霊感専門相談所くじら特殊サービス

緒沢タラ

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第一話 シロイオリ

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 まず感じたのは、背後から包まれるような温もり。
 まだ少し重い瞼をゆっくり開くと、理久は数度瞬いて、室内へと視線を巡らせた。
 薄く間接照明に照らされた室内は上質な和室。一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなって記憶を探る。
 確か、依頼の為に滞在していたホテルの部屋で、権堂と行為のフリをしていた筈が、止まらなくなって・・・。
 ふと、腰に感じた温かな重みと、首の下の硬い感触。
「・・・え?」
 戸惑いに、張り付く喉から漏れたのは掠れた声。
「・・・ん? 気がついたか?」
 耳元に聞こえた、いつもより少しゆったりとした柔らかな問いかけに、理久は首を巡らせ背後を確認した。
「ご、ん堂さん?」
 眠いのか、喉奥を鳴らした権堂の身体が、体勢を変えないままの伸びに力がこもって震えた。同時に理久の腰を抱く腕にも力がこもり、強く抱きしめられる。
「もう片付いたから、まだ寝てろ。お前も疲れただろ」
「えっ!?」
 小さく驚きの声を上げ身動いだ理久へ
「浄化したから、気配もねぇだろ」
 覚えてねぇのか?
 権堂は深く息を吐くと問いかけてくる。それへ考え込むように、理久は視線の先、照明のオレンジの光に照らされた白壁をジッと見つめた。
「・・・そう言えば、なんとなく」
 小さくポツリ、呟く。
「なんとなくかよ」
 どことなく感じた、弱々しさ。そのあまりにも心許ない声に苦笑した権堂は、枕代わりの腕で、抱き込むようにして掴んだ理久の肩を撫でた。
 薄く思い出した、哀しみの追記憶。覚えているのは
「・・・閉じ込められて、辱められて、悔しくて哀しくて、辛いのに、何もできない」
 絶望と憎悪の残滓が、微かに胸に残っている。
「そうか」
 慰めるように、優しく背後から包み込む腕。
 感じる温もりに、理久の薄く開いた唇から零れた吐息。
「でもまぁ、今頃はたぶん、会いたいヤツの元へ行けただろうさ」
 夜の静かな、ゆったりとした空気に溶け込むよう囁く声。
「そっか・・・」
 理久の口元へ、微かに笑みが浮かぶ。
 だが、ふと目を瞬かせた理久は「それはそうと」と、首を捻って背後の権堂を伺う。
「何か、背中に当たるんですけど」
 言えば、腰に回った権堂の腕がピクリと微かに反応する。
 目覚めた時から、腰のあたりに感じている感触。なんとなく気になって仕方がない。
「気にすんな。これはアレだ。ただの、疲れマラだ」
 権堂は言って理久の首下から腕を引き抜くと、背を向けるように寝返りを打った。途端、背中に感じた冷たい空気。
 胸に残された澱が、ほんの少し、重みを増した。
 権堂の様子を覗いたくて、理久は仰向き、顔を倒して横を向く。
 向けられた広い背中。仄かな熱を伴って感じる匂い。じんわりと胸に広がった、温もりと甘い疼き。
 もう一度、90度体勢を変えて
「・・・権堂さん」
 寄り添った背中。
 ピクリと背筋が微かな反応を伝える。
「・・・どうした」
 眠れないのかと問いかけてくる声。小さく否を返した理久は、権堂の男らしく逞しい腰へそっと腕を回した。
「おい?」
 困惑を滲ませる権堂の声。
「愛しい人がいるのに、憎しみを感じていた人から、何度も何度も無理矢理に犯されて、殺してやりたいと、ずっと思っていた」
「・・・」
 ポツポツと語る理久の声に、権堂はその様子を伺うよう黙り込んだ。その背中に、スリスリと擦り付く額の感触。
「降ろしていた時に感じていた、怖くて哀しくて辛い気持ちが、まだ少し残っているんです・・・。だから・・・」
 ふいに寝返りを打った権堂が、理久の身体を抱きしめる。
「だから、少し寒いんです」
 胸の中、くぐもった声が言うのに、手触りの良いサラリとした黒い髪を撫でるように梳く。
 温もりに包まれ、優しい手に髪を撫でられ、理久から零れた甘やかな吐息。
「温まったか?」
 耳元に囁く低い声に、理久はゾクリと身を震わせ、ぎゅっと、権堂の胸元を握りしめた。
「理久?」
 問いかけた唇が、柔らかに額へ触れる。
「・・・足りないです」
 呟いた理久が、腕の中で伸び上がり、権堂の唇の端へ唇で触れた。
「もっと・・・温めてくれますか?」
 問いかける、理久の瞳がどこか不安げにゆらりと揺れる。
「・・・しょうがねぇな」
 すぐに、唇に降りてくる唇。
「特別サービスだぞ」
 触れたそれは、すぐに離れてもう一度触れ合う。角度を変え何度も何度も触れ合っては、繰り返す毎に深さを増してゆく。
 ぬるりと滑る舌が唇のあわいを柔くなぞり、理久が身を震わせる。
「ん・・・」
 甘く喉を鳴らした理久の、吐息に薄く開いた唇の隙間から、肉厚の舌が口腔内へ滑り込んで来た。舌に舌を絡め取られ、吸われ、水音を立てる唾液が唇を濡らす。コクリと、理久の喉が音を立てた。
 浴衣の合わせから忍び混んできた、温かく少し硬い指先が胸の粒へ触れると、ピクリと震える理久の肩。いたずらな指先は、指ざわりの良い小さな突起をすりすりと摺り、時折爪先で擽る。
「・・・ぁ」
 摘まれ、小さく漏れた甘えた声。
 唾液に濡れた理久の唇をぺろりと舐めた権堂の舌が、顎を舐め、唇で這い下りた首の筋を、伝うように舐め上げる。耳朶を喰み、肩口へと滑らせた唇が、ヂュっと音を立てると、理久にチリリと走る軽い痛み。そこに残った紅い痕。
 柔い肌へ、緩く立てたられた歯の感触に、吐息を零した理久の指が、権堂の髪へ触れる。
 そうして肌を伝いゆっくりと下ってきた唇は、放って置かれたもう一方の胸の飾りへと触れ、ちゅっと小さな音を立てて吸い付く。
「ん・・・ぁ」
 尖らせた舌先でチロチロと、そこを擽るように舐められ、歯を立てられ、吸われ。緩んだ理久の唇から和えかな声が漏れる。
 摘んだ乳首を、クリクリと捏ねるように遊んでいた手は、胸を離れて脇腹を撫で、腰を撫で、下腹へと、肌の手触りを確かめるよう、ゆっくり理久の身体を這い下りていく。
 その手が、一度浴衣越しに太ももへ触れ、割れた裾から忍び込んで直に理久の内腿を撫でた。
 ソクリと身を震わせた理久の、下腹へ徐々に溜まっていく熱。形を変えて顕になったそれを確かめるように、布越しに指先がそっと這う。
 スリスリと擽る指の動き。甘く痺れるように焦れったい、もどかしさも感じるそれに、吐息混じり、零れる甘い声。
「権堂、さん」
 甘えたように呼ぶ声。
 声と共に、理久の手が権堂の熱へ伸び、そこへ触れた。
 下着の上から、そのずっしりとした熱を掌で包み込んだ理久の喉が、コクリと小さな音を立てた。
「はっ・・・クソっ」
 それへ熱のこもった息を吐き出した権堂が、被っていた布団を跳ねて身を起こす。その開けた浴衣から覗く、厚い胸板に理久の視線が引き寄せられ、ドクンと胸がはねる。
 柔らかな間接照明の元、お互いの中心で主張する物へチラリと視線をやった理久の、腕を掴んだ権堂がそこを強く引き上げると、向かいあった身体。
「え? 権堂さん?」
 権堂の指が理久の下着にかかると、理久の分身がそこからプルンと揺れて顔を覗かせる。
 それへカァッと顔を赤く染めた理久の、見下ろした先で権堂も同じように、自身の熱を下着をずらして取り出した。
 その圧倒的な存在感の違いに、理久の視線が釘付けになる。
「んなじっくり見るなって」
 初めてでもあるまいし。
 どこか恥ずかしそうに言った権堂の手が理久の中心を柔く握る。そうして、指先が敏感な裏側をなぞれば、理久が権堂の肩口へすがるように顔を埋めた。
「あっ・・・ぁ・・・」
 色付く声を漏らす理久の腰へ巻き付く、権堂の太い腕。そこをグイっと力強く引き寄せ
「ほら、跨いで座れ」
 あぐらを掻いた股ぐらへと導くと、大きく足を開かせて自身の太ももを跨がせる。
「え?」
 それへ戸惑った声を出して、権堂へ首を傾げた理久へ、権堂は小さくため息を吐くと
「最後まではしねぇぞ。これで我慢しろ」
 言った。
「え? しないんですか?」
 困惑を伝える理久の声。
「初めてでもないって、自分で言ったのに」
 拗ねたように言った理久へ
「ほら、もっと寄せろ」
 権堂は言って理久の腰を引き寄せる。
 そうして、近付いたお互いの熱を、大きな掌に握り込んだ。
「圭佑にバレたら死ぬ程どやされんだろうが」
 言った権堂の手が、握り込んだ二本の熱杭をまとめて扱く。その度に、ゴリゴリと擦れ合う二人の分身に、理久は和えかな声を零す。
「理久、お前の手も貸せ」
 熱い吐息混じりの声。それに顔を上げた理久は、戸惑いを滲ませ権堂を見つめる。ゆらゆらと揺れる瞳に、宿る劣情。躊躇う理久の手を、権堂の手が掴み導いた。
「・・・で、も」
 握ったまま、動かそうとしない理久に、だが権堂はやれやれとため息を付いて苦笑を浮かべる。
「準備だって、必要だろ?」
 言われて、理久の唇が拗ねた子どものようにツンと尖る。
 その唇へ、ちゅっと可愛らしい音を立てて触れた権堂の唇。触れるだけのキスをした権堂は鼻先を理久のツンとした鼻先へ触れさせると
「だからこれで我慢しろ」
 言って手を蠢かす。グチュリと湿った音が立った。
「ぁ・・・アぁ・・・」
 権堂が手を動かすたびに、竿が、括れがゴリゴリと擦れ合い、理久の背筋がゾクゾクと震える。
 と、首筋に触れた権堂の唇。ゾクリと肌が粟立ち、理久が艶を含んだ声を漏らす。
 ゆらゆらと揺れてしまう理久の腰。それへフッと口端へ笑みを浮かべた権堂が、グイっと腰を突き上げると、申し訳程度に二人へと添えられていた理久の手に力が籠もる。
 ビクンと跳ねる腰。
「んあっ」
 俯き、権堂の首筋へ額を擦り付ける理久の顔が、その肩で軽く押し上げられる。うっそりと顔を上げた理久の頬へ鼻先を寄せた権堂の唇が、理久の濡れて赤い唇の端へ触れた。
 誘われるように、触れ合わせたそれ。
 腰を抱いていた権堂の手が理久の首裏へ回り、深く深く唇を塞がれる。
 舌が絡まり、立つ水音。理久が甘えて喉を鳴らす。唇から溶け合ってしまいそうに、お互いの唇を貪り合い、唾液を交換し合う。
 不意に、権堂が理久を抱えたままに、布団へと倒れ込んだ。
 激しくなる手の動き。揺れる権堂の腰。
「アッ、ぁ・・・んっ」
 室内へ満ちるのは湿った空気と粘着質な水音。荒い息と色付く声。
 仰け反る理久の手が、すがるように権堂の肩を掴んだ。
「アァッ、アッ・・・も、で・・・」
 ヒクンと身を震わせた理久の、噛み締めた唇がゆっくりと解け、震える息が零れる。
 それから僅かに一呼吸程遅れて、権堂の背筋がブルリと震える。
 理久の腹や胸に、飛び散った白濁。
 ハァハァと、荒い息を吐きながらそれを見下ろした権堂の瞳に、未だ宿る熱。それを見上げた理久の瞳も、熱に浮かされたように潤んでいた。
 だが、ゆるゆると繰り返される瞬き。
 呼吸が落ち着いてくると、唇を濡らすように舌をのぞかせた理久のふっくりとした唇へ、権堂が啄むようなキスを落とした。
「もう寝ろ。重いヤツを降ろしたんだ。お前だって疲れてんだろ」
 顎へ、鼻先へ、瞼へと、優しく宥めるようなキスが下りてきて、理久の瞼がトロトロと重みを増してゆく。
 僅かして、完全に閉じた瞼。何事か呟こうとしたのか、薄く開いた唇が微かに権堂の名前を呼ぶのに苦笑をした権堂は
「・・・引きずられてなし崩しに、なぁんてのは、本意じゃねぇんだ」
 呟いて、理久の額へ唇を落とした。

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