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ホンモノと複製
第44話・最悪の悪夢
しおりを挟む―――エルフの里―――
僕達は半日程歩き、エルフの里にようやく着いた。里に着くと歓迎ムードかと思いきやなんだか慌しい。
「どうしたんですか?門番さん」
「あぁ、エルちゃんか。いやね、世界樹の方で魔物が出たらしいだよ。あの一帯は聖域で魔物なんか出たこと無いのに。エルちゃんは近付いたら駄目だよ」
「はい」
魔物……?聖域が効かない程の強い魔物でもいるのか?
「ハルトよ。以前にも予想していた様に、四死聖が関わっているのかもしれぬな。気を付けるのじゃぞ」
「あぁ、アリス。最後の四死聖の名前は確か……」
魔王軍四死聖。邪神トカゲネビュラ、死神ザクス、吸血鬼レディ……そして最後の1人。
「名は堕天使ベリアル。念の為、ゼシカに伝えよ。数日は厳重警戒を怠るなと。魔物がいつコリータに向かうかわからん」
「わかった」
堕天使ベリアル……アリスがこんなに警戒するのは初めてだ。
「エルは皆をなるべく集めて、避難誘導してやってくれ」
「わかった。無理はするなよ!ハルトさん!」
エルはミレーさんの手を引いて連れて行く。なぜか首を横に振り、この場を離れるのを嫌がる素振りを見せるミレーさん。しかしこの時はこの仕草の意味がわからなかった。
「アリス、ちょっと気合入れてくれる?」
「よしっ!いいか!」
「おうっ!」
「気合だっ!気合だっ!気合だぁぁぁ!」
「え、そっち?背中バチーンてするかと……」
「よし、いくぞ!」
「お、おぅ……」
僕とアリスはきりんに乗って世界樹へと向かった。
―――世界樹近辺―――
上空から世界樹の周りを回ると、北東の海から魔物が陸に上がって来ているのが見える。魔法を1発ぶちかますことは出来るが、世界樹も無事では済まないかもしれない。
「アリス、堕天使ベリアルの気配はあるか?」
「いや。気配はないが……何なのだこの胸騒ぎは……?」
アリスの胸騒ぎは当たる。北の大森林の戦いでもそうだった。僕は気を引き締める。
地上ではエルフと魔物が戦っているが、状況は不利そうだ。
「レディ……レディ、聞こえるか?」
「……だ……那様?旦那様、聞こえますか」
「聞こえた。今、エルフの里にいるんだが魔物の群れが北東の海岸から押し寄せている。魔王城の様子はどうなっている?」
「いえ、こちらは変わりありません。先日頂いた奴隷商も使ってみましたが、まったく食い付かぬのです」
「そうか。アリスの胸騒ぎも気になる……一旦、見張り役を置いてこっちの応援に来れるか?」
「それは旦那様がわらわを欲していると解釈してもよろし――」
静かに念話を切ってみた。電波が悪かったことにしよう。レディの話だと魔王城から来た魔物達では無さそうだ。他の大陸からでも来たのだろうか。
僕はきりんに頼み、海岸の魔物が上陸してくる所に降ろしてもらう。
「鋳造合成!!」
『ゴゴゴゴゴ……!』
地鳴りと共に、海岸に城壁が現れる。これで時間稼ぎと、ついでに今後も魔物が上陸出来ない様にと考えた。コンクリート製でしかも表面は鏡面仕上げ!登るにしても引っかかりも何もない。
「ふふふ。完璧だ」
「なんじゃ、1人でニヤけて気持ちの悪いやつじゃ……」
討伐するのは上陸してしまった魔物100体くらいだ。
しかし今の僕はアリスと融合をし、既に人知の限界を突破している。相手が魔物とはいえ、神族の力に目覚めた僕の前では雑魚も同然なのではないだろうか。
僕は魔物の群れの前で声高らかに叫んだ!
『精霊声帯……頭が高いっ!!』
一瞬の出来事だった。ほとんどの魔物が自分の意志とは関係なく地面に頭を着ける。数体の魔物は立ったまま、何が起きたかわからずキョロキョロしていた。でもこれで後はエルフ族に任せても大丈夫な数に……?
「え?」
エルフ族も全員、平伏していた。
『エルフ族は頭をあげよっ!!』
僕は慌ててエルフ族の解除を行う。危うくエルフ族まで全滅する所だった。
「しっしっし。面白い発想じゃ、良くやったぞ」
「へへ」
珍しくアリスに褒められて気分が良い。
残りの魔物はエルフとの共闘であっという間に殲滅した。
全ての魔物を討伐し終えたが、なぜかスッキリしない。何か違和感を感じる。と同時にズキンッ!と胸が痛む。
「はぁはぁはぁ……何だ?何か見落としてる気がする……?」
「うむ。お主にもわかるか……何か見落としておるのぉ……」
何だ、この違和感は?頭の隅に何かひっかかる物がある。……考えろ考えろっ!!
「――はっ!?……ミレーさんか」
ミレーさんがエルに手を引かれてる時、首を横に振っていた……どういう意味だ?
………
……
…
『どうしたんですか?門番さん』
『わかった。無理はするなよ!ハルトさん!』
…
……
………
門番さん?ハルトさん?おかしい。エルはこの森で産まれ育っている。良く知るはずのエルフを名前では無く「門番さん」と言った。そして僕の事を「ハルトさん」と呼んだ……。
「嘘だろ……?まさかエルが偽物……?」
「はっ!そういう事か!ハルトよ、急げっ!エルとミレーが危ないっ!」
「きりんっ!!」
「はっ!ご主人様!」
きりんに跨り、全速力でエルフの里へと帰る!
「間に合えっ!!」
―――エルフの里―――
エル達と離れて数時間は経っただろうか。エルフの里はすでに燃えていた……。
そしてそこで目にしたのは、エルの首を持ったレディの姿だった。
「レディ?何をしている……?」
「フフフ……」
不気味に笑うレディ。
「フフフ……クククク……」
「どういう事だ……。なぜレディがエルを……」
「来るぞっ!ハルトッ!!」
レディの振り下ろす剣をギリギリの所で受け止めるが、力負けをし徐々に剣先が顔先に迫る。
「くっ!強い……!お、押される……!?」
「シネ……」
ふっと剣が軽くなったと思いきや、レディが剣を振り返す!そして体制を崩した僕の首にレディの剣が向かってくる!
「くっ!避けきれな――!?」
レディの剣が首元に迫り覚悟をした時だった!剣が目の前で止まり……ミレーさんを貫いた。
「……え?ミレーさん?何で……?」
ミレーさんの腹部から剣が抜き取られ、力無く僕の手の中でぐったりするミレーさん。
「ジャマダ……」
「ミレーさんっ!!ミレーさんっ!!」
「ハルトォォォォォ!!避けろっ!!!」
更にレディは攻撃を辞めない。レディの剣が頭上に見えた……。
――走馬灯の様にゆっくりと色んな思い出が浮かんでくる。目の前で横たわるエルの首。僕の腕の中で動かなくなるミレーさん。目頭が熱くなり、涙が溢れてきた。
何だこの悪夢は……?僕がこの世界で殺してきた魔物達の仕返しなのか……?
「シネッッッッッッ!!」
レディの声を最後に僕はゆっくりと目を閉じた……。
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