異世界転移した少女は、黒髪ゆえ虐げられるも、王子に愛され復讐する～プラネット・ロンダリング～

４

　夕方、私は水汲みを命じられた。
　外は膝まで雪が積もっている。
　水汲みは近くの川まで往復10分、雪の中を歩かなければならない。重い水を持って10往復以上。
　疲れ果てた夕方に行うには、とてもつらい労働だ。

　その日、私は川に湯気が立っているのを見た。
　外気が冷たいからではなかった。
　ふれてみると、湯気の立つ周辺の水は温かかった。
　熱い位の場所もある。
　温泉だ。

　夜、皆が寝静まったころ、私は窓から出て、温泉を目指した。
　私は特に監禁されていなかった。
　エイダたちは私が逃げ出し、途中で力尽きることを願っている節もあった。
　私を見るのも不快らしい。

　どんなに疲れていても眠れなかった。
　空腹と寒さ。


　温泉に浸かる。
　温かい。
　蹴られて転んだ時の傷がしみる。
　でも温かくて気持ちいい。
　心まで温まるようだった。
　その夜は、束の間ぐっすり眠れた。



　ここへきて2か月たった。
　私の処分は未だに決まらない。
　僻地にある雪深い国のようで、上の人に報告するにも数か月かかるようだ。
　
　ここ1か月、雪は降っていない。
　夜も温かく過ごしやすくなってきた。
　雪が無くなった土地には、新緑が芽吹き始めた。
　少し前までは温泉で温まっても、すぐに寒さで目覚めてしまったのが、朝まで眠れるようになってきた。


　私を虐げる人も少なくなった気がする。
　温かくなり始め気持ちに余裕ができたのかもしれないし、飽きたのかもしれない。


　来ないように言ったのに、ウォーレンとクレアは1週間に2度ほど、食料を差し入れに来てくれた。
　おかげでひもじさも以前よりひどくなく、チョコレートの消費も抑えられている。
　最近クレアの体調が良くないそうで、ウォーレンは心配していた。

　ウォーレンとクレアがいなかったら、私はいま生きていなかっただろう。
　クレアが元気になるよう、私は女神像に初めて祈った。