美少女転生! 迫真の表情

椎木唯

文字の大きさ
2 / 7
美少女令嬢幼少期

おはよう! ちなみに昨日の事は覚えていますか?

しおりを挟む
 グッモーニン、エブリワン。
 清々しい朝と騒がしい喧騒で目が覚めたおっさんです。おっさんって言っても二十代だけどね。ギリギリ。まだお兄さんと言われる年齢だったと思う。…あー、ギリおっさんだな。悲しいな。
 そして悲しいことがもうひとつあった。何か下半身が湿っているなーどうしてだろう? と、昨日の事を思い出してみると、あら不思議。トイレに行くために起き上がったのに何事も無かったように寝床に戻っていた。どこの情報か知らないが男よりも女の方が排尿を我慢できないと聞く。理由は尿道の長さらしいが…その理論で考えると男は尿道で尿を留めている形になってしまうのだが。
 実際そうだったら下半身をブルブル振っただけで尿が飛び出してきそうだ。そんな事はなかったのでたぶん違うのだろう。
 例えるならホースの様な感じだろうか? 短いと出てくる水は直ぐに出るが長いとそれだけ時間がかかる…結局は尿道に留めている理論になってしまうな。これほど中身が薄い論争は無いだろう。一人なので論争と言って良いのか謎だな。

 そんな朝を迎え、恐らく様子を見に来たであろう妙齢のメイドさんの「お、お嬢様がっ、お嬢様が!!!!」の声がドアの向こうに続く廊下に響き渡る。数十秒後には医者と思われる髭長のじいさんと記憶でしか見たことがなかったが両親と思われる男女が入ってきた。おいおい美男美女じゃねぇか。つか、顔の造形的に日本じゃないのな。俺がハーフだって可能性は木っ端微塵になくなった訳です。初の国外旅行が転生でとか意味わかんねぇよ。
 流れるように起き上がった俺の体を押さえ、ゆっくりとベットに寝かせる。その流れで濡れた下のベットに目が行き…

「…三日程眠ってたからですかな。私は少し、席を外します」

 え? どう言うことですか? そんな両親の息が揃った声を後ろ姿で聞きながら外に出る。返事は扉を閉めた音だった。
 ん、通じるってことは国内なのか? 別の事に疑問が出てくるがそんな事はお構いなしにじいさんが出ていった扉がゆっくりと開いた。一礼して入ってきたのは手に代えの下着だと思われるものを持ってきたメイドさんだった。最近の現代ってメイドさん居るのが普通なのか。

「メイリル殿が着替えを、との事でお持ちいたしました」

「着替え…? ああ、そう言うことか。僕も出ていった方が良いか。年頃の女の子だもんな」

 そんな茶髪の優男ーー父親と思われる男性が呟き部屋から出ていく。
 遅れるようにして理解ができたのか母親と思われる…つか、母親だな。綺麗な金髪を伸ばした妖精みたいな女性の表情が和らぐ。和らぐな。こっちの身では大惨事なんだよ。
 謎の幼女お漏らし事件がメイドさんの鮮やかな手腕によって終結し、三日ぶりと言っていた眠りから覚めたことで早速診察に移った。こんなのに時間費やしてどうするんだよ。まぁ、トイレに行くのを怠った俺が悪いんだけどね。これは俺が悪いんじゃない。そして俺は肉体に釣られてしまうのか精神的に弱いことが判明した。見た目は幼女、中身はおっさん。精神は幼女ってどんなサンドイッチだよ。俺の居心地が悪すぎて泣けてくるわ。

 目の白目の部分で血行の状態? を見られ、幾つかの質問を浴びせられた。今、何歳なのか。自分の名前。国の名前。両親の名前。
 国の名前なんて日本、って言ったときには前世の記憶が甦った美少女として記事に取り上げられてしまう可能性を危惧して全て「分からない…」と健気な少女を装って答えた。
 ほんほん、ふんふん、ふむふむ。満足がいったのか俺の背に合わせて低くしていた姿勢を戻した。

「健康状態は問題無く、熱も今は収まっているようで体調は万全のようですが…恐らくですが記憶の混濁。いや、喪失と表現した方が良いのかもしれません」

「記憶の喪失…?」

「ええそうです。幸いある程度の言語などは覚えている様ですが…領主さま等の事は残念ながら…。こればかりは体調とうってかわって治せるものでは無いので時間の経過でしか回復は見込めないかと」

「そうか…急に呼んですまなかったな。もう良いぞ」

 申し訳ございません、と深く頭を下げ、じいさんは出ていく。
 ある程度の言語を覚えた状態の記憶喪失とかあるのか。まぁ、医学に精通していない素人少女には分からないことだけどな。目尻を揉んでほぐした領主と呼ばれた…領主?

「おはよう。記憶にないと思うが君の父親のルーイ・シェグリザートだ。シェグリザートとは私が治める領地の名称だ。呼びやすいように上手く頼む。そして」

「ルーイの妻のシェリよ。貴方の母親…」

 言い終わる前に涙が溢れ、取り出したハンカチで顔を拭く。

「…そして貴方は私たちの子供でルリよ。ルリ・シェグリザート」

 無理矢理頬を上げ、にこりと微笑む。…うーん。結婚してないから分からないのか、それとも俺だから分からないのか悩むところなのだが…素直に生きてて嬉しい! って表情が出来ないのだろうか? やっぱり記憶が無くなっている娘ってのは扱いにくいのか。そんな二人を目の当たりにしている俺の表情は困った感じでアワアワとしていた。
 それを見た両親も堪えきれなくなったのかブワッと、涙腺が崩壊したように涙が溢れ抱きつかれる。

「(ルリ・シェグリザードか…厳ついって印象を受ける名前だけど貴族だなんて想像も出来なかったな…いや、内装の時点で仄かに匂わせていたのか。どんな謎かけだよ)」

 こうして俺の転生二日目が始まった。朝からお漏らしとか恥で仕方がないわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...