製の的に向かって魔法を放つ淡い金髪の小さな男の子がいた。
  練習しているのは風の魔法。風の球を的に向けて放つ。しかし、的に当たる前に風の球は霧散する。
  その後、男の子は何度も魔法を放つが全て的まで飛ばない。男の子は困ったような悔しいようなそんな顔をして自分の手を見つめている。

「あれが息子のカイルだ」

「問題っていうのは魔法が的まで飛ばないってこと?」

「あぁ。魔法として発動している以上、魔力は込められているのに何故か的まで飛ばないんだ。本人も気にしていてな。何とかしてやりたいのだが、原因がわからないんだ」

  あれ?何で?……あぁそうか。私はママに教えてもらったからわかるけど普通の人にはわからないんだ。
  どうやら森の外では魔法というものについてしっかりと理解している人は少ないらしい。だってわかってたらこんなの問題とすら言わないもん。
  私たちが話しているとこちらに気づいたのか男の子……カイルくんがやって来る。

「父上、来ていらしたんですか」

  年に似合わず、しっかりした喋り方をする。貴族の子どもってみんなこうなのかな?

「あぁ。調子はどうだ?」

「はい……何度やってもやはり上手く飛んでくれません」

  そう言いながら悲しそうな顔をするカイルくん。

「そうか。今日は新しい魔法の先生を紹介しようと思ってな」

「魔法の先生……ですか?」

  私の方を見るカイルくん。まぁ、自分とそう年も変わらない私みたいなのを先生と思えという方が無理があるよね。とりあえず自己紹介しとこう。

「ロゼです」

「あ、失礼しました。カイル=スクライドと申します。よろしくお願いしますロゼ先生」

  丁寧に挨拶してくれるカイルくん。何か年下なのに私よりもしっかり挨拶出来てる。何か私、ダメなやつみたい。
  カイルくんはまだ少し戸惑ってるみたいだけど、父親が連れて来た人だから何とか納得しようとしてるみたい。

「では、お互い紹介も済んだことだし、早速お願いできるか?」

「いいけど、領主さんもいるの?」

「せっかくだからな。どんな授業をするか見てみたい」

「いいけど、私のやり方でやるから文句は受け付けないよ」

「無論だ。こちらが無理を言っているのだからな」

  まぁ、そういうことならいいか。兵士たちは自分の主人が近くにいてやりずらそうだけどね。まぁ気にせずやりますか。

「じゃあ、えーと、カイルくんって呼んでいい?」

「あ、はい!」

「じゃあカイルくん。手、貸してくれる?」

  私がそう言って手を出すと、戸惑ったような顔をするカイルくん。少し迷っておずおずと手を出す。私がその手を握って握手の形になった。
  何でこんなことをするかというと、カイルくんの魔力と適性を調べるため。ホントは握手しなくてもわかるけど、ジロジロ見られるより、こっちの方が相手も気楽でしょ?急に手を握られたからかカイルくんの顔が赤いけど気にしない。
  まずは魔力を測る。うん。この歳にしては多めかな。適性は……うん。わかった。私はカイルくんの手を離す。

「カイルくんの魔力量はその歳にしては多い方だね。で、適性なんだけど……土だね」

「え!?」

「今のでわかったのか!?」

「うん。まぁね。カイルくんの適性は土属性。他の属性も使えなくはないけど、一番は土。だからそっちを伸ばしていった方がいいと思うんだけど、どう?」

  普通の人間は適性というものがある。ほとんどの人は火、水、土、風の4つのどれかになる。適性が土属性だからといって他の属性が使えない訳じゃない。得意、不得意があるってだけ。私?私はほら魔女だから。
  で、今調べたら、カイルくんの適性は土属性。土属性に関してはかなりの才能を持ってるみたい。代わりに他の属性はあんまりかな。だから土属性を中心に教えた方が伸びると思う。

「あ、あの、ロゼ先生……」

「どうしたの?」

「あの……風属性ではダメでしょうか」

  何で風?そういえばさっきも風の魔法を使ってたけど……。何かあるのかな?

「何で風属性がいいの?」

  なるべく優しく聞く。叱ってる訳じゃなくて純粋に疑問に思ったから。

「あの……父上も姉上も風属性なので……」

  同じがいいってことかな?領主の方を見ると、カイルくんに聞こえないように説明してくる。詳しく聞くと、どうやらこのスクライド家は風の魔法が得意な家系らしく風の適性が高い人間がよく生まれるらしい。
  そんなせいかスクライド家といえば風の魔法という風になってしまったらしい。
  本人たちはあまり気にしていないらしいけど周りは勝手にそう思っているらしい。
  カイルくんは次期当主なので風の魔法が使えないと周りの貴族から色々と言われるとカイルくんは思っているらしい。
しかも、それはあながち間違ってはいないらしく、「スクライド家の次期当主が風の魔法をろくに使えない出来損ない。」とか「本当に現当主の子なのか。」とか言ってくる心無いやつがいるらしい。
  貴族ってホントにめんどくさい。別に適性なんて関係ないでしょうに。

「……じゃあ、土属性を中心に風属性もやっていくって感じでいい?」

「はい!お願いします!」

  まぁ本人がそうしたいって言ってるんだからいいか。とりあえず周りからうるさく言われない程度にすればいいよね。

「じゃあ、早速だけど魔力循環やってみて」

「え?」

  キョトンとするカイルくん。
あれ?私、変なこと言った?

「魔力循環ですか?」

「うん。こう……全身に魔力を巡らせるの。魔法を使う上で基本なんだけど……」

  あれ?なんでそんな顔するの?魔力循環は基本だよ?全身に魔力を巡らせながら制御する基本中の基本。
……え、まさかそこから?領主の方を見ると同じような顔をしていた。ウソでしょ……。

「えっと……魔法を使う上で魔力の制御が大事っていうのはわかる?」

「はい。きちんと制御出来ていないと魔法が暴走したりするんですよね」

「そう。だから魔法を使う者は魔力循環をして制御を覚えていくの」

「そうなんですか。えっと、ロゼ先生、どうやれば……」

  えー。もしかしてこれが普通なの?魔力循環しないでどうやって制御を覚えてるの……。
  とりあえず、魔力循環のやり方を教えとこうか。

「魔法を使うとき、自分の体内の魔力を集めるでしょ?それを全身に回していく感じ。わかる?」

「……ごめんなさい。わかりません」

「えっと、じゃあ……手に魔力を集められる?」

「あ、はい。それなら」

  そう言って手に魔力を集め始めるカイルくん。
  いつも魔法を使うとき手に魔力を集め出るみたいだからそれはわかるみたい。

「じゃあ、集めた魔力を手に維持したまま肩まで持っていって」

「えっと……はい」

  ゆっくりだけどカイルくんの肩まで魔力が伸びていく。これが出来るなら大丈夫かな。

「次に胴体まで持っていって」

「……はい」

「次は反対の腕」

「…………はい」

「じゃあ次は右足に」

「…………あっ」

  右足の膝程まで魔力を集めたところでカイルくんの魔力循環が解除されてしまった。うーん。これはどうしたものか。

「ごめんなさい。ロゼ先生」

「ううん。大丈夫よ。でも、これは魔法を使う上でとっても大事なことだからちゃんと出来るようになってね」

「はい。あの……これが出来ないとどうなるんですか?」

「……そうね。これが出来ないと魔法が暴走するかもしれないし、威力も低い魔法になっちゃうかな」

「えっ!?そうなんですか?」

  驚くカイルくん。領主も同じような反応ってことはどれだけみんなが魔法を理解していないかがわかる。

「そう。だから悪いけど、これが出来るまで魔法は教えられないわ」

「わかりました。頑張ります!」

  そう言って再び魔力循環を始めたカイルくん。領主も同じようにやっている。今回もカイルくんは右足の膝程、領主は左足にいこうとして解除された。

「難しいです」

「うむ。上手く出来ないものだな」

「これは慣れだから。やっていくうちに出来るようになるよ」

  この魔力循環は慣れだ。習慣的にやっていく必要がある。私も最初は出来なかった。

「とりあえず私がやってみるから参考にしてね。ゆっくりいくよ」

  カイルくんと同じように右手から始める。私の右手がぼんやり光る。わかりやすいように色をつけてみた。
  右手から右肩、胴体、左肩から左手、胴体から右足、胴体から左足、そして首から上。私の全身を魔力が覆った。

「すごいですロゼ先生!」

  カイルくんが尊敬の眼差しで見つめてくる。

「流れるようだったな」

  領主も関心している。

「今、私がやったくらいの速さで全身を覆えるようになるのが目標ね」

  ホントは息をするように何も考えなくても出来る方がいいんだけど、とりあえず魔力循環が出来るようになればいい。

「頑張ります!」

  カイルくんも気合い十分で再び魔力循環を始める。この調子ならすぐ出来るようになるかな。でも魔法を教えるとなるとけっこう時間がかかりそうだね。
アンナちゃんのところに一回帰った方がいいかもね。



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