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66話 冬の地方都市、初めての合同出張
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秋も終わりそうな頃、春菜は総務から連絡を受けていた。
「水沢さん、年末の大型キャンペーンの現地確認だけど、スケジュールが固まったからお知らせ。今回の出張は準備やリハーサルに加えて、現地での本番も含まれるので、6泊7日で動くことになる。クライント側から田中さん、うちからは水沢さんで対応してほしい。KITE社の高瀬社長は後半から合流するそうです。」
「え?そうなんですね…わかりました」
(そっか…それにしても急に本番までか。でも、田中さんと二人でも頑張らなきゃ)
---
年末も間近の週末、冬の空気が肌を刺す地方都市の駅に春菜と田中の二人が降り立った。
大型キャンペーン成功のため、この一週間の前半は二人で動く。
田中は軽く会釈しながら言った。
「春菜さん。急なスケジュール変更ですみません。本番まで含めて現地対応になりましたが、一緒に頑張りましょう」
「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします」
駅から送迎バスに乗り込み、二人は宿泊先のホテルへと向かった。車窓から見える街並みは、冬の空気で少し透き通っているように感じられた。
ホテルに到着し、ホテルのロビーに入ると、大きなツリーがきらめいていた。
「……あ、そっか。今日はクリスマスなんだ」
一瞬だけ足が止まる。
(みんなは恋人や家族と過ごしてるんだろうな…私は仕事か)
胸の奥が少しきゅっとする。
チェックインを済ませた後、荷物を部屋に置いた春菜は、改めて身を引き締める。
(この出張では、仕事をしっかりこなさなきゃ…)
会議室に行くと田中さんが誰かと話していた。
「失礼します。え……蒼…」
春菜は思わず立ち止まり、目を大きく見開いた。
「あ、高瀬社長!お疲れさまです」
慌てて言い直す。胸の鼓動は止まらず、内心では嬉しさが溢れそうになったが、職業的な笑顔で必死に抑える。
田中が補足するように言った。
「高瀬社長は仕事が早めに片付いたので、先に来てくださったんです。ありがとうございます」
「いえ、思ったより早く片付いてよかったです」
蒼真はそう言い、春菜の方に視線を送り、一瞬だけ微笑む。その表情は柔らかいが、目の下にはクマが浮かび、わずかに疲れも見えた。
春菜は心配しつつも、胸が高鳴るのを抑えられなかった。
顔合わせの準備を進める。田中は資料を整理しながら、落ち着いた声で言った。
「今回のキャンペーン、現地での細かい確認も含めて、しっかり詰めていきましょう」
蒼真は静かに資料を眺めつつ、時折春菜のほうに視線を送る。その瞳の奥に、わずかな疲労の色が滲んでいるのを春菜は見逃さなかった。
(もしかして……急いで来てくれたのかな)
春菜は淡々と自分の作業に集中しながらも、胸の奥では小さな喜びが弾むのを抑えきれない。
まさか、こんなふうに長い時間を共にできるなんて――そう思うだけで、冷たい冬の空気さえ少し和らぐ気がした。
---
夜、田中に案内され、美味しいと評判の店で三人は食事をした。
店内はクリスマスらしい飾りつけやBGMで賑やかだ。
「今日はちょうどクリスマスでしたね。せっかくですし、三人でご飯どうですか?」
田中の提案で決まった食事会だった。
和やかな雰囲気の中で話題は尽きず、春菜は終始笑顔で相槌を打ちながらも、心の奥では蒼真のあの疲れた顔が気になって仕方なかった。
(クリスマスなのに……蒼真さんと、ちゃんと話せなかったな)
けれど、隣で田中とやり取りする蒼真の表情は、思っていたより自然で柔らかい。
その様子に少し安心して、春菜自身も気づけば会話に引き込まれていた。
笑い声を交わしながら過ごす時間は、不思議とあたたかかった。
---
ホテルに戻った蒼真は部屋の浴室で熱い湯に身を沈めていた。張り詰めていた全身の力が少しずつ抜けていく。
「……疲れたな」
湯気に紛れるように低く呟いた。目の下に鈍い疲労は残っている。それでも――あのまま春菜を田中と二人にしておくのが嫌だった。
本当は、クリスマスに渡したかったプレゼントもあったけれど、今日のタイミングでは叶わなかった。そんな自分に苦笑いしながらも、胸の奥にあるのは確かな安堵だった。
一方その頃、春菜は自室の布団の中でもやもやしていた。
スマートフォンに手を伸ばしかけては、また引っ込める。
(食事中の蒼真さん、思ったより柔らかい表情だったけど……)
(連絡してみる?でも疲れてるのは変わらないよね……やっぱりそっとしておいた方がいいかな)
隣の部屋にいる彼の存在を思うだけで、胸が熱を帯びて落ち着かなかった。
そして、鞄の中のプレゼントは、静かに輝き続けていた。
「水沢さん、年末の大型キャンペーンの現地確認だけど、スケジュールが固まったからお知らせ。今回の出張は準備やリハーサルに加えて、現地での本番も含まれるので、6泊7日で動くことになる。クライント側から田中さん、うちからは水沢さんで対応してほしい。KITE社の高瀬社長は後半から合流するそうです。」
「え?そうなんですね…わかりました」
(そっか…それにしても急に本番までか。でも、田中さんと二人でも頑張らなきゃ)
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年末も間近の週末、冬の空気が肌を刺す地方都市の駅に春菜と田中の二人が降り立った。
大型キャンペーン成功のため、この一週間の前半は二人で動く。
田中は軽く会釈しながら言った。
「春菜さん。急なスケジュール変更ですみません。本番まで含めて現地対応になりましたが、一緒に頑張りましょう」
「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします」
駅から送迎バスに乗り込み、二人は宿泊先のホテルへと向かった。車窓から見える街並みは、冬の空気で少し透き通っているように感じられた。
ホテルに到着し、ホテルのロビーに入ると、大きなツリーがきらめいていた。
「……あ、そっか。今日はクリスマスなんだ」
一瞬だけ足が止まる。
(みんなは恋人や家族と過ごしてるんだろうな…私は仕事か)
胸の奥が少しきゅっとする。
チェックインを済ませた後、荷物を部屋に置いた春菜は、改めて身を引き締める。
(この出張では、仕事をしっかりこなさなきゃ…)
会議室に行くと田中さんが誰かと話していた。
「失礼します。え……蒼…」
春菜は思わず立ち止まり、目を大きく見開いた。
「あ、高瀬社長!お疲れさまです」
慌てて言い直す。胸の鼓動は止まらず、内心では嬉しさが溢れそうになったが、職業的な笑顔で必死に抑える。
田中が補足するように言った。
「高瀬社長は仕事が早めに片付いたので、先に来てくださったんです。ありがとうございます」
「いえ、思ったより早く片付いてよかったです」
蒼真はそう言い、春菜の方に視線を送り、一瞬だけ微笑む。その表情は柔らかいが、目の下にはクマが浮かび、わずかに疲れも見えた。
春菜は心配しつつも、胸が高鳴るのを抑えられなかった。
顔合わせの準備を進める。田中は資料を整理しながら、落ち着いた声で言った。
「今回のキャンペーン、現地での細かい確認も含めて、しっかり詰めていきましょう」
蒼真は静かに資料を眺めつつ、時折春菜のほうに視線を送る。その瞳の奥に、わずかな疲労の色が滲んでいるのを春菜は見逃さなかった。
(もしかして……急いで来てくれたのかな)
春菜は淡々と自分の作業に集中しながらも、胸の奥では小さな喜びが弾むのを抑えきれない。
まさか、こんなふうに長い時間を共にできるなんて――そう思うだけで、冷たい冬の空気さえ少し和らぐ気がした。
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夜、田中に案内され、美味しいと評判の店で三人は食事をした。
店内はクリスマスらしい飾りつけやBGMで賑やかだ。
「今日はちょうどクリスマスでしたね。せっかくですし、三人でご飯どうですか?」
田中の提案で決まった食事会だった。
和やかな雰囲気の中で話題は尽きず、春菜は終始笑顔で相槌を打ちながらも、心の奥では蒼真のあの疲れた顔が気になって仕方なかった。
(クリスマスなのに……蒼真さんと、ちゃんと話せなかったな)
けれど、隣で田中とやり取りする蒼真の表情は、思っていたより自然で柔らかい。
その様子に少し安心して、春菜自身も気づけば会話に引き込まれていた。
笑い声を交わしながら過ごす時間は、不思議とあたたかかった。
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ホテルに戻った蒼真は部屋の浴室で熱い湯に身を沈めていた。張り詰めていた全身の力が少しずつ抜けていく。
「……疲れたな」
湯気に紛れるように低く呟いた。目の下に鈍い疲労は残っている。それでも――あのまま春菜を田中と二人にしておくのが嫌だった。
本当は、クリスマスに渡したかったプレゼントもあったけれど、今日のタイミングでは叶わなかった。そんな自分に苦笑いしながらも、胸の奥にあるのは確かな安堵だった。
一方その頃、春菜は自室の布団の中でもやもやしていた。
スマートフォンに手を伸ばしかけては、また引っ込める。
(食事中の蒼真さん、思ったより柔らかい表情だったけど……)
(連絡してみる?でも疲れてるのは変わらないよね……やっぱりそっとしておいた方がいいかな)
隣の部屋にいる彼の存在を思うだけで、胸が熱を帯びて落ち着かなかった。
そして、鞄の中のプレゼントは、静かに輝き続けていた。
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