『中身は俺のままなのに、学園では美少女扱いです』

羽蟲蛇 響太郎

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第14話 卒業式と、その先の日常へ

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 卒業式当日。

 朝から、落ち着かない。

(……静かすぎる)

 制服に袖を通しながら、
 私は鏡の前で立ち止まった。

 ブレザー。
 スカート。
 きちんと整えた髪。

(……これで、
 本当に最後か)

 男子だった頃なら、
 「やっと終わった」と思っていたはずだ。

 でも今は、
 少しだけ惜しい。

 校門をくぐると、
 そこには見慣れた顔が並んでいた。

「佐倉さーん!」

「今日めっちゃ写真撮ろうね!」

(……もう始まってる)

 卒業式前だというのに、
 テンションは普段通り高い。

(卒業感、
 仕事してくれ)

 体育館。

 整列。

 静粛。

 ……のはずが、
 小声があちこちから聞こえる。

「緊張する~」

「泣くかも」

「佐倉さん、
 絶対泣かないタイプでしょ」

「……失礼だな」

(泣かないけど)

 式が始まる。

 校長の長い話。
 来賓の祝辞。

(……眠い)

 卒業証書授与。

「佐倉 恒一」

「……はい」

 立ち上がり、
 一歩踏み出す。

(……名前呼ばれるの、
 これで最後か)

 証書を受け取る瞬間、
 ふと、胸が熱くなる。

(……悪くなかったな)

 席に戻ると、
 彩音と目が合った。

 小さく、
 頷かれる。

(……分かってるよ)

 式が終わり、
 体育館の外へ。

 空は晴れていて、
 やたらと眩しい。

「佐倉さん、
 一緒に写真!」

「はいはい」

 何度目か分からない集合写真。

(……この後も
 撮られるな)

 案の定、
 何人にも声をかけられる。

「卒業しても連絡しよ!」

「遊びに行こ!」

(……社交的イベント多すぎ)

 その輪を抜けて、
 少し離れたところで、
 彩音と並ぶ。

「……終わったね」

「……終わった」

 言葉にすると、
 実感が湧く。

「正直さ」

 彩音が、
 少し照れたように言う。

「卒業しても、
 あんまり変わらない気がする」

「……私も」

 高校が終わっても、
 私たちは、
 私たちのままだ。

「大学も、
 一緒だしね」

「……だね」

 進学先は、
 同じ大学。

 学部は違うけど、
 場所は変わらない。

(……大学生か)

 正直、
 想像はつかない。

 でも。

(……なんとかなる)

 この一年で、
 私は学んだ。

 人は、
 変わっても生きていける。

 むしろ、
 変わったからこそ
 見えるものもある。

 夕方。

 制服を脱ぎ、
 部屋で一息つく。

 ハンガーに掛けた制服を見て、
 私は小さく息を吐いた。

(……ありがとう)

 この制服に、
 この学校に。

 そして――
 この“私”になれたことに。

 スマホが鳴る。

 彩音からのメッセージ。

『入学式、一緒に行こうね』

 私は、
 少し考えてから返信する。

『もちろん』

 ベッドに倒れ込み、
 天井を見る。

(……大学編)

 新しい場所。
 新しい人間関係。

 女子としての生活も、
 まだまだ続く。

 でも、
 もう迷いはない。

「……よし」

 小さく呟く。

「次、行くか」

 こうして、
 私の高校生活は終わった。

 そして――
 大学編が、静かに始まる。
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