世界最強はガチャで引いた――無限排出スキルで現代を救え

羽蟲蛇 響太郎

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第2章 魔神観測領域

第8話 試験と名付けられた殺意

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統制局本部地下――
そこは、通常の能力者が立ち入ることすら許されない隔離演習区画だった。

天井は高く、壁は多重結界で覆われ、
床には無数の魔術式と数式が刻まれている。

「ここで“模擬戦”を行う」

そう告げたのは、S級能力者《審判》だった。

「名目は試験。
 実際は――」

一拍置く。

「君が、どこまで“抑えられる存在”かを見る」

天城零は、静かに頷いた。

「相手は?」

「俺だ」

即答だった。

周囲にいた職員たちが、息を呑む。

「……単独、ですか」

「不満か?」

「いえ。妥当です」

零の隣で、澪が一歩前に出る。

「私は――」

「眷属は、参加可だ」

審判は淡々と告げた。

「むしろ、
 “彼女込みで制御できるか”が重要だ」

澪の目が、わずかに細くなる。

「……承知しました」



試験開始の合図は、存在しなかった。

ただ一瞬――
空気が“沈んだ”。

「来るぞ」

零が呟いた直後。

審判の姿が、消えた。

否――
消えたように“認識できなかった”。

零の視界が、強制的に再構築される。

《即時最適解》
《完全適応》

間一髪。

零は半歩ずれ、
“斬撃”のような圧力が頬を掠める。

「……視えたか」

背後から、審判の声。

澪が即座に動く。

「零様、後方!」

衝撃操作を最大出力。

だが――

無効化。

澪の攻撃は、審判の“存在圧”に押し潰された。

「Dランクだったな」

「……今は違います」

澪の声が、低くなる。

彼女の影が、歪んだ。

眷属化によって再構成された魔力回路が、
戦闘用へと完全移行する。

「……ほう」

審判が、初めて感心したように呟く。

「眷属というより、
 “分霊”に近いな」



零は、ガチャを引かなかった。

代わりに――
抑えることを選んだ。

「澪さん、三秒」

「了解」

二人の呼吸が、完全に一致する。

澪が攻撃を放つ“未来”を囮にし、
零は審判の“次の一手”を読む。

――重い。

――強い。

――だが、合理的すぎる。

「審判さん」

零が、戦闘の最中に言った。

「あなた、殺せますね」

「試験だからな」

審判は即答する。

「君が暴走すれば、
 ここで終わらせる」

その覚悟に、零は少しだけ笑った。

「……なら」

零の脳裏に、
“対人専用ガチャ”の警告が浮かぶ。

だが、零は引かない。

代わりに、
一つの能力を“見せる”。

「《支配拒絶》」

その瞬間。

審判の“威圧”が、零に届かなくなる。

「……ほう?」

「俺は」

零は、一歩前に出る。

「誰の支配下にも、入りません」

次の瞬間、
演習区画の結界が、悲鳴を上げた。



――停止。

審判が、手を上げた。

「……合格だ」

職員たちが、どよめく。

「S級と対等評価……?」

「いや……」

審判は、零を見て言った。

「評価不能、だ」

近づき、低く告げる。

「君は、兵器にならない。
 だから――」

「管理も、できない」

零は頷いた。

「分かってます」



その夜。

零と澪は、
本部を離れた街外れにいた。

「……さっきの戦い」

澪が、ぽつりと呟く。

「私、楽しいと思ってしまいました」

零は、足を止める。

「……怖く、ないですか?」

澪は、少し考えてから答えた。

「怖いです。
 でも――」

零を見る。

「あなたの隣なら、
 それでもいい」

その瞬間。

空間が、歪んだ。

拍手。

「いやぁ、実に美しい」

闇の中から、
“人の形をした異物”が現れる。

角。
赤い瞳。
歪んだ魔力。

「初めまして、魔神候補」

男は、愉快そうに笑った。

「魔人公《アシュ=ラド》だ」

零の背筋が、凍る。

魔人は、確かに――
“零を見て”言った。

「勧誘に来た」

澪が、即座に零の前に立つ。

「近づくな」

魔人は肩をすくめる。

「安心しろ。今日は戦わない」

一歩、下がる。

「だが覚えておけ」

赤い瞳が、細められる。

「お前がガチャを引くたび、
 世界は“魔神”に近づく」

闇が、閉じる。

静寂。

零は、拳を握った。

(……始まった)


もう戻れない領域に踏み込んでいた。
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