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プロローグ
第五話
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今日の授業も退屈。勉強したくない人間にとって、この時間は苦痛以外の何ものでもない。今日も授業をサボることにした私は、その時間の大半を夢想に費やすことに決めた。これはある種、現実逃避とも取れる行動だったけれど、この時間の使い方が一番楽だった。勉強なんかが、本当に役に立つのかな。この社会で必要な訳でもないだろうに。ただ、大学に入るためだけに単位を取って、良い会社に勤めることだけが、人生の全てではないと思う。何かはわからないけれど、他に目的があるからこそ、生まれた……と、私はそう思いたい。そしてこれらの情報は、私にとっては不要なもの。不要なものは受け取らない。とにかく、私には学校というものが向いていない。人には向き不向きがあるのだ。
それではこの先どうやって生きていくのかと言われると、その質問に対しては多分、答えることはできない。それは重々承知だけれど、私には目の前で行われていることが、どうしても必要だとは思えなかった。学問だけができても、社会で通用するとは限らない。いくら猛勉強して、良い大学に入ったからといって、社会でそれが役に立たなければ意味がないから。いざ、実際に社会に飛び込んだ時に意外な落とし穴があるかも知れないし、勉強ができるということと、働く能力という行為は別物だと思う。果たして、社会の現場で学生時代のスキルが通用するのだろうか。社会とは、人同士が付き合う人間関係という、コミュニケーション能力というものが一番大切なのであって、人と全く関わらなかったが為に人間関係で躓くようなケースは多いのではないか。人との関わり方が分からなくて失敗するようなパターンだけはご免だ。それなら専門分野を学んだ方がよっぽど良いと思う。その方が、即戦力として扱って貰えるに決まっているし。大体、この日本には万を超える職種があるというのに、学校で専門的な知識を学べないのは厳しいことだ。今からでもなりたい職業の為に、それらの知識を吸収するべきだ。学問だけできてもそれが何になるの? 学者にでもなりたいなら別なのかも知れないけれど。
かといって、私は特になりたい職業なんてものはなかった。だけど、まだ十数年ぽっちしか生きていないこの一介の高校生に、やってみたいことは? なんて聞かれても分かる訳がないんだ。もっと人生というものの深みを見出さなければ、本当にやってみたいことなんて分かるはずはないから。
この日本の社会というのは、本当に残酷だと思う。義務教育を終わらせ、高校、大学の期限内にやりたいことを探せというのだから。私はもっと、人生にゆとりを持たせたい。その中でこそ見えるものがきっとあるから。
それでも、何かを探さなければ周りから置いてけぼりにされる。だから皆、必死で何かを探している。
だから、この社会は何かおかしい。
この世界は誕生した途端、将来的に働くことを強要される……。子供のうちから無理やりに教育を受けさせ、いつの日か大人になれば社会の奴隷どれいにさせることが決められている。このシステムは本当に間違っているんだ。
ゆっくりと夢想に耽るつもりだったのに考えが脱線してしまった。あとはいつもの夢の中に行こう。現実逃避とは違う、自分にとって意味のある夢を見るんだ。今日はファンタジーの世界にでも入ってみよう。そこはユートピアで、そこに住んでいる住人は皆、私の知り合いだ。幸せな場所で、他の誰にも邪魔されることはない……そんな世界。きっと、そこでなら私は頑張れるはずだから。
——
ずっと夢を見ていた気がする。目を覚ますと、ざわざわと周りから雑音がしてきた。夢想に浸かりすぎてまた寝てしまったらしい。今日もフルタイムで、授業をボイコットしたことに満足していると、担任の一ノ瀬先生が、話しかけてきた。
「白衣霞、今日も授業を全て聞いていなかったな。まったくお前って奴は……。やる気というものが、少しでもあるのか?」
「先生……いえ、返す言葉もございません。私という存在はきっと、天使が住んでいるような世界から舞い降りてきたので、この人間の世界というものが、そもそも合わないのだと思います」
「あぁ、本当に仕方のない奴だな……。今日はそんなお前に朗報を持ってきたぞ」
「朗報……ですか?」
私がその言葉を疑うような目を先生に向けていると、一ノ瀬先生は微笑んで言った。
「白衣霞には課外授業として、君がいつも妄想の中に行っているというその世界を是非、教えてほしいんだ。何、簡単なことさ。その世界観を、絵や文章なんかにしてノートに取って貰いたい」
「私の世界を……ノートに?」
一ノ瀬先生はそういうと、私の目を真剣に見つめて来た。何を考えているんだろう……。その夢の中だけの世界をノートなんかに書いたところで、それが一体何になるのか。そんなの無駄なことです……と、私がそう伝えようとすると、意外な答えが返ってきた。
「実は、先生たちで相談したことなんだが、君にはきっと、この地球に住む人たちに、何か伝えたいことがあるんじゃないかな? だからそれを是非、表現して欲しい。授業は今まで通り、サボって貰っても構わない。その時間でノートを使い、君の世界の色々なものを見せて欲しい。いや、何……それが君にとって、一番、良いのかも知れないと前々から思っていたことなんだ。私が、他の先生たちと相談して決めたことでもある。いいかい? これからこのことを君の授業内容とする。しっかりと頑張るんだぞ」
一ノ瀬先生はそう話し終えると、また微笑みを浮かべて、颯爽と職員室へと帰って行った。
それではこの先どうやって生きていくのかと言われると、その質問に対しては多分、答えることはできない。それは重々承知だけれど、私には目の前で行われていることが、どうしても必要だとは思えなかった。学問だけができても、社会で通用するとは限らない。いくら猛勉強して、良い大学に入ったからといって、社会でそれが役に立たなければ意味がないから。いざ、実際に社会に飛び込んだ時に意外な落とし穴があるかも知れないし、勉強ができるということと、働く能力という行為は別物だと思う。果たして、社会の現場で学生時代のスキルが通用するのだろうか。社会とは、人同士が付き合う人間関係という、コミュニケーション能力というものが一番大切なのであって、人と全く関わらなかったが為に人間関係で躓くようなケースは多いのではないか。人との関わり方が分からなくて失敗するようなパターンだけはご免だ。それなら専門分野を学んだ方がよっぽど良いと思う。その方が、即戦力として扱って貰えるに決まっているし。大体、この日本には万を超える職種があるというのに、学校で専門的な知識を学べないのは厳しいことだ。今からでもなりたい職業の為に、それらの知識を吸収するべきだ。学問だけできてもそれが何になるの? 学者にでもなりたいなら別なのかも知れないけれど。
かといって、私は特になりたい職業なんてものはなかった。だけど、まだ十数年ぽっちしか生きていないこの一介の高校生に、やってみたいことは? なんて聞かれても分かる訳がないんだ。もっと人生というものの深みを見出さなければ、本当にやってみたいことなんて分かるはずはないから。
この日本の社会というのは、本当に残酷だと思う。義務教育を終わらせ、高校、大学の期限内にやりたいことを探せというのだから。私はもっと、人生にゆとりを持たせたい。その中でこそ見えるものがきっとあるから。
それでも、何かを探さなければ周りから置いてけぼりにされる。だから皆、必死で何かを探している。
だから、この社会は何かおかしい。
この世界は誕生した途端、将来的に働くことを強要される……。子供のうちから無理やりに教育を受けさせ、いつの日か大人になれば社会の奴隷どれいにさせることが決められている。このシステムは本当に間違っているんだ。
ゆっくりと夢想に耽るつもりだったのに考えが脱線してしまった。あとはいつもの夢の中に行こう。現実逃避とは違う、自分にとって意味のある夢を見るんだ。今日はファンタジーの世界にでも入ってみよう。そこはユートピアで、そこに住んでいる住人は皆、私の知り合いだ。幸せな場所で、他の誰にも邪魔されることはない……そんな世界。きっと、そこでなら私は頑張れるはずだから。
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ずっと夢を見ていた気がする。目を覚ますと、ざわざわと周りから雑音がしてきた。夢想に浸かりすぎてまた寝てしまったらしい。今日もフルタイムで、授業をボイコットしたことに満足していると、担任の一ノ瀬先生が、話しかけてきた。
「白衣霞、今日も授業を全て聞いていなかったな。まったくお前って奴は……。やる気というものが、少しでもあるのか?」
「先生……いえ、返す言葉もございません。私という存在はきっと、天使が住んでいるような世界から舞い降りてきたので、この人間の世界というものが、そもそも合わないのだと思います」
「あぁ、本当に仕方のない奴だな……。今日はそんなお前に朗報を持ってきたぞ」
「朗報……ですか?」
私がその言葉を疑うような目を先生に向けていると、一ノ瀬先生は微笑んで言った。
「白衣霞には課外授業として、君がいつも妄想の中に行っているというその世界を是非、教えてほしいんだ。何、簡単なことさ。その世界観を、絵や文章なんかにしてノートに取って貰いたい」
「私の世界を……ノートに?」
一ノ瀬先生はそういうと、私の目を真剣に見つめて来た。何を考えているんだろう……。その夢の中だけの世界をノートなんかに書いたところで、それが一体何になるのか。そんなの無駄なことです……と、私がそう伝えようとすると、意外な答えが返ってきた。
「実は、先生たちで相談したことなんだが、君にはきっと、この地球に住む人たちに、何か伝えたいことがあるんじゃないかな? だからそれを是非、表現して欲しい。授業は今まで通り、サボって貰っても構わない。その時間でノートを使い、君の世界の色々なものを見せて欲しい。いや、何……それが君にとって、一番、良いのかも知れないと前々から思っていたことなんだ。私が、他の先生たちと相談して決めたことでもある。いいかい? これからこのことを君の授業内容とする。しっかりと頑張るんだぞ」
一ノ瀬先生はそう話し終えると、また微笑みを浮かべて、颯爽と職員室へと帰って行った。
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