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第1章 覚醒者たち
第4話 別れと、選ばれる側
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統制局の車両が、ゆっくりと路肩に停車した。
「ここまでだ」
運転席から降りた相馬迅は、静かにそう告げた。
「俺はこれから本部に戻る。
お前の件――いや、“お前自身”を報告しなきゃならん」
天城零は、なんとなく分かっていた。
自分は、もはや現場の一能力者ではない。
統制局という巨大な組織にとっても、扱いづらい存在だ。
「……面倒、かけました」
「面倒なんて言葉で済むなら、楽だったがな」
相馬は苦笑し、それから真剣な表情になる。
「零。
しばらくは、俺が直接面倒を見ることはできない」
「……やっぱり」
「だが、完全に放り出すわけでもない」
相馬は一枚のカードを差し出した。
「緊急連絡用だ。
命に関わる時だけ使え」
零はカードを受け取り、深く頭を下げた。
「ありがとうございました。
俺……まだ何も分かってませんけど」
「それでいい」
相馬は、はっきりと言った。
「分からないまま進めるのは、
強さだ」
一拍置いて、付け加える。
「だが忘れるな。
お前は、すでに“狙われる側”だ」
その言葉を最後に、相馬は車に戻った。
エンジン音が遠ざかり、
そこには――零と澪だけが残った。
◆
「……行っちゃいましたね」
柊澪が、少し寂しそうに呟く。
「そうですね」
二人は、並んで歩き出した。
行き先は決めていない。
「……あの」
澪が、歩きながら零を見上げる。
「これから、どうするんですか?」
零は、少し考えた。
「正直、分かりません」
澪は驚いた顔をしたが、すぐに苦笑した。
「ですよね」
零は続ける。
「でも、モンスターは出続けてる。
能力者も、足りてない」
澪は小さく頷く。
「Dランクの私は、
単独行動は控えろって言われてます」
「でも、今日一人で出てましたよね」
「……はい」
澪は視線を落とす。
「怖いです。
でも、誰かがやらなきゃいけないのに、
待ってるだけなのが、嫌で」
零は、その言葉に既視感を覚えた。
――昨日の自分だ。
「じゃあ」
零は、立ち止まり、澪を見る。
「しばらく、一緒に動きませんか」
「え……?」
「俺も、一人は慣れてない」
嘘ではない。
ガチャ能力があっても、
一人で世界を相手にするほど、零は強くなかった。
澪は一瞬、迷い――
「……はい!」
と、力強く頷いた。
「よろしくお願いします、零さん!」
「こちらこそ」
二人は、ぎこちなく笑い合った。
◆
夕方。
廃ビル街の一角で、異常反応が検知された。
「反応、弱めですね」
澪が端末を確認する。
「Eか、Dの下位ってところかな」
零は周囲を警戒しながら歩く。
(……静かすぎる)
その時だった。
「――あー、やっと来た」
背後から、間延びした声。
二人が振り向くと、
ビルの影から男が姿を現した。
年は二十代後半。
だらしなく開けたコート、
虚ろな目。
だが――“嫌な感じ”がした。
「能力者、だ」
澪が小さく息を呑む。
男は、楽しそうに手を叩いた。
「正解。
ランク? ああ……B、だったかな」
零の背筋が凍る。
「B……?」
それは、相馬より上だ。
「逃げ――」
零が言いかけた瞬間、
男が一歩踏み出す。
「逃がすわけないだろ」
次の瞬間、
澪の足元の地面が“消えた”。
「っ!?」
澪が体勢を崩す。
零が即座に支える。
「何、した!」
男は笑った。
「《欠落》」
その言葉と同時に、
周囲の壁の一部が、
“最初から存在しなかったかのように”消える。
「空間を、消す能力……?」
「近い」
男は舌なめずりをする。
「俺はね、
“いらないもの”を消すんだ」
視線が、零に向く。
「で――」
一拍置いて。
「お前、
いらなさそうだろ?」
澪が、震える声で叫ぶ。
「零さん……!」
零は、一歩前に出た。
(……来た)
モンスターじゃない。
事故でもない。
――明確な敵。
零の脳裏で、
ガチャが静かに回り始める。
「……澪さん」
「は、はい!」
「離れないでください」
「……はい!」
男は笑みを深めた。
「いいねぇ。
能力者同士の“ガチャ勝負”か」
夜風が吹き抜ける。
次の瞬間、
戦いが始まろうとしていた。
「ここまでだ」
運転席から降りた相馬迅は、静かにそう告げた。
「俺はこれから本部に戻る。
お前の件――いや、“お前自身”を報告しなきゃならん」
天城零は、なんとなく分かっていた。
自分は、もはや現場の一能力者ではない。
統制局という巨大な組織にとっても、扱いづらい存在だ。
「……面倒、かけました」
「面倒なんて言葉で済むなら、楽だったがな」
相馬は苦笑し、それから真剣な表情になる。
「零。
しばらくは、俺が直接面倒を見ることはできない」
「……やっぱり」
「だが、完全に放り出すわけでもない」
相馬は一枚のカードを差し出した。
「緊急連絡用だ。
命に関わる時だけ使え」
零はカードを受け取り、深く頭を下げた。
「ありがとうございました。
俺……まだ何も分かってませんけど」
「それでいい」
相馬は、はっきりと言った。
「分からないまま進めるのは、
強さだ」
一拍置いて、付け加える。
「だが忘れるな。
お前は、すでに“狙われる側”だ」
その言葉を最後に、相馬は車に戻った。
エンジン音が遠ざかり、
そこには――零と澪だけが残った。
◆
「……行っちゃいましたね」
柊澪が、少し寂しそうに呟く。
「そうですね」
二人は、並んで歩き出した。
行き先は決めていない。
「……あの」
澪が、歩きながら零を見上げる。
「これから、どうするんですか?」
零は、少し考えた。
「正直、分かりません」
澪は驚いた顔をしたが、すぐに苦笑した。
「ですよね」
零は続ける。
「でも、モンスターは出続けてる。
能力者も、足りてない」
澪は小さく頷く。
「Dランクの私は、
単独行動は控えろって言われてます」
「でも、今日一人で出てましたよね」
「……はい」
澪は視線を落とす。
「怖いです。
でも、誰かがやらなきゃいけないのに、
待ってるだけなのが、嫌で」
零は、その言葉に既視感を覚えた。
――昨日の自分だ。
「じゃあ」
零は、立ち止まり、澪を見る。
「しばらく、一緒に動きませんか」
「え……?」
「俺も、一人は慣れてない」
嘘ではない。
ガチャ能力があっても、
一人で世界を相手にするほど、零は強くなかった。
澪は一瞬、迷い――
「……はい!」
と、力強く頷いた。
「よろしくお願いします、零さん!」
「こちらこそ」
二人は、ぎこちなく笑い合った。
◆
夕方。
廃ビル街の一角で、異常反応が検知された。
「反応、弱めですね」
澪が端末を確認する。
「Eか、Dの下位ってところかな」
零は周囲を警戒しながら歩く。
(……静かすぎる)
その時だった。
「――あー、やっと来た」
背後から、間延びした声。
二人が振り向くと、
ビルの影から男が姿を現した。
年は二十代後半。
だらしなく開けたコート、
虚ろな目。
だが――“嫌な感じ”がした。
「能力者、だ」
澪が小さく息を呑む。
男は、楽しそうに手を叩いた。
「正解。
ランク? ああ……B、だったかな」
零の背筋が凍る。
「B……?」
それは、相馬より上だ。
「逃げ――」
零が言いかけた瞬間、
男が一歩踏み出す。
「逃がすわけないだろ」
次の瞬間、
澪の足元の地面が“消えた”。
「っ!?」
澪が体勢を崩す。
零が即座に支える。
「何、した!」
男は笑った。
「《欠落》」
その言葉と同時に、
周囲の壁の一部が、
“最初から存在しなかったかのように”消える。
「空間を、消す能力……?」
「近い」
男は舌なめずりをする。
「俺はね、
“いらないもの”を消すんだ」
視線が、零に向く。
「で――」
一拍置いて。
「お前、
いらなさそうだろ?」
澪が、震える声で叫ぶ。
「零さん……!」
零は、一歩前に出た。
(……来た)
モンスターじゃない。
事故でもない。
――明確な敵。
零の脳裏で、
ガチャが静かに回り始める。
「……澪さん」
「は、はい!」
「離れないでください」
「……はい!」
男は笑みを深めた。
「いいねぇ。
能力者同士の“ガチャ勝負”か」
夜風が吹き抜ける。
次の瞬間、
戦いが始まろうとしていた。
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