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贖宥状とシモニーの取引③
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「誠にありがとうございます、ウェルヘム様。あなたは噂に違わず慈悲深いお方であることがよく分かります。対してあなたの奥方様とご家族の方はなんて無神経で物分かりの悪い方々のようですね…私も心が痛みます…。」
涙を目に溜めて、本当にウェルヘムに同情や不憫な気持ちを持って慰めの言葉と妻であるリリアンとラフェルとガゼルを含めた家族に暗に非難めいた発言をしたが内心は違う。
『あなたみたいなボンクラは本当に懐柔がしやすい、都合のいい取引相手のようだな。しかも公爵という高位に就いている貴族なのだから、私としても心強いパートナーになれますよ、ウェルヘム様。まあ、その地位と権力、財力を利用するだけ利用しますがね。』
今度は今までよりもずっと多額の寄付が得られそうだ。
邪な感情をウェルヘムとスカーレットに向けるが、二人は全く気付かない。
それどころか彼の協力が出来る事によって得られるメリットばかりをヒソヒソと贖宥状を見ながら話し合っていた。
「スカーレットよ、この贖宥状さえあれば私達二人は幸福を得られるとクルルギ大司教様から申し出られたのだ。それに彼が全面的な協力を得る事が出来れば、私と君の仲を邪魔するリリアンやラフェル達を黙らせることだって可能になる。」
「まあ、本当ですの!?ウェルヘム様!!あのお邪魔虫達が私達に口出しを封じる事が出来るのですか!??」
「ああ本当だよ。この教会がどれだけの影響力を持っているのか嫌という程分かっている筈だ!!その教会で教皇に次ぐ権力と財力を持っているのが今目の前にいる彼だ!!彼と力を合わせればあいつ等の干渉をうける事が無くなるんだ!!」
いくら、私の兄弟や両親、妻がこの国の国王や王妃から信頼されているとほざくがなんといってもこっちはこの国で昔から強大な勢力を誇るアリエント教で平民のみならず貴族や王族も信仰している。
だからこそ、国王や王妃も教皇に対して対等に接しているのだ。
その現教皇であるカエサル・イルベルドは、生真面目で正義感の強い性格の人物だが、何故か彼に厚い信頼を寄せており、直属の部下として重宝している。
その為、彼の威光と地位にすり寄る貴族は多い。
それもその筈だろう、彼はカエサルから直々にこの教会の運営を任されているからだ。
だが、カエサルは恐らくこの教会の秘密の部屋で贖宥状やシモニーの発行を大量にしている事を。
カエサルは生真面目で正義感が強い性格であると同時に、1度信用してしまえば疑う事をしないという義理堅さもある。
だからこそ彼に付け入る隙を与えてしまっているのは否めないが、特に気にする事はないか。
むしろ、私とスカーレットにとってはその方が都合がいいかもしれないからな。
それよりも。
「しかし、この贖宥状はただではないのだろう。分かっているさ、クルルギ。一体いくらいるんだ、遠慮なく言ってくれてもいいぞ。私とスカーレットにとっては多大な利益をもたらしてくれる大事な大事な書類だからな。」
「それは大変ありがたい。そうですよ、この贖宥状はあなた方の為にご用意したものですから。とても、貴重な物ですので…それとシモニーに関しても現在では私の信頼していた部下の一人が辞めたばかりでして……もし良ければ辞めた部下の代わりの地位にあなたを推薦したいのです。」
「それは、始めて聞いたな……それで私がもし公爵の地位を捨てて君がカエサルに推薦して君の部下になった場合はそれ相応の待遇と報酬を得られる保証はあるのか??それが出来なければ、贖宥状はともかくシモニーの取引はしないぞ!」
語気を少し強めるウェルヘム。
「当然ですわ!なんたってウェルヘム様はれっきとした公爵なのですわ!!そこら辺の司教達と一緒の待遇なんて侮辱以外の何者でもありませんわ!!」
スカーレットもまたウェルヘムと同意見だ。
「ご心配なく。報酬の方はそれ相応の額をお支払いいたしますし、私の部下として2、3年仕えて働くだけで、私の後任としてこの教会の運営を全て任せるつもりですよ。」
カエサル様も承知しています、と表情を崩さずに金庫からカエサル自身のサインの入った書類を二人に見せるクルルギ。
「正真正銘、本物の書類ですよ。」
笑顔を見せる彼に二人は疑う事もせずに嬉しさのあまり興奮していた。
その様子にクルルギは微笑む。
この単純な二人からどれ程の金銭を毟り取ることが出来るかと考えながら。
涙を目に溜めて、本当にウェルヘムに同情や不憫な気持ちを持って慰めの言葉と妻であるリリアンとラフェルとガゼルを含めた家族に暗に非難めいた発言をしたが内心は違う。
『あなたみたいなボンクラは本当に懐柔がしやすい、都合のいい取引相手のようだな。しかも公爵という高位に就いている貴族なのだから、私としても心強いパートナーになれますよ、ウェルヘム様。まあ、その地位と権力、財力を利用するだけ利用しますがね。』
今度は今までよりもずっと多額の寄付が得られそうだ。
邪な感情をウェルヘムとスカーレットに向けるが、二人は全く気付かない。
それどころか彼の協力が出来る事によって得られるメリットばかりをヒソヒソと贖宥状を見ながら話し合っていた。
「スカーレットよ、この贖宥状さえあれば私達二人は幸福を得られるとクルルギ大司教様から申し出られたのだ。それに彼が全面的な協力を得る事が出来れば、私と君の仲を邪魔するリリアンやラフェル達を黙らせることだって可能になる。」
「まあ、本当ですの!?ウェルヘム様!!あのお邪魔虫達が私達に口出しを封じる事が出来るのですか!??」
「ああ本当だよ。この教会がどれだけの影響力を持っているのか嫌という程分かっている筈だ!!その教会で教皇に次ぐ権力と財力を持っているのが今目の前にいる彼だ!!彼と力を合わせればあいつ等の干渉をうける事が無くなるんだ!!」
いくら、私の兄弟や両親、妻がこの国の国王や王妃から信頼されているとほざくがなんといってもこっちはこの国で昔から強大な勢力を誇るアリエント教で平民のみならず貴族や王族も信仰している。
だからこそ、国王や王妃も教皇に対して対等に接しているのだ。
その現教皇であるカエサル・イルベルドは、生真面目で正義感の強い性格の人物だが、何故か彼に厚い信頼を寄せており、直属の部下として重宝している。
その為、彼の威光と地位にすり寄る貴族は多い。
それもその筈だろう、彼はカエサルから直々にこの教会の運営を任されているからだ。
だが、カエサルは恐らくこの教会の秘密の部屋で贖宥状やシモニーの発行を大量にしている事を。
カエサルは生真面目で正義感が強い性格であると同時に、1度信用してしまえば疑う事をしないという義理堅さもある。
だからこそ彼に付け入る隙を与えてしまっているのは否めないが、特に気にする事はないか。
むしろ、私とスカーレットにとってはその方が都合がいいかもしれないからな。
それよりも。
「しかし、この贖宥状はただではないのだろう。分かっているさ、クルルギ。一体いくらいるんだ、遠慮なく言ってくれてもいいぞ。私とスカーレットにとっては多大な利益をもたらしてくれる大事な大事な書類だからな。」
「それは大変ありがたい。そうですよ、この贖宥状はあなた方の為にご用意したものですから。とても、貴重な物ですので…それとシモニーに関しても現在では私の信頼していた部下の一人が辞めたばかりでして……もし良ければ辞めた部下の代わりの地位にあなたを推薦したいのです。」
「それは、始めて聞いたな……それで私がもし公爵の地位を捨てて君がカエサルに推薦して君の部下になった場合はそれ相応の待遇と報酬を得られる保証はあるのか??それが出来なければ、贖宥状はともかくシモニーの取引はしないぞ!」
語気を少し強めるウェルヘム。
「当然ですわ!なんたってウェルヘム様はれっきとした公爵なのですわ!!そこら辺の司教達と一緒の待遇なんて侮辱以外の何者でもありませんわ!!」
スカーレットもまたウェルヘムと同意見だ。
「ご心配なく。報酬の方はそれ相応の額をお支払いいたしますし、私の部下として2、3年仕えて働くだけで、私の後任としてこの教会の運営を全て任せるつもりですよ。」
カエサル様も承知しています、と表情を崩さずに金庫からカエサル自身のサインの入った書類を二人に見せるクルルギ。
「正真正銘、本物の書類ですよ。」
笑顔を見せる彼に二人は疑う事もせずに嬉しさのあまり興奮していた。
その様子にクルルギは微笑む。
この単純な二人からどれ程の金銭を毟り取ることが出来るかと考えながら。
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