7 / 16
第一話 シロイオリ
7
しおりを挟む
それからすぐに準備された東棟の客室へ、非常に残念そうに案内されていく星と、どこかホッとしたような芳桐を見送った後、すっかり夕餉の名残も片付けられ、寝る準備を整えられた室内を満たす空気に、理久は微かにいたたまれなさを感じていた。
チラリと視線を向けた、主室から続くもう一間。
畳の部屋のど真ん中に有るのは、悠々と設置されたロータイプベッド。
さっきまでは煌々とついていた室内灯も、トーンを落とした柔らかなオレンジの灯りに変わっている。
これからここで、自分が権堂と何をするのか考えると、その光景は何だかとても扇情的に見えた。
「はぁ・・・」
一つ零れた溜息。
嫌なのではない。決して嫌悪や憂鬱からの溜息ではない。
ただ、自分と権堂の関係は、酷く微妙なのだ。
理久はゲイだ。
物心ついた時から恋愛対象は男で、初恋の相手も男だった。
何を隠そうその相手が、雇い主の一人で直属の上司でもある権堂なのだ。
高校時代、進学のために山間の小さな村にある本家から、理久の実家である長洲家で理久と共に生活をしていた叔父圭佑の、高校からの友人であった権堂とは、当時の理久はまだ幼かったが面識が有った。
たまに圭佑が家へ連れて来る、遊んでくれて面白いお兄さん。
それに、両親や友達には視えないらしい、よく分からない怖い物が、権堂が来てくれると立ち所に消えていくのだ。
いつもキラキラとした光の粒を纏っていて、優しくてかっこいい人。
当時、小学校に上がったばかりだった理久の中で、権堂はテレビの中のヒーローのように、憧れの存在になっていた。
家へ来てくれるのを心待ちにし、来たら来たで権堂に懐いて後を付いて回っていた理久に、当時圭佑も「理久は本当に斎が好きだな」と苦笑し、母親からは「お兄ちゃん達の勉強の邪魔をするんじゃないの」と怒られてしまう程だった。
そんな理久が権堂を好きにならないのも無理なことで、憧れはややしてすぐに、幼い恋心へと育っていた。
だが、大学二年になった圭佑が長洲家を出て一人暮らしを始めてからは、権堂と会うことは全く無くなってしまい、理久の幼い初恋もそのまま淡い思い出となってしまう。
しかしそれが、15年以上も経ってから思わぬ再会を果たす事になるのは、夜の街でだった。
男性が束の間の癒やしや、同性の恋人、一夜の恋を探す為の店、所謂ゲイバーで、理久が馴染のママを相手に、患ってもいない病気を理由に退職へと追い込まれた事を涙ながらに管巻いていると、入店を知らせるカウベルの音がする。
「あら、随分久しぶりじゃない」
どこかホッとしたように言ったママに、釣られて理久が振り返った先には、非常にラフな格好をした、キラキラと光の粒を纏った男がいた。
その光景に、思い出した子どもの頃の淡い初恋。
カウンターの席を一つ空け、腰を下ろした男へ見とれる理久に、苦笑ながらも声をかけてきたのは相手の方だった。
その笑顔にも、初恋の人を彷彿とさせられ、胸の中がきゅんと甘酸っぱく疼く。
理久の記憶の中、憧れのヒーローだったあの人と同じように、優しい笑顔でキラキラと輝く粒を纏った人。
時折ママも交えながら、しばらく二人で話しをして、その後ホテルへと誘ったのは理久だったか、相手だったか。
そうして濃密な一夜を共にして、連絡先も交換しないまま後ろ髪を引かれながら別れた数日後。仕事を世話してやると圭佑に呼び出され向かった先にいたのが、数日前に行きずりの恋をした相手で、そして幼少時に初めて覚えた淡い恋の相手、権堂だった。
チラリと視線を向けた、主室から続くもう一間。
畳の部屋のど真ん中に有るのは、悠々と設置されたロータイプベッド。
さっきまでは煌々とついていた室内灯も、トーンを落とした柔らかなオレンジの灯りに変わっている。
これからここで、自分が権堂と何をするのか考えると、その光景は何だかとても扇情的に見えた。
「はぁ・・・」
一つ零れた溜息。
嫌なのではない。決して嫌悪や憂鬱からの溜息ではない。
ただ、自分と権堂の関係は、酷く微妙なのだ。
理久はゲイだ。
物心ついた時から恋愛対象は男で、初恋の相手も男だった。
何を隠そうその相手が、雇い主の一人で直属の上司でもある権堂なのだ。
高校時代、進学のために山間の小さな村にある本家から、理久の実家である長洲家で理久と共に生活をしていた叔父圭佑の、高校からの友人であった権堂とは、当時の理久はまだ幼かったが面識が有った。
たまに圭佑が家へ連れて来る、遊んでくれて面白いお兄さん。
それに、両親や友達には視えないらしい、よく分からない怖い物が、権堂が来てくれると立ち所に消えていくのだ。
いつもキラキラとした光の粒を纏っていて、優しくてかっこいい人。
当時、小学校に上がったばかりだった理久の中で、権堂はテレビの中のヒーローのように、憧れの存在になっていた。
家へ来てくれるのを心待ちにし、来たら来たで権堂に懐いて後を付いて回っていた理久に、当時圭佑も「理久は本当に斎が好きだな」と苦笑し、母親からは「お兄ちゃん達の勉強の邪魔をするんじゃないの」と怒られてしまう程だった。
そんな理久が権堂を好きにならないのも無理なことで、憧れはややしてすぐに、幼い恋心へと育っていた。
だが、大学二年になった圭佑が長洲家を出て一人暮らしを始めてからは、権堂と会うことは全く無くなってしまい、理久の幼い初恋もそのまま淡い思い出となってしまう。
しかしそれが、15年以上も経ってから思わぬ再会を果たす事になるのは、夜の街でだった。
男性が束の間の癒やしや、同性の恋人、一夜の恋を探す為の店、所謂ゲイバーで、理久が馴染のママを相手に、患ってもいない病気を理由に退職へと追い込まれた事を涙ながらに管巻いていると、入店を知らせるカウベルの音がする。
「あら、随分久しぶりじゃない」
どこかホッとしたように言ったママに、釣られて理久が振り返った先には、非常にラフな格好をした、キラキラと光の粒を纏った男がいた。
その光景に、思い出した子どもの頃の淡い初恋。
カウンターの席を一つ空け、腰を下ろした男へ見とれる理久に、苦笑ながらも声をかけてきたのは相手の方だった。
その笑顔にも、初恋の人を彷彿とさせられ、胸の中がきゅんと甘酸っぱく疼く。
理久の記憶の中、憧れのヒーローだったあの人と同じように、優しい笑顔でキラキラと輝く粒を纏った人。
時折ママも交えながら、しばらく二人で話しをして、その後ホテルへと誘ったのは理久だったか、相手だったか。
そうして濃密な一夜を共にして、連絡先も交換しないまま後ろ髪を引かれながら別れた数日後。仕事を世話してやると圭佑に呼び出され向かった先にいたのが、数日前に行きずりの恋をした相手で、そして幼少時に初めて覚えた淡い恋の相手、権堂だった。
0
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる