『運命って信じますか?』

東雲皓月

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十八話

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バスケ会が終わって、私はマイさんに家の近くまで送ってもらったあと。

食事とお風呂を済ませて部屋に帰って来た私は、携帯がチカチカと光っているのに気付いた。

最初は誰だろう?またアキトさんかな?と思って無視しようとしたけど、そこに表示されていた名前に驚いて飛び付いてしまった。

えっ?なんで蒼さんから……あぁ、確か連絡先交換したんだっけ。

今日は色々とあって頭がまだ混乱していたけど、すぐに蒼さんからのラインだと分かった私は携帯のロックを解除してライン画面を開く。

内容はほんの些細な事で、焼き鳥が美味しいと写真を送ってくれていた。

あとは、”リナさんとも機会があったら食事に行きたいな~“とか。

平和な会話を堪能している私は、まぁニヤけますわな。

だって、アキトさんのラインだとこうはいきませんよ?

なんだか、二人の会話の違いに少し笑ってしまう。

でも本当に蒼さんは良い人だなぁ。

連絡先交換した時だって。


『…リナさんリナさん』

『ん?なんですか??』

『連絡先、交換しません?ほら、またいつ会えるか分からないし』

『あぁ、そうですね。御礼するって言いましたし、いいですよ~』

『……リナさん、何かあったらいつでも連絡して下さいね?些細な会話でも必ず返事しますから』

『え、あぁはい…』

『絶対ですよ?約束しましたからね?』


あぁ、あの時は驚いて返事しちゃったけど笑った顔は癒されたんだよねー。

何かあったらいつでも連絡してっか。

なんか気を使わせたみたいで申し訳ないなぁと思いつつ、ちょっと嬉しかったりして肝心な事聞けてないんだよね。

どうしてそこまでしてくれるのかとか、本当に連絡しても良いのかなとか。

………また、からかってるのかなとか色々考えてたんだけど。

こうして向こうから連絡してくるって事は本当なんだろうなと今思いましたとも。

ええ、本当に蒼さんは良い人ですよね。

ちょっとでも疑った自分が恥ずかしいわ。

やっぱ駄目だなぁ、一人になるとグルグルと考えて。

蒼さんに返事を返して私はゲームをした。

すると暫くしたら今度はマイさんからのラインで、あのグループラインを脱退してと着ていた。

何かあったのかと聞いたらまた会った時に話すからと私はマイさんに言われたように脱退した。

まぁなんかあったのは目に見えてるけども、私のせいじゃないようにと祈っとこう。

多分、私絡みだろうけどなっ。

脱退したのをマイさんに伝えて私はまたゲームに集中しようとした。

が、またしてもライン。

今度は誰だろう。

そう思って携帯をみると、めっちゃラインきててビビった。

まずアキトさんからのラインで。

”リナは世界一可愛いからなっ!“

と訳の分からない事を言われて、次にナオちゃんからのラインでは。

”リナちゃ~ん今度カラオケ付き合ってねぇ~絶対だからね!“

と普段通りの事を言われて、蒼さんからもまたきてて。

”リナさんは好きな食べ物ありますか?“

と好きな食べ物を聞かれて、マイさんの弟からは。

”ミヤさん、今度美味しいお店に姉と行きましょうね~“

とか絶対にその今度はないだろうと思う内容が送られてきた。

ちょ、んん??

皆様どうされたの?

今日本当にどうしたの君ら。

なんかものっすごく励まされてる感じがあるんだけど…?

え、なんで励まされてるの?

ちょっと怖いんだけど!

まぁ、一応返事しますけども。

アキトさんにいたってはもうお手の物って感じで、”意味が分からないので寝ます“と一言だけ送って無視する。

構い過ぎたらしつこいからね、あの人は。


「……はぁ、明日はまた一人かな…」


貯金を崩して使っての繰り返しで、なかなか貯まらないこの虚しさ。

でも、なんで貯金をわざわざ崩すかなんて分かりきってる。

仕事に行けないからだよ。

そろそろ本気でヤバいのが、ここ最近行けてないって事で。

事務所の人にも呼び出されて忠告受けたって事なんだけども。

本気で考えないとなぁとは思ってる。

このままズルズルとしてるよりは、今の職場を辞めて違う所を探した方がいいっていうのも分かってはいる。

だけど、今の職場でやっていけなかったら…他の場所でもやってイケないんじゃないかって不安もあってなかなか辞めれないでいた。

でもそろそろ良いんじゃないかな。

そう簡単じゃないし、今の職場に居る限り私の精神が安定する事もないだろうし。

良くしてくれた人達には悪いと思ってるし申し訳ないとも思ってる。

だったらちゃんと来いよって話なんだけど、そう簡単に済ませられたらこっちだってこんなに悩んで苦労はしない。

今月いっぱいで、私は仕事を辞めようと決めた。

保険やらが付いてたから仕方なく仕事を決めたけども、やっぱり合わないと続かないものだと改めて実感した。


「…次、電話した時に事務所の人と話そう」


そう決意して私はそれ以上考えるのを止めた。

今日は問題もあったけど、楽しかった時もあった。

だから、なかった事にはできないけど今日は楽しく過ごせた方だと思う事にした。

蒼さんとも仲良くできたと思うし、アキトさんだって……。

いや、考えるのはよそう。

手にした携帯の画面には、アキトさんからの懲りない励ましラインがずっと鳴り止まなかった。

それを気持ち悪いと思う反面、可笑しくて笑ってしまう自分がいたのは秘密だ。


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