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五話
しおりを挟むおはようございます。
今日はちゃんとお仕事をしています。
まぁ、半日で上がりますけどね。
だって怖いよ。
無理無理。
あまりの無理さに、ほら掻きたくもない腕を服越しからゴシゴシ掻いて真っ赤になってるんですよ?
でも、頑張った方ですから許して下さい。
あと、朝から奴のラインが届いて既にクタクタです。
面倒だからと通知を切ったのですけど、朝起きてラインを見たらなんと二十件着てたんですよ?
引くわー。
もうホラーですよ。
コイツはいわゆる、おはようからお休みまでする面倒くさいタイプです。
”なんで返事くれないの?“
”どうして既読じゃないの?“
”リナを思うと夜も寝れないよ。“
等々、昨日の内にそんな内容が十件着てました。
なのに、朝方の六時半くらいには。
”おはよー♪昨日は良く寝れた?“
”リナのライン待ってる間に寝ちゃったんだけど、寂しくなかった?“
”あー、リナに会いたいなぁー♡“
などが、十件着てました。
いや、寝れないとか言いながら寝てるやん!
ふざけんなよ!
あと、本気でブロックしたい。
「…辛い。いっそ消えてくれないかな、アイツ」
おっといけないいけない。
仕事中につい口元が滑った。
まぁ、周りに誰も居ないから大丈夫かな。
後一時間、辛抱しよ。
煙草吸いたい。
会社から出たい。
クラクラするよ。
そもそも、丸一日を働く体力と精神を持ってない時点でアウトだと思うんです。
今の状態になってからというもの、お昼に食べる食事が喉を通らない。
お菓子は摘まむ程度の量だからなんとか食べれるけれど、本当に一日一食になりつつある自分が怖いです。
この前なんて、お昼に少し食事を取ったら晩ご飯がなかなか食べれなくて苦戦しましたし。
もうね、お昼ご飯食べれないとか本当にヤバいと思うんですよ。
それでも一応は頑張って食べるんですよ?
一口二口が限界ですけど。
(…お、チャイムなったな。よっしゃ、会社からはよ出ようっと)
グルグルと考え事をしていたらあっという間に一時間は来て、皆は昼食をしに向かっていた。
私はすぐさま周りの片付けをして更衣室へと向かう。
もう今日は半日で帰ると伝えているし、このまま何事もなくいれたらいいのだが。
「…あら、宮本さん?もう帰るの」
私の願いはどうやら叶わなかったらしい。
いや、なんとなく分かってたけども!
だからってなんで今、会いたくもない話したくもない相手に捕まるの!
顔すら見れないし。
「えっ…あ、はぃ」
「ふぅん?前から思ってたんだけど、あまり無理して会社に来なくていいのよ」
「えっ…?」
「だって貴女、休みがちだし。いつ来るかも分からない社員なんて邪魔じゃない?周りに迷惑を掛けてるって実感ないのかしら」
「…す、すみません。ご迷惑、を…か、掛けている、のは…本当に…も、申し訳なく……思ってます…」
一瞬だけ良い奴だと思ったのに、なんだこの人!
しかも溜め息まで吐きやがったぞ!
あー、無理だ。
また明日から休んだろ。
無理無理。
今の私にその圧力はアカンやつやろう。
「皆ボヤいてたわよ?ここに向いてないんじゃないかって」
「……はぃ」
「まぁ、アタシには被害ないし、別にいいんだけどね」
苛々するなぁ、本当に。
言いたい事だけ言ってさっさと消えたし、もういいけどさ。
面倒くさいし、間違った事は言ってないから言い返せないけどさ。
こっちだって、なんとか頑張って来たんだぞ。
怖くて怖くて辛い思いを押し殺して、稼がないといけないから嫌でも来たんだぞ。
ここまで来るのに、どれだけ私が泣きたい気持ちを誤魔化しながら来たと思ってるんだ。
アンタらは知ってるのか。
私の気持ちなんか知りもしないくせに。
外面だけ優しくしてる事くらい分かってるんだからな。
知りもしないくせに、ズカズカと入ってくるなよ。
(…あ、ヤバい。死にたい)
溢れそうな涙を耐えて、私は着替えると直ぐに自転車置き場へと向かった。
もう、すれ違う人にお疲れ様も言えない。
誰とも会話したくない。
駄目だと分かってるのに、頑張っていかなきゃって分かってる筈なのに。
どうして、こんなに苦しくて死にたい思いをしなきゃならないのって馬鹿みたいに思っている自分がいた。
(……知ってるよ。辛いのは私だけじゃないって)
でも、私の意志じゃどうにもならないんだよ。
私はその辺に転がっている、可能性の有る石じゃない。
可能性すらない、ましてや石ころですらない私は……ただのクズだ。
(駄目だ。一人だと色々考えちゃうな…でも、今は一人がいい)
矛盾。
きっと誰よりも私に似合ってるんじゃないだろうか。
何をしても中途半端で、可能性がありそうに見せかけて実はなかったり。
何事も、中途半端で矛盾しているんですよ。
だからこんな私を好いてくれる人はきっと居ない。
分かってる。
ちゃんと分かってるよ。
変わらなきゃって。
でも、変わるってなに?
私は私だよ。
それじゃ駄目なのかな。
どう変わらなきゃ駄目なのかな。
よく分かんない。
(……やっぱりライン送ってみようかな。親友に)
きっと優しい彼女だから、金欠だとか言っても来てくれそうだ。
”今日は何時で終わる?良かったら終わった後にカフェでお茶しよう“
なんて無愛想なメールだろう。
けれど、今は明るく言える気分じゃないし。
メールを送ると私はいつものカフェに向かった。
その時は忘れていたんだ。
いや、昨日の今日で居るはずがないと思い込んでいたのかもしれない。
まさか、奴に出くわすなんて。
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