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ホンモノと複製
第45話・嘘月と四死聖
しおりを挟む―――エルフの里―――
エルを助けるた為、エルフの里に戻った僕とアリス。しかしエルは既に死に、助けに来たはずのレディが裏切り、僕はそのレディに殺されかけていた……。
死を覚悟し目を閉じる。背後で僕の名を呼び、叫ぶアリスの声が聞こえる。
「そうだ……アリス謝らなくちゃ。また一人ぼっちにしてしまう。あぁ……この世界……楽しかったなぁ……」
――僕が生きるのを諦めかけたその時だった!
「シネェェェェェェ!!」
『キィィーーーーン!!』
剣のぶつかる金属音が頭の上で鳴る!
「しっかりしろ!旦那様っ!!それでも我が夫かっ!!」
「レディ……?」
思わず、か細い声が出る。
「私に助けを求めたのであろう!会いたくて念話をしてきたのであろう!ならば!くっ!そ、それに答えてみせろっ!!うぉぉぉぉぉぉ!!奥義っっ!!」
レディがレディの剣を跳ね除け、レディの体が宙に舞う!
『無双千草っっ!!』
レディの体が目で追えない速さで動く!
『キンキンキンキーーーーーンッ!!』
「ガ……ガッ……!?」
僕に剣を振りかざしていたレディの体がバラバラに切り刻まれる!
「はぁはぁ……間に合った……!」
『パァァァァァァァァァン!!』
と同時に、僕はアリスにビンタをされた。
「ハルト!このバカモノがっ!しっかりせい!ミレーはまだ生きておる!よく見ろ!賢者の指輪を付けてるではないかっ!」
「け……賢者の指輪っ!?」
僕がエルにあげた指輪だ。そうか、あの指輪には自己修復機能が付いてたんだ。
「はぁはぁ……完全回復!!」
「コホッコホッ!」
傷口が見る見る塞がり、ギリギリの所でミレーさんは息を吹き返した。
「ふぅ、こっちの命が縮まるわぃ……」
「レディ……ありがとう。助かった……ありがとう」
「ふふ、貸しじゃよ旦那様。それよりこの婦人はミレー殿ではござらぬか?」
「あぁ、エルフ族の歌姫ミレー。奴隷商に捕まってるところを助けたんだ。でもエルが変わりに……」
「ハルトよ、よく見るのじゃ。あれはエルではない。エルフ族ではあるがな……」
良く見ると亡くなっているエルフ族は確かにエルではなかった。そしてレディが殺したこの魔物……!
「こいつは奴隷商のアジトにいた、転移魔法を使って逃げたヤツ……!?」
「こやつはダークエルフじゃな。幻影魔法を得意とする。わしらは幻覚を見せられていたのじゃな。転移魔法も……そう言っただけで姿を消して隠れただけかもしれん」
「となると……あのアジトで既にエルと入れ替わってた?」
「うむ、可能性はあるの。ミレーはおそらく偽物のエルに手を引かれた時に気付いたんじゃろうよ」
「そういうことか。だから首を横に振って教えようと」
周りを見ると、燃えていた火もいつの間にか消えている。全ては幻覚……偽物だった。
「皆様、ありがとうございます。幾度となく、助けていただいて……まだ森の南に逃げていった者達がいます。そこまで一緒に来てもらえませんか?」
「わかった。あれ?ミレーさん声が治ってる!」
「えぇ……エルさんが奴隷商のアジトで貸してくれたこの指輪、これのおかげかもしれません。少しずつですが良くなってます」
「それは良かった!」
「エルさんのお陰です」
「そうだ、エルを助けないと……!」
僕は念話器でゼシカに連絡する。
「ゼシカ!ゼシカ!聞こえるか!」
「……い、はい!聞こえるよ!こっちは異常無しだよっ!」
「頼みがある。エルフの森の北にある奴隷商のアジトにエルが囚われている可能性がある。魔物もいるかもしれないから手練を向かわせて救出してくれないか。詳しくは帰ってから話す!」
「わかった!まかせてっ!」
エルの救出はゼシカに任せ、僕達はエルフの森の南に向かった。
―――エルフの森南―――
南の森はいっそうに暗く、時間は夕刻なのだがもう既に夜の暗さだった。
「しっ!何か聞こえる!」
ミレーさんが身をかがめてと、僕達に促す。何も聞こえないが、ミレーさんについてゆっくり進む。
すると1人の男が湖のほとりで倒れていた。息を飲むミレーさん。湖の方から話し声が聞こえる。
「おいおい、言う事を聞かないとオレの部下がミレーを殺してしまうぞ!カッカッカ!」
「くっ……ミレーに手をだすな……!」
魔物の蹴りが、倒れている男の顔に入る。
「ガハッ!」
「カッカッカ!これが魔王軍幹部四死聖様かい!笑わせる。女一人のために命張るなんざ、雑魚のする事さ。もういい加減くたばれや!」
「もうやめてっ!!」
次の瞬間、見かねたミレーさんが飛び出して行った。
「ミレー!ミレーなのか!無事なのかっ!良かった!」
「ちっ。ゲイトのヤロウしくじりやがったか」
誰かと思えば……この男……。
「おい、誰かと思えば見た事のある嘘付き野郎か。あのダークエルフならもう来ないぞ、既に死んでいる」
「ミレー……あの方は……?」
「あのお方は勇者ロドリゲス様よ!あぁ、創造神アリス様!ベリアル様が生きている事に感謝します!良くご無事で!うぅぅ……」
勇者ロドリゲス様?創造神アリス様?ベリアル様?アリスと目が合い、お互いが首をかしげる。
「おい、ベリアル。なんじゃお主も来ておったのか」
「あぁ?……レディか?お前こそ何でこんなところに……」
ミレーに支えられ、起き上がるベリアル。
「おいおい、貴様ら無視かよ。俺様を誰だと思……」
「ハリス公爵の飼い犬のカイ様だろ?お前みたいな嘘付き野郎の顔は忘れねぇよ。仲間を売って魔物になってまで生きたいのか」
「はぁ?貴様は誰だよっ!?」
「レディ!ミレーさんとベリアルさんを連れて、避難しているエルフらを守ってくれ。僕はこいつなんかには……負けない」
「わかったござる!旦那様!」
「うぜぇヤロウだなぁ!」
「もうしゃべるな。その声も聞きたくない……」
『合成魔物召喚!いでよ、我が下僕達!』
湖の水面が揺れ始め、水中から数千体の魔物が沸き出てくる。
「そういう事か。海岸で現れた魔物は水、石、砂を合成した魔物だったのか」
「旦那様!この数はさすがに無理ではないのか!」
「レディ……加勢するぞ……この数は分が悪い……」
「ベリアル様!駄目です!もう戦えるお体では!」
「3人共、下がって……」
僕は3人に後ろへ下がる様に促す。
「アリス、全開でいくぞ!」
「うむ。われの力を解放しようぞ!」
アリスの詠唱に合わせて僕は詠唱を始める!
『混沌の地より生まれし風、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……その名は!!』
「混沌の地より生まれし風、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……その名は!!」
『!!!聖なる森の神!!!』
キィィィィィィィィィィン!!
甲高い音を発しながら、魔法剣が輝き出すっ!!
――そして風が止み、辺りに静寂が訪れ、月が魔物の合間から湖面に映る。
空からキラキラ光る淡い緑の光が湖の周辺すべてを包み込む。魔物達が空を見上げ、また静寂が訪れる……。
そして……次の瞬間っ!!!
ズドォォォォォォォォォォォン!!!
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
激しい緑の閃光が空から降り注ぎ、大地が揺れ、湖ごと全てが消し飛んだ!断末魔を上げる魔物達!
「ぎゃっぁちゃみぃぃぃぃ!!」
ゴォォォォォォォォォォォォ……!
パラパラパラパラ……。
轟音が納まると、全ての魔物は消え去り再び辺りに静けさが戻る。
「さぁ、始めようか。くだらない遊びは終わりだっ!」
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