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青年期:法国
終戦
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時を少しさかのぼり、ゲリシンとハイトの戦闘が今まさに始まろうとしていたその時。
エルピスとエラは目的の人物に会うために地下の大迷宮を探索していた。
作りとしてはこの間潜った地下となんら変わりなく、人工的に作られた道とうす暗い灯だけが特徴的である。
本来ならばハイトの援護に回る予定であった二人だが、想定よりもゲリシン側からの反抗が控えめであったことやハイト本人から手出し無用と言われてしまったのでそれならばとエルピス達は捉えられているであろう神を探すことにしたのだ。
そうしてエルピス達が神を探し始めて数分ほどだろうか。
場合によってはハイトの戦闘が終わってからも捜索することを想定に入れていたエルピス達だったが、向こう側からエルピス達の方にやってきてくれたことでその問題は無事に解決することとなる。
「お前さんがエルピス君か?」
エルピスの目の前に現れたのは年端もいかないような幼い幼女である。
薄緑の髪の毛に黄色の目はエラではなくしっかりとエルピスの方へと向かれており、この時点でどうやら目の前の少女が目的の人物であることにエラもエルピスも分かっていた。
鍛冶神との初対面の時の様な轍を二度も踏むわけにはいかないので、きわめて冷静に勤めながらエルピスは言葉を選んで返す。
「はい、そうですが……手は大丈夫ですか」
エルピスの視線の先にあるのは両の掌を貫通していまもなを神に痛みを与え続けているだろう楔である。
神の体を貫通できている時点で相当珍しい品物であるのは間違いがなく、触れればどのような反動がやって来るのか分からない以上は神の許可を取ろうとするのは安全策といえるだろう。
よく見てみれば足の方は引き抜いたのか神の後ろには血の跡ができており、何とも痛々しいものだ。
「ん? ああこの程度構わんよ、痛みなぞ慣れたものじゃ」
だが神は特に痛そうなそぶりを見せない。
神とはいえ痛みを感じないわけではないだろうにそれを慣れたと言わしめるのは流石に長年人類と寄り添ってきた神だということか。
興味なさげに自分の手の傷を見た神を前にしてふと隣にいたエラが一歩前に出る。
「お初にお目にかかります。エラ・セルバと申します」
「ふむ、妖精神……いや、権能の貸しあたえか? 混霊種を見たのも随分ぶりな気がするのぉ」
「私たちの種族は少ないですから」
「……森妖種と窟暗種の確執は昔からの事じゃからな、まあついてくるといい」
一応報告において混血種というのはあまり薦められた存在ではない。
いまの法国はゲリシンが十年ほど前から人間至上主義を強く推し進めていたこともあって混血に対しての当たりが強かったので仕方ないのだが、法国の神としてはどうやら何か思うところがあるらしい。
一瞬暗い顔になった神は何を口にすることもなく付いてくるように口にすると、エルピス達はそれ以上何かを彼女に対して問いかけることもできずに黙って言われたまま後をついていく。
少し先すら見えないような暗闇の中をすいすいと歩いていく神の後を追いながら少し歩いていくと、いつぞやと同じような隠し扉を神が見つける。
「すまんがエルピス君、ここを開けてもらえるかね?」
エルピスの目にはどう見たってただの壁にしか見えないが、神がそういうのだからきっと何かがあるのだろうと一瞬も躊躇わずに魔力を用いて神が指定した部分を吹き飛ばす。
爆音と共に崩れ落ちていく瓦礫を押し除けて中へと入ってみれば、そこにあるのはただっ広い空間だ。
部屋に入った瞬間に全身を貫いたのは異様なほどの魔力の濃度、強者同士での戦闘時に周囲の空気を侵食した魔力によって起こるこの現象はエルピスも何度も味わったことのある。
視線を左右に振ってみればクレーターのようなものがいくつも存在しており、魔法を使わなかったのか自然現象は摩擦で発生しただろう火くらいのものだ。
「すごい荒れ様ですね」
「神人に近い聖人二人が暴れたのじゃ、この程度で済んでいるだけましというものじゃろう」
対神用に想定して作られた空間であったからこそ、この程度で済んでいると言っていい。
実際この被害が外に漏れ出ていたのならば、いまごろ聖都は綺麗な更地へと変貌していたことだろう。
そんな空洞の中にあってふと立ち尽くす一人の人間がいた。
いつもならば飄々とした態度をとっている彼女は暗闇の中で気配で分かるほどの落ち込みを見せており、エルピスも声をかけようとして喉に言葉を詰まらせる。
「来たっすか、遅かったっすね」
「そうか……お主が勝ったか」
どちらが勝つかは神すら分からなかったが、結果を結果として受け入れるとこの場所に来る前から彼女は決めていた。
既に事切れたゲリシンの側で膝を降り、その冷たくなった手を握りながら神は小さく息を吐き出す。
そこに込められた想いはとてつもなく重い。
「弟の散り際は聖人として誇らしいものだったっす。どうか弟の魂を空に」
「もちろんじゃ、安らかに眠らせてやろう」
聖人は死んでもその魂を法国に留める事が多い。
それは聖人の役目とは人類の守護であり、故に死後もその魂でもってこの国を守らなければいけないからだ。
だが生きている間に全身全霊を賭けて自分の一切合切を捨ててまで人類を守ろうとしたゲリシンを、死んでからも強制的にこの国に縛りつける事はハイトとしてはできない。
神がゲリシンの体に改めて手を添えると、ほんのりと青く光り輝いた体からゲリシンの魂が空へと昇っていく。
浄化によって天へと帰った魂は元の体へと戻る事は絶対にできないのだ。
静まり返った空間の中で天井へと溶けて消えた魂を見送り、自分の頬を軽くたたいた神はエルピスたちの方へと向き直る。
「それでじゃが、お主らがここにやってきた理由はもちろんわかっておる。話の出来る場所があればそこまで案内してくれ」
「それはいいっすけどパーナっち。その手は大丈夫っすか?」
「お主ら人間はどうしてそうも心配性なんじゃ。ほれ、この通り引き抜けばすぐにこの程度の傷直すことができる。これでも儂は癒しの女神じゃぞ」
エルピス達に見えるように手を受けの方に上げながら神が手をふらふらと振るうと、いつの間にか手についていた痛々しい傷は綺麗に治っていた。
回復魔法を使えばエルピスとて似たような真似は出来るだろうが、魔神としての権能でエルピスは目の前の神が一切魔力的な力を使用していないことを知っている。
傷跡すら完璧になくして見せ、まるで怪我自体がなかったかのように見せる彼女の権能はさすが神の領域である。
転移魔法をエルピスが起動して法国の地下から基地へと戻ると、どうやらエルピス達を待っていたらしく会議室の様な所でみなが席に座っていた。
「ふむ、久々に見る顔も居れば、そうでないものも混じっておるの」
「主神様! これはご機嫌麗しゅう!!」
「うむ、じゃが客人たちの前じゃ。積もる話もあるじゃろうが後にせよ。儂に時間はあるが目の前の者達には時間が無いからの」
法衣を身にまとっているおそらくはハイトに着いたであろう法国の人間たちが神の前で椅子から飛びのいて地べたで首を垂れるが、それに対して神は煩わしそうに適当にあしらうとエルピスの方へと視線を向けてくる。
それが同行者をとっとと選べという事だろうと判断したエルピスが室内を見渡すと、ふとこの場に居るはずのない人間の姿が目に映る。
「あれ、フェルがなんでここに居るの?」
エルピスの目に留まったのは万が一破壊神の使徒がやってきたときのために、アウローラの護衛という大切な仕事を任せていたはずのフェルである。
「さっき呼ばれたんですよセラさんに。アウローラの護衛には代わりにニルさんが行ってます」
「そういう事か。なら悪いんだけど今すぐ転移で戻るよ」
「もちろんです」
「そういう事なら僕もつれて言ってよ、アウローラに久々に顔を合わせたいしさ」
転移魔法を起動しようと魔力を高めたエルピスに対して灰猫が尻尾をゆらゆらと揺らしながらそんな事を言ってくるが、エルピスとしては誰か後処理ができる人間を置いておきたいのでどうしようかと頭を悩ませる。
そんなエルピスの考えを見抜いてか、ハイトが手を挙げた。
「自分がここに残って後処理はしておくっす、早く行ってあげるっすよ」
「行ってらっしゃいませ」
様々な人間に見送られ、そうしてエルピス達はその場を後にする。
向かう先は魔族達が覇を競い合う魔界。
本来ならば魔界の周囲は高濃度の魔力が付近を汚染しているため転移魔法の類などは使用できないのだが、魔神であるエルピスが事前に用意した刻印により転移先の座標がどこにあるのかはしっかりと把握できていた。
座標さえわかれば後はそこへ向かって飛ぶだけであり、いとも容易く魔界への転移は完了する。
道中おそらくは外敵対策用であろう転移対策用のトラップをいくつかすり抜け、盗神の技能すら併用してエルピスは目的の場所へと転移を完了させた。
もしエルピス達が転移してきた先に視線を向けている人間がいたとすれば、まるで先程からそこにいたように映っていることだろう。
「うぉ! びっくりしたぁ」
「お帰りエルピス、どうやら無事に終わったようだね」
転移先の部屋の中にいたのはニルとバーンだけ。
裏切り者がいないとは限らないので極力面子を削った結果がこれであり、最小人数で最も安全を考えた面子である。
二人の間にある大きな扉を開ければ、その先にはエルピスが封印したアウローラがいまもまだ眠っているはずだ。
「なかなか時間はかかったけどね。それで……なんとお呼びすれば?」
「儂には名前が複数ある。いまはパーナと名乗っておるが好きに言ってくれればよい」
「ではパーナさん、こちらです」
いまさらながら呼ぶ名前を聞いていなかったことを思い出したエルピスが言葉に詰まるが、パーナはこんな状況も慣れていたのかさらりと対応するとエルピスの案内通りに部屋の中へと入っていく。
通された部屋の中には大きなベッドが鎮座しており、その中央ではアウローラが横になっている。
「まるで寝ているようじゃの」
「一応セラから話は聞いてたんだけどアウローラはどうしてこうなったの?」
「破壊神の信徒の攻撃を食らった上に自分の能力のせいで回復魔法を受け付けていないんだ」
「ふむ、破壊神の権能か……まぁこれならなんとかなるじゃろ」
腕を捲り上げ寝ているアウローラの体を触って状態を確認したパーナは、少し神妙な面持ちはしていたものの希望に満ちた言葉を投げかけてくる。
「本当ですか!?」
「神じゃからな、それにわしを呼んだのはそれが理由じゃろ。少し待っておれ」
そういうと神は更にアウローラの身体を触り始める。
身体の悪いところを探る時にエルピスも魔力の詰まっている箇所を探るため触診をする事はあるので、おそらく似たようなことをしているのだろう。
「ふむ、どれどれ」
どうやら触診の結果何かを見つけたのだろう。
アウローラの傷とは少し離れたお腹の辺りを軽く何度かさすっていたパーナは、不意にその手をアウローラの中へと突き刺した。
異物が体内に侵入してきたことに身体が反応したのはびくりとアウローラの身体が跳ねるが、そんな事を気にせずに神は遠慮なく手を突っ込んでいく。
「な、なにを?」
「何をってそりゃ医療行為じゃよ。それよりこの子、なんだか変じゃが本当に人の子か?」
「純正の人の子ですよ、転生者ですが」
「ならなぜ血が出ん?」
遠慮なく手を突っ込みながらそんな事を聞いてくるパーナに対し、一歩前へと出てエラがおずおずと言葉を発する。
「私が妖精神の権能で空間を固定しています。解除すれば血は出るはずですけど……」
「ふむ、信徒に己の権能をな……まぁわしも人のこと言えんが。そういう事なら解除してくれ、わしを信頼するんじゃ」
権能を解除すればアウローラの体は確実に止まることなく急速に死へと向かっていく。
再び権能で時を止めることもできるだろうが、確実にいまのアウローラよりも悪い方へと転んでいる事は確かだ。
神とはいえ先程出会ったばかりの人物を信用できるかどうか。
一瞬心の中に過ぎっていった疑心の心はそれだけエラがアウローラを助けたいと願う心であり、躊躇いながらも自分では治せないことを分かっているからエラはゆっくりとアウローラの封印を解く。
止まっていた時が進みだし、アウローラの体からは信じられないほどの血液が流れ出る。
「ほれ脱水で死ぬぞ、水とエネルギー入れんか」
「なんでそれを作業始めてから言うんですか!?」
パーナに指示されるままに作業を始めるエルピスと、それを手伝うエラ。
そうして治療が始まって10分ほどだろうか。
手術であることを考えれば恐ろしい程に素早い速度でエルピス達はアウローラの治療を完了させた。
「──よっと、こんなもんじゃな」
「アウローラ! アウローラッ!!」
「いくら神の力でもそんなすぐ目覚めんわ。まぁ三日くらいじゃろ、その傷なら」
アウローラの肩を掴んで涙を浮かべながら揺さぶるエラだったが、そんなエラに対してパーナは冷静に言葉をかける。
症状を直すことには成功したとはいえ元は致命傷。
カラダがもとに戻ったとしても精神がそれに追いつくのにはそれなりに時間というものが必要になるのだ。
「ありがとうございました」
「頭を下げる必要はない若人。むしろ謝りたいのはわしの方じゃ、法国の内輪揉めにお主を巻き込んでしまった。
人を守ろうとするものか、この世界を守ろうとするものか、どちらが勝つかをわしは神として見ずにはおれなんだ」
アウローラが眠るベットに腰を掛け、神は外を眺めながらそんな事を口にする。
どちらにも戦ってほしくないはずなのに、己の我を通さんとする二名が居ればそれを見守らずに入られないというのは何とも神というのは大変だ。
後悔するくらいならば助ければよかったのではないかと考えてしまうのは所詮神ではないものの考え方にしか過ぎないのだろう。
遠くを見つめる神の頭の中をのぞくことなどできるはずもないが、そんな神の考えが気になったのかフェルが横から声を出す。
「神の視点から見て敗因はナンだったと思いますか?」
「始祖の悪魔か。簡単な事じゃよ、覚悟の差じゃ。ハイトはこの世界の人類全てを失う可能性も考慮に入れて、この世界を守ろうとしておった。より大きな犠牲を払ったハイトが勝つのは当然のことじゃろ」
人類を守ろうとしたゲリシンと人類すら世界を救うための捨て駒としたハイトでは、そもそも物を見るときの視野の広さが全く違う、
聖人を作ると言う点では相違がなかった二人だったが、妹にも手をかけるかどうかで仲違いをしてしまったのはその視野の広さの違いが故だ。
人を救おうとするゲリシンはその為に人を犠牲にしたがるが、ハイトは世界を救う為に最低限自分が守りたいものと世界を維持する為に必要な絶対数以外は切り捨てても良いと考えている。
支払うコストが多い方が使える力が大きいのは当たり前のことだろう。
ふとそこで視線をずらしたパーナが目を向けたのはバーンとニル。
この部屋に入ってからも何も言わなかったので興味がなかったのかと思ったが、どうやら患者を優先してくれていたらしい。
「そういえばそこにおるのは吸血鬼の始祖か。先先代には世話になった、血の病の時の恩はわしはいまでも覚えておるよ」
「もったいなきお言葉ありがとうございます」
「さすがに歴史がある神は違うね」
「ふむ、そういう貴方は誰かと思えば上のお方か。話は彼から聞いている」
彼という単語にニルの耳がぴくりと動いた。
いまのニルは警戒のために獣耳を生やしているので、頭部の上にある耳がピクピクと動いているのはなんとも可愛らしいものだ。
ニルに対して話がある彼といえばパーナの口から出てくるであろう人物はただ一人。
創生神以外には居ないだろう。
それを分かっているからこそニルは先ほどまでパーナに対して興味のなさそうな態度をとっていたというのに、いまは身体を乗り出さんばかりの体制をとっているのだろうから。
「へ、へぇ~? ちなみになんて?」
「秘密にしろじゃと。そこな神が怒り出すかもしれんからとな、私もそうなっては手がつけられん」
パーナの指先が向けられる先はエルピス。
一体何を言われたのかとか、そんなことで怒るとか心外だとか思わないでもないエルピスだったが、ニルについて自分が知らないことでマウントを取られたら自分が不機嫌になる事を分かっているエルピスとしては創生神の言葉は否定しきれない。
「上手いことあしらわれたわね」
「別にいいさ! 気にしてないからね!」
「……ひとまずこれで目的は達成したという事でいいかの。良いならば悪いのじゃがエルピス君だけ来てもらえるか? 話があるからの」
「別にいいですけど……じゃあエラ、アウローラをお願いね。ニル悪いけど引き続きここは任せたよ」
「任せなよ」
あちらこちらへと転移ばかりし続けている気がする一日だが、それだけやらなければいけないことが多いのだから仕方がない。
パーナを掴んで適当な移動先を頭の中に思い浮かべ、龍神の森以上に適任な場所もないだろうと転移を開始する。
龍神の認可を得たものしか通れない膜を通り抜け、湖の辺りに到着した途端にパーナからエルピスへと要望が投げかけられる。
「空間の遮断を頼んでも?」
ここは機密性という点に関していえば世界を見渡してもほぼトップだと言ってもいいほどの場所だ。
神であるパーナはこの場所の特異性をその全身で感じているだろう。
だというのに空間の遮断をお願いしてきたという事はそれだけ大切な用事ということ、エルピスは言われたままにいくつかの障壁を展開する。
「出来ました、それで話とは」
「おおよそ理解しておるとは思うが、創生神からの伝言を預かっておる」
これだけ警戒させるのだ、パーナから伝言の話をされてもエルピスに同様はない。
「解放できて良かった、確率としては五分五分だったから心配してたんだ。婚姻の方は予定通りに行なってくれればそれでいい、いまのところはこちらの予定通りだ。いまからの三年間僕は自分のするべきことをするために隠れるから、君は愛しい人達との時間を作るといい──という事じゃ」
「自由ですねあの人」
「その点に関してはわしも同意じゃな。まぁ全知全能の上を行くような神じゃ、考えるだけ無駄じゃろう。それでお主婚約するのか?」
「え? あ、まぁはい。そうですね、あんな事があったばかりではありますが」
創生神が何を裏で考えているのか、彼の目的がなんなのかをずっと掴めずにいるエルピスとしては創生神の予定通りに事が進んでいるというのは一抹の不安を覚える要素である。
その事について脳のリソースを割いていたエルピスは、パーナから投げかけられた問いまでに一瞬理解の時間をかけながらも言葉を選んで返す。
パーナにとってハイトやゲリシンがどのような存在だったかを正確に推し量る事はできないが、彼女達に対してのパーナの立ち居振る舞いを見ていれば並々ならぬ感情を持っていた事は推しはかれる。
そんな相手に対して「実はこれから彼女と結婚するんすよ! いやぁついに念願叶うって感じっすね! マジ嬉しいっす!」とかふざけたことを口にできる人間がいたとしたらそれは豪胆ではなく空気が読めないだけだろう。
「暗いことがあった後には祝い事があるべきじゃよ。 じゃがまぁ罪悪感を感じるのならついてくるのじゃ」
だが意外な事にそれでもいいと肯定してくれるパーナの姿にエルピスがポカンとしていると、パーナが空間を歪ませてどこかへと転移魔法を繋げたようで空間に溶けるように消えていく。
その後を追いかけてみれば出たのはどこかの部屋の一室だ。
薄暗くはあるが人の目でも慣れれば見渡せるほどの闇の中で、まるで王が眠るような巨大なベットが部屋の中にはあった。
壁紙を見てみれば剥き出しの石で作られており、地面にもカーペットが敷かれているがその下はどうやら感触からして石のようだ。
初見で受けた感覚は急拵えの豪華な牢獄。
牢獄なのに豪華というのはなんとも変なものだが、カーペットや部屋の中に置かれた家具というのは確かに高級品である。
「ここは?」
「法皇がいる場所じゃよ。ほら、そこに寝ておるのが法皇じゃ」
パーナが指を刺した先には不規則な呼吸をする老人が一人。
なるほどあれが病気で横たわっている法皇であるならば、ハイトが文字も書けないと言っていたのは確かに納得がいく。
神域に入ってくる情報でも魔力反応でもどちらでも法皇はいままさにいつ事切れてもおかしくないほどの衰弱具合であり、身体を動かすことなどできそうにもない。
パーナに連れられるままにベットの淵へと移動してみれば、痩せこけた老人がそれでも威圧感を失っていない風貌で安らかに眠っている。
「……エリーか?」
ふとパチリとそんな法皇の目が開く。
口を開けるのが精一杯なのだろう。
掠れて法皇の声は聞こえにくいが、確かに誰かの名前を呼んだようである。
そんな法皇が眠るベットに先程と同じように腰掛けたパーナは、まるで幼子を寝かしつける時のように法皇の頭を優しく撫でていた。
「わしじゃよ、ケイン。お主の神の名前を忘れるな愚か者」
「ああ……ヒリング様でしたか……そちらは?」
「当代の魔神であるエルピス氏じゃよ。二柱の神がお主を見送ってやろうというのじゃ、しかも片方は特級の神じゃぞ」
魔神以外にも無論神の称号はいくつか持っているが、人の世界で最も有名な神となれば魔神か龍神のどちらかだ。
この数千年両方どちらの神の称号も現れる事はなく、久々に現れた龍神に自らが信奉する神と共にその死を看取られるとなれば神に使える人間達としてはこれ以上ないほどの喜びだろう。
この世界に来るまでは無神論者であり、実際自分が神になってしまったエルピスとしては彼の気持ちを押しはかることもできないが、頬をながれていく涙をみれば彼がどれだけ救われているのかくらいはわかる。
「それは嬉しいものです……私もこれでようやくいけます」
「老衰はわしにもどうにもならん。せめて眠るように行くといい」
「ありがとうございました……ああエリー……いま君の…ところ…へ」
寿命をいじる事はできるが、本人がそれを望まないのであれば他者が何かをするべきではない。
再び眠るように瞼を落とし、ゆっくりと身体から力がなくなっていく法皇の姿を前にしてエルピスはなんともいえない感覚を味わっていた。
昔の世界で祖母が死んだ時エルピスはその近くにいたのだが、その時にも感じた人がいま確かに死んだのだという感覚は、なんとも落ち使いのもである。
もはやこの世界では慣れ親しんだと言ってもいいものだというのにもかかわらず違和感を感じるのは、いまだに心の中に晴人としての側面が残ってくれているからだろう。
空へと登っていく魂を見送り、一粒の涙を落としてからパーナはエルピスの方へと向き直る。
「すまないな手伝わせてしまって」
「いえ、構いませんよ。まさか法皇がこんなところにいるとは」
「囚われておったからな。それに寿命も来ておった、人としては良い最後じゃったろう」
尊厳を持って死ねたのだからきっとこれでよかったのだろう。
法皇とも呼ばれる人間がこんなどことも知れぬ場所で看取られて死ぬというのはなんとも悲しく、哀れに思えてしまうがそれはきっとエルピスのお節介なのだろう。
ハイトをこの場に呼ぶよりも、何万の法国の民を呼ぶよりもきっとパーナが隣にいる事が法皇にとっては大切な事だったろうから。
「なぁエルピス君よ、お主は今回わしがしたことをどう思う」
「それは聖人製造計画を無視した事ですか? それとも兄弟同士の殺し合いを無視した事ですか?」
「全て含めてじゃよ。正直ワシは人として考えるならば良くないことをしているのは理解している。聖都に住んでいた人々の生活は今回の戦闘で大きく損なわれる。
法皇が死に、時期法皇も死んだ今ハイトに法王を継いでもらいたいがそれもできず、三女のペトロにまで任せてしまう結果になっている。
わしが干渉すればいまの法国はもっと良い状態になっておったろうに」
四大国としてこれから法国がどうなるかと聞かれれば、おそらく変わらないというのがエルピスの答えだ。
だがそれは宗教大国という国の性質と神がその地を統治しているという表面上変化させる事ができないから変わらないだけで、国同士の政治争いではこれから法国は第一線級の活躍をする事はないだろう。
そう考えればパーナの行為は悪戯に法国の民を傷つける結果に終わってしまっている。
王族と神が出した戦いの結論がどう転がっても悪い方へとしか向かないというのならば、確かにこの戦争は元から必要なかったのかもしれない。
だがエルピスはそれでいいと思っていた。
この地にやってきて、ハイトが戦争を起こすきっかけになった自分だからこそ自信を持ってこれで良かったと断言できる。
「別にいいんじゃないですか。俺の力は家族を守るために創生神が残してくれたものですが、貴方のそれは貴方の才能と努力が手に入れさせた褒美です。
それをどうやって使おうとも貴方次第、動かないという選択もまぁいいんじゃないですかね」
結局のところ才能と力を持つ人間がどのような決定をしようがそれは個人の自由なのだ。
今回責任を問われるべきなのはハイトとゲリシンの二人、法皇の血を引き継ぎ権力を争った彼等はそれ相応の罰を今回受けている。
その点で彼等は人としての役目をしっかりとこなしていると言えるだろう。
ただ神として考えるのなら好き勝手やって何が悪いというのが神達の常識であり、そのどちらも理解しているエルピスとしてはこんかいのパーナの行動に悪いところがあったようには思えない。
「神の力には責任が伴う。そう考えるのがわしらだったが、お主がそう思うのならそれもまた……いや、それは責任を捨てる事になるか。わしはきっと後悔しながらいきていくのが定めなのじゃろうな」
パーナがどう思うかは結局パーナ次第。
誰にも他人は変えられず、だからこそ争う人間だって出てくるのだ。
後悔を背負うというのであればエルピスがそれを止めるなどできるはずもない。
「話に付き合ってくれて礼を言う。ペトロが無事に治って、落ち着いたらわしの名の下にお主らの婚姻の儀を行おう。それが法国からお主らに送るお礼じゃよ」
こうして法国での一件は早々に終わることとなった。
日数にしてしまえばまたたく間に終わってしまった騒動だったが、こうして数十年に及ぶ次期法皇達の確執は終わりを迎えたのだった。
エルピスとエラは目的の人物に会うために地下の大迷宮を探索していた。
作りとしてはこの間潜った地下となんら変わりなく、人工的に作られた道とうす暗い灯だけが特徴的である。
本来ならばハイトの援護に回る予定であった二人だが、想定よりもゲリシン側からの反抗が控えめであったことやハイト本人から手出し無用と言われてしまったのでそれならばとエルピス達は捉えられているであろう神を探すことにしたのだ。
そうしてエルピス達が神を探し始めて数分ほどだろうか。
場合によってはハイトの戦闘が終わってからも捜索することを想定に入れていたエルピス達だったが、向こう側からエルピス達の方にやってきてくれたことでその問題は無事に解決することとなる。
「お前さんがエルピス君か?」
エルピスの目の前に現れたのは年端もいかないような幼い幼女である。
薄緑の髪の毛に黄色の目はエラではなくしっかりとエルピスの方へと向かれており、この時点でどうやら目の前の少女が目的の人物であることにエラもエルピスも分かっていた。
鍛冶神との初対面の時の様な轍を二度も踏むわけにはいかないので、きわめて冷静に勤めながらエルピスは言葉を選んで返す。
「はい、そうですが……手は大丈夫ですか」
エルピスの視線の先にあるのは両の掌を貫通していまもなを神に痛みを与え続けているだろう楔である。
神の体を貫通できている時点で相当珍しい品物であるのは間違いがなく、触れればどのような反動がやって来るのか分からない以上は神の許可を取ろうとするのは安全策といえるだろう。
よく見てみれば足の方は引き抜いたのか神の後ろには血の跡ができており、何とも痛々しいものだ。
「ん? ああこの程度構わんよ、痛みなぞ慣れたものじゃ」
だが神は特に痛そうなそぶりを見せない。
神とはいえ痛みを感じないわけではないだろうにそれを慣れたと言わしめるのは流石に長年人類と寄り添ってきた神だということか。
興味なさげに自分の手の傷を見た神を前にしてふと隣にいたエラが一歩前に出る。
「お初にお目にかかります。エラ・セルバと申します」
「ふむ、妖精神……いや、権能の貸しあたえか? 混霊種を見たのも随分ぶりな気がするのぉ」
「私たちの種族は少ないですから」
「……森妖種と窟暗種の確執は昔からの事じゃからな、まあついてくるといい」
一応報告において混血種というのはあまり薦められた存在ではない。
いまの法国はゲリシンが十年ほど前から人間至上主義を強く推し進めていたこともあって混血に対しての当たりが強かったので仕方ないのだが、法国の神としてはどうやら何か思うところがあるらしい。
一瞬暗い顔になった神は何を口にすることもなく付いてくるように口にすると、エルピス達はそれ以上何かを彼女に対して問いかけることもできずに黙って言われたまま後をついていく。
少し先すら見えないような暗闇の中をすいすいと歩いていく神の後を追いながら少し歩いていくと、いつぞやと同じような隠し扉を神が見つける。
「すまんがエルピス君、ここを開けてもらえるかね?」
エルピスの目にはどう見たってただの壁にしか見えないが、神がそういうのだからきっと何かがあるのだろうと一瞬も躊躇わずに魔力を用いて神が指定した部分を吹き飛ばす。
爆音と共に崩れ落ちていく瓦礫を押し除けて中へと入ってみれば、そこにあるのはただっ広い空間だ。
部屋に入った瞬間に全身を貫いたのは異様なほどの魔力の濃度、強者同士での戦闘時に周囲の空気を侵食した魔力によって起こるこの現象はエルピスも何度も味わったことのある。
視線を左右に振ってみればクレーターのようなものがいくつも存在しており、魔法を使わなかったのか自然現象は摩擦で発生しただろう火くらいのものだ。
「すごい荒れ様ですね」
「神人に近い聖人二人が暴れたのじゃ、この程度で済んでいるだけましというものじゃろう」
対神用に想定して作られた空間であったからこそ、この程度で済んでいると言っていい。
実際この被害が外に漏れ出ていたのならば、いまごろ聖都は綺麗な更地へと変貌していたことだろう。
そんな空洞の中にあってふと立ち尽くす一人の人間がいた。
いつもならば飄々とした態度をとっている彼女は暗闇の中で気配で分かるほどの落ち込みを見せており、エルピスも声をかけようとして喉に言葉を詰まらせる。
「来たっすか、遅かったっすね」
「そうか……お主が勝ったか」
どちらが勝つかは神すら分からなかったが、結果を結果として受け入れるとこの場所に来る前から彼女は決めていた。
既に事切れたゲリシンの側で膝を降り、その冷たくなった手を握りながら神は小さく息を吐き出す。
そこに込められた想いはとてつもなく重い。
「弟の散り際は聖人として誇らしいものだったっす。どうか弟の魂を空に」
「もちろんじゃ、安らかに眠らせてやろう」
聖人は死んでもその魂を法国に留める事が多い。
それは聖人の役目とは人類の守護であり、故に死後もその魂でもってこの国を守らなければいけないからだ。
だが生きている間に全身全霊を賭けて自分の一切合切を捨ててまで人類を守ろうとしたゲリシンを、死んでからも強制的にこの国に縛りつける事はハイトとしてはできない。
神がゲリシンの体に改めて手を添えると、ほんのりと青く光り輝いた体からゲリシンの魂が空へと昇っていく。
浄化によって天へと帰った魂は元の体へと戻る事は絶対にできないのだ。
静まり返った空間の中で天井へと溶けて消えた魂を見送り、自分の頬を軽くたたいた神はエルピスたちの方へと向き直る。
「それでじゃが、お主らがここにやってきた理由はもちろんわかっておる。話の出来る場所があればそこまで案内してくれ」
「それはいいっすけどパーナっち。その手は大丈夫っすか?」
「お主ら人間はどうしてそうも心配性なんじゃ。ほれ、この通り引き抜けばすぐにこの程度の傷直すことができる。これでも儂は癒しの女神じゃぞ」
エルピス達に見えるように手を受けの方に上げながら神が手をふらふらと振るうと、いつの間にか手についていた痛々しい傷は綺麗に治っていた。
回復魔法を使えばエルピスとて似たような真似は出来るだろうが、魔神としての権能でエルピスは目の前の神が一切魔力的な力を使用していないことを知っている。
傷跡すら完璧になくして見せ、まるで怪我自体がなかったかのように見せる彼女の権能はさすが神の領域である。
転移魔法をエルピスが起動して法国の地下から基地へと戻ると、どうやらエルピス達を待っていたらしく会議室の様な所でみなが席に座っていた。
「ふむ、久々に見る顔も居れば、そうでないものも混じっておるの」
「主神様! これはご機嫌麗しゅう!!」
「うむ、じゃが客人たちの前じゃ。積もる話もあるじゃろうが後にせよ。儂に時間はあるが目の前の者達には時間が無いからの」
法衣を身にまとっているおそらくはハイトに着いたであろう法国の人間たちが神の前で椅子から飛びのいて地べたで首を垂れるが、それに対して神は煩わしそうに適当にあしらうとエルピスの方へと視線を向けてくる。
それが同行者をとっとと選べという事だろうと判断したエルピスが室内を見渡すと、ふとこの場に居るはずのない人間の姿が目に映る。
「あれ、フェルがなんでここに居るの?」
エルピスの目に留まったのは万が一破壊神の使徒がやってきたときのために、アウローラの護衛という大切な仕事を任せていたはずのフェルである。
「さっき呼ばれたんですよセラさんに。アウローラの護衛には代わりにニルさんが行ってます」
「そういう事か。なら悪いんだけど今すぐ転移で戻るよ」
「もちろんです」
「そういう事なら僕もつれて言ってよ、アウローラに久々に顔を合わせたいしさ」
転移魔法を起動しようと魔力を高めたエルピスに対して灰猫が尻尾をゆらゆらと揺らしながらそんな事を言ってくるが、エルピスとしては誰か後処理ができる人間を置いておきたいのでどうしようかと頭を悩ませる。
そんなエルピスの考えを見抜いてか、ハイトが手を挙げた。
「自分がここに残って後処理はしておくっす、早く行ってあげるっすよ」
「行ってらっしゃいませ」
様々な人間に見送られ、そうしてエルピス達はその場を後にする。
向かう先は魔族達が覇を競い合う魔界。
本来ならば魔界の周囲は高濃度の魔力が付近を汚染しているため転移魔法の類などは使用できないのだが、魔神であるエルピスが事前に用意した刻印により転移先の座標がどこにあるのかはしっかりと把握できていた。
座標さえわかれば後はそこへ向かって飛ぶだけであり、いとも容易く魔界への転移は完了する。
道中おそらくは外敵対策用であろう転移対策用のトラップをいくつかすり抜け、盗神の技能すら併用してエルピスは目的の場所へと転移を完了させた。
もしエルピス達が転移してきた先に視線を向けている人間がいたとすれば、まるで先程からそこにいたように映っていることだろう。
「うぉ! びっくりしたぁ」
「お帰りエルピス、どうやら無事に終わったようだね」
転移先の部屋の中にいたのはニルとバーンだけ。
裏切り者がいないとは限らないので極力面子を削った結果がこれであり、最小人数で最も安全を考えた面子である。
二人の間にある大きな扉を開ければ、その先にはエルピスが封印したアウローラがいまもまだ眠っているはずだ。
「なかなか時間はかかったけどね。それで……なんとお呼びすれば?」
「儂には名前が複数ある。いまはパーナと名乗っておるが好きに言ってくれればよい」
「ではパーナさん、こちらです」
いまさらながら呼ぶ名前を聞いていなかったことを思い出したエルピスが言葉に詰まるが、パーナはこんな状況も慣れていたのかさらりと対応するとエルピスの案内通りに部屋の中へと入っていく。
通された部屋の中には大きなベッドが鎮座しており、その中央ではアウローラが横になっている。
「まるで寝ているようじゃの」
「一応セラから話は聞いてたんだけどアウローラはどうしてこうなったの?」
「破壊神の信徒の攻撃を食らった上に自分の能力のせいで回復魔法を受け付けていないんだ」
「ふむ、破壊神の権能か……まぁこれならなんとかなるじゃろ」
腕を捲り上げ寝ているアウローラの体を触って状態を確認したパーナは、少し神妙な面持ちはしていたものの希望に満ちた言葉を投げかけてくる。
「本当ですか!?」
「神じゃからな、それにわしを呼んだのはそれが理由じゃろ。少し待っておれ」
そういうと神は更にアウローラの身体を触り始める。
身体の悪いところを探る時にエルピスも魔力の詰まっている箇所を探るため触診をする事はあるので、おそらく似たようなことをしているのだろう。
「ふむ、どれどれ」
どうやら触診の結果何かを見つけたのだろう。
アウローラの傷とは少し離れたお腹の辺りを軽く何度かさすっていたパーナは、不意にその手をアウローラの中へと突き刺した。
異物が体内に侵入してきたことに身体が反応したのはびくりとアウローラの身体が跳ねるが、そんな事を気にせずに神は遠慮なく手を突っ込んでいく。
「な、なにを?」
「何をってそりゃ医療行為じゃよ。それよりこの子、なんだか変じゃが本当に人の子か?」
「純正の人の子ですよ、転生者ですが」
「ならなぜ血が出ん?」
遠慮なく手を突っ込みながらそんな事を聞いてくるパーナに対し、一歩前へと出てエラがおずおずと言葉を発する。
「私が妖精神の権能で空間を固定しています。解除すれば血は出るはずですけど……」
「ふむ、信徒に己の権能をな……まぁわしも人のこと言えんが。そういう事なら解除してくれ、わしを信頼するんじゃ」
権能を解除すればアウローラの体は確実に止まることなく急速に死へと向かっていく。
再び権能で時を止めることもできるだろうが、確実にいまのアウローラよりも悪い方へと転んでいる事は確かだ。
神とはいえ先程出会ったばかりの人物を信用できるかどうか。
一瞬心の中に過ぎっていった疑心の心はそれだけエラがアウローラを助けたいと願う心であり、躊躇いながらも自分では治せないことを分かっているからエラはゆっくりとアウローラの封印を解く。
止まっていた時が進みだし、アウローラの体からは信じられないほどの血液が流れ出る。
「ほれ脱水で死ぬぞ、水とエネルギー入れんか」
「なんでそれを作業始めてから言うんですか!?」
パーナに指示されるままに作業を始めるエルピスと、それを手伝うエラ。
そうして治療が始まって10分ほどだろうか。
手術であることを考えれば恐ろしい程に素早い速度でエルピス達はアウローラの治療を完了させた。
「──よっと、こんなもんじゃな」
「アウローラ! アウローラッ!!」
「いくら神の力でもそんなすぐ目覚めんわ。まぁ三日くらいじゃろ、その傷なら」
アウローラの肩を掴んで涙を浮かべながら揺さぶるエラだったが、そんなエラに対してパーナは冷静に言葉をかける。
症状を直すことには成功したとはいえ元は致命傷。
カラダがもとに戻ったとしても精神がそれに追いつくのにはそれなりに時間というものが必要になるのだ。
「ありがとうございました」
「頭を下げる必要はない若人。むしろ謝りたいのはわしの方じゃ、法国の内輪揉めにお主を巻き込んでしまった。
人を守ろうとするものか、この世界を守ろうとするものか、どちらが勝つかをわしは神として見ずにはおれなんだ」
アウローラが眠るベットに腰を掛け、神は外を眺めながらそんな事を口にする。
どちらにも戦ってほしくないはずなのに、己の我を通さんとする二名が居ればそれを見守らずに入られないというのは何とも神というのは大変だ。
後悔するくらいならば助ければよかったのではないかと考えてしまうのは所詮神ではないものの考え方にしか過ぎないのだろう。
遠くを見つめる神の頭の中をのぞくことなどできるはずもないが、そんな神の考えが気になったのかフェルが横から声を出す。
「神の視点から見て敗因はナンだったと思いますか?」
「始祖の悪魔か。簡単な事じゃよ、覚悟の差じゃ。ハイトはこの世界の人類全てを失う可能性も考慮に入れて、この世界を守ろうとしておった。より大きな犠牲を払ったハイトが勝つのは当然のことじゃろ」
人類を守ろうとしたゲリシンと人類すら世界を救うための捨て駒としたハイトでは、そもそも物を見るときの視野の広さが全く違う、
聖人を作ると言う点では相違がなかった二人だったが、妹にも手をかけるかどうかで仲違いをしてしまったのはその視野の広さの違いが故だ。
人を救おうとするゲリシンはその為に人を犠牲にしたがるが、ハイトは世界を救う為に最低限自分が守りたいものと世界を維持する為に必要な絶対数以外は切り捨てても良いと考えている。
支払うコストが多い方が使える力が大きいのは当たり前のことだろう。
ふとそこで視線をずらしたパーナが目を向けたのはバーンとニル。
この部屋に入ってからも何も言わなかったので興味がなかったのかと思ったが、どうやら患者を優先してくれていたらしい。
「そういえばそこにおるのは吸血鬼の始祖か。先先代には世話になった、血の病の時の恩はわしはいまでも覚えておるよ」
「もったいなきお言葉ありがとうございます」
「さすがに歴史がある神は違うね」
「ふむ、そういう貴方は誰かと思えば上のお方か。話は彼から聞いている」
彼という単語にニルの耳がぴくりと動いた。
いまのニルは警戒のために獣耳を生やしているので、頭部の上にある耳がピクピクと動いているのはなんとも可愛らしいものだ。
ニルに対して話がある彼といえばパーナの口から出てくるであろう人物はただ一人。
創生神以外には居ないだろう。
それを分かっているからこそニルは先ほどまでパーナに対して興味のなさそうな態度をとっていたというのに、いまは身体を乗り出さんばかりの体制をとっているのだろうから。
「へ、へぇ~? ちなみになんて?」
「秘密にしろじゃと。そこな神が怒り出すかもしれんからとな、私もそうなっては手がつけられん」
パーナの指先が向けられる先はエルピス。
一体何を言われたのかとか、そんなことで怒るとか心外だとか思わないでもないエルピスだったが、ニルについて自分が知らないことでマウントを取られたら自分が不機嫌になる事を分かっているエルピスとしては創生神の言葉は否定しきれない。
「上手いことあしらわれたわね」
「別にいいさ! 気にしてないからね!」
「……ひとまずこれで目的は達成したという事でいいかの。良いならば悪いのじゃがエルピス君だけ来てもらえるか? 話があるからの」
「別にいいですけど……じゃあエラ、アウローラをお願いね。ニル悪いけど引き続きここは任せたよ」
「任せなよ」
あちらこちらへと転移ばかりし続けている気がする一日だが、それだけやらなければいけないことが多いのだから仕方がない。
パーナを掴んで適当な移動先を頭の中に思い浮かべ、龍神の森以上に適任な場所もないだろうと転移を開始する。
龍神の認可を得たものしか通れない膜を通り抜け、湖の辺りに到着した途端にパーナからエルピスへと要望が投げかけられる。
「空間の遮断を頼んでも?」
ここは機密性という点に関していえば世界を見渡してもほぼトップだと言ってもいいほどの場所だ。
神であるパーナはこの場所の特異性をその全身で感じているだろう。
だというのに空間の遮断をお願いしてきたという事はそれだけ大切な用事ということ、エルピスは言われたままにいくつかの障壁を展開する。
「出来ました、それで話とは」
「おおよそ理解しておるとは思うが、創生神からの伝言を預かっておる」
これだけ警戒させるのだ、パーナから伝言の話をされてもエルピスに同様はない。
「解放できて良かった、確率としては五分五分だったから心配してたんだ。婚姻の方は予定通りに行なってくれればそれでいい、いまのところはこちらの予定通りだ。いまからの三年間僕は自分のするべきことをするために隠れるから、君は愛しい人達との時間を作るといい──という事じゃ」
「自由ですねあの人」
「その点に関してはわしも同意じゃな。まぁ全知全能の上を行くような神じゃ、考えるだけ無駄じゃろう。それでお主婚約するのか?」
「え? あ、まぁはい。そうですね、あんな事があったばかりではありますが」
創生神が何を裏で考えているのか、彼の目的がなんなのかをずっと掴めずにいるエルピスとしては創生神の予定通りに事が進んでいるというのは一抹の不安を覚える要素である。
その事について脳のリソースを割いていたエルピスは、パーナから投げかけられた問いまでに一瞬理解の時間をかけながらも言葉を選んで返す。
パーナにとってハイトやゲリシンがどのような存在だったかを正確に推し量る事はできないが、彼女達に対してのパーナの立ち居振る舞いを見ていれば並々ならぬ感情を持っていた事は推しはかれる。
そんな相手に対して「実はこれから彼女と結婚するんすよ! いやぁついに念願叶うって感じっすね! マジ嬉しいっす!」とかふざけたことを口にできる人間がいたとしたらそれは豪胆ではなく空気が読めないだけだろう。
「暗いことがあった後には祝い事があるべきじゃよ。 じゃがまぁ罪悪感を感じるのならついてくるのじゃ」
だが意外な事にそれでもいいと肯定してくれるパーナの姿にエルピスがポカンとしていると、パーナが空間を歪ませてどこかへと転移魔法を繋げたようで空間に溶けるように消えていく。
その後を追いかけてみれば出たのはどこかの部屋の一室だ。
薄暗くはあるが人の目でも慣れれば見渡せるほどの闇の中で、まるで王が眠るような巨大なベットが部屋の中にはあった。
壁紙を見てみれば剥き出しの石で作られており、地面にもカーペットが敷かれているがその下はどうやら感触からして石のようだ。
初見で受けた感覚は急拵えの豪華な牢獄。
牢獄なのに豪華というのはなんとも変なものだが、カーペットや部屋の中に置かれた家具というのは確かに高級品である。
「ここは?」
「法皇がいる場所じゃよ。ほら、そこに寝ておるのが法皇じゃ」
パーナが指を刺した先には不規則な呼吸をする老人が一人。
なるほどあれが病気で横たわっている法皇であるならば、ハイトが文字も書けないと言っていたのは確かに納得がいく。
神域に入ってくる情報でも魔力反応でもどちらでも法皇はいままさにいつ事切れてもおかしくないほどの衰弱具合であり、身体を動かすことなどできそうにもない。
パーナに連れられるままにベットの淵へと移動してみれば、痩せこけた老人がそれでも威圧感を失っていない風貌で安らかに眠っている。
「……エリーか?」
ふとパチリとそんな法皇の目が開く。
口を開けるのが精一杯なのだろう。
掠れて法皇の声は聞こえにくいが、確かに誰かの名前を呼んだようである。
そんな法皇が眠るベットに先程と同じように腰掛けたパーナは、まるで幼子を寝かしつける時のように法皇の頭を優しく撫でていた。
「わしじゃよ、ケイン。お主の神の名前を忘れるな愚か者」
「ああ……ヒリング様でしたか……そちらは?」
「当代の魔神であるエルピス氏じゃよ。二柱の神がお主を見送ってやろうというのじゃ、しかも片方は特級の神じゃぞ」
魔神以外にも無論神の称号はいくつか持っているが、人の世界で最も有名な神となれば魔神か龍神のどちらかだ。
この数千年両方どちらの神の称号も現れる事はなく、久々に現れた龍神に自らが信奉する神と共にその死を看取られるとなれば神に使える人間達としてはこれ以上ないほどの喜びだろう。
この世界に来るまでは無神論者であり、実際自分が神になってしまったエルピスとしては彼の気持ちを押しはかることもできないが、頬をながれていく涙をみれば彼がどれだけ救われているのかくらいはわかる。
「それは嬉しいものです……私もこれでようやくいけます」
「老衰はわしにもどうにもならん。せめて眠るように行くといい」
「ありがとうございました……ああエリー……いま君の…ところ…へ」
寿命をいじる事はできるが、本人がそれを望まないのであれば他者が何かをするべきではない。
再び眠るように瞼を落とし、ゆっくりと身体から力がなくなっていく法皇の姿を前にしてエルピスはなんともいえない感覚を味わっていた。
昔の世界で祖母が死んだ時エルピスはその近くにいたのだが、その時にも感じた人がいま確かに死んだのだという感覚は、なんとも落ち使いのもである。
もはやこの世界では慣れ親しんだと言ってもいいものだというのにもかかわらず違和感を感じるのは、いまだに心の中に晴人としての側面が残ってくれているからだろう。
空へと登っていく魂を見送り、一粒の涙を落としてからパーナはエルピスの方へと向き直る。
「すまないな手伝わせてしまって」
「いえ、構いませんよ。まさか法皇がこんなところにいるとは」
「囚われておったからな。それに寿命も来ておった、人としては良い最後じゃったろう」
尊厳を持って死ねたのだからきっとこれでよかったのだろう。
法皇とも呼ばれる人間がこんなどことも知れぬ場所で看取られて死ぬというのはなんとも悲しく、哀れに思えてしまうがそれはきっとエルピスのお節介なのだろう。
ハイトをこの場に呼ぶよりも、何万の法国の民を呼ぶよりもきっとパーナが隣にいる事が法皇にとっては大切な事だったろうから。
「なぁエルピス君よ、お主は今回わしがしたことをどう思う」
「それは聖人製造計画を無視した事ですか? それとも兄弟同士の殺し合いを無視した事ですか?」
「全て含めてじゃよ。正直ワシは人として考えるならば良くないことをしているのは理解している。聖都に住んでいた人々の生活は今回の戦闘で大きく損なわれる。
法皇が死に、時期法皇も死んだ今ハイトに法王を継いでもらいたいがそれもできず、三女のペトロにまで任せてしまう結果になっている。
わしが干渉すればいまの法国はもっと良い状態になっておったろうに」
四大国としてこれから法国がどうなるかと聞かれれば、おそらく変わらないというのがエルピスの答えだ。
だがそれは宗教大国という国の性質と神がその地を統治しているという表面上変化させる事ができないから変わらないだけで、国同士の政治争いではこれから法国は第一線級の活躍をする事はないだろう。
そう考えればパーナの行為は悪戯に法国の民を傷つける結果に終わってしまっている。
王族と神が出した戦いの結論がどう転がっても悪い方へとしか向かないというのならば、確かにこの戦争は元から必要なかったのかもしれない。
だがエルピスはそれでいいと思っていた。
この地にやってきて、ハイトが戦争を起こすきっかけになった自分だからこそ自信を持ってこれで良かったと断言できる。
「別にいいんじゃないですか。俺の力は家族を守るために創生神が残してくれたものですが、貴方のそれは貴方の才能と努力が手に入れさせた褒美です。
それをどうやって使おうとも貴方次第、動かないという選択もまぁいいんじゃないですかね」
結局のところ才能と力を持つ人間がどのような決定をしようがそれは個人の自由なのだ。
今回責任を問われるべきなのはハイトとゲリシンの二人、法皇の血を引き継ぎ権力を争った彼等はそれ相応の罰を今回受けている。
その点で彼等は人としての役目をしっかりとこなしていると言えるだろう。
ただ神として考えるのなら好き勝手やって何が悪いというのが神達の常識であり、そのどちらも理解しているエルピスとしてはこんかいのパーナの行動に悪いところがあったようには思えない。
「神の力には責任が伴う。そう考えるのがわしらだったが、お主がそう思うのならそれもまた……いや、それは責任を捨てる事になるか。わしはきっと後悔しながらいきていくのが定めなのじゃろうな」
パーナがどう思うかは結局パーナ次第。
誰にも他人は変えられず、だからこそ争う人間だって出てくるのだ。
後悔を背負うというのであればエルピスがそれを止めるなどできるはずもない。
「話に付き合ってくれて礼を言う。ペトロが無事に治って、落ち着いたらわしの名の下にお主らの婚姻の儀を行おう。それが法国からお主らに送るお礼じゃよ」
こうして法国での一件は早々に終わることとなった。
日数にしてしまえばまたたく間に終わってしまった騒動だったが、こうして数十年に及ぶ次期法皇達の確執は終わりを迎えたのだった。
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