26 / 41
第二十六話 いざゆかん、舞踏会へ
しおりを挟む
「そこ、もっと引っ張って! あと2センチ上!」
針を手に持ったサリーが鬼の形相で叫ぶ。使用人達が群がった中心には、レイモンドが死んだ魚の目をして立っていた。色とりどりの布を顔周りに当てられ、無の境地に至っている。
その周りでは氷狼のアルが、布切れの山に飛び込んだり引っ張ったりと、嬉しそう跳ね回っていた。
「ひええ、もう腕が上がらないよぉ~」
「頑張ってくださいエリオット! もう少しです!」
現在はレイモンドの宮廷服の仕立て中で、手持ちの服のサイズを確認しながら、同時並行で服に使う色を選んでいるのだ。
レイモンドは背が高いため、布地のサンプルを押さえている小柄なエリオットは、腕を伸ばしてプルプルと震えている。
「もう……いいか……」
着せ替え人形のように服を着替え続けたレイモンドが、呻くように呟いた。
「まだだよ、旦那サマ! ……見ておくれよ奥サマ、このつんつるてんな裾! こんな短い丈じゃ、舞踏会どころか街へも出掛けられないよ。まったく、こんな古い服しかないなんて……いつ仕立てたズボンなんだい?」
「これは確か……15歳の頃、領地の視察に出かけた時ですね。レイモンド様があまりにお洋服を持っていないから、街の洋服屋さんで仕立てて……」
皆の不思議そうな顔に気付き、アリシアはハッと言葉を止めて微笑んだ。
「……と、セドリックが話していました」
「そうだよね。旦那サマが15じゃ、もう10年前くらいだろう? 奥サマが知るはずもないよねえ。……まあとにかく、こりゃダメだ! 裾をほどいて縫い直しても、全然丈が足りやしない。全部仕立て直しだよ」
サリーが肩をすくめてそう言うと、離れた所でクッキーをつまみながら眺めていたマールが口を挟む。
「ほっひひゃはふへ、ほっひのほうがいいほ」
「ちょっとマール、せめて食い終わってから喋ってくれよ!」
「ゴクンッ……あ~、仕立て直すならね、そっちじゃなくてあっちの色の方がいいよ~。旦那様の髪色には彩度が低い方が似合うもん~」
マールは紅茶のカップを傾け、テーブルに置かれていた紙を手に取る。
「だいたい何? サリーのこのデザイン! 金のヒラヒラとか首元のフリルとか……ゴテゴテ過ぎるわ~、一昔前の王族みたいじゃない?」
「何さ! 実際旦那サマは王族なんだし……金ピカヒラヒラは、舞踏会のロマンなんだよ! それにマールのデザインはシンプル過ぎんだ、これじゃ豪華絢爛な会場の中で埋もれちまうよ!」
「何~!?」
「なんだってんの!?」
「ちょっ……二人とも、落ち着いて!」
バチバチと火花を散らす二人の間に割って入る。
「デザインは話し合って詰めていきましょう。まずコンセプトを決めて……二人のデザインの良い所を入れていきましょう、ね?」
「あたしゃ旦那サマを、会場で飛び抜けるぐらい目立たせたいんだ。全員の目を引く美しい旦那様を、一際輝かせるジャケットとズボン……」
サリーは夢見る少女のような顔で天を仰ぐ。
「目立たせたいなら、派手な色を使う必要はないのよ~。舞踏会って、ただでさえみんなカラフルな色を着てるじゃない? 逆にシックな色の方が、目を引いたりするのよね~」
「……マール、アンタ賢いじゃないの」
「ふふーん、それほどでも?」
椅子にふんぞり返ったマールを、皆が拍手で讃える。
「マール、すごいです! ……でも、サリーのこのデザイン案は良いと思いますよ。雪をイメージしているなら、ここの色をこう変えて……。あと演出にもこだわりたいですよね、ダンスの終盤で……」
話し込む女性陣の後ろから、レイモンドが恐る恐る尋ねる。
「あー……盛り上がっている所悪いが、そろそろいいだろうか……」
「「「ダメです!!」」」
・・・・・
二週間後の早朝。
屋敷の外はまだ夜の闇に包まれ、ひっそりと静まり返っていた。
屋敷の玄関に集まった一同は、煌々と光るランプの光に照らされている。
アリシアとレイモンド、そして使用人のヨゼフとマールは、火の魔石入りの防寒具を着込んでいた。
いよいよ、舞踏会へと出発する日が来たのだ。
「……では、行ってくる」
レイモンドの言葉に、ブルーベルが眠い目を擦りながら答える。
「気をつけて、早くかえってきてください……」
「はい。すぐに帰ってきますからね! それにしても、サリーが私のドレスまで作ってくださっているとは思いませんでした……」
アリシアはドレスを身に纏っているが、分厚い防寒具を上に羽織っているので、外から全容は見られない。
「当たり前だろう! 逆に何故無いと思ったんだい? 旦那サマもそうだけど、うちの自慢の奥サマのお披露目でもあるんだ。それに洋裁家にとって、ペアの舞踏服は永遠の憧れ……」
目の下に真っ黒な隈を作ったサリーは、言いながらフラフラと倒れた。それを慌てて抱き止めたアリシアは、彼女の手を握りながら呼びかける。
「サリー! こんなに無理をして……。本当にありがとうございます。レイモンド様の服もあるのに、私のドレスまで作って大変だったでしょう? ほとんど寝ていないんじゃありません……!?」
「いいんだ。アタシの作った服を着て、舞踏会に行ってくれるだけで本望だよ。二人が踊る姿が見られないのだけが残念だが……帰ってきたら、一曲踊ってくれるかい?」
サリーはアリシアの腕の中で、菩薩のような顔をして呟いた。涙ながらに頷くアリシアの後ろで、レイモンドが不安そうな表情を浮かべる。
「それは問題ないが……結局、一度もダンスの練習ができなかったな。貴方のドレスもまだ見ていないし……」
珍しく心配そうなレイモンドに、アリシアは胸を張って言った。
「大丈夫ですよ! ダンスなら何度も一緒に踊ったことがありますし……」
「? 誰と誰とがだ?」
「あー……私は、ロイ様と? レイモンド様も昔はお上手だったと、セドリックが……」
半分寝ぼけたセドリックが、うんうんと大きく頷く。
「ロイか……では、負ける訳にはいかないな」
アリシアの言葉を聞いたレイモンドが、眼光を鋭くして呟いた。
(旦那様が対抗心を出すなんて珍しいけれど……兄として、弟のロイ様には負けたくないというプライドがあるのかしら?)
「ほら、そろそろ行きますよ! ここまで準備して、間に合わなかったら大変です」
外は吹雪ではないとはいえ、僅かに雪が降っている。長い道のりの中で、悪天候に見舞われたら大変だ。
ヨゼフの言葉に、横たわっていたサリーがピョンッと跳ね起きる。
「じゃあ、頼んだよマール!」
「まかせて~! 特別ボーナスも貰ったし、バッチリ化粧して奥サマを王国一の美女にしてくるから~」
マールは大きな化粧具セットを手に、ニヤリと口の端を上げた。
「まさかマールがお化粧まで出来るなんて……貴方一体何者なんです……」
「ほらほら、無駄話はあと! 出発しますよ!」
キリキリ動くヨゼフに背中を押され、馬車に押し込まれる。
「じゃあね、旦那サマ! 髪留めの件は打ち合わせ通りに!」
追いかけてくるサリーに、レイモンドは黙って頷く。
「いってらっしゃーい! ミーシャさん、お父さま!」
「ほどほどに頑張れよ! 上手い酒、土産に持って帰ってきてくれよな~!」
真っ白な世界の中で、明かりのついた邸宅がみるみるうちに遠ざかっていく。アリシアは窓から大きく身を乗り出し、小さくなった人影に大きく手を振った。
針を手に持ったサリーが鬼の形相で叫ぶ。使用人達が群がった中心には、レイモンドが死んだ魚の目をして立っていた。色とりどりの布を顔周りに当てられ、無の境地に至っている。
その周りでは氷狼のアルが、布切れの山に飛び込んだり引っ張ったりと、嬉しそう跳ね回っていた。
「ひええ、もう腕が上がらないよぉ~」
「頑張ってくださいエリオット! もう少しです!」
現在はレイモンドの宮廷服の仕立て中で、手持ちの服のサイズを確認しながら、同時並行で服に使う色を選んでいるのだ。
レイモンドは背が高いため、布地のサンプルを押さえている小柄なエリオットは、腕を伸ばしてプルプルと震えている。
「もう……いいか……」
着せ替え人形のように服を着替え続けたレイモンドが、呻くように呟いた。
「まだだよ、旦那サマ! ……見ておくれよ奥サマ、このつんつるてんな裾! こんな短い丈じゃ、舞踏会どころか街へも出掛けられないよ。まったく、こんな古い服しかないなんて……いつ仕立てたズボンなんだい?」
「これは確か……15歳の頃、領地の視察に出かけた時ですね。レイモンド様があまりにお洋服を持っていないから、街の洋服屋さんで仕立てて……」
皆の不思議そうな顔に気付き、アリシアはハッと言葉を止めて微笑んだ。
「……と、セドリックが話していました」
「そうだよね。旦那サマが15じゃ、もう10年前くらいだろう? 奥サマが知るはずもないよねえ。……まあとにかく、こりゃダメだ! 裾をほどいて縫い直しても、全然丈が足りやしない。全部仕立て直しだよ」
サリーが肩をすくめてそう言うと、離れた所でクッキーをつまみながら眺めていたマールが口を挟む。
「ほっひひゃはふへ、ほっひのほうがいいほ」
「ちょっとマール、せめて食い終わってから喋ってくれよ!」
「ゴクンッ……あ~、仕立て直すならね、そっちじゃなくてあっちの色の方がいいよ~。旦那様の髪色には彩度が低い方が似合うもん~」
マールは紅茶のカップを傾け、テーブルに置かれていた紙を手に取る。
「だいたい何? サリーのこのデザイン! 金のヒラヒラとか首元のフリルとか……ゴテゴテ過ぎるわ~、一昔前の王族みたいじゃない?」
「何さ! 実際旦那サマは王族なんだし……金ピカヒラヒラは、舞踏会のロマンなんだよ! それにマールのデザインはシンプル過ぎんだ、これじゃ豪華絢爛な会場の中で埋もれちまうよ!」
「何~!?」
「なんだってんの!?」
「ちょっ……二人とも、落ち着いて!」
バチバチと火花を散らす二人の間に割って入る。
「デザインは話し合って詰めていきましょう。まずコンセプトを決めて……二人のデザインの良い所を入れていきましょう、ね?」
「あたしゃ旦那サマを、会場で飛び抜けるぐらい目立たせたいんだ。全員の目を引く美しい旦那様を、一際輝かせるジャケットとズボン……」
サリーは夢見る少女のような顔で天を仰ぐ。
「目立たせたいなら、派手な色を使う必要はないのよ~。舞踏会って、ただでさえみんなカラフルな色を着てるじゃない? 逆にシックな色の方が、目を引いたりするのよね~」
「……マール、アンタ賢いじゃないの」
「ふふーん、それほどでも?」
椅子にふんぞり返ったマールを、皆が拍手で讃える。
「マール、すごいです! ……でも、サリーのこのデザイン案は良いと思いますよ。雪をイメージしているなら、ここの色をこう変えて……。あと演出にもこだわりたいですよね、ダンスの終盤で……」
話し込む女性陣の後ろから、レイモンドが恐る恐る尋ねる。
「あー……盛り上がっている所悪いが、そろそろいいだろうか……」
「「「ダメです!!」」」
・・・・・
二週間後の早朝。
屋敷の外はまだ夜の闇に包まれ、ひっそりと静まり返っていた。
屋敷の玄関に集まった一同は、煌々と光るランプの光に照らされている。
アリシアとレイモンド、そして使用人のヨゼフとマールは、火の魔石入りの防寒具を着込んでいた。
いよいよ、舞踏会へと出発する日が来たのだ。
「……では、行ってくる」
レイモンドの言葉に、ブルーベルが眠い目を擦りながら答える。
「気をつけて、早くかえってきてください……」
「はい。すぐに帰ってきますからね! それにしても、サリーが私のドレスまで作ってくださっているとは思いませんでした……」
アリシアはドレスを身に纏っているが、分厚い防寒具を上に羽織っているので、外から全容は見られない。
「当たり前だろう! 逆に何故無いと思ったんだい? 旦那サマもそうだけど、うちの自慢の奥サマのお披露目でもあるんだ。それに洋裁家にとって、ペアの舞踏服は永遠の憧れ……」
目の下に真っ黒な隈を作ったサリーは、言いながらフラフラと倒れた。それを慌てて抱き止めたアリシアは、彼女の手を握りながら呼びかける。
「サリー! こんなに無理をして……。本当にありがとうございます。レイモンド様の服もあるのに、私のドレスまで作って大変だったでしょう? ほとんど寝ていないんじゃありません……!?」
「いいんだ。アタシの作った服を着て、舞踏会に行ってくれるだけで本望だよ。二人が踊る姿が見られないのだけが残念だが……帰ってきたら、一曲踊ってくれるかい?」
サリーはアリシアの腕の中で、菩薩のような顔をして呟いた。涙ながらに頷くアリシアの後ろで、レイモンドが不安そうな表情を浮かべる。
「それは問題ないが……結局、一度もダンスの練習ができなかったな。貴方のドレスもまだ見ていないし……」
珍しく心配そうなレイモンドに、アリシアは胸を張って言った。
「大丈夫ですよ! ダンスなら何度も一緒に踊ったことがありますし……」
「? 誰と誰とがだ?」
「あー……私は、ロイ様と? レイモンド様も昔はお上手だったと、セドリックが……」
半分寝ぼけたセドリックが、うんうんと大きく頷く。
「ロイか……では、負ける訳にはいかないな」
アリシアの言葉を聞いたレイモンドが、眼光を鋭くして呟いた。
(旦那様が対抗心を出すなんて珍しいけれど……兄として、弟のロイ様には負けたくないというプライドがあるのかしら?)
「ほら、そろそろ行きますよ! ここまで準備して、間に合わなかったら大変です」
外は吹雪ではないとはいえ、僅かに雪が降っている。長い道のりの中で、悪天候に見舞われたら大変だ。
ヨゼフの言葉に、横たわっていたサリーがピョンッと跳ね起きる。
「じゃあ、頼んだよマール!」
「まかせて~! 特別ボーナスも貰ったし、バッチリ化粧して奥サマを王国一の美女にしてくるから~」
マールは大きな化粧具セットを手に、ニヤリと口の端を上げた。
「まさかマールがお化粧まで出来るなんて……貴方一体何者なんです……」
「ほらほら、無駄話はあと! 出発しますよ!」
キリキリ動くヨゼフに背中を押され、馬車に押し込まれる。
「じゃあね、旦那サマ! 髪留めの件は打ち合わせ通りに!」
追いかけてくるサリーに、レイモンドは黙って頷く。
「いってらっしゃーい! ミーシャさん、お父さま!」
「ほどほどに頑張れよ! 上手い酒、土産に持って帰ってきてくれよな~!」
真っ白な世界の中で、明かりのついた邸宅がみるみるうちに遠ざかっていく。アリシアは窓から大きく身を乗り出し、小さくなった人影に大きく手を振った。
11
あなたにおすすめの小説
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる