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第92話 国を救った報酬
しおりを挟むスキップしながら階段を降りる。今日は待ちに待った流通禁止金貨の受け渡し日だ。国王の用意と手回しなどに少し時間はかかったが、ちゃんとこうして秘密裏に受け渡すこととなった。もう俺の顔は笑みが止まらない。
「ほっほっほ、ずいぶん嬉しそうだな。」
「そう言われる陛下もなんだか楽しそうですよ。いいことでもあったんですか?」
「実はな、あの食料事件を宰相に伝えたらわかりやすく動揺しておったわ。あやつが何も言わずに固まりおったのはなかなかに滑稽だったぞ。これが笑えなくてなんだという。奴が黒だとわしの中でははっきりしたから近々閑職に回すとしよう。」
どうやらそっちの問題も片付きそうだな。しかし他にも色々密偵がいそうだからまだまだ油断はできない。世代交代をする前に城の掃除も済ませておくとのことだ。しばらくは城の内部の人員交代が続きそうだ。
「ついたぞ、ここだ。」
案内された先にあったのは巨大な扉だ。食料庫の何倍もでかい。城の地下空間はほとんどこの金庫に使われているらしい。どの国でもこの流通禁止金貨による場所取り問題は難題らしい。ある程度の開錠措置はとっていたので後は王が直接開ければ良いだけだ。とはいえその作業も時間がかかり30分ほど待った。
とうとうやって来た待ちに待った瞬間。兵士たちが扉をこじ開けるとそこには俺の楽園が広がっていた。あまりの輝きに目がくらみそうだ。
「す、すっげぇぇ…金貨…いや銀貨に銅貨もあるな。」
「この国では主に銅貨や銀貨を預かっている。金貨と同じようにこれらの金銭も大量に溢れているからな。今回はこれの8割…金貨にして5億枚というところか。いや、もう少しあるか。」
5億、どこぞの宝くじかよ。だけどルシュール辺境伯のところよりも少ないような。しかも銅貨の割合がかなり高い。全て金貨ならばもっと価値は上がっただろう。ちょっと残念。まあそれでも十分すぎる額だけど。
つい気になったので聞いてみるとルシュール辺境伯は名の知れた上位魔帝。ゆえにその信頼度は高く、多くの流通禁止金貨の保持を任せられているそうだ。それに比べてこのブラント国はたった一人に洗脳される国だ。しかも魔虫による飢饉も起きたので信頼度は低い。
そのためこうして銅貨など価値の低いものを任せられるらしい。ちょっと悲しいところではあるが、どうせ誰かがやらなければならないことだし、無い方が良いものなので悲観するようなことでも無いようだ。
「じゃあ早速回収させてもらいます。手前側は残して奥をもらう感じでいいですよね。」
「ああ、そうだな。誤魔化すのはある程度こちらでもやるからそこまで気にしなくても良いがね。」
俺は早速使い魔達を出して回収を始める。さすがに時間がかかるのである程度の見張りを残して王は一度戻ることにしたようだ。この作業はかなりの時間を要し、終わったのはすっかり夜が更けた頃だった。
「お、終わったぁ…引き上げて寝よう。」
いくら貰ったか確認する体力が残っていない。もうとっとと帰って寝たい。俺が帰った後は兵士たちが金庫の施錠を開始するのだが、これは意外と簡単な作業らしくすぐに終えることができたらしい。まあその頃には俺はすでに夢の中だったのだが。
翌日、俺はスマホを確認した。すでに使い魔達によって集計は済んでいるようでいくら儲かったのかその集金結果が報告されている。俺は寝ぼけ眼でそれを確認した。何かの間違いかと思ってもう一度目をこすって確認するがその結果は変わらない。
銅貨3,784,282,716,289枚、大銅貨10,278,123,623枚、銀貨7,156,247,153枚、大銀貨142,648,531枚、金貨37,164,827枚、大金貨51,957,298枚という結果になった。もう数が多すぎて訳がわからないが金貨にすると約5億6千万枚ということになる。
もう超がつくほどの大金持ち…と言いたいがこの金はスマホの課金以外には使い道がない。それでもこれでスマホの課金に困ることはないだろう。まあ贅沢を言えば使い魔達を増やすために白金貨が欲しいところだ。一応10枚は貰っておいたがもっと欲しいところでもある。
「まあ贅沢を言い過ぎるのはいけないな。とりあえずひと段落ついたし課金始めるか。」
とりあえずまずは採掘アプリに森林アプリを開く。かなり金銭には余裕があるのでとりあえずガチャを100連くらい回しておくか。一回金貨10万枚分だから100回回しても1千万枚で済む。今後こういった資源は必ず役に立つからやっておく価値は十分ある。
とりあえず採掘アプリの方からガチャを回すこと90回。ミスリル、さらにはアダマンタイト鉱石まで出るようになった。とは言えアダマンタイトは1日100gまでなのだけれど。まあこれで合計100回ガチャを回すと通知が来た。
『よくもまあ100回もやったもんだ。記念にこいつをくれてやる。…採掘場が強化されました。各種施設の配置が可能になりました。』
「おお!色々やれるようになったのか。えっと…開発すればトロッコとかも配置できて採掘スピードが上昇するみたいだな。やりようによっては他にもいろいろできるらしいし。これは森林アプリの方でも何かありそうだな。」
気になったので森林アプリの方のガチャも回してみる。すると同じように各種施設の配置が可能になった。しかもこちらは育苗が可能になり伐採後の木々の復活スピードを上げることができるらしい。
その後、ハマってしまいさらに10連を回してしまった。結果として短時間の間に金貨4千万枚を消費することになってしまった。ちょっと後悔したが、きっとそのうち役に立つはずだ。そう思えば有意義な使い方だと信じられる…はずだ。
「じゃあ次は使い魔ガチャだな。頼むからいいの出てくれよ。」
使い魔ガチャは今までかなり良い調子で排出されている。今回は報酬で白金貨を10枚ももらっている。使い魔ガチャを10回も回せばかなり有用な使い魔を入手できるはずだ。…しかし
『おめでとう!ノーマルの使い魔だよ。』
「こ、これで5回連続ノーマルか…」
まさかのノーマル連続。こんなことは結構久しぶりな気がする。とは言えノーマルでも結構有用なのは確かだ。スミスや親方のように職業につけば十分良い働きをしてくれる。しかしピースのようにウルトラレアだとかなり強力な特殊能力を持っている。やはりそういった使い魔が欲しい。今回の件で強くそう思うようになった。
『おめでとう!スーパーレアの使い魔だよ。住む場所を与えると特別な能力を得ることができるから是非頑張ってね。』
「ようやく出たか。だけどウルトラレアはそうそうでないなぁ…やっぱルシュール辺境伯の時は異常だったな。」
一癖も二癖もあるような使い魔だったがスーパーレアにウルトラレアが連続で出るのはかなりすごい。癖しかなかったけど。
そして残り4回。再び3回連続でノーマルが出た後にスーパーレアが出た。10回回してスーパーレア2回か。これが良いのか悪いのか。今までの感じからでいったら悪いが今までが良すぎただけとも言えるかもな。
しかしこれで使い魔の数は一気に倍以上になった。これで使い魔は18体、それに伴う眷属が54体だ。総勢72体の大所帯になったな。作業スピードもかなり上がるしやれることも増えるだろう。とりあえず新しい使い魔達の家を用意したいところだが、木材がない。シェフに頼んでルシュール辺境伯のところで木材買ってもらおうかな。
「あ、そういやルシュール辺境伯から洗脳に対する魔道具買ったせいで金ないじゃん。寝込んでいる間に儲けた金も店での給金とかに必要だし…」
借金もあるし自由に使える金がない。今回のことで今月分の給料分と借金分を使いこんでしまったからこれ以上使える金がないのだ。それにメリリドさんへの報酬もある。本人はいらないといっていたが払わないというのは今後の信用にも関わる。無理やりにでも払っておかねば。
金貨5億枚分もあるのに使える金がないというのは本当に辛い。あ、そういや新しい店のために色々揃えないといけないのか。そのための金も必要だな…やばいマジで金欠だ。
「あ~…知りたくないこと色々知ったなぁ…もう報酬ももらえないし。給料日まで日数あるから払うぶんの給料をとりあえず使って金稼ぐか。一か八かだなぁ…」
確実に稼がないとまずいな。ちょっと新しい店のことについて考えを煮詰めておくか。店のある程度の内装は今回の報酬に含まれているからそこは任せるとして売るものだ。カイのせいで日本食っぽいものはみんな嫌がる。下手に調理したものはまずいかも知れないな。
この国の状況にあったもので売れるもの。それでいてがっつり稼ぐ方法。はぁ…金あるのにこんなことで悩みたくねぇ…
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