15 / 16
第一話 シロイオリ
15
しおりを挟む
翌朝、東棟のツインルームから離れへとやってきた星、芳桐と合流し、用意された朝食を食べ終わる頃、支配人が部屋を訪ねてきた。
「できれば、手紙と一緒に、信政とシノを弔ってやってください」
建物はただの蔵では無かったこと、そしてその歴史と経緯を説明して、霊障の原因とそれらはもう浄化したことを伝えた権堂は、言って、星が大槌家から預かってきた信政の手紙を支配人へと差し出した。
それへ、複雑な表情で視線を落とす支配人へ
「手紙に残っていた信政の思念はシノと一緒に浄化させたので、この手紙自体にはもう何も残っていません。ですがまぁ、あまりに強い想いが籠もっていた物なので、そのままにしておくのも気掛かりでしょう。焼くなりするのが良いとは思います。もし普通に焼却処分するのが気になるのであれば、お焚き上げをしてもらうと良いでしょう」
言った権堂に、支配人は束を受け取り、分かりましたと数度頷く。
「こちらの手紙と一緒に、お二人の無念を弔う碑を建てて供養することにします」
支配人の言葉に、権堂も頷いて返した。
依頼完了のサインを貰い、ホテルを後にした一行は、一路帰京の途についていた。
「にしても、どうして呼び出す鍵が性行為だったんでしょう。そこの辺りの関連性が非常に気になります。完全に気配を消していた怨念が出て来てしまう程のトリガー・・・。しかも恋人同士ではない先生と長洲くんの行為でも適用されるんですよね」
ボックスの向かい合わせの席で、首を捻ってブツブツと言った星に、理久は顔を真っ赤に染めた。
「し、してない! フリだけ! 未遂だからっ!」
異議を口にするが、そんな反論はさらっとスルーし、星は権堂へ問いかける。
「そういう行為を見る事で、信政への想いを思い出して、幸せそうな恋人同士に嫉妬したとか、羨ましかったとか、そういう事でしょうか・・・。先生はどう思われますか?」
それに、しばし考えるように中空を見上げた権堂はだが
「さぁなぁ」
言って、車窓に広がる青々とした田園風景へ視線をやった。
「ただまぁ、信政への想いとか嫉妬やら羨望って言うよりは、恨みの気持ちじゃねぇか? 何せ、無防備な背中を刺されそうになったからな」
権堂の言葉に、「ええ!?」と声を上げた星は、驚きの表情のまま理久を見た。
「な、長洲くん・・・、未遂って、そういう意味で?」
「なんでそこだけ拾うの!?」
慌てて否定した理久に、星はふふふといたずらっぽい笑みを浮かべる。
「寝首を掻こうとしていたって事か」
そんな二人を見ていた芳桐が静かな声で言うのに
「そうかもな」
権堂は頷いて返す。
「そんな訳で芳桐。さっき理久も言ってたが、あくまでもフリだ。仕事の為に仕方なくだ。圭佑に報告すんなら、そこのところは違えるなよ」
念を押して言うのに、興味なさそうに平らな目で権堂を見た芳桐は、一言「分かった」とだけ答える。そうして、チラリと視線をやった権堂の横。理久が権堂とは反対側へ僅かに俯き、こっそりと息を吐くのに目を眇めた。
「どっちが難儀なんだか」
ボソリと呟いた芳桐は、チラリと自分の横で、タブレットへ何やら今回得た成果をまとめている幼馴染へ視線をやり、はぁと溜息を零した。
「できれば、手紙と一緒に、信政とシノを弔ってやってください」
建物はただの蔵では無かったこと、そしてその歴史と経緯を説明して、霊障の原因とそれらはもう浄化したことを伝えた権堂は、言って、星が大槌家から預かってきた信政の手紙を支配人へと差し出した。
それへ、複雑な表情で視線を落とす支配人へ
「手紙に残っていた信政の思念はシノと一緒に浄化させたので、この手紙自体にはもう何も残っていません。ですがまぁ、あまりに強い想いが籠もっていた物なので、そのままにしておくのも気掛かりでしょう。焼くなりするのが良いとは思います。もし普通に焼却処分するのが気になるのであれば、お焚き上げをしてもらうと良いでしょう」
言った権堂に、支配人は束を受け取り、分かりましたと数度頷く。
「こちらの手紙と一緒に、お二人の無念を弔う碑を建てて供養することにします」
支配人の言葉に、権堂も頷いて返した。
依頼完了のサインを貰い、ホテルを後にした一行は、一路帰京の途についていた。
「にしても、どうして呼び出す鍵が性行為だったんでしょう。そこの辺りの関連性が非常に気になります。完全に気配を消していた怨念が出て来てしまう程のトリガー・・・。しかも恋人同士ではない先生と長洲くんの行為でも適用されるんですよね」
ボックスの向かい合わせの席で、首を捻ってブツブツと言った星に、理久は顔を真っ赤に染めた。
「し、してない! フリだけ! 未遂だからっ!」
異議を口にするが、そんな反論はさらっとスルーし、星は権堂へ問いかける。
「そういう行為を見る事で、信政への想いを思い出して、幸せそうな恋人同士に嫉妬したとか、羨ましかったとか、そういう事でしょうか・・・。先生はどう思われますか?」
それに、しばし考えるように中空を見上げた権堂はだが
「さぁなぁ」
言って、車窓に広がる青々とした田園風景へ視線をやった。
「ただまぁ、信政への想いとか嫉妬やら羨望って言うよりは、恨みの気持ちじゃねぇか? 何せ、無防備な背中を刺されそうになったからな」
権堂の言葉に、「ええ!?」と声を上げた星は、驚きの表情のまま理久を見た。
「な、長洲くん・・・、未遂って、そういう意味で?」
「なんでそこだけ拾うの!?」
慌てて否定した理久に、星はふふふといたずらっぽい笑みを浮かべる。
「寝首を掻こうとしていたって事か」
そんな二人を見ていた芳桐が静かな声で言うのに
「そうかもな」
権堂は頷いて返す。
「そんな訳で芳桐。さっき理久も言ってたが、あくまでもフリだ。仕事の為に仕方なくだ。圭佑に報告すんなら、そこのところは違えるなよ」
念を押して言うのに、興味なさそうに平らな目で権堂を見た芳桐は、一言「分かった」とだけ答える。そうして、チラリと視線をやった権堂の横。理久が権堂とは反対側へ僅かに俯き、こっそりと息を吐くのに目を眇めた。
「どっちが難儀なんだか」
ボソリと呟いた芳桐は、チラリと自分の横で、タブレットへ何やら今回得た成果をまとめている幼馴染へ視線をやり、はぁと溜息を零した。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる