『~POISON GIRL~』

東雲皓月

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No.1 幕は開かれた

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【自衛隊・第十五回目の体験&見学できる日】

それは、年に数回開かれる特別なイベント

始まりは自衛隊隊長達の一言だったらしい

『もっと自衛隊の良さを理解してもらいたい』との事だが

実際には女性達との出逢いがないからとも言われている

本当の理由は定かでないが、多分どちらも本音なのだろう

まぁ、それで通った結果がこのイベントなのである

見学は勿論、体験するにあたって守らなければならないルールがあり、一つは心臓が弱いお年寄りや十八歳以上は入ってはならないとか

あまりの過激さや子供に悪影響を与えない為らしい

もう一つは武器や持ち込みを固くお断りするとか

何でも以前に武器を持ち込み市民に怪我をさせてしまったらしく、門を潜る時は念入りの検索をしている

持ち込み禁止は、やはり食べた物や飲み捨てが酷かったからだろう

それらさえ守っていれば後は基本的に自由だ

もう一つ加えるならば、見学と体験とを見分ける為にプラスチック製のブレスレットを付けるくらい

白を基調とした物で、赤と青で色の付いた部分で別れている

赤は見学する人に、青は体験する人にと一目で分かるよう

チハルは見学にしたかったが、マイクが体験がしたいとまた無茶苦茶な事を言い出すので仕方なく青のブレスレットを選択

というか、勝手にそうなってしまい諦めた

「ほら、チハル!早く行こうっ」

「ハイハイ・・・分かったから引っ張らないでったら;;」

手首を掴まれてまるで子供のようにはしゃぐマイクに、チハルは苦笑を浮かべて後を着いていく

どれからしようかと悩むマイクにチハルは近場からやって行こうと提案して、初めに体験出来る物から順々に潰していく作戦を開始

最初は、自衛隊の人達と混じって走り込みと腕立て伏せを

マイクは地味だと不貞腐れるが、ヒーローは地道にやってこそ憧れの存在になれるんだとチハルに言われ、単純細胞のマイクは嬉々としてそれを受け入れると誰よりも気合いを入れて勤しんだ

終わる頃には息が絶え絶えであったが、彼なりの達成感があったのだろう

もの凄く満足な顔をしている

一方、チハルの方は息が上がっておらず涼しい表情で軽々しくこなしていた

これは流石の自衛隊の人も驚く

「へぇ、アンタ凄いな。もしかして慣れてるのか?」

「・・・まぁ、朝晩とこの倍は走ってますから」

「この倍だって!?新人でもこの半分で息が上がるってのに・・・こりゃ、俺達も負けてらんねぇなっ」

何故か闘志に火を付ける自衛隊の人に、チハルは面倒な事になる前にさっさとマイクを連れてその場を離れる

だが、闘志に火を付けた者が自衛隊の人以外にもいた

悔しげにしているマイクはキッとチハルに宣戦布告を告げて、あれよこれよとチハルに挑戦を持ち掛ける

プラスチック製のナイフで自衛隊の人と手合わせができる体験では、またもや清々しく自衛隊の人に勝つチハル

苦戦をしつつもなんとかナイフを自衛隊の人から奪い取ったマイクは悔しそうにチハルの方を見つめた

「くっそー、チハルに負けたっ」

「えぇー、関係なくない?それにマイクも自衛隊の人から奪い取ったじゃん」

「でもチハルは、自衛隊の人に負けを認めさせたっ!」

「いや、私が女だからって手を抜いてくれたんだよ。じゃなきゃ私が自衛隊の人に勝てると思う?」

「・・・なら、次は射的にしよう。射的なら、自衛隊の人は関係ないよなっ」

どうやら簡単には納得してくれないマイクに、チハルは溜め息を溢さずには居られなかった

野生の勘というモノなのか実に鋭い

あれがチハルの実力だと知っているように、次は言い逃れが出来ないよう釘まで刺された

しかも手は抜けない

何故ならマイクは勘が鋭くて、チハルが手を抜いてしまうと分かってしまうからだ

そうなればきっと帰る頃は一方的な喧嘩になって暫く話もしてくれなくなる

これは諦めた方が良さそうだとまた溜め息を吐いてしまうチハルだった

仕方なくマイクに付き合うチハルは、射的場へと向かってトボトボと歩く

前からは急かしてくるマイクの声を聞きながら

射的場では、あらゆる銃が置いてありどれでも使っていいらしい

それもすべて本物で自衛隊の人が五つ撃つ場所に人数分付き添いでいるようだ

銃自体にも持ち出さないように鎖で繋がれている

射的場に着くとマイクは案の定とばかりに本気でしろよと言ってくるモノだから、軽くあしらって位置に着くチハルはまじまじと銃とにらめっこ

ライフル、ピストル、アサルト、マグナム、と本当に色々ある内の一つを手にしたチハルは渡されたヘッドフォンを着けて深呼吸をする

手に取った銃は・・・ピストル

それも片手で構える

狙いはあの板のど真ん中、目を凝らして引き金を引くと迷わず一発目を撃つ

パァンと音がなり、その後にはメキッと板に当たる音がした

見事に真ん中命中するチハルに側にいた自衛隊の人は空いた口が塞がらないようにあんぐりとして呆けてしまう

残り七発の弾も迷う事なく打ち出すチハルは、ヘッドフォンを取って終わった事を告げると自衛隊の人はハッとして我に返り返された銃とヘッドフォンを手に持つ

隣で同じく銃を撃ったマイクは、チハルの的を見て目を見開くように驚いた

全ての弾が真ん中に命中していたから

「手は抜いてないよ」

「・・・チハル・・・」

「どう?怖くなったでしょ、私と居る事が」

チハルはそう言って唖然とする自衛隊の人とマイクを置いて射的場から離れていった

聞いておいて、マイクから怖いと言われるのが今更ながら恐ろしく感じたから

もう一緒に居たくないと言われるのが“怖い”と思った

チハル自身、好きでこんな自分になった訳じゃない

ただ、そう“ならないといけない”理由があった

「・・・これだから、人と関わるのは面倒なんだ」

自分を嘲笑うように口元を歪ませ、チハルは誰も居ないベンチへと腰掛けた

周りは賑わっている声で溢れているというのに、チハルの周りだけはやけに静かな感覚さえする

まるで取り残された世界にいるようだ

いつ振りだろう、こんなに静かな時間ができたのは

いつもマイクが側にいて騒いでいるのが当たり前だった

それに慣れてしまった自分に、これほど胸が締め付けられるとは思いもしなかった

それほどマイクと居るのが当たり前になっていたのだ

「馬鹿か・・・そう選んだのは私なのに」

周りに誰も居ない事がこんなにも良かったと思えたのは初めてかもしれない

そよ風が心地良くてつい眠ってしまいそうだ

ベンチに座り静かな寝息をたて始めたチハルの姿を、遠くからジッと見つめている人物がいたとは知らずに

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