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No.3 隠し通路へ
しおりを挟む「・・・見事に焼けたね・・・」
「・・・・・そう、だね」
あれから数分後、消防車と救急車が着いて火は消えた
けれど、被害は莫大に大きく沢山の人が亡くなった
火の燃える臭いに交じって、錆び付いた鉄の臭いも強くチハルは気持ち悪くなって焼けた避難所から離れてマイクと共に一時的な保護をされる
大分楽になってからまた倉庫に行きたいと無理にマイクへお願いをして焼け焦げた倉庫に立つ二人
あんな激しい爆発では、中に居た人々はきっと・・・
そう考えるとチハルはあの親子を思い浮かんで仕方がない
「私のせいだ・・・私が、避難所へ連れて来たばっかりに!」
「落ち着いて、チハル。君は悪くない・・・仕方なかったんだよ」
「っでも!」
涙を流しながらも訴えるチハルの姿は、あまりに痛々しい程でマイクは胸が傷んだ
もっと掛ける言葉があるんじゃないかと考えても、それ以上は何も思い浮かんでくれなくてただひたすらにチハルの心が和らいでくれたらと抱き締める事しか出来ない自分が不甲斐なく感じる
「君達、ちょっと聞きたい事があるんだが」
「なんですか?今は、それどころじゃ」
「分かってる。でも、君達以外に聞けそうな人が居ないんだ」
話し掛けて来たのは、短髪で自衛隊とは少し違った服を着ている人だった
マイクが断ろうとしたが、彼はその言葉を遮ってまで何かを聞きたいと言う
こんなに弱っているチハルを早く連れて帰りたいと思ったマイクは、彼を睨み付けるがチハルは首を横に振ってマイクの腕から離れるとゆっくりと彼を見た
「・・・聞きたい事って、なんですか?」
「協力に感謝する。君達は何故、避難所の中に居なかった?」
「それは・・・」
「まさか、君達がこの事件を起こした犯人か?」
「っ違います!」
彼の言葉には暖かみがなく、冷えた視線で疑うような口振りにチハルはとっさに否定する
けれど、彼の表情はまるでピクリともせずにまるで警察の取り調べをされているような居心地の悪さを感じた
「犯人なら倉庫に爆弾があるのを知っていて可笑しくないからな。被害者と偽れば疑われないとでも?」
「馬鹿にしないで。もし、これが私達がやったならここにまた戻って疑われるような事はしないわ」
キッと睨み付けて噛み付くチハルを心配そうにマイクが側で見守っていると、彼は溜め息を一つ吐いてからまた淡々と口を開く
「じゃあ、なんでここに戻って来たんだ?・・・こんな光景、普通なら二度と見たくない筈だろう」
「・・・確かめたいんです。私が連れて来たばっかりに親子を危険な場所に入れたのも当然ですから・・・亡骸があるなら、ちゃんと見届けないと」
睨み付けて来たと思えば、今度は悲しそうに俯いて身体を震わせるチハルを見た彼は言葉を失った
それをすかさずマイクがチハルを慰めようと肩に手を回して震える身体を和らげるように支える
「チハル・・・自分を責めちゃ駄目だ。あれは、仕方なかったんだ。まさか倉庫に爆弾があったなんて知らなかったんだから」
「知らなかったから仕方ないって?マイク、それは違うわ。私がらしくない事をしたせいなの。貴方なら、こうするかもって・・・柄でもない事をしてしまったから・・・あの時、見捨てていれば・・・きっとまだ助かったかもしれない」
「っらしくないのは今の君だろ!」
「っ!?」
「君は何でもそうやって自分のせいにするけど、誰かを助けて後悔するような奴じゃないのは僕が一番よく知ってる!それに、君自身は気付いてないかもしれないけど、君はいつだって人の為に動く人間だ!」
カッとなるマイクはチハルの両肩を掴んで顔を覗き込む
自分がよく知ってるとチハルを怒る姿は、本当に本音を言っていると伝わる
嘘が苦手なマイクが、こうまでしてハッキリと言うなど珍しい
チハルはマイクの行動に驚くが、自分をここまで信じてくれるのはいつもマイクだけだった
何があってもマイクだけがチハルの味方をしてくれる
だから自分はそれに答えなければならないと思えた
「ごめん……軽率だった」
「ん!それこそ君だっ」
ニッと歯を見せて笑う、いつものマイクにチハルも微かに微笑んだ
「……あの、私からも一つ聞いて良いですか?」
「・・・質問によるが、何だ?」
一先ず落ち着いたチハルは、まだそこにいる彼に振り替えって質問をする
怪訝そうにするが、一応とばかりに話しを聞く彼にチハルの疑問を投げ掛けた
「気になってたんです。どうして“私達だけしか聞ける人が居ない”んでしょう?」
「?どういう意味だ」
「だって、避難所に入った人以外にも生存者はいます、よね?」
「・・・確かに居るには居るが、気を取り乱して話しが通じるような状況じゃない。だから君達に聞いたんだ」
「でも、おかしくないですか?」
「何がだ?」
「私がここに来た時は、沢山の人で溢れかえって居たのに・・・今は足場があるくらいに“少なく”見えるんです。これって、避難所から離れた人が居るって事じゃないかと思ったんですけど・・・」
「っ!?それは本当か」
「・・・そう言えば、僕が来た時にも沢山の人が居たのに“満員”になる事がなかったっけ」
マイクが思い出したように呟くと、彼とチハルはマイクの方に振り返り目を見開くとチハルがカッとマイクの肩を掴んだ
「マイク!それ、本当!?」
「えっ?あ、あぁ…確かだよ」
「っ!」
チハルは何かを思ったのか、バッと倉庫だった建物へと飛び込んだ
本来なら、一般人が立ち入る事が出来ない場所だがチハルは嘘を言って家族を探してると偽り中に入っていく
マイクも慌てて中に入り、あの彼も後を追うように中へと入っていく
焼かれた人々の臭いがキツく鼻を摘まみながら、チハルは焼かれ死んだ死体を一つ一つ踏まないように見ていた
そこでハタと立ち止まる
「……やっぱり、おかしい」
ボソリと呟く言葉に後から着いてきた二人は顔を合わせて不思議そうに首を傾げた
「チハル?おかしいって何が??」
「数が少ないの。マイク、覚えてる?私達が来た時、何万とも言えるくらい沢山の人が居たのを」
「え?う、うん。それがどうしたの?」
「私の記憶からして、その中で母親と子供を見たのは数十人かそれ以下……なのに数が合わないわっ」
「っ……それ、本当なの?チハル」
あんな状況だったのにも関わらず、チハルは確かだと言い張る
マイクはチハルの記憶力の良さを一番理解しているからこそ嘘ではないと分かった
それに、何万とも言える数がこの倉庫に入りきれたとしても“ギリギリ”だろう
元々いざこのような事態が起こった場合、避難所に入りきらなければ話にすらならないのだ
自衛隊の人だってそれを見越しての制限はしてる筈
だから不思議に思ったのだ
マイクの言った“満員にならなかった”という言葉が
けれど、じゃあ・・・ここに居ない者はいったい何処へ行ったのだろう?
「でも、分からないの。どこに行ったのかが」
「・・・もしかしたら、」
何かを思い出したように彼が口を開くとチハルとマイクは彼に視線を向けた
険しい表情で、思い当たる事があるような口振りにチハルは少しだけ期待する
「何か知ってるんですか?」
「確か、ここには隠し通路があった筈だ。まだ封鎖をされてなければ・・・あるいは」
「っ隠し通路、ですか?」
「あぁ。だが、以前に封鎖命令があったのはもう一年も前だ。まだあるとは限らない」
「どこですか?その隠し通路がある場所って」
「あの奥の方に」
彼が指を指して示した所は、倉庫の荷物らしき物がぐちゃぐちゃになって倒れている場所だった
チハルは聞いた途端に駆け寄り、物を一つ一つ退かし始める
マイクもそれに加勢して焦げた物を退かしていく
そうして、見つけたのは床に四角く型がある扉らしき物だった
「・・・まさか、まだあったのか」
「この下は何処に繋がってますか?」
「俺も詳しくは分からない。だが、行ってみる価値はありそうだ」
驚くように呟く彼に聞くとチハルは微かな希望が芽生えた
まだあの親子が生きているかもしれないと
期待から希望を得たチハルは、グッと手に力を入れた
「なら、今すぐ行きましょう」
「いや、君はここに残れ。何があるかも分からないし・・・それに親御さんが居れば心配するだろう」
「私に親は居ません。それに、確認したい事が一つありますから」
「確認したい事?」
「私個人の問題です。貴方がいくら駄目だと言っても、一人でも行きますよ」
「・・・分かった。だが、君は一般人であるのに代わりない。俺の守れる範囲にいろ。約束が出来ないなら連れてはいけないぞ」
チハルの強い意志に彼は諦めたように溜め息を吐くと、約束事を付けた
それでも構わないとチハルは頷くと、心配そうに見つめてくるマイクに振り返った
「マイク・・・必ず戻ってくる。だから、待ってて」
「君はいつもいつも・・・はぁ、分かったよ。でも、君の亡骸は見たくないから・・・ちゃんと生きて帰って来てくれ。じゃないと、あんな広い部屋で一人は寂しいから」
「うん。約束する」
二人は抱き締めあって別れを惜しむように離れた
チハルと彼は地下に繋がる梯子をゆっくりと降りていき、マイクは小さく呟いた
「・・・どうか、無事に」
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