異世界転移した少女は、黒髪ゆえ虐げられるも、王子に愛され復讐する~プラネット・ロンダリング~

百葉

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 それから王都まで、私は少しも寂しくなかった。
 エドがいつも一緒にいてくれた。

 私は残しておいたクーベルチュールチョコレートをエドと分け合って食べた。
 4人にも分けた。
 皆チョコレートの美味しさに感動していた。



 王都に着いた私たちは、報告のため王宮に向かった。
 少し待って呼ばれ、王の御前に進み出た。
 高い位置にある玉座に王は座っていて、左右には数十名の臣下が顔をそろえている。

 エド達5人は洗練された動きで王の前に跪いた。
 私も膝をついた。

「黒髪の娘はそれか?」
 王から声がかかった。
 エドの目配せを受けて、私は髪を覆っていた布を取った。

 集まった人たちの息を飲む音が聞こえてきた。

「何と不吉な」
「醜い」
 囁きがさざ波のように広がった。


「牢に入れろ」
 王は命じた。

「何を根拠に牢に入れるのですか?黒髪だからですか」
 エドは口を開いた。

「私はその娘をみて胸を悪くした。同じような症状の者はいるか?」
 王が臣下に問いかけると、多くの臣下が手を上げ、口々に「吐き気がする」「胃がむかむかする」と体調不良を訴えた。

「その娘が何か魔術を使っているのかもしれない。黒髪は悪魔の象徴と言われる邪悪な存在だ。詮議する必要がある」
 王はエドを見た。


「お待ちください。エリナは春の女神です。すでに報告したとおり、ミルトン村には春が来ています。エリナがいたからです」
 エドは発言した。

 私は王宮が一枚岩ではないことを知った。一緒に旅をした5人以外、味方はいない。

「ミルトン村以外にも春は来た。グリーンフォードには1日で花が咲いた。その娘は関係ない」
 王の言葉にエドは表情を固くした。

「本当ですか?」
 エドは確認するように王を見た。

「クーパー、ドレイトン、グリーンフォード、スタッドランド…、皆春が来た。マンセルに春が来るのも遠くない」
 
 王の言葉を聞いて、エドは何か気付いたようだ。

「それは全て私たちが通った村や街です。エリナが通ったから春が来たのです」

 グリーンフォードは私たちが結婚した街だった。


「牢に入れろ」
 王は再度命じた。
 私は両手を兵士に抱えられ、立たされた。

「お待ちください。エリナは私の妻です。グリーンフォードで誓いを立て、正式に妻にしました」
 エドは声を張り上げた。

 王は立ち上がり、エドに近づき胸ぐらをつかむと、エドを殴った。
「お前は!なんということを!」
 王は怒りで震えていた。

「この小娘が春の女神であるはずがない。見れば分かるだろう。女神は小麦色の髪と新緑の瞳をもつ美女だ。似ても似つかない」

「それは画家たちが神話をもとに描いた絵姿にすぎません。誰も本当の女神を見たことがない。エリナの周りで起こったことを見れば、エリナが女神だと一目瞭然です」

 エドは訴えたけれど、王の目配せで私は連れていかれた。
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