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第4話 何もしていないのに、中心にいました
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休み時間。
俺――音無すみれは、机に座っていた。
動いていない。
喋っていない。
笑ってもいない。
つまり、いつも通りだ。
なのに。
「ねえ、すみれちゃんさ」
気づいたら、机の周りに女子が集まっていた。
四人。いや、五人。
円ができている。
なぜ。
「昨日のドラマ見た?」
「どう思った?」
「すみれちゃんはさ、どう感じた?」
質問が矢継ぎ早に飛んでくる。
逃げ場がない。
「……えっと……」
俺は必死に脳内を検索する。
ドラマ?
見ていない。
そもそもテレビをつける習慣がない。
だが、大人として知っている。
ここで「分からない」を連発すると、場が止まる。
「……面白かった……んじゃ……ないかな……」
曖昧。
だが、奇跡的に正解だったらしい。
「だよねー!」
「分かるー!」
分かっていない。
俺は何も分かっていない。
だが、女子たちは勝手に盛り上がる。
「すみれちゃんってさ、否定しないよね」
「話聞いてくれるし」
「安心する」
それはただの受動的陰キャだ。
俺は喋らない。
口を挟まない。
意見を主張しない。
結果――
全肯定してくれる大人枠に分類されていた。
「すみれちゃん、ここ座って!」
いつの間にか、席が固定されている。
グループの真ん中。
なぜだ。
気づけば、
恋バナが始まり、
クラスの噂話が始まり、
先生のモノマネが始まる。
俺は相槌を打つだけだ。
「……へぇ……」
「……そうなんだ……」
「……大変だね……」
社会人時代に身につけた、
職場用・無難リアクション三点セットが火を吹く。
「すみれちゃん、聞き上手だよね!」
「なんかさ、相談したくなる」
やめてくれ。
そのスキルは、褒められるために覚えたものじゃない。
その時、担任が教室に入ってきた。
「楽しそうね」
一瞬、女子たちが静まる。
「音無さんが中心なのね」
やめてくれ(二回目)。
「みんなの話をちゃんと聞いてあげられるの、すごいわ。クラスをまとめる力があるのね」
まとめていない。
俺は置物だ。
「……そんな……」
否定しようとしたが、
女子たちが一斉に頷く。
「そうそう!」
「すみれちゃん、落ち着いてるし!」
「大人っぽい!」
評価が確定した音がした。
――音無すみれ=女子グループの中心。
――聞き役。
――安心枠。
――相談役。
最悪だ。
担任は満足そうに微笑んで去っていった。
残された俺は、机の上に置かれたままの給食袋を見つめる。
「……俺は……静かに……」
言葉は、誰にも届かなかった。
チャイムが鳴る。
女子たちは名残惜しそうに席へ戻る。
「また後でね、すみれちゃん!」
「昼休みも一緒にいこ!」
逃げ道が、塞がれた。
俺は悟った。
静かでいる=中心になる
この学校の理論は、明らかにおかしい。
こうして、
何もしていないのに女子グループの中心になってしまった
元・陰キャ成人男性の小学生生活は、
ますます面倒な方向へと進んでいくのだった。
俺――音無すみれは、机に座っていた。
動いていない。
喋っていない。
笑ってもいない。
つまり、いつも通りだ。
なのに。
「ねえ、すみれちゃんさ」
気づいたら、机の周りに女子が集まっていた。
四人。いや、五人。
円ができている。
なぜ。
「昨日のドラマ見た?」
「どう思った?」
「すみれちゃんはさ、どう感じた?」
質問が矢継ぎ早に飛んでくる。
逃げ場がない。
「……えっと……」
俺は必死に脳内を検索する。
ドラマ?
見ていない。
そもそもテレビをつける習慣がない。
だが、大人として知っている。
ここで「分からない」を連発すると、場が止まる。
「……面白かった……んじゃ……ないかな……」
曖昧。
だが、奇跡的に正解だったらしい。
「だよねー!」
「分かるー!」
分かっていない。
俺は何も分かっていない。
だが、女子たちは勝手に盛り上がる。
「すみれちゃんってさ、否定しないよね」
「話聞いてくれるし」
「安心する」
それはただの受動的陰キャだ。
俺は喋らない。
口を挟まない。
意見を主張しない。
結果――
全肯定してくれる大人枠に分類されていた。
「すみれちゃん、ここ座って!」
いつの間にか、席が固定されている。
グループの真ん中。
なぜだ。
気づけば、
恋バナが始まり、
クラスの噂話が始まり、
先生のモノマネが始まる。
俺は相槌を打つだけだ。
「……へぇ……」
「……そうなんだ……」
「……大変だね……」
社会人時代に身につけた、
職場用・無難リアクション三点セットが火を吹く。
「すみれちゃん、聞き上手だよね!」
「なんかさ、相談したくなる」
やめてくれ。
そのスキルは、褒められるために覚えたものじゃない。
その時、担任が教室に入ってきた。
「楽しそうね」
一瞬、女子たちが静まる。
「音無さんが中心なのね」
やめてくれ(二回目)。
「みんなの話をちゃんと聞いてあげられるの、すごいわ。クラスをまとめる力があるのね」
まとめていない。
俺は置物だ。
「……そんな……」
否定しようとしたが、
女子たちが一斉に頷く。
「そうそう!」
「すみれちゃん、落ち着いてるし!」
「大人っぽい!」
評価が確定した音がした。
――音無すみれ=女子グループの中心。
――聞き役。
――安心枠。
――相談役。
最悪だ。
担任は満足そうに微笑んで去っていった。
残された俺は、机の上に置かれたままの給食袋を見つめる。
「……俺は……静かに……」
言葉は、誰にも届かなかった。
チャイムが鳴る。
女子たちは名残惜しそうに席へ戻る。
「また後でね、すみれちゃん!」
「昼休みも一緒にいこ!」
逃げ道が、塞がれた。
俺は悟った。
静かでいる=中心になる
この学校の理論は、明らかにおかしい。
こうして、
何もしていないのに女子グループの中心になってしまった
元・陰キャ成人男性の小学生生活は、
ますます面倒な方向へと進んでいくのだった。
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