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魔女っ娘、王都へ
しおりを挟むオレプを買い込み、街を出てから、私はひたすら王都へと飛んでいた。
途中にある街にも寄ったんだけどねぇ。大したものなくて。
そんなわけでひたすら王都へ爆進中。
「そろそろ王都に着きそうなんだけど……」
携帯端末の地図を見ながら呟く。ふと視線を下に向けると豪華な装飾がついた馬車を見つけた。
「あんな馬車に乗ってたら襲ってくれって言ってるようなものでしょうに……」
馬車の周りをオーガが取り囲んでいた。5匹か。群れからはぐれたにしては数が多い気がする……。
周りを見渡すとローブを着た男が杖を持って立っていた。
「あいつか……」
多分、あいつがオーガを操ってるんだね。召喚魔法を使えるなんて珍しい。私は空から雷魔法を発動。手加減したから気絶しただけだと思うけど……。
馬車の方を向くと、護衛の騎士はオーガを近寄らせないように上手く立ち回っている。しっかり訓練された実力者ばかりだ。馬車の中にいるのはかなり身分の高い人なのかな。
このままでも大丈夫そうだけど、手間を省いてあげよう。
私は再び空に上がり、光魔法を発動。光の矢がオーガたちの肩と膝を撃ち抜き、地面に縫い付ける。オーガは4m近く身長があるから矢を大きめにしたけど……あれじゃもう矢じゃなくて杭だね。騎士たちは突然現れた光の杭に驚いたが、機を逃すことはしなかった。慎重に近づき、的確にとどめを刺す。やっぱり優秀だね。
私は地面に降り立ち、ローブの男を引き摺って馬車へ向かう。
「何者だ!」
私に気づいた騎士が誰何する。他の騎士も剣を手に警戒し、いつでも振れるようにしている。
「ただの通りすがり。オーガを操っていた犯人を渡そうと思って」
私は手に持っていた男を騎士たちのところへ放る。大の男を片手で放り投げた私に驚きながらも男を捕縛する騎士たち。
すると一人の騎士が私のところへ歩み出る。
「助太刀、感謝する。トラヴァース=ハイネルだ」
「ロゼだよ」
「うむ。ではロゼ殿、詳しい話を聞きたいので我々に同行してもらってもいいだろうか」
めんどくさいけど……あっちも仕事だろうし、しょうがないか。
「わかった。いいよ」
その時、馬車の扉が開き、40代くらいの男性が出てきた。その瞬間、トラヴァース始め騎士たちが一斉に跪く。
「皆、楽にせよ」
厳かに告げる男性。こちらを見てゆっくりと頷く。
「余はアレックス=イングラシア。そなたが助力してくれたおかげで、こうして皆、生きている。感謝する……それにしても、よく似ているな。リリィに……」
最後の言葉に私は驚かずにはいられなかった。
「ママを知ってるの?」
「そう警戒するな。リリィとは先代からの仲でな。よく城に来ては妻とお茶を飲んでいた。」
そう言われて警戒を解く。そして思い出した。ママが昔、言っていた。
「あ、わかった!奥さんの尻に敷かれてるいつも愚痴ばっかりの王さまだ!」
その瞬間、空気が凍りつく。王さまは笑顔のまま固まり、騎士たちは跪いたまま冷や汗ダラダラである。
「はぁ……リリィのやつ。娘に何を吹き込んでるんだ」
「あ、これ内緒って言われてたんだった」
「ゴホン……まぁいい。とにかく、ここで会ったのも何かの縁だ。王都まで余の馬車に乗って行けばいい」
「え……でも飛んだ方が速いし」
「ハハハ。全く、そういうところはリリィそっくりだな。そなたのことをもっと聞きたいのだ」
まぁ、ママのことも聞きたいしいいかな。私の知らないママのことを知りたい。
「そういうことなら乗って行くかな」
「うむ。では出発するとしよう。王都はもうすぐだ」
王さまに促され、馬車に乗り込む。その時の騎士たちの顔はどこか複雑そうだった。そこでふと思い返す。
「あれ、もしかして私、失礼なことしてる?」
「本来ならそうだが、気にするな。リリィなど我が物顔で馬車に乗ってたぞ。それに“魔女”は特別だからな」
「ふーん。じゃあ、いいか」
ママがそうしていたなら私もそうする。やっぱり、ママはすごいなぁ。たまにどこかに出かけて行ったのは王さまたちに会いに行ってたのかも。
「それにしても……この馬車、高そうだね」
外から見ても豪華な装飾で高そうだったけど、中も同じくらい高そう。広くて、ふかふかのソファにティーセットまであるし。
「確かに相応に金はかかっているな。王族の使う馬車ともなると、そうしなければならんのだ」
「あぁ、臣下より質素な物は使えないっていう面子のことね。ママが言ってたよ。王さまは威厳がないから見た目で偉く見せてるって」
「リリィめ……娘にいらんことを吹き込んで」
王さまが大きなため息を吐く。幸せが逃げるよ。
「まぁ、いい。王都に着いたら余の家族を紹介しよう。皆、リリィとはよく会っていたからな。そなたの顔を見ればすぐにリリィの娘だとわかるだろう」
「そんなに似てる?」
「あぁ。髪と瞳の色は違うが、そっくりだ。初めはリリィと見間違ったくらいだからな」
そうなんだぁ。ふふ。
ママと似てるって言われるのは嬉しいな。ママにはよく「ママとそっくりね」って言われてたけど、他人から言われるのも嬉しい。
「ありがとう」
その後、王都の話を聞きながら馬車に揺られ、ついに王都へ到着した。
さすがに王さまの馬車だけあって門を素通りできた。そのまま城へと走って行く。過ぎ行く街並みは賑やかで、人も店も辺境伯領とは段違いだ。
馬車は城門へを通って止まった。私が馬車から降りると周囲は驚いていたけど、特に何か言われることはなかった。
「では、案内しよう。ついてまいれ」
王さまの後ろについて廊下を歩く。大きな階段を登ると脇には鎧の置物。なんかお城って感じだなぁ。
しばらく歩きくと突然、雰囲気が変わった。廊下に赤い絨毯が轢かれている。ここから別の空間になっていた。それまでの廊下と絨毯の境目に騎士が2人立っている。
「ここからは王族と王族に招かれた者しか入れない。まぁ、リリィは気にせず入って来たがな」
絨毯の廊下を歩いて少し。王さまはある部屋の前で止まった。腕のいい職人が作ったであろう扉を開く。軋んだ音もせず、滑らかに動く扉。
「帰ったぞ」
王さまが室内に声をかける。室内には4人いた。見た目、20代くらいの男女。私と同じくらいの年の少女。そして多分、カイルくんくらいの年の少女。
「おかえりなさい。あなた」
20代くらいの女性が王さまにそう言う。あなた!?もしかしてこの人、王さまの奥さんなの!?全然見えない。娘かと思った。
「おかえりなさい。父上」
同じく20代くらいの男性。この人は息子なんだ……まぁそれはわからないでもない。奥さんの衝撃が大きすぎる。
「おかえりなさい。お父様」
「おかえりなさい」
残る2人の少女。娘だね。2人共、すっごい美人。奥さんの血か……。
「うむ。突然だが、今日は客人がいる」
王さまが私を紹介すると、4人は固まって私を凝視する。そんなに見つめられたら穴開くよ。
「リリィ!」
奥さんがママの名前を呼びながら私の所まで駆けてきて抱きしめた。頬擦りまでされる。ちょ……苦しい。
「こら、フェリス。ロゼが困っているぞ」
「ロゼ……ということはリリィの娘ね!あぁ……なんて可愛いの!色は違うけど顔立ちはリリィそっくりね」
王さまの制止もそっちのけで奥さんは私を抱きしめる。全然止まってくれそうにないので無理矢理引き剥がす。残念そうな顔してもダメだよ。
「お母様ばっかりずるいわ。初めまして。私、アリシアと申します。」
「ロゼだよ。ママの……リリィの娘」
「えぇ。リリィさんにはとってもお世話になってるわ。……ねぇ、ロゼって呼んでもいいかしら?」
「ん?いいよ。じゃあ私もアリシアって呼ぶね」
「えぇ。よかったらお友だちになって」
少し照れながらそう言ってくるアリシア。うん、可愛い。
「もちろん。よろしくね」
「よろしく。ロゼ」
嬉しそうに笑うアリシア。まさに花が咲いたような笑顔だね。
「あの!私、ティファっていいます。私のお姉さまになってください!」
「え?お姉さま?」
「はい!私のお姉さまになってください。とっても綺麗な黒髪と赤い瞳、こんなお姉さまが欲しかったんです!」
とっても可愛いけど、しっかり奥さんの血を受け継いでるんだなぁ。すごいもん勢いが。思わず頷いちゃったよ。
「ありがとうございます!ロゼお姉さま」
まぁ、悪い気はしないけどね。私、一人っ子だし。アンナちゃんも「ロゼお姉ちゃん」って呼んでたしね。
嬉しそうに私の腰に抱きつくティファちゃん。頭を撫でるとさらに嬉しそうに抱きつく力が強まる。あと、奥さん。後ろから抱きつかないで。
すると、今まで後ろで固まっていた男性、王子が私の元へ歩いてきて跪く。
「私はアルフレッドと申します。どうか私と結婚してください」
「え、ヤダ」
跪いたまま、固まり、砂になって崩れる幻覚が見えたような気がした。だっていきなり求婚されてもね。答えは決まってるよね。
「容赦ないな。本当にそういうところはリリィそっくりだ」
そんなこと言われてもね……。
「ダメよ、お兄様。例えお兄様でもロゼは渡さないわ」
「そうです!身の程を弁えてください!」
ティファちゃん……容赦ないね。自分のお兄さんでしょうに。あぁ、王子が崩れた。妹に言われてショックだったんだね。
「ゴホン……皆、落ち着け。まずは席についてお茶でも飲もう。」
収集がつかなくなったところで王さまが間に入る。正直、助かった。私、どうしたらいいかわからなかったもん。
「そうね。まずはお茶にしましょう。あぁ、懐かしいわリリィともこうしてよくお茶を飲んだのよ」
うん。ママの話は詳しく聞きたいけど、とりあえず離してくれるかな……。私、子どもじゃないから膝の上はちょっと……。
「お母様、ロゼが困っています。離してください」
ありがとう、アリシア。さすが友だちだよ。
「そうですよ、お母様。ロゼお姉さまの膝の上は私が座るんです!」
ティファちゃん、それはちょっと違うよ……。
「まぁ、こうなるだろうとは思っていたが……」
そんな私たちのやり取りを王さまはお茶を優雅に飲みながら見つめる。ちょっと、見てないで助けてよ。あんたの嫁と娘でしょうが!
そんな視線を送るも王さまは我関せずという態度でお茶を飲んでいた。後で覚えてろ……。
あと、いい加減戻ってこい王子。
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