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第14話「雨と空気」
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雨が降り波で揺れる輸送船、酔って海に吐く者や寝ている者が居るなかハイトは数時間前から黙り同じ姿勢で横になっていた。
「おい、エラム。あいつのテンション上げてくれよ。ただでさえ糞みたいな空気の輸送船内なのにあいつまでああだと気が狂っちまう。」
タースは小声でエラムへ話し掛ける。
タースの言う通り輸送船内はどこに行っても重たい嫌な空気だった。
その空気に雨の湿気た空気も混ざり更に最悪になる。
「あのね、兵長。
あんな事があったんですからこんな空気になるのは当たり前でしょ?それにハイト曰く衛生科に昔からの友人が居るとかで…テンション上げるとか無理ですよ…」
エラムはタースと同様小声で返すとタースはそれに続けた。
「あ~もしかしてあの時の女か!」
少し大きい声で言ってしまったタースの横腹をエラムは肘でつく。
2人は慌ててハイトを見るがハイトの様子に変わりは無い。
「兵長、見たことあるんですか?そのハイトの友人」
「多分、名前が…セルカ・モアだったか?2回見たことがある。恋人だと思ったんだが、友人だったのか。あ、そうだ。」
タースは何かを思い付いたのか
荷物をおいて出ていってしまった。
(たしか幹部が居る部屋…あった、あそこだな)
タースが向かったのは幹部が集まっている部屋だった。
部屋の前に行きドアをノックする。
「あ~タース・アロック兵長です。ハガン・ノア中佐は居ますか。少しお話が。」
タースはハガンを少し先にあるドアの前に連れていき話を始めた。
「俺の班員でさ、前に自己紹介した男いたろ?ハイトって言う奴。あの隣にいた女…セルカ・モアって言う奴らしいがそいつが衛生科らしくてハイトがずっと死んだような顔して動かねーんだよ。な?セルカって奴の生存確認出来たりしねーか?」
「はぁ?何バカな事言ってるんだ。無理に決まってるだろ?一兵士の為にそんな事出来るかよ。」
「そこを何とかしてくれよ。ほら、お前幹部だろ?通信機使えねーのか?セルカ・モアって奴を居るかどうか聞くだけで良いんだ。」
「あのなぁ。お前…兵長になってからのお前は無茶言い過ぎなんだよ。
色々軍機とか戦地の様子の話教えろとか言い出したり。
こっちも出来る限りはやるが出来ない事もあるのを理解してくれ。」
「分かってるよ。ただ、ハイトに関しては配属祝いのパーティーが出来なかった。
だから、せめて他の奴らに慣れなくてなくても俺だけは頼る事が出来て欲しいというか…だな。」
「で?お前ハイトって奴の前ではバカみたいな事言ったりしてんのか?
最近お前変わったって噂になるぐらいだぞ。
いい加減真面目なお前に戻れ。
俺も、もう軍機に触れるような事も言わん。」
「そりゃ…ふざけるぐらいしか思い付かなかったんだよ。
まあ、軍機に関してはもうエラムも班に慣れてきたし良いよ。後、あぁ…分かったよ。ありがとう。」
タースは最初より落ち込んだ様子だった。
部屋に戻っていくハガン。
タースが感じていた空気は更に更に悪くなる。
自分の無力さを感じ気分も最悪、その場で立ち尽くしていた。
「あ、あの…自分の名前言ってませんでした…か?」
隣から高めの声が聞こえた。
タースが横を振り向くとそこにいたのはセルカだった。
「え?なんで?」
「あ、いや、さっき私の名前言ってませんでした?
何か言い合ってたのであまり出れなかったんですけど…」
目が点になったタース。
タースとしては何故今まで出てこなかったのかはどうでも良く何故居るかが大事だった。
「いや、え?なんで…居るの?」
「え!?あ、あぁ…この船には負傷兵も乗船しているので衛生科の人間が10人程乗船しているんですよ。まあ、淡々と負傷兵の経過を見守るだけですけどね」
最初は少し混乱した様子だったが直ぐに理由を話し出した。
タースはとある光景を思い出す。
この船に最初に乗船したのが担架に乗せられた兵士と衛生兵だったのだ。
何故こんなにも重要な事を忘れていたのか。
この事を言えば多少は何とかなったかも知れないのに。
「申し訳ないんだが、多分、ハイトが君が先の砲撃に巻き込まれたと思ってるらしくてずっと元気が無いんだよ。ちょっとあいつと会ってやってくれないか?頼む!」
頭を下げるタース。
それを見て慌てふためくセルカ。
どちらも落ち着きセルカは休暇の許可を貰いハイトの元へ向かう。
「ハイトって…軍人に向いてないと思うんです。」
通路を歩く中での沈黙を破り口を開いたのはセルカだった。
「他人よりかはある愛国心と昔見た軍のパレードで軍人になったものの……今みたいに私みたいな自分と関わりがある人が死んだり傷つけば立ち直れない程のショックを受ける。
それに心配症ですしね。」
「確かにそうだな。でもアイツはかなり頑張ってるよ。慣れない環境での激戦を精神を壊す事無くやってきた。そこにあの砲撃戦があったからああなったんだろうけどな。」
セルカは少し笑みを浮かべた。
その笑みには優しさと嬉しさしか無い。
「多分ですけど、部隊に居る時は質問しかしてないんじゃないですか?あれでも私と出掛けたりするときは甘えてきたりして可愛いんですよ」
タースが感じていた最悪の空気の中には少しずつ花が咲き始めたかと思うほど良くなっていた。
「おい、エラム。あいつのテンション上げてくれよ。ただでさえ糞みたいな空気の輸送船内なのにあいつまでああだと気が狂っちまう。」
タースは小声でエラムへ話し掛ける。
タースの言う通り輸送船内はどこに行っても重たい嫌な空気だった。
その空気に雨の湿気た空気も混ざり更に最悪になる。
「あのね、兵長。
あんな事があったんですからこんな空気になるのは当たり前でしょ?それにハイト曰く衛生科に昔からの友人が居るとかで…テンション上げるとか無理ですよ…」
エラムはタースと同様小声で返すとタースはそれに続けた。
「あ~もしかしてあの時の女か!」
少し大きい声で言ってしまったタースの横腹をエラムは肘でつく。
2人は慌ててハイトを見るがハイトの様子に変わりは無い。
「兵長、見たことあるんですか?そのハイトの友人」
「多分、名前が…セルカ・モアだったか?2回見たことがある。恋人だと思ったんだが、友人だったのか。あ、そうだ。」
タースは何かを思い付いたのか
荷物をおいて出ていってしまった。
(たしか幹部が居る部屋…あった、あそこだな)
タースが向かったのは幹部が集まっている部屋だった。
部屋の前に行きドアをノックする。
「あ~タース・アロック兵長です。ハガン・ノア中佐は居ますか。少しお話が。」
タースはハガンを少し先にあるドアの前に連れていき話を始めた。
「俺の班員でさ、前に自己紹介した男いたろ?ハイトって言う奴。あの隣にいた女…セルカ・モアって言う奴らしいがそいつが衛生科らしくてハイトがずっと死んだような顔して動かねーんだよ。な?セルカって奴の生存確認出来たりしねーか?」
「はぁ?何バカな事言ってるんだ。無理に決まってるだろ?一兵士の為にそんな事出来るかよ。」
「そこを何とかしてくれよ。ほら、お前幹部だろ?通信機使えねーのか?セルカ・モアって奴を居るかどうか聞くだけで良いんだ。」
「あのなぁ。お前…兵長になってからのお前は無茶言い過ぎなんだよ。
色々軍機とか戦地の様子の話教えろとか言い出したり。
こっちも出来る限りはやるが出来ない事もあるのを理解してくれ。」
「分かってるよ。ただ、ハイトに関しては配属祝いのパーティーが出来なかった。
だから、せめて他の奴らに慣れなくてなくても俺だけは頼る事が出来て欲しいというか…だな。」
「で?お前ハイトって奴の前ではバカみたいな事言ったりしてんのか?
最近お前変わったって噂になるぐらいだぞ。
いい加減真面目なお前に戻れ。
俺も、もう軍機に触れるような事も言わん。」
「そりゃ…ふざけるぐらいしか思い付かなかったんだよ。
まあ、軍機に関してはもうエラムも班に慣れてきたし良いよ。後、あぁ…分かったよ。ありがとう。」
タースは最初より落ち込んだ様子だった。
部屋に戻っていくハガン。
タースが感じていた空気は更に更に悪くなる。
自分の無力さを感じ気分も最悪、その場で立ち尽くしていた。
「あ、あの…自分の名前言ってませんでした…か?」
隣から高めの声が聞こえた。
タースが横を振り向くとそこにいたのはセルカだった。
「え?なんで?」
「あ、いや、さっき私の名前言ってませんでした?
何か言い合ってたのであまり出れなかったんですけど…」
目が点になったタース。
タースとしては何故今まで出てこなかったのかはどうでも良く何故居るかが大事だった。
「いや、え?なんで…居るの?」
「え!?あ、あぁ…この船には負傷兵も乗船しているので衛生科の人間が10人程乗船しているんですよ。まあ、淡々と負傷兵の経過を見守るだけですけどね」
最初は少し混乱した様子だったが直ぐに理由を話し出した。
タースはとある光景を思い出す。
この船に最初に乗船したのが担架に乗せられた兵士と衛生兵だったのだ。
何故こんなにも重要な事を忘れていたのか。
この事を言えば多少は何とかなったかも知れないのに。
「申し訳ないんだが、多分、ハイトが君が先の砲撃に巻き込まれたと思ってるらしくてずっと元気が無いんだよ。ちょっとあいつと会ってやってくれないか?頼む!」
頭を下げるタース。
それを見て慌てふためくセルカ。
どちらも落ち着きセルカは休暇の許可を貰いハイトの元へ向かう。
「ハイトって…軍人に向いてないと思うんです。」
通路を歩く中での沈黙を破り口を開いたのはセルカだった。
「他人よりかはある愛国心と昔見た軍のパレードで軍人になったものの……今みたいに私みたいな自分と関わりがある人が死んだり傷つけば立ち直れない程のショックを受ける。
それに心配症ですしね。」
「確かにそうだな。でもアイツはかなり頑張ってるよ。慣れない環境での激戦を精神を壊す事無くやってきた。そこにあの砲撃戦があったからああなったんだろうけどな。」
セルカは少し笑みを浮かべた。
その笑みには優しさと嬉しさしか無い。
「多分ですけど、部隊に居る時は質問しかしてないんじゃないですか?あれでも私と出掛けたりするときは甘えてきたりして可愛いんですよ」
タースが感じていた最悪の空気の中には少しずつ花が咲き始めたかと思うほど良くなっていた。
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