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第2章 魔神観測領域
第11話 修正する者
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夜明け前。
天城零と澪が立っていたのは、
人の気配が完全に消えた廃教会だった。
「……嫌な感じですね」
澪が小さく呟く。
空気が澄みすぎている。
音が、反響しない。
「来ます」
零が言った、その瞬間。
鐘が鳴った。
ゴォン――
低く、重く、
世界の奥から響くような音。
次の瞬間、
祭壇の前に“誰か”が立っていた。
現れたのは、一人の青年。
白い衣。
年齢不詳。
だが――目が、感情を映していない。
「――確認完了」
青年は、淡々と告げる。
「魔神候補・天城零。
並びに眷属個体・柊澪」
澪が、一歩前に出る。
「……誰ですか」
青年は、視線だけを向ける。
「私は“使徒”」
「神意の代行者だ」
零の背筋が、冷える。
(……神側、か)
◆
「本来、この段階での接触は予定されていなかった」
使徒は、独り言のように言う。
「だが――
眷属化という不可逆変化が観測された」
視線が、澪に向く。
「君は、本来ここに存在しない可能性だ」
澪の胸が、ざわつく。
「……それは、どういう意味ですか」
「本来、君は死亡している」
即答だった。
「天城零の介入により、
存在確率が歪められた」
零の拳が、強く握られる。
「……修正しに来た、と?」
「その通り」
使徒は、頷く。
「世界は、安定を必要とする」
「過剰な可能性は、
いずれ必ず破綻を生む」
◆
零は、低く問う。
「なら、俺は?」
「修正対象A」
使徒は、事務的に告げる。
「処理優先度は――高」
澪が、即座に零の前に立つ。
「近づくな」
空気が、張り詰める。
使徒は、初めて“疑問”を浮かべた。
「……眷属個体が、主命令なしに前へ出た?」
澪の声が、震えない。
「零様は、修正される存在じゃない」
「世界のために、
誰かを消すのが“正しさ”だと言うなら――」
一歩、踏み出す。
「私は、その正しさを拒否します」
◆
「理解不能」
使徒は、静かに告げる。
「神は、善悪を持たない」
「ただ、最適解を選ぶ」
「天城零は、
最適解ではない」
零は、口を開く。
「……じゃあ、聞く」
「俺が、何もしなければ」
「世界は、助かるのか」
使徒は、少し考え――
「不明」
と、答えた。
「だが、
君が存在し続ければ」
「世界が“変わる”確率は、
限りなく高い」
零は、静かに笑った。
「……それを、恐れてるんだな」
使徒の瞳が、僅かに揺れる。
◆
「最終警告を与える」
使徒は、一歩前に出る。
その瞬間、
空間が“固定”された。
逃げ場がない。
「天城零」
「眷属を解放し、
能力行使を停止せよ」
「従えば、
君は“観測対象”へ降格される」
澪が、零を振り返る。
「……零様」
零は、ゆっくりと首を振った。
「拒否します」
その言葉に、
教会の壁が、ひび割れた。
「理由を」
使徒が問う。
零は、澪を見る。
「世界の都合で、
隣にいる人を切り捨てるなら」
視線を、使徒に戻す。
「俺は、
世界の方を敵に回す」
◆
沈黙。
やがて、
使徒は一つ、理解したように頷いた。
「……確認」
「魔神候補・天城零」
「神意に反する選択を選択」
白い光が、使徒の背後に集まる。
「次の接触は、
“修正”となる」
鐘が、再び鳴る。
使徒の姿が、
光の中へ溶けていく。
◆
静寂。
澪は、深く息を吐いた。
「……本当に、
世界を敵に回しましたね」
零は、苦笑する。
「そのつもりは、なかったんですけど」
澪は、零の袖を掴む。
「……それでも」
小さく、しかし確かに。
「私は、後悔していません」
零は、彼女の頭に、そっと手を置いた。
「俺もです」
遠くで、
世界が軋む音がした。
神は、動いた。
魔人は、待っている。
そして――
ガチャは、まだ回っていない。
だが次に引かれるそれは、
世界そのものを巻き込むものになる。
天城零と澪が立っていたのは、
人の気配が完全に消えた廃教会だった。
「……嫌な感じですね」
澪が小さく呟く。
空気が澄みすぎている。
音が、反響しない。
「来ます」
零が言った、その瞬間。
鐘が鳴った。
ゴォン――
低く、重く、
世界の奥から響くような音。
次の瞬間、
祭壇の前に“誰か”が立っていた。
現れたのは、一人の青年。
白い衣。
年齢不詳。
だが――目が、感情を映していない。
「――確認完了」
青年は、淡々と告げる。
「魔神候補・天城零。
並びに眷属個体・柊澪」
澪が、一歩前に出る。
「……誰ですか」
青年は、視線だけを向ける。
「私は“使徒”」
「神意の代行者だ」
零の背筋が、冷える。
(……神側、か)
◆
「本来、この段階での接触は予定されていなかった」
使徒は、独り言のように言う。
「だが――
眷属化という不可逆変化が観測された」
視線が、澪に向く。
「君は、本来ここに存在しない可能性だ」
澪の胸が、ざわつく。
「……それは、どういう意味ですか」
「本来、君は死亡している」
即答だった。
「天城零の介入により、
存在確率が歪められた」
零の拳が、強く握られる。
「……修正しに来た、と?」
「その通り」
使徒は、頷く。
「世界は、安定を必要とする」
「過剰な可能性は、
いずれ必ず破綻を生む」
◆
零は、低く問う。
「なら、俺は?」
「修正対象A」
使徒は、事務的に告げる。
「処理優先度は――高」
澪が、即座に零の前に立つ。
「近づくな」
空気が、張り詰める。
使徒は、初めて“疑問”を浮かべた。
「……眷属個体が、主命令なしに前へ出た?」
澪の声が、震えない。
「零様は、修正される存在じゃない」
「世界のために、
誰かを消すのが“正しさ”だと言うなら――」
一歩、踏み出す。
「私は、その正しさを拒否します」
◆
「理解不能」
使徒は、静かに告げる。
「神は、善悪を持たない」
「ただ、最適解を選ぶ」
「天城零は、
最適解ではない」
零は、口を開く。
「……じゃあ、聞く」
「俺が、何もしなければ」
「世界は、助かるのか」
使徒は、少し考え――
「不明」
と、答えた。
「だが、
君が存在し続ければ」
「世界が“変わる”確率は、
限りなく高い」
零は、静かに笑った。
「……それを、恐れてるんだな」
使徒の瞳が、僅かに揺れる。
◆
「最終警告を与える」
使徒は、一歩前に出る。
その瞬間、
空間が“固定”された。
逃げ場がない。
「天城零」
「眷属を解放し、
能力行使を停止せよ」
「従えば、
君は“観測対象”へ降格される」
澪が、零を振り返る。
「……零様」
零は、ゆっくりと首を振った。
「拒否します」
その言葉に、
教会の壁が、ひび割れた。
「理由を」
使徒が問う。
零は、澪を見る。
「世界の都合で、
隣にいる人を切り捨てるなら」
視線を、使徒に戻す。
「俺は、
世界の方を敵に回す」
◆
沈黙。
やがて、
使徒は一つ、理解したように頷いた。
「……確認」
「魔神候補・天城零」
「神意に反する選択を選択」
白い光が、使徒の背後に集まる。
「次の接触は、
“修正”となる」
鐘が、再び鳴る。
使徒の姿が、
光の中へ溶けていく。
◆
静寂。
澪は、深く息を吐いた。
「……本当に、
世界を敵に回しましたね」
零は、苦笑する。
「そのつもりは、なかったんですけど」
澪は、零の袖を掴む。
「……それでも」
小さく、しかし確かに。
「私は、後悔していません」
零は、彼女の頭に、そっと手を置いた。
「俺もです」
遠くで、
世界が軋む音がした。
神は、動いた。
魔人は、待っている。
そして――
ガチャは、まだ回っていない。
だが次に引かれるそれは、
世界そのものを巻き込むものになる。
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