ジェントル・ジョーカー 最悪な僕

斑鳩入鹿

文字の大きさ
3 / 7
第1章

本屋

しおりを挟む
駅前の本屋に向かう。

立体になってる、高架歩道をあるく。
土曜日は人が多い。

女子高生と中年男性が歩いているのが目についた。
最近はこういう若い女性と中年男性の組み合わせをよく見るものだ。
親子の距離感ではないから、まあそういうことなのだろう。

人は常に物理的な距離に、深層心理が反映されるらしい。
パーソナルスペースだったか。
精神科にいくようになってから乱読するうちにしょぼい知識が身についた。

本は退屈を紛らわすのにはもってこいだ。


本屋の角のコーナー。
毎回ここに来るので落ち着く。
人気がないので読書に没頭できる。

最近はニーチェに傾倒している。
ニヒリズムがなんなのかよくはわからないが言ってることは自分の趣味に合う。

「啓蒙とは何か」なんて訓示的なことを言うやつがいるがおれにはさっぱりだった。

少し読み漁っていると背後に気配を感じた。
見覚えのある姿は先程の紳士な男だった。
好印象しかないその身なりが少し気持ち悪かった。

男が口を開く。

岩彼いわかれ文庫を読むとは若いのに勤勉だね。」

「えぇ、まあ、少し。」

なんだこいつは。

「君、さっきの喫煙所にたよね?」

どうやら自意識の過剰ではなかったらしい。


「何かおれに御用ですか?」

と聞くと、飄々とした態度で男は答える。


「君と少し話したくてね。PTSDかな?無理は良くないよ。その眼を見ればわかるよ。」

見透かされてる感じが子気味いいじゃないな。
"わかっている"という状態が、歩み寄りではなくその本質を理解してる話し方だった。

精神科医かなんかなのかこの男は。
回りくどくなくて、わかりやすい人間は好きだ。
素直に答えることにした。


「そうですね、医者はそう判断しているようです。」


「そうか、大変だね。生きづらいでしょう。」


「気にしてませんよ。医者は一人の人間。一人の人間の意見にすぎませんから。」


「いいね。そういうスタンス好きだよ。」


ココロにすっと入り込む低い声が面白い。


「もし、悪魔の声が聞こえても耳を傾けては行けないよ。君は堕落してはいけない。」


「それはどういう意味ですか?なにかの喩えですか?」


「言葉通り。忠告というのかな。初対面でごめんね。」


返事をしようとしたその時、スタスタと歩く靴の音。

「先生、こんなところに。そろそろ行きますよ。クライアントの方が待ってますよ。」

「あぁ、すまないね。田崎くん。早かったね。」

連れの男はおれと同じくらいの年齢か。若い男だった。ビジネスバッグを2個持っている。付き人のようなものか。


先生と呼ばれる紳士な男はおれに手を振って、

「それじゃ、またどこかで。」

そう言った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...