スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬

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第258話 初めての邂逅

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「我が王よ。どうでありますか?」

「すげぇ!いい出来じゃん!これが初作品?やっぱヴァルくん才能あるよ。10分アニメが5本か。どれもストーリーも良いし、子供に好かれる事間違いないよ。」

「そ、そうでありますか。なんだかむず痒いですな。しかし1年がかりでこれではまだまだです。」

「まあテーマパーク建設も並行してやっているからね。ただ…しばらくはアニメの方に力を入れて欲しいな。それに絵本も欲しい。とにかく作品を世に広めて、認知度とともに人気を高める。そこでテーマパークを開園してファンの子達の心を鷲掴みにするんだよ。人気がないとテーマパーク作っても人が来ないからね。」

「ええ、私もそう思います。今は長編も考えておりまして…それに絵本も作業に取り掛かっております。」

 戦争に勝利した翌日の昼過ぎ、突如現れたヴァルドールはミチナガに話があると言って部屋に連れ込み、アニメ鑑賞とその意見交換をしていた。アニメの出来が素晴らしいものであったのでミチナガは高評価を出すとヴァルドールは嬉しそうにしている。

 ヴァルドール自身、このアニメにはよほど自信があったようで鑑賞し終えた後の話が止まらない。どこの作画を自分が手がけて、どこのアニメーションの変化が難しかったなど話したいことが山積みなのだろう。

 そんな中部屋をノックするものが現れた。すぐに使い魔が扉を開けるとそこにはイシュディーンとナイトがいた。2人は今までシェイクス国周辺で敗残兵が野盗化しないように見て回った後だ。

 しばらくはミチナガの安全ためにシェイクス国に残っているナイトだが、街にいると人が集まるのでこうして抜け出している。そんなナイトはヴァルドールと目を合わすとミチナガは二人の間に揺らめく何かを感じた。

「…強いな……」

「ほう?これほどの実力者…我が王のご友人で?」

「ああ、そういや紹介したことなかったっけ?こっちはナイト。俺の昔からの友人だ。モンスター討伐が得意でな、うちにモンスターの素材を卸してくれている。それでこっちはヴァルドール。こっちも俺の友人でうちのテーマパーク建設の責任者をやっている。アニメ産業の未来を担っているな。」

 ナイトとヴァルドールはミチナガの説明を聞いてお互いに歩み寄る。その距離はすでに1mを切った。その様子を見ているイシュディーンは顔を青ざめさせて失神しそうである。そしてナイトとヴァルドールは互いに腕をあげ……硬く握手を交わした。

「…ナイトだ……」

「我が名はヴァルドール。親しいものにはヴァルくんと呼ばれている。我が王の友人であるのであれば是非ともそう呼んで欲しい。そうだ!二人も是非とも我が作品を見ていってくれ。」

 ヴァルドールはすぐに見てもらおうと新しく2人分のアニメ鑑賞の準備を始める。飲み物に食べ物にと準備は万端だ。そんな準備をしているヴァルドールに気がつかれないようにイシュディーンがゆっくりとミチナガに近づき、コソコソと話し出した。

「ミチナガ様…もしやあの男……本物のヴァルドールですか?」

「あ~…やっぱ知っている?」

「……吸血鬼神、虐殺神、血の神…呼び名は様々ありますがどれも一貫して彼の凶悪性を表すものばかりです。…その……大丈夫なんですか?」

「ん~…かれこれもう1年は付き合っているからね。最初はビビったけど今じゃもう全然。普通に優しいやつだよ。人殺しだってしていないし。」

「準備が終わりました。こちらへどうぞ。」

 こそこそ話をしていたミチナガとイシュディーンは少し離れたところからヴァルドールに声をかけられてドキッとする。すぐに何事もなかったかのように案内されるまま座ったイシュディーンであったが、ヴァルドールに見られて思わず唾を飲んだ。

「かつての私の行いは確かに人々を恐怖させるものであった。過去のことだから忘れて欲しいとは言わぬ。ただ…これからの私の行いも是非とも知って欲しい。」

「き、聞こえて……あ…も、申し訳ない。その…つい……」

「いやいや、気にしてはいない。イシュディーン殿が話したことは全て事実。私を貶めるべく嘘をついたわけでもないのだから怒ってはいない。これからは人々を楽しませるために働きたいと思う。」

「……だが、血の匂いがするぞ。最近のものだ。しかも濃い。」

 急に声を出したナイトにびくりとするヴァルドール。その表情は強張り、冷や汗も流れている。そしてナイトの発言を聞いたイシュディーンは血の気を引かせる。そんな中ミチナガはなんてことないようにヴァルドールの元に近づいた。

「ナイトはああ言っているけど…何かしたのか?」

「実は…後ほど話そうと思ったのですが……ナイト殿は鼻が良いようだ。ではアニメを見る前にご報告を。実はここに来る道中、海上に法国のものと思われる船団を見つけまして…」

「法国!まさかもう進行して来たのか!!そ、それで奴らは!」

「我が野望と我が王の邪魔になると思い処分しました。」

「……へ?………数は?」

「10数万人程度でしょうか?手練れも多く少し時間がかかってしまいました。」

「10!……全滅させたの?」

「はい。ついでに我が血を与えて食屍鬼に変貌させ、法国に送り返しておきました。これで奴らも少しは懲りたことでしょう。」

「…………ヴァルくん…」

「はい。」

「……グッジョブ。」

「我が王のお役に立てたようなら何よりです。それではアニメ鑑賞に戻りましょうか。」

「え?…え!?それで終わり!?軽すぎませんかミチナガ様!」

 そんなイシュディーンの訴えは退けられ、アニメ鑑賞が始まる。もちろんアニメ鑑賞前の驚きが大きすぎてイシュディーンは頭に入らなかったようだが、その程度のことは気にしないナイトはアニメをしっかりと見ている。そんなナイトの瞳は若干輝いているように見えた。

 そして1時間も経たずに全てのアニメ鑑賞を終えるとナイトから拍手が送られた。

「実に良かった。良いものを見せてもらい感謝する。」

「おお!ナイト殿もお気に召してくれたか!これは嬉しい。やはり戦いよりもなんと充実し、なんと楽しく、なんと喜ばしいのだろうか!」

 喜色満面で小躍りするヴァルドールはすぐにナイトと今のアニメ談義に入る。言葉数少ないナイトだが、一言一言が心から出る本心であるため、ヴァルドールは本当に嬉しそうにしている。

 ヴァルドールもナイトもお互い孤独であったため、意外と気があうのかもしれない。そんな2人を見てミチナガも使い魔のムーンもヨウも嬉しそうだ。そんな中、イシュディーンだけはミチナガを見ている。

「準魔神クラス2人を保有する国など魔神が納める国以外に聞いたことがない。それこそ、そこらの大国など目ではない。どれだけすごいことか……おそらくよくわかっていないのだろうなぁ…」

『ポチ・まあ保有っていっても2人とも自由気ままだしね。こうやって2人揃うのも初めてだし。』

「ああ、ポチ殿。聞いていましたか。たとえ自由気ままでもいざという時にこうして集まってくれるのであれば頼もしいではありませんか。彼ら2人がいれば敵は数で攻めて来ても意味をなさない。準魔神クラスの実力者が敵にならない限り負けることはありません。」

『ポチ・でもナイトは基本、人苦手で森の奥に引きこもるし、ヴァルくんは下手に戦場に出ると各国から討伐軍組まれるよ。』

「………まともな戦力が欲しい。」

『ポチ・まあフリーな準魔神クラスなんてこんなもんだよ。』

「お前ら何話してんだ?そろそろマクベスが父親と話し終える頃だろうから行くぞ。早いうちに勝利パレードやるらしいからその打ち合わせもしないと。」

『ポチ・はいはーい。』
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