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55話 待つ時間
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週末。
成瀬が出社すると、スマホにメッセージが届いていた。
『成瀬くん
この前の打ち合わせのときに言ったお茶の件、
もし来週の土曜日に時間があればどうですか?
香澄』
成瀬は慌てて周りを見回し、そっとスマホをしまった。
(……やっぱり、冗談じゃなかったんだ。)
お昼休み、成瀬は春菜を呼び出した。
「春菜さん……香澄さんから、来週の土曜日にお茶に行きませんかって……」
「え!?本当に?」
「はい……本当にメッセージが来て……」
成瀬は困ったような顔で続けた。
「どう思います?」
春菜は少し考えてから、穏やかに答えた。
「……んー、成瀬くんはどうしたい?」
「それが……香澄さんと一緒にいるのは楽しいと思うんです。でも、もし仕事以上の意味があるとしたら……」
成瀬は声を落とした。
「……これって、高瀬社長を裏切ることになるんじゃ」
春菜は一瞬言葉に詰まった。
「そうだよね……でも成瀬くんが誠実でいれば、きっと適切な判断ができると思う。誰かを裏切ることにはならないと思うよ」
「……はい。少し考えてみます。ありがとうございます」
その時、上司が春菜のデスクに近づいてきた。
「水沢さん、ちょっといいかな?」
「共同プロジェクトに、クライアント側から新しい担当者が参加することになった。経験豊富な方らしいから、きっと心強いと思う」
春菜は軽く頷いた。
(……新しい人。どんな人なんだろう)
---
その日の夕方。
帰る準備をしていた春菜のデスクに、内線ではなくスマホが鳴った。
画面に映る名前に、胸が大きく跳ねる。
――高瀬蒼真。
「……!」
思わず指先が震えた。
春菜は深呼吸してから、意を決して応答ボタンを押した。
「……もしもし、水沢です」
「お疲れさまです。来週の共同プロジェクトの会議の後で、お時間をいただけますか?」
蒼真の声は、落ち着いているはずなのに、どこか硬さが混じっていた。
それが春菜には、緊張しているように聞こえる。
「……はい。大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは、来週お待ちしています」
電話が切れた後、春菜はスマホを握ったまま立ち尽くしていた。
頬に熱がのぼっていく。
(……来週。きっと、はっきりする)
不安もある。けれど、それ以上に心の奥で小さな期待が膨らんでいく。
まるで胸の中に灯がともったように、温かな光が広がっていた。
窓の外では、夕日が静かに沈み、オレンジ色の余韻が彼女をやさしく包み込んでいた。
---
一方その頃、成瀬はスマホを握りしめ、しばらく迷っていた。
画面には香澄からのメッセージが浮かんでいる。
(……どうしたらいい)
深呼吸をひとつして、指先を動かす。
「ぜひお願いします」――短い返信を送信した。
こうして、約束は“来週の土曜”に決まった。
成瀬が出社すると、スマホにメッセージが届いていた。
『成瀬くん
この前の打ち合わせのときに言ったお茶の件、
もし来週の土曜日に時間があればどうですか?
香澄』
成瀬は慌てて周りを見回し、そっとスマホをしまった。
(……やっぱり、冗談じゃなかったんだ。)
お昼休み、成瀬は春菜を呼び出した。
「春菜さん……香澄さんから、来週の土曜日にお茶に行きませんかって……」
「え!?本当に?」
「はい……本当にメッセージが来て……」
成瀬は困ったような顔で続けた。
「どう思います?」
春菜は少し考えてから、穏やかに答えた。
「……んー、成瀬くんはどうしたい?」
「それが……香澄さんと一緒にいるのは楽しいと思うんです。でも、もし仕事以上の意味があるとしたら……」
成瀬は声を落とした。
「……これって、高瀬社長を裏切ることになるんじゃ」
春菜は一瞬言葉に詰まった。
「そうだよね……でも成瀬くんが誠実でいれば、きっと適切な判断ができると思う。誰かを裏切ることにはならないと思うよ」
「……はい。少し考えてみます。ありがとうございます」
その時、上司が春菜のデスクに近づいてきた。
「水沢さん、ちょっといいかな?」
「共同プロジェクトに、クライアント側から新しい担当者が参加することになった。経験豊富な方らしいから、きっと心強いと思う」
春菜は軽く頷いた。
(……新しい人。どんな人なんだろう)
---
その日の夕方。
帰る準備をしていた春菜のデスクに、内線ではなくスマホが鳴った。
画面に映る名前に、胸が大きく跳ねる。
――高瀬蒼真。
「……!」
思わず指先が震えた。
春菜は深呼吸してから、意を決して応答ボタンを押した。
「……もしもし、水沢です」
「お疲れさまです。来週の共同プロジェクトの会議の後で、お時間をいただけますか?」
蒼真の声は、落ち着いているはずなのに、どこか硬さが混じっていた。
それが春菜には、緊張しているように聞こえる。
「……はい。大丈夫です」
「ありがとうございます。それでは、来週お待ちしています」
電話が切れた後、春菜はスマホを握ったまま立ち尽くしていた。
頬に熱がのぼっていく。
(……来週。きっと、はっきりする)
不安もある。けれど、それ以上に心の奥で小さな期待が膨らんでいく。
まるで胸の中に灯がともったように、温かな光が広がっていた。
窓の外では、夕日が静かに沈み、オレンジ色の余韻が彼女をやさしく包み込んでいた。
---
一方その頃、成瀬はスマホを握りしめ、しばらく迷っていた。
画面には香澄からのメッセージが浮かんでいる。
(……どうしたらいい)
深呼吸をひとつして、指先を動かす。
「ぜひお願いします」――短い返信を送信した。
こうして、約束は“来週の土曜”に決まった。
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