皇国戦記

SHOUKICHI

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第13話「バド町の悲劇」

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バド町 バド港

バド港には多数の輸送船、少し沖の方には皇国海軍の顔とも言える鋼鉄の城が浮かんでいる。


「え、タース兵長!あれって海軍ですか!?戦艦ですよねあれ!?初めて見た…カッコいい……」

ハイトは戦艦を見てはしゃぐ。そんな彼の行動は近くに居る子供と全く同じであった。


「良く海軍が出てきたな。どんな風の吹き回しだ?エラム、何か知らないか?」


タースはエラムに聞くがエラムは頭を強く横に振り少し早口で言う。


「いや、まず海軍が来てる理由なんて全く知りませんよ。そもそもいつも噂を言ってくるの兵長じゃないですか!」

「おいおい、そんな事言うなよ。良し、お前ら乗船だぞ。」




第5艦隊 旗艦 戦艦ウソフ 艦橋

「艦長。陸軍の輸送船への収容が完了、これより民間人の収容を開始との事です。」

「了解した。では、作戦通りバド町破壊の準備を進めさせておけ。」

ラスク・ドロク艦長とルロズ・シャールム副艦長は艦橋でそうした会話をしていた。

「あぁ、それとルロズ、敵はどうだ?動きは無いな?」

「現在、見張り員を増員し対地警戒を厳としています。今の所、何もありませんが…試験評価の為に積んでる気球はどうしますか?」


戦艦ウソフには試験評価の為に弾着観測、索敵に使用する気球を積んでいた。

「いや、使わなくて良い。ただ準備はしておけ。」


そして時刻は12時を過ぎた頃だったか、艦橋内に見張り員の一声が響いた。


「敵部隊らしきもの発見!」


この一声で艦橋内が少し騒がしくなる。
そして艦長の指示で更に艦全体が騒がしくなるのだ。


「陸軍は収容済み、敵だな。
全艦戦闘用意!主砲、副砲、撃ち方用意!」


その指示で戦艦と巡洋艦は砲を動かし水兵は慌て忙しく動き回る。

1~2分程経った頃にまた艦橋に大きめの声で報告が飛び込む。


「主砲、副砲、装填良し!標準良し!撃ち方用意良し!」


それを聞いたラスク艦長は即座に新たな指示を出す


「良し。主砲、副砲、撃ち方初め!撃ェエ!!!」





「かあぁぁぁぁあ…エラムさん、カッコいいですよね!戦艦の周りにいるのって巡洋艦ですし、本当にカッコいい……」

「本当だねぇ…カッコいいな本当……あれ?砲が動いてない?」


輸送船からハイトとエラムは艦隊を眺めていた。
ハイトらの前では砲が動く戦艦や巡洋艦、そして慌て忙しく動き回る水兵の姿があった。

それから次の出来事が起こるまで大して時間はかからなかった。

ハイトらの目には一瞬の閃光、耳には爆音な届いた。


「え、撃った…」


誰かが言った。
外が見える人は全員が港の方へ視線を向ける。

すると爆発が起こるのは港ではなく町の向こう側にある平地であった。
数日前まで戦闘地域だったあの場所に幾つかの爆発が起こり煙が上がる。

煙が消えるとそこにいたのは人だった。それはどんどん町へ歩いてくる。いや、走っている人もいる。
それを見た輸送船内は少しパニックになっていた。


「おい、どうなってる!この間に敵と戦闘を停止したばかりじゃないか!!海軍は知らないのか!?」

「敵は撃ち返してくるんじゃないのか!?民間人はまだ半分以上も港にいるんだぞ!」


ハイトにとっては民間人よりも港で民間人の誘導に当たる衛生隊だった。





バド町攻略部隊本部

「エネール中将!大変です!!町へ進んでいた部隊が攻撃を受けています!」


通信兵が叫びながら天幕に入ってくる。
通信兵長
の言葉を聞くと本部に集まっていた幹部らは勢いよく椅子から立つ。


「何!?我々は自然に合わせた話に従って動いていただけだぞ!?…これだから戦争は……一応用意していて良かったな…砲兵隊に港を砲撃するように伝えろ!今すぐにだ!!!!」



これからは5才程でも分かる簡単な話が展開されていった。
王国陸軍砲兵隊は港への猛烈な砲撃を開始した。
これを見た海軍は試験評価の為に積まれていた気球を上げ砲兵隊の位置へ艦砲射撃を開始した。

最終的に両軍の攻撃は終了したのは気球が上がった30分後であった。
その30分間は港への砲撃は続けられていた。

砲撃が始まってからの港は終始地獄絵図だった。
一般人はパニックに陥り我先にと輸送船に乗り込むがそれに押され何人もが海へ落ちる。
そんな中に砲弾が落ちる。
砲弾は遠慮無く力を解き放ち爆炎、爆風、破片が一般人や衛生科の人間を襲う。
砲撃が終わり、港は穴だらけになり原型を留めなかった。
そして海は港から数m離れた所までが血で赤く染まる。

最終的に皇国側の被害は一般人含めて死者行方不明者は約3万人を超えていた。
これが後にバド町の悲劇と言われるものである。
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