上 下
31 / 48
学園生活

07 正しい魔法の使い方 5

しおりを挟む
「やれやれ、お茶くらいしていけば良いものを…」

そうつぶやくと、彼は彼が消えたドアを寂しげに見つめていた。

ワタシハドウスレバ…

「おっと、すまなかったね。
私はバリオス・ゴルダー。
ここの学園の全てを任されている。」

「え?学園長…とは違う方ですよね?」

ぽかーんです。
流石に学園長と神官長くらいならしってる。

少し寂しげに笑うと

「そうだね。正しく言うと理事長かな。」

うぇーい。そりゃ一番だ。

「失礼しました!」
慌てて頭を下げる。

「私はアンジェ・ドルミーナと申します。
お会いできて光栄です。」

やってて良かったカテーシー。
流れるように礼をとる。

「いやいや、楽にしてくれて構わないよ。
それより彼の紹介なんだろう?」

「はい、こちらを…」

急いで羊皮紙を差し出した。

「ありがとう。確認するからそこに座っていてくれたまえ。」

「ありがとうごさいます。」
応接セットのソファーに浅く腰かける。

優雅に、そう優雅に。
するりとスピネルが足元にすり寄ってきた。

ソレ・・はドルミーナ嬢のファミリアかね?」
「ええ、スピネルと申しますの。」
「そうか、彼もきちんともてなさなくてはな。」

そう言うと手元の呼び鈴をならした。

■□■

かなりシックで正統派なメイドさんがお茶とお菓子を置いて去っていった。
足元にスピネル用のお茶とお菓子と共に。

ファミリアは不思議な事に契約をすると、基本的に主人と同じものを食べても体が受け入れられるようになる。つまり、猫で言うところの玉ねぎも問題無くなるのだ。稀に美味しいものが食べたいという理由で自ら契約を求めてくる事もあるそうだ。

スピネルは美味しそうに紅茶を飲み、菓子を舐め食べている。

私もゆっくり、カップを口に運んでゆく。
やはり、美味しい。

その間、理事長は羊皮紙を読んでいた。

■□■

カップが空になる頃、パサリと羊皮紙の置かれる音がした。

「随分と、またせてしまったね。」
「いえ、美味しく頂いておりましたから、もう終わってしまうのかと残念なくらいですわ。」
「そこまで気に入って頂けたなら嬉しいよ。
よければ、私ともう少し付き合って頂いてもいいかね?」
「ええ、よろこんで」
なるべく優しく微笑むようににっこり笑う。

ここまで上品にできたかしら。

■□■

紅茶のお代わりがきました。
お茶菓子も追加されました。

理事長は紅茶を一口飲んでコトリと置いた。

「君の報告を見せて貰ったが、本当かね?
いや、『彼』の推薦だから疑ってはいないんだが一応な。」

「恐れ入りますが、私は内容を存じ上げておりません。ですので、内容に確認を求められましてもお答えすることが出来ません。」

「ふむ。なるほどな。いいだろう。見たまえ。」

羊皮紙が差し出される。

えっと…要約しよう。

魔力は測定不能。
全ての属性において制限がない。
ファミリアが伝説のネコ。
学園の試練の最短記録を更新。
無詠唱魔法の使い手。
魔石の魔力補充が可能。

あ、ほんとだ。これは疑いたくなる。

「ええと、測定した内容については判りかねますが、その他は多分あっているかと…」

伝説って何。猫って伝説の生き物なの!?
思わず、スピネルを見つめてしまう。

『でんでんでんでん伝説の~♪』

ヤメレ。

コイツこの猫絶対転生者だろ…

『…』

あ、目をそらした。
しおりを挟む

処理中です...