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56話 偶然の再会
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月曜の午後。
いつものように共同プロジェクトの定例会議が開かれることになっていた。
春菜が資料を手に会議室に入ると、クライアント企業の担当者たちがすでに席についていた。この場にはKITE社の篠原が出席しており、蒼真は後から到着することになっていた。
「失礼します。本日はよろしくお願いします」
春菜が挨拶すると、クライアント企業の部長が立ち上がった。
「こちらこそ。今日は新しいメンバーをご紹介したいと思います。先週、本社から転勤してきた田中です」
春菜が振り返ると、そこに見覚えのある顔があった。
「初めまして、田中と申します。今後ともよろしくお願いします」
春菜の手が一瞬止まり、胸の奥がざわめく。
(田中さん……まさか、ここで会うなんて)
会議が始まったが、春菜は田中の姿が頭から離れず、集中しきれない。
田中は真剣に資料を見つめ、的確な質問を重ねていた。
(以前のお見合いのとき……お互い合わないと確認した相手。こうして仕事で普通に接するのは、不思議な気持ち……)
休憩時間になると、田中が春菜に近づいてきた。
「水沢さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」
小声での声かけに、春菜は思わず姿勢を正す。
「あ、はい……お久しぶりです。まさか、同じプロジェクトでご一緒するとは」
「僕も驚きました。あの時はお互い納得の結論でしたが、こうして仕事でお会いできるのは心強いです」
誠実な笑顔に、春菜の緊張も少し和らぐ。
「そうですね。お仕事、よろしくお願いします」
会議が再開されると、遅れて蒼真が入ってきた。
「失礼します。申し訳ありません、別件が長引きまして」
「高瀬社長、お疲れ様です。こちら田中をご紹介します」
田中が立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
「田中です。今後ともよろしくお願いします」
「KITE社の高瀬です。よろしくお願いします」
蒼真は軽く会釈し、自然に春菜へ視線を向けた。
春菜は小さく頷きながらも、胸の鼓動が早まるのを自覚した。
会議が進む中、田中は積極的に意見を述べ、頼りがいのある提案をしていた。
春菜はその仕事ぶりに感心しつつ、ふと蒼真の視線が何度かこちらに向くのを感じた。
(……気のせい?)
会議終了後、田中が春菜に声をかける。
「お疲れさまでした。お見合いの時とは違って、仕事だと気持ちが楽ですね」
「確かにそうですね。それに田中さんのご提案、とても参考になりました」
「ありがとうございます。何かありましたら遠慮なくどうぞ」
2人が柔らかく微笑む。そのやりとりを見ていた蒼真の視線が、ふと二人の間に注がれる。次の瞬間、彼は迷いを断ち切るように歩み寄ってきた。
「水沢さん、例の件のお時間大丈夫ですか?」
春菜が頷くと、蒼真は田中に穏やかに視線を向けた。
「田中さん、今日はありがとうございました。とても参考になるご意見でした。
この後、水沢さんと少しお話ししたいので、ここで失礼していただけますか?」
田中は軽く頭を下げた。
「はい、わかりました。ありがとうございました」
会議室を出た廊下で、蒼真がふと振り返った。
「田中さんとは、お知り合いでしたか?」
春菜は少し迷ったあと、正直に答える。
「はい。先日のお見合いの相手でした」
「……そうでしたか」
蒼真の表情に、ほんの一瞬だけ影が差す。
「まさかお仕事で再会するとは思いませんでしたけど」
春菜の言葉に、蒼真は小さく頷いた。
「……偶然ですね。では、後ほど改めて」
「はい」
蒼真はそう言って歩き出したが、胸の奥に小さなもやが残る。
春菜もまた、彼のわずかな表情の変化が気になり、廊下で立ち止まった。
(……何を話すつもりなのかな)
あの電話を思い返しながら、春菜は静かに息を整えた。
――そしてその日の夜。
約束していた「会議後の時間」が、ついに訪れる。
いつものように共同プロジェクトの定例会議が開かれることになっていた。
春菜が資料を手に会議室に入ると、クライアント企業の担当者たちがすでに席についていた。この場にはKITE社の篠原が出席しており、蒼真は後から到着することになっていた。
「失礼します。本日はよろしくお願いします」
春菜が挨拶すると、クライアント企業の部長が立ち上がった。
「こちらこそ。今日は新しいメンバーをご紹介したいと思います。先週、本社から転勤してきた田中です」
春菜が振り返ると、そこに見覚えのある顔があった。
「初めまして、田中と申します。今後ともよろしくお願いします」
春菜の手が一瞬止まり、胸の奥がざわめく。
(田中さん……まさか、ここで会うなんて)
会議が始まったが、春菜は田中の姿が頭から離れず、集中しきれない。
田中は真剣に資料を見つめ、的確な質問を重ねていた。
(以前のお見合いのとき……お互い合わないと確認した相手。こうして仕事で普通に接するのは、不思議な気持ち……)
休憩時間になると、田中が春菜に近づいてきた。
「水沢さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」
小声での声かけに、春菜は思わず姿勢を正す。
「あ、はい……お久しぶりです。まさか、同じプロジェクトでご一緒するとは」
「僕も驚きました。あの時はお互い納得の結論でしたが、こうして仕事でお会いできるのは心強いです」
誠実な笑顔に、春菜の緊張も少し和らぐ。
「そうですね。お仕事、よろしくお願いします」
会議が再開されると、遅れて蒼真が入ってきた。
「失礼します。申し訳ありません、別件が長引きまして」
「高瀬社長、お疲れ様です。こちら田中をご紹介します」
田中が立ち上がり、丁寧に頭を下げる。
「田中です。今後ともよろしくお願いします」
「KITE社の高瀬です。よろしくお願いします」
蒼真は軽く会釈し、自然に春菜へ視線を向けた。
春菜は小さく頷きながらも、胸の鼓動が早まるのを自覚した。
会議が進む中、田中は積極的に意見を述べ、頼りがいのある提案をしていた。
春菜はその仕事ぶりに感心しつつ、ふと蒼真の視線が何度かこちらに向くのを感じた。
(……気のせい?)
会議終了後、田中が春菜に声をかける。
「お疲れさまでした。お見合いの時とは違って、仕事だと気持ちが楽ですね」
「確かにそうですね。それに田中さんのご提案、とても参考になりました」
「ありがとうございます。何かありましたら遠慮なくどうぞ」
2人が柔らかく微笑む。そのやりとりを見ていた蒼真の視線が、ふと二人の間に注がれる。次の瞬間、彼は迷いを断ち切るように歩み寄ってきた。
「水沢さん、例の件のお時間大丈夫ですか?」
春菜が頷くと、蒼真は田中に穏やかに視線を向けた。
「田中さん、今日はありがとうございました。とても参考になるご意見でした。
この後、水沢さんと少しお話ししたいので、ここで失礼していただけますか?」
田中は軽く頭を下げた。
「はい、わかりました。ありがとうございました」
会議室を出た廊下で、蒼真がふと振り返った。
「田中さんとは、お知り合いでしたか?」
春菜は少し迷ったあと、正直に答える。
「はい。先日のお見合いの相手でした」
「……そうでしたか」
蒼真の表情に、ほんの一瞬だけ影が差す。
「まさかお仕事で再会するとは思いませんでしたけど」
春菜の言葉に、蒼真は小さく頷いた。
「……偶然ですね。では、後ほど改めて」
「はい」
蒼真はそう言って歩き出したが、胸の奥に小さなもやが残る。
春菜もまた、彼のわずかな表情の変化が気になり、廊下で立ち止まった。
(……何を話すつもりなのかな)
あの電話を思い返しながら、春菜は静かに息を整えた。
――そしてその日の夜。
約束していた「会議後の時間」が、ついに訪れる。
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